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ISOが図書館・文書館資料の保管条件を発表

ISOが図書館・文書館資料の保管条件を発表
温湿度では推奨値の幅は大きいが、一日の振れ幅はごく小さく

斉藤隆夫(JAST) 2003/10/25

 

資料保存の分野では1990年代の後半から、傷んだ資料を治すのではなく、資料を傷まないようにすることを優先させる予防的な手当て(preventive conservation)という考え方が浸透してきた。とりわけ図書館や文書館における書庫等の保管環境を整備してゆくことは、もっとも効果的な予防策とし認知されるようになっている。こうした動きを反映するように ISO(国際標準化機構)は9月15日付けで ISO 11799 『図書館・文書館資料の保管条件』(Document storage requirements for archive and library materials)を発表した。

館の立地や建物から始まり、展示の際の照明等も含む、原資料の保存に影響を与える広い範囲の因子を対象にしているのが特徴である。また、大気汚染物質の最大許容値と、推奨する温湿度の値については付属書として提示している。特に紙媒体資料を対象にした温湿度は、まず「最高位の保存を求める」資料と、日常的に良く利用される資料とを分けてそれぞれ設定されていることと、推奨値の最小と最大の幅が大きく(最高位の保存を求める資料でも16℃、15%もある)、この間に収まるならば良いとしているが、一日の間の振れ幅については極めて小さい(±1℃、±3%)のが目を引く。

章の「はじめに」では、「非紙媒体資料も含む多用な図書館・文書館資料は、理想的にはそれぞれの媒体の構成材料に適した別々の保管条件が必要になる。また、現用の資料は、長期/永久保存の対象になる資料とは異なった保管条件が必要かもしれない。この規格は後者すなわち長期保存資料を対象にしているが、そういう資料であっても現物が利用されるということがあるので、妥協せざるをえないこともあろう。さらに、国ごとの気候条件や経済状況が違うので長期保存のための理想的な環境を作ったり維持するのは難しいこともあろう。この規格は一般的な、国をまたいだ共通のガイダンスを示すものであり、恒久保管施設を新たに建設したり、他の目的に使われていた施設を転用したり、すでに使っている施設を長期保存向けに手直ししたりといった場合の目安になる一般原則を示す」としている。

緒言
はじめに
1. 対象範囲
2. 参照する他の規格
3. 用語と定義
4. 建物の立地条件 (自然災害や公害を考慮して等)
5. 建物の構造や材料(外からの影響を受けにくい構造や材料を等)
6. 設備及び備品(温湿度の急速な変化を避ける等)
7. 利用時(清掃、箱などで保護、配架の注意等)
8. 災害対策計画(建物の構造の把握、連絡先等)
9. 展示(照明の注意等)

 

付属書A(参考) : 大気汚染物の最大許容値

大気汚染物質の種類 ppb ug/m3
二酸化硫黄 SO2 5~10 -
窒素酸化物 NOx 5~10 -
オゾン O3 5~10 -
酢酸 CH3COOH < 4 -
ホルムアルデヒド HCHO < 4 -
塵埃(カビの胞子を含む) - 50

 

付属書B(参考): 図書館・文書館資料の長期保存のために推奨する環境条件

ごく一般的に言えば、温度が低くなればなるほど、または/そして、湿度が低くなればなるほど、資料の寿命は長くなるのだが、一方で他の劣化要因が問題になる。温度が露点以下になれば結露するし、相対湿度が下がれば基材は脆くなる。以下の表の数値は巻末にあげた参考文献から採ったものだが、適用範囲や異なった目的のための違う保管環境についてはこれらの参考文献にあたることを勧めたい。紙媒体、皮紙、音盤、ある種の磁気媒体については国際規格はないので、これらの数値も参考文献から採った。他の文献では異なった条件を提示しているかもしれない。いずれの場合においても、またあらゆる媒体の種類においても、図書館・文書館は温度と湿度を低く保つ上での財政的な費用を勘案しながら環境基準を選ぶしかない。

また、下記の数値は、利用頻度の高い資料を対象にしていない。寿命を最大限に保つことと、最大限に利用してもらうことは異なった二つの選択肢であり、多くの場合は背反する。下表で「よく利用される紙媒体資料」のための数値が例外的なのは、紙の寿命を延ばすことよりも、利用の頻度を考慮して紙の柔軟性を保つことを優先したためだ。紙が多くの水分を含んでいれば柔らかくなる。しかし化学的な劣化は速い。【以上は原本の抄訳】

【以下の表では紙媒体、パーチメント・革、写真乾板、紙焼き写真しかあげていないが、原本では、以下の他に、写真フィルム、写真乾板、マイクロフィルム、音盤、磁気テープ、光ディスクが含まれる---CAP注】

対象資料 温度 ℃ 相対湿度 %
最低 最高 一日の振れ幅の許容値 最低 最高 一日の振れ幅の許容値
紙媒体で、最高位の保存を求める 2 18 ±1 30 45 ±3
紙媒体で、職員が出納し、よく利用される 14 18 ±1 35 50 ±3
パーチメント、革 2 18 ±1 50 60 ±3
モノクロ紙焼き写真 18 ±2 30 50 ±5
カラー紙焼き写真 2 ±2 30 40 ±5

 

付属書C(参考): 災害予防
参考文献

ISO ISO 11799:2003 Information and documentation -- Document storage requirements for archive and library materials は以下の ISO のホームページからPDF で購入できる(価格=71 スイスフラン)。
http://www.iso.ch/iso/en/CatalogueDetailPage.CatalogueDetail?CSNUMBER=38536

 

文責:斉藤隆夫(JAST)

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