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スタッフのチカラ

『館内で本を修理する』(14)

『館内で本を修理する』 (14)

アルテミス・ボナデア
(伊藤美樹 訳)   2009/06/05

Ⅵ.上級修理 続き

D. 損傷または外れた葉、丁、括の再接合と修理

葉(両面テキストの1枚または1ページのもの)、丁(1枚を折り丁にした2葉のもの)と、括(通常、丁を4つ束ねたもの)は解体し、それぞれいくつかの方法で修理ができる。以下の方法を一通り読み、それぞれの資料にふさわしい処置を選ぶ。

1. 括の修理

本体に括を組み込む前に、全ての損傷箇所を修理しておく。損傷箇所の修理については、前述の「Ⅳ. 簡易修理 D. 紙の破れと欠損」の項を参考にする。

・丁の折り目の綴じ穴を観察する。綴じ穴が広がっている場合や、綴じ穴と綴じ穴の間が破れている場合は、丁を本体に組み込む前に丁を修理する。

・綴じ穴の1つ2つが損傷している場合や、丁の折り目の一部のみが破れている場合は、綴じに差し支えのある箇所のみ修理する。

・必ずしも括の各丁を修理する必要は無い。括の真ん中と外側の丁が特に損傷しやすいので、それらの丁のみを修理するほうが、手間も省け、修理に使う和紙による厚みの軽減にもなる。

・括の丁のほとんどに損傷がある場合は、各丁を修理するほうが良い。

・丁の折り目部分を修理したものは、あらたにつける折り目が鋭く、オリジナルの括の丸みのある折り目となじみにくい。折り目部分を利用して丁を修理すると、折り目をなじませやすい。


括の真ん中の丁の修理
括の真ん中の丁が損傷している場合は、丁の内側で修理するほうが良い。その他の丁は、丁の外側で修理すると良い。

和紙のちぎり方、和紙を糊で貼る方法については、前述の「Ⅲ. 本の修復道具と技術 B. 本の修理方法 1. 修復用和紙をちぎる」を参照するとよい。括の損傷具合によって、修補用の和紙の幅を決める。

ワックスペーパーの上に括の真ん中の丁を広げる。

和紙を丁の真ん中に貼る

丁の折り目に沿って、ワックスペーパーを当てる。

ワックスペーパーを当てる

丁をそっと閉じる。

丁を閉じる

ろ紙ではさみ、重しをのせて乾燥させる。

括の他の丁に修理が必要ない場合は、この真ん中の丁の外側にそれらの丁を重ね、後述の「3. 一部あるいは全括が外れた括の再接合」の項を参照し、本体へ括を再接合する。

真ん中の丁と全ての他の丁、あるいはいくつかの丁に修理が必要な場合は、以下の解説を参考にすると良い。


真ん中以外の丁や、外側の丁の修理
真ん中以外の丁に修理が必要な場合、真ん中の丁の外側にその他の丁を重ねる。ページの順番を間違えないよう注意する。

丁が2枚に分裂している場合、2枚を正確な位置に揃え、前小口側をクリップで留める。

クリップで留める

丁の天地の長さとノド側の損傷を覆う幅にとった和紙の短冊を用意する。

和紙の短冊に糊を塗る。

和紙の短冊を丁のノド側に鞍型に貼る。

和紙を鞍型に貼る

括の真ん中の丁に限っては、必ず丁の内側で修理し、それ以外の丁は丁の外側で鞍型に修理する。

括の真ん中以外は外側でなおす

修理した丁をワックスペーパーではさみ、乾燥させる。

修理が必要な丁の全てを同様に処置する。


2. 単独の葉(折丁でない)の接着
単独の葉(折丁でない)は、本体の構造に応じてヒンジングやティッピングの方法で接着する。

糸綴じの本体の各葉は折丁の片方にあたるので、常に折丁のもう片方がしっかり本体と接着しているか確認すること。片方が外れている場合、必ず両方の葉を修理する必要がある。

丁の両方が外れているものは、ヒンジングやティッピングの方法、あるいは次に取り上げる方法で処置する。


3. 一部または全てが外れた括の接合
方法1
括の真ん中を探り、綴じ糸を切り、本紙を外す。

外れてしまう葉があれば、和紙を用いノド側でなおして括をこしらえる。錯簡に注意する。

括の天地の長さと2cm~2.5cm幅にとった和紙の短冊を用意する。

和紙の短冊を括の外側に覆う(ここではまだ糊をつけない)。細い糸で3~5穴のパンフレット綴じで括と和紙を綴じる。

和紙の短冊の片側に糊を塗る。

本体にその括を収め、糊を塗った和紙の短冊を本体のノド側に貼り、本を閉じて乾燥させる。

糊付けした片側の和紙の短冊が乾燥したら、もう片方も同様に本体に貼る。

再接合する括がぴったり元通り本体に収まらない場合もある。括が本体からはみ出す場合は、「Ⅴ. 中級修理 B. 外れた本紙のヒンジング・イン」の項の方法でトリミングしてもよい。

方法2
本体をくるみ直す場合など、本体の背が開放されている際は、外れた括を本体に綴じつけ直すことができる。

外れた括と、その括の前後の括に綴じ穴をあける。後述のリンクステッチでこれらの3括を背のライニングと一緒に綴じる。

綴じつけなおした括がぴったり本体に収まらない場合は、前述同様の方法でトリミングしてもよい。


E. 見返しの処置と修理
本体の最初と最後のページを見返し(エンドペーパー)という。見返しの主な機能は汚れや損傷から本体を守ることである一方、装飾性や情報を備えたものもある。

見返し紙は2~4葉で構成されていることが多い;表紙芯材に貼る見返しが効き紙、貼らない見返しが遊び紙である。

商業的に製本された本の多くには2枚の見返しが用いられ、本体に糸で綴じるか接着剤で接着されている。

見返しの処置は、その見返しの状態や備えている情報に応じて対応する。

遊び紙も効き紙も健全であれば、再利用する。くるみ直しをする場合、見返しは切り離すことがある。新しい寒冷紗を効き紙の下にもぐらせ、効き紙と遊び紙の間にできた隙間を和紙で覆う。

見返しに損傷があり修理が必要な場合は、前述の「Ⅳ. 簡易修理 D. 紙の破れと欠損」の項の解説を参考にするとよい。

見返しを代替する場合、オリジナルの効き紙をできるだけ除去する。バーコードや貸し出しカードポケットも除去する。表紙芯材の内側にはヤスリをかける等して滑らかな表面にしておく。


1. ひと続き(ダブルスプレッド)の見返しの構造
前後の見返しに連続した情報や図柄のある場合、それぞれの見返しの遊び紙は1枚の完全な見返しの片側にあたる。そのあそび紙は、たいてい本体の先頭ページにヒンジ部分で接着されている。

効き紙と遊び紙を分離する。ヒンジ部の紙力が弱っている場合、遊び紙をそっと引っ張って効き紙から切り離すことができる。ヒンジ部分が健全であれば、カッターなどで切り離す。

2枚の見返し紙を正確な位置に並べる。見返しが重なり合う場合は余分な分量をトリミングする。隙間ができる場合は和紙で覆う。2枚の見返しをヒンジでつなぎ、後述の「F. ペーパーバックとリング製本 4.本体の綴じ」の項に解説のあるリンクステッチでこの見返しを本体に接合する。見返しは少なくとも隣り合う3括と綴じ合わせるのがよい。


2. オリジナルの見返しのコピーをとる
損傷した見返しはコピーをとり、本体に綴じ付けてもよい。効き紙と遊び紙を一続きにコピーしてもよいし、それぞれ個々にコピーしてヒンジ部分でつなげてもよい。白黒コピーでは情報に支障が出る地図などの見返しの場合は、カラーコピーにするのもよい。

コピーの画質はオリジナルの印刷に応じて対応する。濃度や画像のイメージを得るのは難しい場合もあるが、線描のイメージは得やすい。濃度を明るめに設定することで、画質が良くなる場合もある。

代替のコピー用紙は無酸紙を選ぶ。古い資料には馴染みの良いように、クリームや生成といった色の紙を選ぶのも良い。

コピ用紙の目(繊維の並び)は、本の背と平行に通っているよう確認する。コピー機に見返しをのせ、コピー機のフタを閉じる。

見返しが大きい際は、効き紙と遊び紙を分けてコピーし、ヒンジ部分で貼り合わせる。

貼り合わせた見返しが乾燥したら、本体の大きさに合わせてトリミングする。

後述のリンクステッチで本体にコピーした見返しを綴じ付ける。少なくとも隣り合う3括と綴じ合わせるのがよい。


3. 効き紙を持ち上げる
新しい見返しの構造やコピーにより、見返しの情報を完全に得られない際には、効き紙を物理的に表紙から持ち上げるか、水に浸して剥がす方法もある。

スパチュラやカッターで表紙芯材から遊び紙をそっと持ち上げる。この処置は効き紙の下の接着剤が乾燥しきっている場合や、表紙芯材への効き紙の貼り付きがそれほどきつくない場合に適当である。

表紙ごと水に浸して剥がすことのできる効き紙もある。この方法は、表紙芯材が本体から外れている場合に限る。

温めのお湯に見返しの付いた表紙を浸す。浸すのは1時間半以下にとどめる。接着剤がゆるみ、効き紙が剥がれてくる。お湯に浸す前に、万が一接着剤がゆるまなかった場合や、色泣きしてしまった場合のため、効き紙のコピーをとっておく。

不織布とろ紙に挟んで乾燥させる。


4. 見返しの取替え
片方もしくは両方の見返しが損傷しており、特別な情報の載った見返しではない場合、新たな見返しに取り替える方が手間がかからない。本体への馴染みを考慮して、オフホワイトの紙を用いるとよい。

本体は必ずしも正確な長方形ではないことが多いので、見返しは本体に接合した後にトリミングするとよい。

見返しに折り目をつけ、本体にあてる。

本体の大きさに合わせて、印をつける。

本体と見返しを接合し、小口側をトリミングする。見返しの接合とトリミングは片方ずつ行う。


5. 見返しの接合
見返しと本体の接合方法はいくつかある。綴じ付けとティッピングで本体と接合する方法が一般的である。


見返しを本体に綴じ付ける
後述のリンクステッチを用いて見返しと本体を接合する。少なくとも隣り合う3つの括と綴じ合わせるとよい。


本体に見返しをティッピングする
マスキングをし、5mmほどの幅に接着剤を塗る。見返しを本体に揃えて貼り、ヘラで馴染ませ、重しをして乾燥させる。


本体に合わせて見返しをトリミングする
本体に見返しが貼り付けられたら、見返しに本紙をかぶせる。

本紙の小口側の端の見返しと本紙に間に定規をあてる。

本紙の端に定規をあてる

定規をしっかり押さえ、よく切れるカッターで見返しをトリミングする。他の小口も同様にトリミングする。

見返しをトリミングする


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