『館内で本を修理する』 (12)
アルテミス・ボナデア
(伊藤美樹 訳) 2009/04/30
Ⅵ.上級修理 続き
B.くるみ製本の背ごしらえ直し 続き
方法2:オリジナルの表紙クロスの下での背ごしらえ直し
効き紙を持ち上げる
別の本やボードを重ねたもので修理する本を支える。

カッターと定規を用いて、天地の効き紙の端に沿って表紙クロスに2.5~5cmほどの切り込みを入れる。
この切り込みの外側(背から遠い方)に、2つ目の切り込みを入れる。効き紙の端から表紙芯材の端に向かって90度の角度に切り込む。

スパチュラで表紙クロスを芯材から持ち上げる。
必要であれば、ヒンジ部分の表紙の巻き込みを切り、クロスを持ち上げやすくしても良い。見返しや寒冷紗を切ってはいけない。
反対側の表紙にも同様に切り込みを入れる。
背の周辺の巻き込みが完全に外れている場合は除去する。
表紙芯材と効き紙の下の表紙の巻き込みの間にスパチュラを差し込む。効き紙を持ち上げる際に、効き紙の下の表紙クロスの巻き込みが効き紙を支えてくれる。
必要であれば後でも広げられるので、ここで持ち上げる効き紙は少しにしておく。

表紙クロスの持ち上げとトリミング
ヘラやナイフを滑らせて表紙芯材から表紙クロスをそっと持ち上げる。

必要であればクロスとともに表紙芯材の層の一部も薄く持ち上げ、クロスを外す。

クロスを芯材に貼り直した際に跡が残りやすいので、クロスを持ち上げる際に、クロスにシワを作らないように注意する。

クロスと芯材の間に薄いカードボードを挟む。

ヒンジ周辺の表紙クロスの損傷箇所に沿って定規を当て、カッターでクロスを切り落とす。
表紙クロスの装飾や印刷は決して切り落とさないこと。
反対側の表紙も同様に行う。
本体の背の厚みの採寸
短冊状の紙を用いて本体の背の幅(寸法A)を測り、その印から両サイドに2.5~5cmずつ外側にも印をつける。

寸法Aに足す分量は、表紙クロスをどれだけ切り落としたかに応じて決める。多すぎる場合は切り落とせるので、長めにとっておくと良い。
同様に短冊を用いて表紙の天地の長さ(寸法B)を測る。

新しい背表紙クロスの補強
背周辺の背表紙クロスは、無酸紙で補強すると良い。
背のインレイ(裏貼り)は、本体の背と同寸の幅、本体でなく表紙芯材の天地と同寸の長さをとる。表紙芯材よりも短い本体の天地の長さをとってしまう間違いが多いので注意する。
本体の背の幅(寸法A)、表紙芯材の天地よりも長い寸法で背のインレイを用意する。
本体の背にインレイを当て、背の幅を確認する。インレイはジョイント部分にかからないよう、肩から肩までの寸法であること。
インレイの天地の長さを決める。本体でなく、表紙芯材の天地の長さと同寸に揃える。

新しい背表紙の選択と貼り付け(片側の平表紙)
オリジナルの背表紙になじむ色の背表紙クロスを選ぶ。
近い色のクロスが無い場合は、コントラストの少ないものを選ぶ。濃紺のクロスには、ライトブルーよりも黒のクロスを選ぶ。
クロスに寸法AとBをうつす。クロスの目は本の背と平行に通っていることを必ず確認する。
オリジナルの表紙クロスをめくり上げる(折り目は付けないこと)。露出した芯材にPVAを塗る。ジョイント部分には決して塗らないこと。

PVAを塗った芯材に新しい表紙クロスを表面を上にしてのせる。ヘラでクロスを芯材になでつける。オリジナルのクロスには決して貼らないこと。

ヘラの脇でクロスをジョイント部分になじませる。ワックスペーパーを新しいクロスにのせて当て紙にするのも良い。

ジョイント部分に棒を添えて重しをのせる。PVAが安定するまで、少なくとも10分は乾燥させる。
ジョイントの幅の採寸
PVAが安定したら、ジョイントの幅を以下のいずれかの方法で測る。これにより新しい背表紙の位置も確定する。
方法1:
作業台に新しい背表紙が広がるように本を置く。

ジョイントに添えた棒をそっと押し付ける。
本体の背の肩の位置のクロスに印を付ける。

天地とも同様に印を付ける。
方法2:
ジョイントの幅は本を立たせた状態でも測ることができる。
作業台の角などで本体を支え、新しいクロスをはみ出して立たせる。

新しい背表紙を背に巻きつけ、指でクロスをジョイントに押し付ける。
クロスに肩の位置の印を付ける。天地とも同様に印を付ける。

ヤレ紙に背のインレイをのせ、接着剤を塗る。
インレイが表紙芯材の天地に揃っているか確認し、肩の印にならってインレイを新しい背表紙の裏面にのせる。

新しい背表紙の貼り付け
背のインレイをワックスペーパーとろ紙で覆い、重しをのせて乾燥させる。
背のインレイが乾いたら、オリジナルの表紙クロスの上から新しいクロスを本体にそっと巻きつけてみる。
ヘラの脇を使い、ヒンジ部分にクロスをなじませて、ミゾの印をつける。
オリジナルの表紙クロスを持ち上げ、新しい背表紙クロスを芯材にのせる。
新しい背表紙クロスの幅が広すぎる場合は、切り落として調節する。

新しい背表紙クロスを持ち上げ、露出している芯材のすみずみまでPVAを塗る。
ジョイント部分にPVAが付かないこと、オリジナルのクロスに貼らないことに注意する。

新しい背表紙クロスを貼りつけ、ヘラの脇でヒンジ部分になじませる。
必要であればクロスをワックスペーパーで保護する。
重しをのせて10分以上乾燥させ、糊を落ち着かせる。
新しい背表紙クロスの天地が表紙芯材よりも1.5cm以上長ければ、切り落とす。
巻き込みやすくするため、角を三角に切り落としておく。

別の本を重ねたものや、作業台の角に本を据えて地側の背表紙クロスの巻きこみ部分を逃がしておく。
巻き込みを、まず片方の表紙に、次に背へ、最後にもう片方の表紙に挿入する。

巻き込みが挿入できたら、芯材と背の端を指でなじませておく。
本の背を作業台に寝かせ、巻き込み箇所を確認する。新しい背表紙クロスの両肩は芯材に揃い、背表紙クロスは作業台と平行であるはずである。

作業台と新しい背表紙クロスの間に隙間がある場合や、クロスがたわんでいる場合、巻き込みが正確でないので、調整が必要である。
巻き込みが正確に収まったら、背を下にして本を寝かせ、ヘラで巻き込みをクセづける。

巻き込みを開き、PVAを塗り、巻き込みを貼り付ける。
ヘラで巻き込みをなじませる。
背表紙クロスの収まりを再確認し、接着剤が乾燥する前に隙間やたわみを調節する。
余分な接着剤を取り除き、新しい背表紙クロスをヘラでヒンジになじませる。
見返しに接着剤が付かないようヒンジの内側にワックスペーパーを当て、ジョイント部分に棒を添え、重しをのせて乾燥させる。
10分以上乾燥させた後、背表紙の反対側も同様の工程を行う。
持ち上げた平表紙側のクロスに接着材を塗り、新しい背表紙クロスの上から貼りつける。

見返しの端と持ち上げたクロスの間に隙間があく場合がある。
ジョイント部分にワックスペーパーを当て、棒を添えて、重しをし、一晩寝かす。
新しい背表紙クロスにオリジナルの背表紙をマウントする
オリジナルの背表紙クロスからできる限り、紙のインレイを剥がす。
インレイがクロスにしっかり接着している場合、無理には剥がさない。
図解は「Books : Their Care and Repair」から引用

定規とカッターで背表紙のほつれた端を切り落とす。文字や装飾を切り落とさないよう注意する。
図解は「Books : Their Care and Repair」から引用

オリジナルの背表紙を新しい背表紙に当て、収まりを確認する。

本の開閉に支障が出ないよう、オリジナルの背表紙はヒンジ部分に掛からないようすること。幅が広過ぎる場合は切り落とす。

ヤレ紙にオリジナルの背表紙を裏面を上にしてのせ、PVAを塗る。
新しい背表紙クロスにオリジナルの背表紙を貼り付ける。
背表紙の天地が本体と揃っているよう、くれぐれも確認すること。
オリジナルの背表紙をワックスペーパーで覆い、ヘラでなじませる。
ワックスペーパーを覆ったまま、包帯できつめに本を巻きつける。包帯で背全体に均一の圧を与えることができる。
背が乾燥したら、すみずみまで接着できているか確認する。

