今日の工房 2022年 7月

週替わりの工房風景をご覧ください。毎日こんな仕事をしています。

2022年7月26日(火)資料形態や用途に合わせ4種類の素材から選べる二つ折りフォルダー

版画・素描・写真プリント・ポスター・チラシ・生原稿など1枚物の紙資料や、写真フィルム・テキスタイルなど薄手の資料を挟み込んで保管をするための二つ折りフォルダー。資料を重ねて保管する際の表面保護の役割はもちろん、閲覧などで1点ずつ利用する際には資料に触れずに安全に持ち運ぶことができます。フォルダーは用途に合わせて以下の4種類の素材からお選びいただけます。

 

書類や原稿などの一般紙資料用には、弱アルカリ紙のフォルダーを2種類の厚みから選択できます。薄口のAFプロテクトH104.7g/㎡(厚み0.13mm)は保存封筒に使用されている紙で、比較的軽めの資料を挟み込む場合や、収納後に厚みを出したくない場合に利用ください。厚口のAFプロテクトH209.4g/㎡(厚み0.26mm)は紙面にダメージがある資料用など、より安全に取り扱う必要がある場合にお勧めします。

 

アルカリに敏感な、写真(フィルム・プリント)、青焼き図面、テキスタイル(染色品・ウール・シルク)などの資料用には、アルカリを含まないノンバッファ紙のフォルダーを使用ください。薄口のピュアガード120(厚み0.15mm)は写真用封筒などに使われています。厚口の3F(厚み0.8mm)は画用紙ほどの厚みがあるため、大判の紙資料なども安全に持ち運ぶことができます。

 

定型品はA4用・B4用・A3用の3種類のサイズがあります。仕様と価格は商品ページでご確認ください。定型品は各サイズの定型封筒へ収納ができます。また、定型品以外のオーダーサイズも各種素材で製作可能です。

 

【関連記事】
『今日の工房』 

2018年9月26日(水)閲覧時の出納をし易くした浮世絵用保存箱の作製(専修大学図書館様の事例)

続きを読む

2022年7月11日(月)国立映画アーカイブ様所蔵 アルバム「忠臣蔵」2点の修理

日本で唯一の国立映画専門機関である国立映画アーカイブは国内外の(デジタル作品を含む)映画及び図書などの映画関連資料を所蔵しており、関連資料についてはノンフィルム資料ともいわれ、ポスターやシナリオ(台本)、スチル写真、プレス資料、技術資料など多岐にわたります。
(詳しい所蔵内容については、こちらをご参照ください。)

 

今回、国立映画アーカイブ様より修理のご依頼をいただいたアルバム「忠臣蔵」2点は、日本最初の映画スター尾上松之助が主演した『忠臣藏 天の巻 人の巻 地の巻』(1926年、日活製作、池田富保監督)のスチル写真やスナップ写真からなるアルバム(2冊で計183点の写真を収める)で、松之助を顕彰する京都の団体「尾上松之助遺品保存会」からのご寄贈品とのことです。

 

アルバムは平綴じで角裂が付いた和装丁の構造で、表装の擦れやヒンジ部の台紙を繋いでいるクロスの剥がれなどが見られました。また、貼付されている写真は、酸性台紙の影響による銀鏡化や閉じた際に向かい合う写真どうしが固着し、画像面の一部が損傷しているものが見られました。今回はオリジナルの表装を活かしつつ、写真の劣化予防のために台紙の脱酸性化処置を行う方針で処置を進めました。

 

まず、綴じを外して解体し、台紙の脱酸性化処置に備えて、貼付されている写真すべてを一旦台紙から剥しました。写真は裏面全体に糊付けされており、台紙と写真の隙間がまったくなかったため、写真の周りに切り込みを入れ、そこにヘラを差し込み台紙から剥していきました。その後、台紙ヒンジ部のクロスの剥がれなどを糊止めした後、Bookkeeper法による非水性脱酸性化処置を行いました(処置前:平均pH4.7、処置後:平均pH7.8)。剥した写真は元の位置に貼り戻し、元の装丁に仕立て直した後、写真同士の接触を防ぐため、間紙を挟み込んで仕上げました。

 

この度の事例掲載にあたり、国立映画アーカイブ岡田秀則様より掲載のご協力をいただきました。誠にありがとうございました。

 

 

【関連記事】
『今日の工房』
・2021年6月28日(月)野外彫刻展作品をおさめた写真アルバムの修理
・2018年12月5日(水)東京都美術館様のアルバム貼付写真6,650枚への保存手当て

続きを読む

2022年7月1日(金)文豪・泉鏡花の兎(うさぎ)コレクションを収納する保存箱を作製しました。

慶應義塾大学三田メディアセンター(慶應義塾図書館)様では、泉鏡花の自筆原稿・遺品を多数所蔵しており、今回は、そのなかから泉鏡花の兎コレクションを収納する保存箱をご依頼いただきました。

 

鏡花は自身の干支(酉)の向かい干支である兎(卯)の置物を愛し生涯に渡って蒐集しました。そのきっかけは、幼少のときに母親からもらった水晶の兎だそうです。向かい干支にまつわるものを身の回りに置くと縁起がいいという言い伝えから、置物や玩具などの物に留まらず、身に着ける着物の帯に兎柄をいれるほど徹底していたそうです。

 

■泉鏡花が憑かれたように集めた兎の置物【文士の逸品No.16】2018/4/19 サライ.jp|小学館の雑誌『サライ』公式サイトより
https://serai.jp/hobby/302443

 

兎の置物は陶磁器、張り子、竹細工など、いろいろな材料が用いられており、薄葉紙に包まれ一つの箱にまとめて収納されていました。

 

保存箱として、兎の置物を個別に収納するための仕切り付き台差し箱と、コレクションをまとめて収納するための被せ箱を製作しました。個々の兎は、和紙の揉み紙のように揉みこんで柔らかい布地のようにした新薄葉紙Qlumin™くるみんで包み、各部屋へ収納しました。部屋の隙間にもクッションのように使用しています。箱の床面には緩衝材としてプラスタゾートを敷いています。

 

本事例の掲載にあたり、慶應義塾大学三田メディアセンタースペシャルコレクション担当の倉持隆様、竹内美樹様に多大なるご協力をいただきました。誠にありがとうございました。

 

 

【関連記事】
『今日の工房』2021年10月29日(金)慶應義塾大学三田メディアセンター様所蔵「A.N.L. Munby旧蔵 書字の歴史に関する資料箱」を収納する保存容器を作成しました。

続きを読む
ページの上部へ戻る