『館内で本を修理する』 (18)
アルテミス・ボナデア
(伊藤美樹 訳) 2009/09/24
Ⅶ. 図書館蔵書の管理 続き
パンフレット・バインダーは、ハードカバーではない小冊子を保護する際に用いられる。2枚の薄いボードをクロスのヒンジで接合して作られている。束の薄い資料は1本のヒンジのもの、束の厚めの資料には2本の平行なヒンジのものに背を収めて使用する。
図書館資料をパンフレット・バインダーに接合する方法として、粘着テープで資料の表と裏の表紙を接合させる方法と、糸やステイプルでパンフレット・バインダーと冊子を綴じ合わせる方法がある。
接着テープを利用したパンフレット・バインダーの接合の場合、資料に問題を引き起こすことがある:
●使用されている接着剤に安定性がないため、退色やとりかえしのつかないシミの原因を引き起こしてしまう。
●接着剤やテープは乾燥しきって硬くなり、冊子の開閉の妨げになることがある。さらには、粘着テープの端に沿って資料の表紙に折りクセがつき、いずれその線に沿って破れてしまう。
●資料は表裏の表紙をパンフレット・バインダーに接着されるだけで、冊子の本体の支えにはならない。表紙が接着されているだけなので、閲覧者の利用や重力で冊子の本体が外れる恐れがある。本体が表紙から外れる時には、欠損や損傷が考えられる。
●厚手の資料の場合、平の糸綴じや平のステイプル綴じ、または接着剤で接合されていることが多い。その場合、パンフレット・バインダーを使用しなくとも、厚手の平綴じ資料を平らに開くのは困難なため、複製を準備しておくことが重要である。またこうした資料をパンフレット・バインダーに収めると、ヒンジが狭いため、よりいっそう開きに支障がでる。
蔵書保存計画の点からパンフレット・バインダーが重要である場合、有効に利用する方法がいくつかある。
●薄い資料(1~3括程度)の場合、パンフレット・バインダーと直接、ステイプルや糸で中綴じすることが可能であり、表紙だけでなく本体をもれなく支えられる。また、粘着テープを使わず、ステイプルや糸でパンフレット・バインダーと直接、3穴や5穴で綴じ合わせるのも良い。その際、粘着テープを除去してしまってもよい。
●厚み1cm以下の平綴じ資料の場合、バインダーのヒンジに十分幅が取れるのであれば、ステイプルや糸で平綴じでパンフレット・バインダーと綴じ合わせることができる。この場合も表紙だけでなく、本体全体を支えられる。3穴や5穴のパンフレット綴じについては、後述の解説を参考にするとよい。
●小型の資料や取り扱いに注意が必要な資料は、封筒や後述の「I. 保存容器 2. 改良型4フラップ保存箱」に収めるのもよい。
くれぐれもオリジナルのステイプルを除去する際に資料を傷めないよう注意する。
図書館用品店では、さまざまな大きさのステイプルや、錆ないステイプル、中綴じや厚手の資料を綴じる際に使用するステイプラーを扱っている。
冊子をバインダーに接着するのに粘着テープが用いられている場合は、パンフレット・バインダーの地側の端に冊子の地を揃えると、本とバインダー全体が支えられ、本体が外れ落ちにくくなる。
資料が返却される度に、資料とバインダーの接着を確認すること。本体が外れかけている場合は、損傷や消失する前に修理する。
改良型パンフレット・バインダー
新しく改良されたパンフレット・バインダーはこの数年で市場に出回ってきており、各社の従来のバインダーも見直されてきている。
Gaylord社やDemco社からは、より安定した接着剤で冊子をバインダーに接着できる、アーカイバル・ボードを使用した商品が販売されている。
アーカイバル製品会社は、アクリル・コーティングされた丈夫なアーカイバル・ボードの裏表紙と、透明なポリエステル製のおもて表紙でできている。表紙が透明で本体が見えるのでラベルが不要である。資料は糸やステイプルでバインダーと綴じられ、ヒンジの幅が4cmほどあるので、本の開閉やコピーにも支障ない。
1.3穴と5>穴のパンフレット綴じ
丁の束や1括あるいは多括の1cm以下の束のパンフレットや小冊子の資料は、パンフレット・バインダーに糸やステイプルで綴じ合わせることができる。
パンフレット・バインダーに丁や括を綴じ合わせる際に、3穴か5穴のパンフレット・ステッチが採用される。このステッチは、中綴じ資料にも平綴じの1cm以下の束の資料にも有効である。
3穴のステッチは、天地の長さが18cm以下の薄手の資料に適当である。それより大きく重い資料には、5穴ステッチが適当である。判断が悩ましい場合は、5穴ステッチで対応するとよい。

冊子の大きさや穴の数にかかわらず、綴じはじめと終わり(綴じ穴1と3あるいは1と5)は冊子の天地から2cm以上間隔をあけないようにし、真ん中の綴じ穴は(綴じ穴2や3)冊子の中央であること。
この綴じ穴の位置が、冊子全体を支えるのに有効と考えられる。
前述の「Ⅶ. 図書館蔵書の管理 E. ステイプルとクリップの除去」の処置のあと、綴じ直しにオリジナルのステイプルの穴を用いることができれば、綴じ穴を増やさずに済む。
a. パンフレット資料に綴じ穴をあける
中綴じの資料
中綴じの資料には、パンチング・ジグや括用パンチング台が便利である。
括用パンチング台を利用しない場合や、本紙が外れ気味の場合、穴あけの際にブルドッグ・クリップでパンチング・ジグに固定させておくとよい。
冊子やパンフレット・バインダーに同時に綴じ穴をあけるには、バインダーに冊子をのせ、ブルドッグ・クリップで留めておく。
ステイプルの平綴じや丁仕立てのもの
注意:パンフレット資料のなかには、括で構成され、背に沿ってステイプルで平綴じされているものもある。その場合、ステイプルを除去し、括をリンク・ステッチで綴じ直すと、本体を平らに開くことができて有効である。
丁や平綴じ資料に綴じ穴をあけるには、冊子をバインダーに据えてブルドッグ・クリップで固定しておく。

千枚通しで、できるだけ背に近いところに穴をあける。パンフレット・バインダーに安全に収まる十分な間隔を、背側の端と綴じ穴のあいだにとること。
千枚通しで穴をあけにくい場合は、千枚通しをひねりながら針を下していく。力の入れ過ぎも良くない。
手で穴をあける際は、工芸用品店で扱っている2.5cm程度の発砲スチロールを用いると便利である。
手で穴をあけるには厚過ぎる資料の場合、ドリルを用いるのもよい。ドリルを使う場合は本紙の表面に傷を付けないよう注意する。
資料にドリルで穴をあけるには、綴じ針と同じくらいの細いドリル針を選ぶ。細いドリル針は、手芸店やアクセサリー用品店で扱っている。
標準のドリルでは細いドリル針を固定できない場合がある。

ドリル針の固定ツメを閉じた時に、3つのツメが隙間なく閉じているか確認する。隙間があくものでは、細いドリル針に対応できない。

Dremel社では、細いドリル針を固定できる小型ドリルを扱っている。
自動車用工具のドリルには、回転速度が固定のものや可変速度のものなど、多数ある。275型の固定速度ドリルにはスピードを調節できるフット・コントローラー(ミシンのフット・コントローラーに似ている)を繋ぐことができるので、足もとでドリルの操作ができ、両手が使える。

Dremel社ではドリル固定台も扱っている。ドリルをレバーで上げ下げできる。使用の際は、必ず取扱い説明書を読んで従い、安全に作業する。

b. 3穴パンフレット綴じ
天地の長さが18cm以下の薄手の資料には、3穴ステッチで対応できる。これより大きい重い資料には、5穴ステッチで対応する。
3穴ステッチの図解では、1括のパンフレットで解説している。丁仕立てのものや平綴じのものにも、同様の綴じ方で対応できる。
多括の資料をパンフレット・バインダーに綴じつける方法は、後述の「d. バインダーに多括のパンフレットを閉じ付ける」の項を参照。
綴じ穴のあけ方については前述の項を参考にするとよい。
綴じ糸は本の天地の長さの2倍に10~15cm足した長さを用意する。蜜蝋や針に糸を留める方法については、「Ⅱ. 基本情報 E. 麻糸」の項を参照のこと。
パンフレットの内側から綴じ始める。綴じ穴2に針を通す。

パンフレットの内側に5cm残して、糸を外側に引く。
パンフレットの外側から綴じ穴1に針を通す。

綴じ穴2に残した糸を引いてしまわないよう注意して、綴じ穴1に糸を通す。
パンフレットの内側から、綴じ穴2をとばして、綴じ穴3へ進む。

綴じ穴3に針を通し、パンフレットの外側に糸を引く。
本紙を破らないよう綴じ方向に糸をそっと引っ張る。
パンフレットの外側から綴じ穴2に戻り、綴じ穴2に針を通す。

綴じ穴1から3に渡っている綴じ糸を2本の糸端でまたがせる。

すでに綴じ穴2に通っている糸に針を刺してしまわないよう注意する。糸に刺してしまうと、綴じ終わりに糸を締める際、引きにくくなったり引けなくなったりしてしまう。
必ず綴じ方向に糸を引き、緩みのないようにし、2本の糸端をスクエア・ノットで結ぶ。1cm強の糸を残して糸を切る。
c. 5穴パンフレット綴じ
5穴のパンフレット綴じの図解でも、1括のパンフレットで解説している。同様の綴じ方で丁仕立てのものも綴じられる。
多括の資料をパンフレット・バインダーに綴じ合わせる方法は後述の項を参照のこと。
綴じ穴のあけ方については前述の項を参考にするとよい。
綴じ糸は本の天地の長さの2倍に10~15cm足した長さを用意する。蜜蝋や針に糸を留める方法については、「Ⅱ. 基本情報 E. 麻糸」の項を参照のこと。
パンフレットの内側から綴じ始める。綴じ穴3に針を通し、パンフレットの内側に5cm糸を残して、外側に糸を引く。

パンフレットの外側から綴じ穴2に進み、綴じ穴2に針を通す。

綴じ穴2の内側へ糸を引く。綴じ穴3に残した糸を引いてしまわないよう注意する。
パンフレットの内側から綴じ穴1に針を通し、外側へ糸を通す。本紙を破らないよう、必ず綴じ方向に糸を引く。

パンフレットの外側から綴じ穴2に針を通し、内側へ糸を引く。

パンフレットの内側で、綴じ穴3をとばして、綴じ穴4に進む。
綴じ穴4に針を通し、外側へ糸を通す。

パンフレットの外側から綴じ穴5に進む。
綴じ穴5に針を通し、内側に糸を通す。糸はそっと引き、必ず綴じ方向に引く。

パンフレットの内側から綴じ穴4に糸を通し、外側へ糸を引く。

外側から綴じ穴3に戻り、綴じ穴3に針を通す。

すでに綴じ穴3に通っている糸に針を刺してしまわないよう注意する。綴じ穴1から5に渡っている綴じ糸を2本の糸端でまたがせる。

糸に刺してしまうと、綴じ終わりに糸を締める際、引きにくくなったり引けなくなったりしてしまう。
必ず綴じ方向に糸を引き、緩みのないようにし、2本の糸端をスクエア・ノットで結ぶ。1cm強の糸を残して糸を切る。
d. パンフレット・バインダーに多括の資料を綴じ合わせる
平の糸綴じやステイプル綴じの多括のパンフレットは、パンチやドリルで穴をあけ、上記の3穴あるいは5穴のパンフレット綴じでパンフレット・バインダーに綴じ合わされる。また、ステイプルは除去され、括をそれぞれ綴じることもできる。
中綴じの多括のパンフレットは、資料を平らに開かせるため、2本目の綴じでパンフレット・バインダーに綴じ合わせられる。
オリジナルの綴じが健全であるか確認する。綴じ直しが必要な場合は、バインダーと接合する前に前述のリンク・ステッチを用いる。
3穴や5穴のパンフレット綴じでバインダーに綴じ合わせた多括のパンフレットを接合する。綴じ糸を留めるため、綴じたそれぞれの括を結ぶ。
2括のパンフレット:各括に穴をあけてバインターに綴じ合わせる。
3~4括のパンフレット:1括目と3括目に穴をあけてバインダーに綴じ合わせる。
5括のパンフレット:1括目、3括目、5括目に穴をあけてバインダーに綴じ合わせる。

