今日の工房 2016年

週替わりの工房風景をご覧ください。毎日こんな仕事をしています。

2016年2月17日(水) 大判の汚染ガス吸着シートGasQは手作業で一枚ずつカット

汚染ガス吸着シートGasQ断裁品のご注文をいただいた際、機械断裁できない大判サイズは工房内で手作業で一枚ずつカットする。GasQをロールホルダーにセットし、必要な長さを引きだしてカッター台に固定する。こうすることで、しわや折れ目をつけずに歪みのない正確な寸法を切り出せる。このロールホルダーは市販のハンガーラックに手を加えたもので、不織布や薄紙の断裁に重宝している。

続きを読む

2016年2月10日(水) 手書きノートの非水性脱酸性化処置。

一枚ものの手書きノートに対する脱酸性化処置。基材の紙とイメージ材料へのスポットテストを行ったところ、手書きインクが水溶性であることが確認できた。水溶性のインク等が使用されている資料に対して、水性の脱酸性化処置を行うことはできない。そのため、Bookkeeper法による非水性の脱酸性化処置を行った。Bookkeeper法とはプリザベーション・テクノロジーズ社が開発した、不活性液体に酸化マグネシウム微粒子を浮遊分散させた液体である。処置前の平均pHは4.4であったが、処置後の平均pHは8.1に上がった。

続きを読む

2016年2月3日(水)アーキビスト養成のための資料保存手当て実習講座と工房見学会を実施しました。

独立行政法人国立女性教育会館平成27年度女性情報アーキビスト養成研修における実技コース「紙資料の修復関連実習」と弊社工房の見学会。昨年12月、弊社スタッフが講座を受け持ち、ドライ・クリーニングや金属除去と綴じ直し、無酸素パックモルデナイベの使用方法など、基本的かつ無理なく導入できる保存手当てを中心に道具の紹介や作業の実演・実習を行った。更に年明けには弊社でお引き受けしている様々な資料への手当ての事例や、より専門的な修理処置をご覧いただく機会として、弊社工房の見学会も実施され、多数の方々にご参加頂いた。研修、見学会ともに参加者の皆様からは熱心な質疑があり、私共にとっても図書館やアーカイブズの現場の声を直接聞かせて頂ける有意義な機会となりました。

続きを読む

2016年1月27日(水) 革装本の表紙の虫損を和紙の繊維で直す。

虫損は和装本ではお馴染みだが、革装本でも稀に見ることがある。今回の革装本(シリーズ本6点)は構造的な傷みはないが、表紙や背表紙に大小の虫損がある。本全体としては傷みのない綺麗な資料であるがゆえに虫損がとても目立つ。できるだけ目立たないようにして欲しいとのお客様のご要望で、和紙繊維による虫損部の補填処置を行った。

表装の革の色に似寄りの染色和紙を、ピンセットで細かく繊維状にちぎり、虫損の穴にでんぷん糊を塗りながら和紙を埋めていく作業を繰り返し、欠損部の表面が平滑になるまで行う。乾燥後、革の色調や模様に合わせて補彩し、本全体に保革油を塗布し仕上げる。

続きを読む

2016年1月22日(金) 日本郵船歴史博物館様の絵画の収蔵環境を保存容器とガス吸着シートで改善

日本郵船歴史博物館様から収蔵庫環境をより良くするため、絵画84点用の保存箱製作のご依頼があった(以前の船体模型用保存箱の事例はこちら)。これまでは、剥き身、エアキャップ梱包、酸性の茶段ボール製の箱で収納されていた。今回用意した箱は、資料一点ずつのサイズに合わせた差し込み箱。空気中の汚染ガスから資料を守るためだけでなく、木製の額から発生する酢酸などの汚染ガスへの対処として、一点ずつGasQで包んでから箱に収納した。箱にすることで自立しやすくなり、以前よりも省スペースでの収蔵と容易な出し入れが可能となった。ご担当者様からは「これまで感じていた酸性紙特有の甘酸っぱい匂いがなくなった」と評価いただいた。

続きを読む

2016年1月13日(水) 処置前のイメージ材料の同定と耐性確認のために赤外線顕微鏡カメラを活用しています。

近現代の紙媒体の記録資料には様々な紙とともに、様々なイメージ材料(インクや染・顔料など)が使われている。こうした資料に洗浄や脱酸性化や抗酸化などの処置を行う場合には、可能な限りイメージ材料の同定と処置に対する耐性を確認する必要がある。画像はジアゾタイプのサンプル資料を使っての赤外線顕微鏡カメラによるチェック。印字箇所の近くに鉛筆で目印の線を引いて、赤外線照射下で観察すると、鉛筆(黒鉛)の線ははっきりと観察できるが、紫色のイメージ材料の部分は見えなくなる。これは、ジアゾだけでなく、こんにゃく版の資料にも見られる特徴である。ほとんどの場合は目視や基材の紙の感触で判断できるが、タイプ打ちのこんにゃく版や、手書きインクにメチルバイオレットが含まれる場合など判別しにくいものを確認するときは、赤外線顕微鏡カメラを活用している。

続きを読む

2016年1月6日(水)当社のシンボルとロゴタイプをデザインした田代卓さんの仕事をまとめた本が出版されます。

当社のシンボルとロゴタイプをデザインしてくれた田代卓さんの仕事をまとめた『The Works of Taku Tashiro 田代卓の仕事』が1月16日に出版されます。表紙の顔のイラストをご覧になれば、きっと誰もが、どこかで見たことがあると思われるのではないでしょうか。この本には30年にわたるポップでフレンドリーな独特のイラストとデザイン708点が収録されています。なお、当社が毎年お正月とお盆にお客様にお配りする手拭いのイラストも、田代卓事務所に所属する Yuzukoさんが毎回、描いてくれています。

続きを読む
ページの上部へ戻る