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スタッフのチカラ

『館内で本を修理する』(10)

『館内で本を修理する』 (10)

アルテミス・ボナデア
(伊藤美樹 訳)   2009/04/02

Ⅵ.上級修理

深刻な問題を抱えた修理には、時間も技術も必要となる。過去に粗雑な修理をされた資料が多いために、図書館は重症な大量の資料に対する保存修理問題が待ち受けている。保存修理問題の解決が進めば、自ずと上級修理が必要な資料は減少していく。


A.  背の天地の修理

全体的にはまだ健全な状態だが、背表紙の天地に損傷のある本が多い。背の天における損傷の多くは不適切な扱いによるものであり、特に本を本棚から取り出す際に受ける損傷があげられる。これに対する修理は難しくはないが、何よりも利用者と図書館員に適切な扱いを身につけてもらうのがよい。

注意:ここでは背の天地の修理を解説するが、解説の簡潔化のため、背の天地のうちの天にしぼって解説をすすめる。


1. 修理用材料の採寸とカット

前述の「Ⅲ. 本の修理道具と技術」のなかの「本の採寸」の項も参照のこと。

5cm幅、15~25cmの長さの短冊を用意する。その短冊を本の背にぴったりと沿わせて背の端に印をつける。

短冊で背の幅をはかる

損傷の程度にもよるが、背の印の2.5~5cmずつ外側にも印をつける。こうして損傷した天の修理に使用するクロスの小片の寸法をとる。

修理用クロスの大きさ

採寸の合計(背の幅+5~10cm)の幅、背の損傷部分+約4cmの長さに切ったクロスの小片を用意する。

この小片の角は丸まりやすいので、角を三角に切り落とす。落とすのは角のほんの少しだけ。

隅を落とす

クロスの小片を本の外側に当て、おさまりを確認する。クロスの小片は、表紙ボードの上に1.5cm、背の損傷箇所から下に1cm強、大きくとる。

クロス小片を当ててみる

和紙の短冊を折り返し、ヒンジをつくる。折り返した和紙の下にヤレ紙、その下にワックスペーパーを敷く。


2. 修理のための下準備

別の本やボードを重ねたもので、本の表紙を支える。カッターと定規で本の天の見返し紙(効き紙)の端に沿って表紙クロスをカットする。ノドから2.5~5cmはカットする。

効き紙に沿って表紙クロスをカット

先ほどのカットの外側の端(背から遠い方の端)で、効き紙の端から表紙の上端に向かって90度にカットする。

表紙クロスの上端に向かって切り込み

カッターやスパチュラを用いて、表紙クロスを表紙芯材から持ち上げる。表紙クロスを持ち上げるのに、必要であればヒンジ部分の巻き込みも切り込む。見返しや寒冷紗は絶対に切らないこと。

反対側の表紙にも同じようにカットを入れる。

天側のクロスを持ち上げる

スパチュラやヘラを使って、表紙クロスを芯材からゆるめて持ち上げる。修理用クロスの小片を滑り込ませるのに必要なだけ表紙クロスをゆるめる。

表紙クロスを伸ばしたり破ったりしないよう、そっと注意深く行うこと。

平側のクロスを持ち上げる

オリジナルの巻き込み(切り込みは入れたが持ち上げていない効き紙の下の表紙クロス)と芯材の下にスパチュラを滑り込ませる。オリジナルの表紙クロスは効き紙を持ち上げる際に支えとなるはずである。

巻き込みの下にスパチュラを入れる

効き紙を表紙芯材からそっと離す。修理用クロス小片を滑り込ませるのに必要なだけ効き紙を持ち上げる。

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3. 本に修理用小片をあてる

オリジナルの表紙クロスと芯材の間に修理用小片を滑り込ませる。小片は損傷箇所を覆う十分

小片を滑り込ませる

ヘラの脇を使って表紙の表側の両側のジョイント部分に小片をなじませる。

ジョイントになじませる

小片の位置を確認する。新しい表紙クロス小片は芯材と本体の背に平らに貼る。小片や表紙の背にシワやネジレがないようにすること。

小片は芯材の上に1.5cmくらい長く残し、背の損傷箇所の下には1cmほど長くしておく。また、両ヒンジ部分も前小口側へ延長させる。

小片は損傷部よりもひとまわり大きく

小片が正確に貼られなければ、余分な部分を切り落とすか、もう一度新しいものを用意する。


4. 修理用小片を貼る

重要:修理用小片を接着させる作業にとりかかる前に、解説を読んでおくこと。いつ、どこに、接着剤を塗るべきかを習得することが重要である。不適切な方法で接着されると、接着剤だらけの修理になり、すでに修理した上にさらなる接着をしなくてはいけないことになる。

現代のくるみ製本の構造では、表紙の背と本体の背は、正しい本の開閉のため、それぞれ独立した動きをしていなくてはいけない。決して、修理用小片を本体の背に接着しないこと。

くるみ製本とは異なる作りの古い本がたくさんある。見慣れない作りや、構造の本であれば、よく調査し、修理にとりかかる前に経験のある修復家に相談してみる。

修理用小片を収めるには、ナイフやスパチュラを用いオリジナルの表紙クロスの背の裏側と、修理用小片の表側に接着剤を塗る。本体の背や持ち上げたオリジナルの表紙クロスには絶対に接着剤をつけない。

修理用小片を収める

ヘラでそっとオリジナルの表紙クロスを修理用小片に押し当てる。表裏表紙側と背も同様になじませる。修理用小片の上側に余分な接着剤を押し出し、ふき取る。

ヘラの脇を使って表紙ジョイント部分にも小片をなじませる。小片が正確な位置に収まったか確認してなじませる。

修理箇所を再確認する。新しい修理用小片は本体にぴったり貼られているか、オリジナルの表紙クロスは小片にぴったり貼られているか。小片や背のクロスにはシワやネジレがあってはならない。うまく収まっていない場合は、接着剤が乾燥する前に、再調整か貼り直しを行う。

本にプレス機にかけるか、ヒンジに棒を添えて重しをし、接着剤が安定するまで10分程度休ませる。


5. 見返し紙の下に修理用小片の巻き込みを挿入する

修理用小片に接着剤を塗る前に、小片が正確な位置に挿入できるか確認してみる。

修理用小片のどちらか片側から始める。見返し紙と表紙芯材の間の隙間にそっと巻き込みを入れてみる。片側を入れると、もう片側はそれに沿って挿入できる。

巻き込みを挿入する

小片の巻き込みが全て収まると、指で表紙芯材と背に小片をなじませる。

修理した側の背を作業台に置く。新しい背の表紙クロスはオリジナルのクロスにならっているはずなので、平らになじみ、作業台と平行になるはずである。

背のクロスには隙間やシワのないように

作業台と修理用小片に隙間があったり、背が作業台と平行でない場合は、背の巻き込みが正確でなかったということである。巻き込みを再調整し、再度確認する。

巻き込みが正しく収まっていれば、背は作業台に対して平行になる。

ヘラのとがった先で、表紙芯材と背の巻き込みの天側に沿って修理用小片に折り目を付ける。

ヘラで小片に折り目を付ける

接着剤を塗った後、この折り目が巻き込みの正確な位置を示す。

折り目を付けた巻き込みを開き、小片の内側に接着剤を塗る。

小片の内側に接着剤を塗る

小片のどちらか片側から、見返しの下に接着剤を塗った小片の巻き込みを挿入する。もう片側の小片も挿入し、指で小片をなじませる。

修理した側の背の端を作業台にのせる。新しい背のクロスがオリジナルの背になじんでいるか、背が作業台と平行になっているか確認する。

作業台と修理用小片の間に隙間ができていたり、クロスの収まりが悪い場合は、巻き込みが正確でないので、再調整すること。

本を作業台にのせる。ヘラのとがった先で、表紙芯材の上端と背の巻き込みに沿って修理用小片をなじませる。

ヘラの脇で、小片と表紙クロスを表紙ジョイント部分になじませる。この時点で、小片はオリジナルの表紙クロスと芯材に接着される。


6. 見返し紙の貼り戻しとヒンジ直し

スパチュラの丸い先を用いて持ち上げた見返し紙と表紙芯材の間に接着剤を塗る。見返し紙が芯材やヒンジに接着しているところ以外、全てに接着剤を行きわたらせる。

見返し紙の下に接着剤を塗る

ヘラを見返し紙の真ん中から端に向かって動かし、見返し紙をもとの位置に収める。はみ出てくる余分な接着剤をふき取る。

ヘラで見返しをなじませる

小片の巻き込み部分に接着剤を塗り、貼り付ける。小片の巻き込みと見返し紙の端にわずかな隙間ができるかもしれない。

小片の巻き込みを貼る

ジョイント部分に短冊状のワックスペーパーを当てる。本をプレス機にかけるか、ヒンジに棒を添えて重しをのせ、10分程度休ませる。

そっと本を開き、表と裏のヒンジの開きを確認する。

ヒンジがゆるい場合は、前述の「くるみ製本のヒンジの修理」の解説に沿って直す。ヒンジがしっかり直っている場合は、ワックスペーパーを当てなおし、プレス機に戻すか、重しをのせ、一晩寝かす。


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