今日の工房 2020年 5月

週替わりの工房風景をご覧ください。毎日こんな仕事をしています。

2020年5月20日(水)「綴じ」を「抜かし」綴じ上げる

かがり綴じのなかには抜き綴じという技法があります。 通常かがり綴じは、一括ずつ綴じ穴すべてに糸を通し綴じていきますが、抜き綴じはその名の通り、1回の運針で2括ないし3括を交互に「抜き」綴じます。現在の修理製本では主に本文紙が薄い資料や括数が多い場合に、綴じ糸により背幅が膨らみすぎるのを防ぐために用いられていますが、この技法が多用された17世紀、18世紀ごろは、綴じる時間の短縮を目的に用いられることが多かったようです。

 

今回は文庫本ほどの小型で厚みが6㎝ある資料に、抜き綴じを採用しました。一般的にかがり綴じよりも抜き綴じは強度が落ちると言われていますが、支持体を3本用いて、綴じ穴の数を増やすことで、安定した綴じ上がりとなり、厚みも綴じる前とほぼ変わらない仕上がりとなりました(図②を参考)。

 

【関連情報】

・『今日の工房』2008年12月12日 洋装本の括(signature)の綴じ方のあれこれ

・ The Art of Bookbinding/Chapter 5 by Joseph William Zaehnsdorf

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2020年5月15日(金) 収蔵庫の限りあるスペースを効率的に使うには?〜実例からみる収納アイデア~

保存箱は資料の寸法に合わせて作成するのが基本ですが、収納棚に大小様々な保存箱を並べると、余分な空間ができてしまうことがあります。

 

収蔵棚やキャビネットのスペースを無駄なく使うために大切なことは、3つあります。ひとつは、棚の奥行きや幅に合うように箱の「外寸を揃える」こと。箱の外寸を揃えると、安定して積み重ねることができ、上下に空いた空間を有効活用できます。箱を並べたときの統一感を作るポイントでもあります。

 

次は、資料を整理・分類し、サイズ違いのものをまとめて収納する「しまい方」を工夫すること。箱の中を仕切りやスペーサーで区切ることで、取り出しやすく一目でわかる収納ができます。

 

最後に、資料を計測して寸法と数量を確認する。同時に、収納用品を置きたいスペースの広さも測る。もの、場所、大きさを意識し、全体のバランスを考えながら整理・収納することで、収蔵庫の限りあるスペースを効率的に使うことができます。

 

弊社では、お客様のところに伺い資料を採寸するサービスを行っていますが、資料に合った保存箱を作成するだけでなく、収納スペースや利用頻度などをお伺いし、お客様それぞれの状況に合った保存箱のご提案を心がけています。

 

【関連記事】
・2019年2月27日(水)今日の工房『資料の同じシリーズや付属品を一つの箱に収納する場合、立体パズルのように設計していきます

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