今日の工房 

週替わりの工房風景をご覧ください。毎日こんな仕事をしています。

2021年1月22日(金)定型サイズの保存容器のご紹介

弊社のフルオーダー以外の保存容器には規格サイズの資料に適したものが多くあります。写真、フィルム系資料、レコードなどに代表される、ISOやJISの統一規格に基づいた資料は素材や形状が標準化されています。そのため、これらの資料にはサイズ、形状、保存に適した保存容器を定型品としてご用意しています。

 

下記の表は、資料の種類とそれに対応する定型サイズの保存容器の一覧です。比較的低価格でシンプルなデザインの保存容器が多いのですが、フルオーダーの保存容器と同様に、取り扱いの利便性、運搬時の安全性、効率的な収納を念頭に置いて設計されています。こうした定型の保存容器は、お見積り前に形状と価格が分かりますので、ご使用・ご予算のイメージがつきやすいというメリットもあります。

 

 

     対象資料           保存容器
紙焼き写真、写真フィルム アーカイバルバインダー+写真資料用リフィル
紙焼き写真
ガラス乾板
映像フィルム
レコード グラモボックス+中性紙レコードスリーブ
1枚もの(地図、ポスターなど)
封筒、文書ファイル

 

 

資料のサイズごとのおおよその比率を把握しており、厚さ重さも含めて定型サイズに収まる場合は、ぜひご利用ください。

 

なお収納したい資料の特徴に合わせて上記保存容器の寸法を変更することや、上記にない保存容器を設計してお作りすることも可能です。保存容器への収納を検討しているが、どの保存容器にすれば良いのかお困りのときはお気軽にご相談ください。

 

「今日の工房」 これまでの保存容器への収納事例はこちら

2021年1月15日(金)ろ紙を使って汚れた紙資料を洗浄する方法

紙中の水溶性の汚れを除去する洗浄処置にはいくつか方法があります。洗浄液に浸漬する方法や、サクションテーブルで吸引する方法、紙の浮力を利用して洗浄水に浮かべ不純物を取り除く方法(フロート法)、水の表面張力を利用して汚れを除去する方法、ゲランガムのようなゲルを使用して汚れを移す方法、ろ紙で汚れを吸い取る方法(ブロッティング法)などです。紙の性質や損傷状態、イメージ材料、洗浄目的が部分的か全面的かなどを考慮して方法を選択します。
 
今回は、水損による着色汚れが目立つ資料に対して、書写面のイメージ材料に変化がないよう観察しながら処置を進めるために、ろ紙に吸着させるブロッティング法で洗浄を行いました。あらかじめ濡らしておいた本紙の裏面に洗浄液をスプレーした後、同じく洗浄液を含ませたろ紙の上に、書写面が見えるように置いて、汚れの移動やイメージ材料の様子を観察します。汚れの除去が確認できたら、次は湿らせたろ紙で上下を挟んだり、板や重石を載せて洗浄効果を促します。この工程は、本紙の汚れが薄くなるまで、または本紙のpHの上昇など目的の効果が得られるまで、ろ紙を取り替えながら繰り返し行います。
 

 

【関連記事】

・『今日の工房』2019年2月20日(水)修理前に行うスポット・ テストとサンプリング・ テストとは?
・『今日の工房』2015年3月18日(水)修理の各工程で使う水にはこれだけの質が要求されます
・『今日の工房』2014年10月23日(木)新聞資料に対する洗浄・脱酸性化処置

2021年1月4日(月)2021年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

新年、あけましておめでとうございます。
旧年中は格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。
 
新年を迎え、気持ちを新たに当社も動き始めました。本年もより良い製品・サービスを皆様へご提供できますように、スタッフ一同尽力して参る所存です。本年も相変わりませず、ご指導ご鞭撻を頂けますよう、心よりお願い申し上げます。また、皆様にとりまして良い一年となりますことをお祈り申し上げます。
 

2020年12月18日(金)修理部門の作業スペース拡張のため、本棚まわりをプチ改装しました

12月も半ばを過ぎ、あわただしさが一層感じられるようになりました。そんな中で、修理部門の手狭なスペースをフル活用するため、壁一面いっぱいのサイズの大型本棚を引っ越しました。これまでモノをよけながら使ってきた作業スペースも隅々まで広く使えるようになり、業務効率が上がる環境になりました。新しく導入した大容量の扉付き本棚は棚の転倒防止対策もしっかりと検討し設置しています。

 

2000年頃から収集を始めた紙媒体記録資料のコンサベーションのための文庫は、現時点で8,000件を超え、社内でのコンサベーション・予防保存関連業務の支援として、逐次、新しい文献を加えて更新されてゆきます。

2020年12月10日(木)釘で製本されている資料の解体

書物を綴じ表紙を付けて製本すること、その製本工程や意匠をデザインすることを「装丁」といい、他に「装幀」「装訂」「装釘」の字を使うことがあります。字の通り、資料の中には「釘」を使って綴じられているものがあります。多数の図面等を合冊製本したものや、アルバムに多く見られる方法で、順番に重ねた本紙を表・裏の両面から釘を打ち込んで綴じ、製本しています。
電子化のために本紙一枚ずつの状態に解体する必要がある場合には、この釘を取り外す処置が必要になります。

 

木材に打ち込んだ釘と同様に、紙の繊維を押し広げて入った釘と元に戻ろうとする紙繊維の間に摩擦力が働き、釘はしっかりと固定され容易には抜けません。釘が錆び、穴周辺の紙と固着している場合もあります。
細い針金とは異なりニッパーで切断することが困難なため、本紙を傷つけないよう力加減しながら、あて紙をしてテコの原理で少しずつ引き出したり、ゆっくり回して固着を緩めながら垂直に引き抜きます。抜けない場合は釘の頭部分を切り落とし、本紙を一枚ずつ取り外すようにして解体します。
解体後に綴じ直しをする際には釘は使用せず、麻糸などを使用して十分な強度を得られるよう工夫して綴じ直します。

 

【関連記事】
『今日の工房』2020年11月27日(金)マイクロ化のための合冊製本された新聞資料の解体

『今日の工房』2016年4月13日(水) ステープルやクリップなどの鉄製の留め具を安全に外すには

2020年12月4日(金)郷土玩具(土人形・土鈴)を収納する仕切り付台差し箱の製作 めぐろ歴史資料館様の事例

郷土玩具は日々の生活の中で伝承されてきた土地々々に特有の玩具です。現在でもだるまやこけし、張子、独楽などは身近な存在なのではないでしょうか。
玩具にはそれぞれに厄除け、お祝い、幸運祈願、更には地域風習の教材、教訓といった意味があります。そのため同じ動物をかたどった玩具でも土地柄が反映されて色彩や造形に違いがあったり、それと反対に離れた場所でも共通点があったりもします。このような性格を持つ郷土玩具は各地の文化や生活を知ることのできる貴重な資料であり、研究や収集の対象となっています。

 

めぐろ歴史資料館様所蔵の郷土玩具は同区内にお住まいだった菱田忠夫氏のコレクションを中心としています。上記玩具のほか土人形、土笛、土鈴、絵馬、御札、トランプ、かるた、マッチ箱、凧などを所蔵し、その数は1200点を超えます。
このうち菱田氏のお気に入りの土人形と土鈴は樹脂製のコンテナに収納していました。土人形(土鈴)の大きさに対してコンテナの容量が大きく、人形同士の接触防止のために、個々に箱に収めていたため、資料の出し入れがしづらい状態でした。

 

そこで上記の懸念点の解消を念頭に置いた保存容器製作のご依頼を頂きました。
箱内に仕切りを付け底面に緩衝材(プラスタゾート)を敷いたことで資料の出し入れを安全かつ容易に行えるようになりました。
また保管場所に合わせて大きさを統一し、保存容器自体の取り扱いやすさも上がりました。

 

保存箱の収納を終えて、担当の方々から「床の緩衝材で、土人形(土鈴)の出し入れに不安がなくなった」、「中仕切りがあることで閲覧性が向上した」、「担当者とやりとりを重ねたことで、必要な機能を盛り込んだ箱にすることができた」などの感想をいただきました。資料館の方々から、今回は所蔵資料の整理保存において、その緒に就いたところであり、継続して進めていきたいとの意気込みを頂きました。

 

なお本稿の掲載並びに写真の撮影・使用にあたり、めぐろ歴史資料館様の多大なるご協力を頂きました。誠にありがとうございました。

 

 

【関連商品】
台差し箱・被せ箱

仕切り

 

【関連記事】
・『今日の工房』2017年12月13日(水)強い衝撃から資料を守るポリエチレンフォームAZOTE®を組み込んだ保存箱

・『今日の工房』2018年12月26日(水)全長4メートルの大型保存箱を製作しました。

・『今日の工房』2019年11月7日(木)東京造形大学附属美術館様の所蔵品、絵本作家小野かおるの立体作品の保存箱を製作しました。

・『今日の工房』2020年8月20日(木)たばこと塩の博物館様からのご依頼で「嗅ぎたばこ入れ」を収納する保存容器を製作しました。

2020年11月27日(金)マイクロ化のための合冊製本された新聞資料の解体

東京大学大学院法学政治学研究科附属近代日本法政史料センター明治新聞雑誌文庫様よりお預かりした明治24年から大正3年の新聞合冊は、新聞のノドに穴をあけて麻紐を通し平綴じされており、ノドの部分に印刷された文字が読めない状況でした。そのため、撮影するにあたり、綴じを外して一枚ずつの状態になるよう解体作業を行いました。
 
取扱いに支障があるような本紙の破損については修補を行い、撮影後は綴じ直しはせず、中性紙のフォルダーで包み保存容器へ収納しました。
 
 

【関連記事】

・『今日の工房』 2020年11月11日(水)愛知県長久手市にあるトヨタ博物館様より書籍修理のご依頼をいただきました。

・『今日の工房』 2020年9月10日(木)明治新聞雑誌文庫様より、一枚物「寺家村逸雅墓銘」の修理をご依頼いただきました。

・『今日の工房』 2016年6月15日(水) 明治新聞雑誌文庫様所蔵の屏風の下張りに使用されていた新聞への保存修復手当て

・『今日の工房』 2016年3月16日(水) 明治新聞雑誌文庫様所蔵の屏風の下張りから新聞を取り出す。

・『今日の工房』 2019年11月1日(金)松竹大谷図書館様が所蔵する映画スクラップ帳のデジタル化に伴う解体・簡易修補を行いました。

・『今日の工房』 2014年09月05日(金)デジタル撮影の事前処理

・『スタッフのチカラ』 2008年10月30日(木) 新聞合冊製本の保存事例  -読売新聞社様の導入事例-

2020年11月18日(水)陶器製のカップ作品を収納する保存容器を製作しました。

陶造形作家の村上仁美様よりご依頼を受け、カップアンドソーサーの作品を収納する保存容器を製作しました。作品を保存容器に収納した上でご購入されたお客様へ納品されるということで、収納作業は村上様立ち会いの元、作品を取り扱っているぎゃらりい秋華洞様にて行いました。

 

作品は「不思議の国のアリス」をモチーフにしたティーカップとソーサーが組みになっている陶製のオブジェです。立体的で可憐な装飾が繊細かつ複雑に施されており、些細な衝撃でも破損してしまう恐れがあるため、カップとソーサーはそれぞれ薄用紙くるみんで丁寧に包装をしました。特に注意が必要な細工の細かい部分には、揉み込んで柔らかくさせたくるみんを緩衝材として当てています。包みを結ぶ紐にも細く裂いたくるみんを使用しています。

 

保存容器は被せ蓋式の箱の身を90°横に倒し、作品を横から出し入れできるように設計しました。箱の中は上下2部屋に仕切り、カップとソーサーを別々に収納する部屋を設けています。蓋を被せた箱は安全に持ち運びができるよう、箱紐で結びました。収納作業を終えた作品は、後日ぎゃらりい秋華洞様から購入者様へ無事納品されました。

2020年11月11日(水)愛知県長久手市にあるトヨタ博物館様より書籍修理のご依頼をいただきました。

1800年代後半から1900年代前半の大型書籍13点のうち、今回は月刊誌を年単位でまとめた合冊製本への処置についてご紹介します。

 

合冊製本とは新聞や雑誌といった逐次刊行物を半年や1年など一定期間ごとに1冊にまとめる製本法です。書架スペースの圧縮や資料管理の簡便さなどメリットはありますが、書籍の厚みや重さによって、見開きが悪くなったり取り扱いがしづらかったり、資料の利用面で制約が生じることがあります。

 

今回の対象資料は、約A4サイズで厚みが11㎝の書籍で、重さが6㎏(A4コピー用紙500枚の束で約2kg)とかなりの重量があり、両手で抱えて持たないと移動させるのも困難な資料でした。今後の閲覧や利用を考慮し、冊子単位に解体して1冊ごとに綴じ直す処置を行いました。

 

まず、表紙と本体の接合を外し、綴じ糸を外しながら分冊しました。この資料は合冊製本には珍しく、背を断裁せずに製本していたため、元の括構造が残っており、きれいに解体することができました。次に、背の接着剤(膠)を除去し、表紙の色に合わせた和紙で背を被覆し補強しました。最後に元の綴じ穴を利用して麻糸で綴じ直しました。

 

元の括構造が残っていたこともあり見開きが良く、さらに軽量となったことで扱いやすくなり、閲覧も楽にできるようになりました。

 

 

■トヨタ博物館様
https://toyota-automobile-museum.jp/

2020年11月6日(金)汚染ガス吸着シート 「GasQ」のガス吸着効果を可視化した展示サンプルをご紹介します。

展示会や研修会のご来場者にご覧いただいている、汚染ガス吸着シート 「GasQ®」のガス吸着効果を示すサンプルをご紹介いたします。

 

資料の輸送や梱包に使われる茶段ボール。保存にはあまりよくないということは分かりながらも、材料を使い捨てで再梱包するという予算が無くそのまま保管用としても使用される場合があります。

 

こうした茶段ボールはパルプ製造の際に使用される硫化ソーダの影響で硫黄分を含有しており、段ボールに密閉された状態で数週間以上保管すると、硫化分が還元性の硫黄系ガス(硫化水素や二硫化炭素、硫化カルボニルなど)として発生していることが確認されます。このような、物質から放出されるガスはアウトガスと呼ばれており、カドミウム・錫・鉛・銅・水銀・銀など多くの金属と硫化物を作りやすく、物質を腐食させる大きな原因となります。特に銀は硫化水素ガスに触れると硫化(腐食)が進み茶褐色化しやがて黒化します。

 

これら2つの特徴を利用し、GasQのガス吸着効果の可視化を目的としたサンプルを製作いたしました。

 

[サンプルについて]
GasQの入っていないものをサンプル①、GasQの入っているものをサンプル②とします。
どちらも温度50℃~60℃、相対湿度80%~90%の環境で28日間加速劣化させた茶段ボールで銀箔を挟んでいます。その外側をガラスで挟み、周縁部にタイベックテープを貼って密封しました。
サンプル②には最前面に加えて銀箔の前後にもGasQが入っており、各部分2枚ずつ計6枚のGasQが封入されています。

 

密封から4か月経過時点でサンプル①の銀箔には黒化が見られますが、サンプル②の銀箔に色の変化はほとんど見られません。GasQが劣化した茶段ボールから発生する硫化水素ガスを吸着し、銀箔の腐食変化を予防していることが分かります。

 

紙は素材としてある程度の通気性を持ち、アーカイバル容器の材料であるアーカイバルボードも例外ではありません。そのため、微量なガスにも敏感に反応する金属資料や写真資料などを保存する場合はガスへの対策が必要です。GasQを封入することでアーカイバル容器に幅広いガスへの吸着能力を付与し、ガスに敏感な資料も安全に保存することができます。

 

 

【関連記事】
・『スタッフのチカラ』2013年3月27日(水)「中期保存向け」箱やフォルダーに使われる国産ボードの品質について

・『今日の工房』2014年7月17日(木) 資料や市販の桐箱から出る有機酸ガスを観る実験

・『今日の工房』2014年9月11日(木) 市販の桐箱から出る有機酸ガスを観る実験2

・『今日の工房』2015年6月17日(水) 歴代延岡藩主の印章を保管するー多様な素材と形にシンク式容器とGasQ®で対応

・『今日の工房』2016年1月22日(金) 日本郵船歴史博物館様の絵画の収蔵環境を保存容器とガス吸着シートで改善

・『今日の工房』2017年2月22日(水) ひな人形をGasQ®️で養生し、元の木箱に保管する。

・『今日の工房』2019年5月15日(水) NPOゲーム保存協会様からのご依頼でフロッピーディスクを長期保管するための専用容器を作成した。

ページの上部へ戻る