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    -ノーフォーク公文書館(NRO)の例-」講演の参加報告

スタッフのチカラ

内田夕貴「英国公的機関のアーカイブコンサベーション部門が果たす教育的役割
-ノーフォーク公文書館(NRO)の例-」講演の参加報告

2011年02月15日蜂谷伊代

 

日本図書館協会資料保存委員会資料保存セミナー「英国公的機関のアーカイブコンサベーション部門が果たす教育的役割?ノーフォーク公文書館(NRO)の例?」が1月21日(金)に同協会(東京都中央区新川)で開催された。報告者は英国ノーフォーク公文書館(NRO)のペーパーコンサバターである内田夕貴氏。

内田氏が所属しているコンサベーション部門では、大人から子供までの一般の利用客から、コンサバターを目指す学生、内部の職員、外部の文化機関職員や研究者といったような、幅広い年代や職業の人々を対象に教育が行われている。本講演では、コンサベーション部門が果たす教育的役割とその具体的な活動内容が報告された。また、英国の性格が色濃く表れているのが、アーカイブ・サービスに対する「ガイドライン・基準」と、それが守られているかどうかを査定する「自己評価システム」である。このシステムが、コンサベーション部門における教育活動、ひいてはNROの運営自体にどのような影響力があるのか、様々な例を通して解説された。海外のアーカイブに正規のコンサバターとして奉職している内田氏の講演は、日頃感じている率直な意見が聞けると共に、英国の公文書館の現状を知る貴重な機会であった。また、講演会の参加者にとっても刺激となる内容であったことは、活発な質疑応答からもうかがえた。より多くの資料保存関係者の方々の目に留まることを願って、講演の概要を以下に報告する。

なお、NROについては、内田氏による弊社HPへの寄稿もご参照頂きたい。
「アーカイブ資料の保存と利用のために―英国NROのコンサベーション部門の仕事とそのスタイル・人々―」 (2010)

1. ノーフォーク公文書館とは?

 

ノーフォーク公文書館(以下NRO)はノーフォーク州の州都、ノーリッチにあるアーカイブセンター内にある公文書館で、ノーフォーク唯一の公共アーカイブ・サービスを提供している。アーカイブセンターはノーフォーク州自治体(日本でいう県庁のような行政機関)で、その文化部の一部として運営され、ノーフォークの住民でなくても誰でもサービスを利用することができる。センターはNROとノーフォーク・サウンドアーカイブ、イーストアングリアン・フィルムアーカイブの3つの組織から成り、ノーフォーク州関連の歴史的に重要なアーカイブをできるだけ広く多くの人に公開するために収集・保存している。NROは現在約35人のスタッフで運営されており、専門分野の内訳はアーキビスト、閲覧室スタッフ、収蔵庫スタッフ、案内係、受付、コンサベーション、教育活動、事務・管理から成る。そのうちコンサベーションはフルタイムスタッフ2名、パートタイムスタッフ2名、そしてプリザベーション担当スタッフ1名からなる。ここでいうパートタイムスタッフとは、週37時間働くフルタイムスタッフに対してそれより短い時間働くスタッフのことで、いずれも正規雇用の職員である。いわゆるアルバイトや日本語でよく使われる“パート”のことではない。

 

<運営資金・財源>

運営の大部分は、中央政府がノーフォーク州自治体に託す税金と、ノーフォーク州自治体の州民税からまかなわれる。また、特別なプロジェクト(例えば特定のアーカイブの目録化のための資金や特定の展覧会のための資金、一部の特定の教育プロジェクト、アーカイブの購入資金など)は、英国内の文化事業の経済的サポートをする特殊法人・団体や個人企業からの助成金によって支えられることもあり、それら団体の主な例としては、ヘリテージ・ロッタリー・ファンド美術館・図書館・アーカイブ評議会(MLA)などが挙げられる。

ヘリテージ・ロッタリー・ファンドは、英国の文化遺産・文化事業を支えている英国最大の組織で、地方、地域、国の文化遺産に関わるさまざまなプロジェクトを援助する目的で、英国政府によって1994年に設立された。運営に関して政府の文化省から財務上の指導やポリシーに関する指導を受け、文化省を通じて運営の報告書を政府に提出するのだが、政府とは独立した公共組織として運営されている。そのため、どのプロジェクトを支援するかなどの決定は政府には一切介入されない。財源はロッタリーやロトと呼ばれる国営宝くじの売上金の28%で、年間205ミリオンポンド(約300億円)をさまざまな文化プロジェクトに助成している。それとは別のメモリアルファンドという枠では、緊急に救助対策が必要な文化遺産・文化事業ということに特化して年間10ミリオンポンド(15億円)の助成を行っている。

 

2. ノーフォーク公文書館の評価

英国という国の性質として、例えばアーカイブ・サービスについて言うならば、「良しとする基準」「理想的な公共サービスの基準」「それを維持するためのルール」であふれている。また、そのガイドライン・基準が実際に守られつつ、より良いサービスを実現できているかどうかを査定する「評価システム」もあり、それらはサービスの存続にもかかわる絶対的な影響力を持っている。英国ではアーカイブや文化事業に関してだけでなく、本当に様々な分野で「ガイドライン・基準」、そしてそれらを元にどのような運営体制をとっているのかを査定する「評価システム」という流れを見ることができる。

実際この「ガイドライン・基準」、そして「評価システム」という流れに振り回され、良い点を取ること自体が目的となっているような錯覚をうけ、「本来何のためのアーカイブ・サービスを行っているのか」と忘れそうになることもある。それだけこの流れが絶対的なものだということである。善悪の観念が明確であるためその枠に外れるようなことはできず、レベルは高くとも国全体で画一的なサービスになってしまうのかというと、そうでもない。そのあたりは英国人のもつ柔軟性と、“きちんと説明できれば例外的なことも可能である”という性格と、評価システムとのバランスが取れている。ひとつ絶対的な基準があった上で様々なサービスが実現されている、というのが現況であろう。

では、NROはどのような評価システムに査定されているのか。アーカイブ・サービス全体に対しては、英国国立公文書館(以下TNA)による評価システムにおいて最高値の星4つを獲得しており、また、コレクションに対しては、美術館・図書館・アーカイブ評議会(以下MLA)による「国際的に傑出して重要である」という認定を受けている。このようにNROが評価を受けるということは、アーカイブ・サービスを運営していくための価値となる。ではその評価システムとは一体何なのか、何のために存在して、アーカイブ・サービス運営において実際どのような意味をなすのか。

 

<英国国立公文書館による自己評価システム>

さまざまな試行錯誤を経て、地方の公共アーカイブ・サービスを対象に2007年から本格的に始まったシステムで、サービスの質全体を査定することを目的としている(The National Archives’ self-assessment programme)。参加側にとっては、この評価システムに参加することで自分たちのアーカイブ・サービスが適切なものかどうかを知ることができる利点がある。このシステムに参加すること自体は強制ではないが、2008年の統計では112のアーカイブが参加した。

ちなみに「公共アーカイブ」とは、公共記録媒体(Public Record)を所有している機関、もしくはThe National Archives Standard for Record RepositoriesというTNAが定めた基準に同意している機関のことを指す。The National Archives Standard for Record Repositoriesは、アーカイブを所有する公共機関に「よき業務(good practice)」

の指針を与える目的で1990年に作られ、内容は組織の構成やファイナンス、職員、アーカイブの獲得、アクセス、保管と保存といった要素を含んでいる。アーカイブを所有する機関でこの基準を大幅に満たしていない場合、ある特定の種類の記録媒体を所有する権限はあっても、アーカイブや写本が所有される場所として通常は推薦できない。専門機関や個人の収集家らのケアの元でアーカイブを所有することに対する公式な認可はいらないのだが、必要に応じてこの基準を取り入れるようにと、TNAが促進している。

自己評価システムについて詳しく述べると、評価の対象となるのは、全般的な運営管理(資金調達を含む)、施設とセキュリティー、環境管理とプリザベーション、コンサベーション、資料の新たな獲得・コレクションの拡張、目録化、閲覧室や建物内その他の公共サービス、デジタル化とその他のオンラインサービス、対外活動や観衆の発展を促す仕事、教育活動といった、アーカイブ・サービスにおいて鍵となる基本的なエリアが網羅されている。項目ごとにTNAが定めた勧告に対してどれくらいの比率で当てはまるかということで、最終的に総合点が決まる。査定システムに参加したアーカイブのうち、総合点トップ10が星4つ、下から10が星1つを獲得できるシステムであり、「何点だから星いくつ」というわけではない。評価項目のうち、環境管理・プリザベーション、コンサベーションについての多数ある質問内容のうちのごく一部を例として以下に紹介する。

環境管理・プリザベーション

  • 収蔵庫の棚はすべて金属製のものか、それらが歪んだり錆びているところはないか
  • 高いところからアイテムを取り出すためにそこへアクセスするためのはしごや台は安全なものか
  • 棚に資料をつめすぎていないか、また、床やテーブルに積み重ねて置いていないか
  • 大型のアイテム(巻かれた地図やフラットのもの)は通路に飛び出していないか
  • すべてのアイテムは二次的な保護容器によって収納されているか(フォルダーやボックスなど)
  • (それとも)大部分のアイテムは保存箱に入っているが、保護されていない本や大型アイテムもあるという状態か、それともほとんどは保存箱に入っていない状態か
  • 新しく入ってきたアイテムに対する虫害検査や除去、カビに汚染されていないかのチェックは行っているか
  • Preservation Advisory Centreのプリザベーション調査に参加しているか、していれば調査報告書を提示しなさい
  • すべてのスタッフはアイテムに対する安全な取り扱いのトレーニングを受けているか
  • 目録を作るスタッフと閲覧室のスタッフはコンサベーションに関わる問題を同定できるようなトレーニングを受けているか
  • 初めて訪れた閲覧者に対してアイテムに対する安全な取り扱いのガイドラインを渡しているか
  • 閲覧室のスタッフは閲覧者がアイテムを正しく取り扱えるように手助けをするという役割をしているか

コンサベーション

  • どのようにコンサベーション施設にアクセスしているか:館内にある(in-house)/州の他の施設/他のアーカイブ・サービスの施設を使っている/個人のコンサバターと契約/やり方は適宜変える/コンサベーションは行っていない
  • もしコンサベーション施設があなたのところにあるなら、つぎの専門作業のうちコンサバターが行っているものはどれか:羊皮紙修復/リーフキャスティング/伝統的な紙修復/大型地図修復/製本/写真修復/展示のためのマウンティング/保存箱・フォルダー作り/その他/以上のことは何も当てはまらない
  • コンサベーション処置・過程を記録するシステムが整っているか
  • 一般の人の使用目的のためにオリジナルアイテム(原物)の代替物(コピーなど)を積極的に作るプログラムがあるか
  • 閲覧に出されるアイテムのどれくらいの割合が原物の代替物であるか
  • もしあなたのアーカイブがデジタルデータ(アイテム)を保管していたら、それはどのような方法で保管しているか
  • あなたのコンサベーションセクションでの優先順位をつけよ:収蔵庫の環境改善/アイテムのクリーニング/アイテムのパッキングとボクシング/介入的処置/原物の代替物作成

 

<美術館・図書館・アーカイブ評議会による認定事業>

NROが獲得している評価のもう一つ、コレクションに対する評価として、MLAによる「国際的に傑出して重要である」という認定を受けている。MLAというのは、様々なプロジェクトの手配や助成事業を通してイングランドの美術館・図書館・アーカイブに対して最良の運営を目指し、改善への支援をする組織のことである。この認定事業は1997年から始まったもので、イングランドの機関が所有する卓越したコレクションを、その質と重要性を基準に同定することで、それらを国の文化・歴史遺産の象徴となるようにする。MLAから「傑出したコレクションを所有している」と認定された機関は重要なコレクションをケアしているということにもなり、高レベルのサービスが期待される。できる限りそのコレクションへのアクセスを可能にしたり、専門知識を共有したり、アドバイスを与えたり、アイテムを貸し与えたりするなどして、他の組織・機関を助けることでその地域でのリーダーシップを取るように求められる。MLAは、その支援を通して各地域社会の文化事業全体の基準・レベルを上げようという方針のもとに活動しているため、例えばNROの場合でいうと、東イングランド代表となれるような優良な文化機関を認定し、そこを中心にその機関がもつ専門知識や実際的な能力を同じ地域の機関とシェアしてレベルをあげようという目的がある。そのための事業の一つがこのコレクション認定事業であり、他にも様々な企画を実施している。

ちなみに、認定されたコレクション自体に対する利点としては、

  • イングランドのどこにどのような重要なコレクションがあるのかを特定することができる
  • 国の文化遺産の放棄や廃棄から守る
  • 助成金などを合理的に獲得するための保証へと繋がる

また、認定されたコレクションを所有することの利点として、

  • そのコレクションを支えるための助成金を集める可能性が高まる
  • 国のレベルでその機関に対する印象の向上に繋がる、その機関のよい宣伝として機能する、つまり、どういう機関であるのかという認識を広めることになる

 

3. コンサベーション部門の仕事

 

先に挙げたように、NROにはコンサバターが4名おり、そのうちヘッド・オブ・コンサベーション2名(内田氏を含む)がフルタイム、あとの2名はパートタイムで1つのフルタイムのポジションを共有している。そして主にパッケージやマウント製作などのプリザベーションを担当するコンサベーション・テクニシャンが1名いる。それぞれの専門は本が2名、羊皮紙が1名となっている(内田氏自身は紙資料に加え、最近では羊皮紙処置にも携わっている)。各自の専門と実際のコンサベーション作業は絶対的なものではなく、それぞれ必要に応じて異なる種類のアイテムの処置も行っている。

コンサバターの主な仕事は以下の通り。

  1. ?NROのコレクションを物理的に利用可能な状態にすること。そのために必要な介入的コンサ ベーション処置を施す
  2. 資料のプリザベーション。収納箱内にパッケージやフェーズボックスを導入して資料の収納状 況を改善する
  3. 資料ハンドリングを含むプリザベーションの普及とそのための教育。これに関しては資料を保持している一般の人々に対しても、要求があれば、資料のプリザベーションに関する助言と、必要ならばコンサベーション処置に関する査定を行う
  4. 収蔵庫、展示ケース内、コンサベーションスタジオを中心とした館内の温湿度管理
  5. 年3回の展覧会のための準備
  6. コンサバターが行っている仕事に対する認識を促進するために訪れた人々に向けて説明をする。また様々なNROのプロモーション活動に参加してトークを提供する
  7. ICONSOA(ARA)などの専門機関と関わりを持ち、会議やセミナー、ワークショップに参加することで使用する材料や処置の方法に対する認識を高める

このうち、「3.資料ハンドリングを含むプリザベーションの普及とそのための教育」については次のような活動が行われている。

①内部職員に対する資料の扱い方の教育

②一般の利用者・外部関係者を対象とした資料の扱い方教育・プリザベーション教育

③プリザベーションの普及を目的としたアーカイブセンターのツアーの受け入れ

それぞれは以下の通りである。

 

<コンサベーション部門の教育的活動 その1>

①内部職員に対する資料の扱い方の教育

ボランティアを含めたすべてのNROの職員は、パッシブコンサベーション・ガイドラインという指針をもとに資料を取り扱う際に注意する点の説明をコンサバターから受け、資料のハンドリングと収納・マーキング、コピー、利用に不向きな資料の特定の仕方、それに対してどのような仕事をすべきかについての認識の促進と訓練を受ける。内部職員に対する資料の扱い方の教育はとても重要な活動である。例えばマーキング方法について述べると、資料番号が資料中のどこに記されるべきかを統一し、それを認識していることによって、必要な資料を特定、確認するための物理的プロセスはスムーズになる。些細なことであるが、各々のスタッフの正しい認識と日々の実践が、資料やそれを収納する箱を健全な状態に保つことにも繋がり、余計なコンサベーション処置を増加させないことにも繋がる。資料に物理的なダメージを与えてしまうのは、閲覧をする一般の人だけではなく、内部職員である場合も多いといえるわけで、こうして内部職員に対して資料のハンドリングを徹底することにより、コンサベーションの段階で資料を必要以上に頑丈に仕上げる必要もなくなるのである。

②一般の利用者・訪問者を対象とした資料の扱い方教育・プリザベーション教育

一般利用者向けに行われる場合と、プリザベーション教育を希望する外部機関の人々に対する場合とがある。後者について詳しく述べると、まず正しい知識と方向性をアドバイスし、何を優先すべきか、というところから始める。アドバイスを受ける側にとっても、地域社会の専門家・専門組織と関わりを持って、積極的にコミュニケーションを取っている、という証明をすることができる。そうすると「改善のために何をするべきか、何を買えば改善に繋がるのか具体的に分かっている」という証明にもなり、何かの折に説得力のある助成金の申請もでき、もしその助成金を得られれば、その限られた予算を正しく使うこともできる。ただアドバイスするだけでなく、手伝いを必要とする東イングランドの外部関係者・その機関が、現実的に先へと進むための手助けもまたコンサベーション部門の仕事である。

このような外部関係者に対するプリザベーション教育を行う際、外部から助成金が出る場合と出ない場合がある。昨年の実例で紹介すると、MLAが企画している、SHARE – Support, Help and Advice from Renaissance East?という、専門知識を東イングランド内でシェアして時間をともに過ごすことと、そのための企画に対して支援しているプログラムがあり、そこから助成金を得てプリザベーション教育を実現した。企画の種類やその規模によって助成額は異なり、昨年SAHREからNROのコンサベーション部門がうけた実際の金額でいえば8万円程の支援ではあった。金額の大きさに関わらず、支援を受けて企画を実施するということは、アドバイスをする側からみても将来的な利点がある。もちろん地域社会で同じ興味を持っている人々や機関との交流にもなるわけだが、このようなプログラムから支援を受けたということは、“支援を受けるだけの優れた企画である”、つまり、“優れた企画を行える優れたアーカイブ・サービスを提供する優れた文化機関である”ということの証明にも繋がる。

 

③プリザベーションの普及を目的としたアーカイブセンターのツアー

ツアーとはアーカイブセンターの舞台裏を利用者・訪問者に見せる機会で、ギャラリー、閲覧室、収蔵庫、コンサベーションスタジオなどを案内する。ツアーに参加する人々の年齢層もタイプも関心も様々で、地域の様々なグループや他の機関で働く人、同じ文化部へ新しく加わった職員、学生、研究者、教会関係者、どこに所属せずとも、アーカイブセンターを知りたい個人は誰でも参加できる。ツアーに同行して各所を案内するのは、主に教育部門の役割ではあるが、場合によっては専門的質問にコンサバターが答えたり、コンサベーションに関心のあるグループを受け入れるときはコンサバターがツアーを率いて案内することもある。説明される内容は、ツアーの種類や人々の関心、予定されている時間、その時コンサベーションスタジオで処置されているアイテムによっても臨機応変に変わる。プリザベーションの普及に関して、アーカイブセンターのツアーが担う役割はとても大きく、また、地域の人を中心に、私たちが何をやっているのか多くの人に伝えるための方法でもある。

 

<コンサベーション部門の教育的活動 その2>

The Society of Archivists Training Scheme ? Certificate in Archive Conservation (アーカイブコンサバターの資格制度)というのがあり、外から受け入れた人に対するコンサベーション教育がある。それはアーカイブコンサベーションに必要な実践的技術を、インストラクターが受講者に1対1で与えることを目的に1970年代始めから始まった。コースの内容は、理論、ペーパーコンサベーション、地図と大型のアイテム、シール、羊皮紙、本、保存科学からなる。このうち羊皮紙コンサベーションのトレーニングを提供するコンサベーションスタジオの1つがNROで、1人の訓練生につき4週間のトレーニングが行われる。

また、職業経験も行われており、

  • コンサベーションコースの現学生・卒業生の受け入れ・トレーニングの提供・研究テーマの相談(インターン)
  • 将来コンサバターを目指す人の受け入れ(ボランティア)
  • 中学生・高校生の職業経験

などの機会を与える場ともなっている。例えば15歳の学生を2週間受け入れて、コンサベーション部門で3日、アーキビストとの仕事で3日、閲覧室の仕事を3日手伝ってもらい、これらを通してアーカイブ・サービスとは何か知ってもらう機会を作る。このように、職業経験を与える場として機能するとはどういうとかというと、アーカイブ・サービスとは何か、コンサベーション活動とは何かを一般・地域社会に知らせる広報活動の一つとも言える。ただトレーニングを与えるという一方向的なものではない。

最後に付け加えるならば、TNAの評価システムのために学生を受け入れているのではない。評価を上げる為に職業経験を与えているのではなく、コンサベーションに関わりたいと思っている人たちに機会を与えること、そしてノーフォーク公文書館全体が活動的な場になるようにすることが本来の目的である。

4. まとめ

以上、公共機関のありかた、公共機関としての価値とは何なのか、様々な例を通して解説してきた。端的にまとめると、

  • 地域の人にいかにアーカイブ・サービスが行き届いているか
  • 地域社会の中でプリザベーションの普及をいかに行っているか、コンサベーション部門の仕事の認知度普及にどのように貢献しているか(教育を通して、他の文化施設に関わる機関との専門知識の共有を通して)

これらの活動がTNAやMLAの評価と認定に支えられた理想的なアーカイブであり、トレーニングを与えるにふさわしい公共公文書館としての価値と地位が確立することへと繋がる。そして将来的には、プロジェクトのための資金(助成金)の獲得につながり、獲得することがさらに公共機関としての価値の向上にもなり、TNAの評価の得点もさらにアップすることが期待される。それらが積み重なって、NROがこれからも長くアーカイブ・サービスを存続させていくための価値ある文化機関としての正当な理由となり、サービスの証拠を後世に残すことにも繋がるのである。

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