今日の工房 

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2026年6月12日(金)筑波大学附属視覚特別支援学校 資料室様所蔵 凸字・点字資料の保存修復処置 -データベース作成、電子化、公開へ向けた取り組み-

筑波大学附属視覚特別支援学校は、その前身である「楽善会」が明治初期に創設されて以来、視覚障害教育の中心的役割を担ってきました。同校の資料室には、国内外の盲教育に関する資料や点字教科書が収蔵されており、点字制定以前の盲教育や文字教育の歴史をたどる展示も行われています。
筑波大学附属視覚特別支援学校ホームページ>資料室・常設展示室の紹介※見学は要問合せ
(本記事に掲載する画像は、弊社が撮影した作業記録画像の一部です)

 

日本において点字が制定されたのは1890年(明治23年)に遡ります。それ以前は、紙を文字の形に浮き上がらせた凸字が学校教育の教科書などで用いられていました。現在広く用いられている点字は、フランスのルイ・ブライユが1825年に考案した6点点字を基礎としており、各言語に対応した点字が使用されていますが、海外においても、それ以前はアルファベットによる凸字や、イギリスで開発されたムーンタイプ(丸と線で表す文字)など、文字の輪郭を触って読むものが主流でした。

 

 

日本近代の盲教育は、明治維新後、京都と東京それぞれに教育機関が設立されたことを契機に大きく発展しました。1887年(明治20年)に東京盲唖学校(現・筑波大学附属視覚特別支援学校)の助教諭となった石川倉次(いしかわくらじ)は、ブライユの6点点字を日本語の五十音へ翻案する研究に取り組み、1890年(明治23年)に「日本訓盲点字」として制定されるに至りました。今回お預かりした資料の中には、石川が当時の教員や生徒らとともに試行錯誤を重ねながら研究を行った経過記録が多く含まれています。今回は、これら12点(約200枚)の資料についてデータベース作成を進めるにあたり、電子化に向けた処置や保存対策についてご相談を受け、所蔵元、および研究者との協議のもと、作業を実施することになりました。

 

私たちは常に、利用に供するための保存修復を意識して「資料保存」に取り組んでいますが、触覚型資料、なかでも点字のように視覚だけでは捉えきれない情報をもつ資料に対して、どこまでアプローチするかという判断は、すべての工程において難しい課題でした。特に、墨字が付されておらず点字のみで記された資料では、視覚的に確認できる手がかりが限られるため、文章のはじまりや終わり、紙の上下を判別するにも慎重な観察を要するなど、点字資料特有のこうした条件は、作業時の緊張感をいっそう高めるものでした。さらに今回は、斜光撮影による電子化を予定していたため、紙の波打ちや折れ、皺が撮影時に強調されないよう調整する必要がありました。一方で、過度な加湿や圧力は、点字そのものを変形させる可能性があります。そのため今回の処置では、「点を守りながら、点以外を整える」という非常に繊細な調整が求められました。

 

 

作業はまずドライ・クリーニングから開始しました。点の突出具合は1枚ごとに異なるため、紙質と点部分の堅牢さを見ながら、刷毛やクリーニングスポンジを数種類使い分けました。破れの修補では、点の位置を一つひとつ確認しながら、接着に用いるでんぷん糊の水分が移行して点を変形させないよう、慎重に作業を進めました。また、折れや皺の伸展には手元用の超音波加湿器を用いて加湿レベルを調整し、点部分に影響がないよう細心の注意を払いました。乾燥工程では、通常用いられる表面が滑らかなろ紙や、重石、プレス機を使用せず、厚手で柔らかいフェルト生地を使用することで、点への圧力を軽減しつつフラットニングを行いました。電子化を終えた資料は、保存環境を整えるためにそれぞれの形態およびグループに応じて適切なアーカイバル容器を作製し、収納しました。

 

これらの資料は、目で読むことができない人に文字をどう届けるかを問い続けた試行錯誤の記録でもあります。私たちもまた、その触覚情報を視覚だけに頼らず、どのように守るかという課題に向き合うことになりました。検討を重ねながら慎重に作業を進めた結果、処置内容そのものは基本的な範囲にとどまりました。しかし、過度な介入を避けることが、結果として資料本来の保存性を最大限に守ることにつながったと考えています。

 

 

今回の取り組みを通して見えてきたのは、点字や凸字に見られる凹凸そのものが資料の内容を構成していること、電子化の撮影方式が修復方針にも大きく影響すること、そして介入を最小限にとどめることが、結果として資料の保存性と情報の維持につながる場面があること——という三つの視点でした。触覚的な情報を含む資料をどのようにアーカイブしていくのか、本事例はその一端を示す試みでしたが、これを通じて、資料保存が単なる作業ではなく、所蔵者、研究者、撮影、そして保存修復に関わるそれぞれの立場が、目的を共有しながら進める協働の積み重ねであることを改めて実感しました。

 

 

最後に、筑波大学附属視覚特別支援学校様には弊社ホームページへの掲載をご快諾いただき誠にありがとうございました。また、お力添えいただいた関係者の皆さま、特に、DNP文化振興財団グラフィック文化に関する学術研究助成B部門の助成により本プロジェクトを実現されたお茶の水女子大学附属図書館の飯塚希世様と資料室担当の先生方には、盲教育の歴史と凸字・点字の製作方法について知見をいただき、保存方針の策定へ向けてご助言を賜りました。ご協力に心より感謝申し上げます。

 

 

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2015年3月30日 内外ニュース&レポート編:視覚障害者用の本(1840年刊)を修理する

2025年10月8日 立教大学図書館様所蔵 活字組版への処置・保存容器の作成

2026年2月9日 明治学院歴史資料館様所蔵 沖野岩三郎手稿コレクション ― 修復とデジタル公開の取り組み

 

【関連情報】

現在開催中の企画展『名著誕生展 ヴァチカン教皇庁図書館Ⅲ+』(印刷博物館 会期:2026年4月25日〜7月20日)にて、目の不自由な子供が地理の授業で使うためにフランスで制作された凸字の教科書『地理学の基礎(視覚障がい者のための地理入門書)』を展示中です。この機会にぜひ実物をご覧になってみてください。

 

【参考】

Helen Kuncicky. (2007). Saving Raised Dots: A Feel for Braille Materials and Preservation.

Lisa J Sisco. (2015). Braille preservation: recognising and respecting archival materials produced by and for the blind. Archives and Manuscripts. Volume 43, Issue 1.

Donna Koh. Digitizing Braille Music 2018. Library of Congress blogs posted on April 26, 2018

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2026年6月1日(月)感熱紙の鉄道切符をどう保存するか ― 一覧性・収蔵性・保護性から考える保存形態 ―

鉄道切符は小さな紙片ですが、近年の自動券売機などで発行される切符には、感熱紙が多く使われています。
感熱紙は、熱によって発色する記録材料です。インクを使わず印字できる一方で、熱、光、圧力、可塑剤などの影響を受けやすく、長期保存では注意が必要な素材でもあります。
鉄道切符の印字方式には、熱で券紙自体を発色させる感熱方式と、インクリボンの色材を熱で転写する熱転写方式があります。同じ切符でも、印字方式によって保存上の注意点は異なり、特に感熱方式の切符では、熱や光、圧力、可塑剤などの影響を受けやすく、印字に退色や変色が生じるおそれがあります。

実際、古い感熱紙の切符は、印字が薄くなったり、背景が黄変したり、全体が黒っぽく変化したりすることがあります。また、スリーブや粘着材など、接触する素材の影響を受ける場合もあります。そのため、鉄道切符の保存では、「何に入れるか」だけでなく、「どう使い、どう見返すか」によっても、適した保存形態が変わってきます。
今回製作したのは、アーカイバル・バインダー用リフィルに使用する、中性紙製の間紙です。鉄道切符を1枚の台紙に並べて貼り付け、整理・比較しやすくするためのものです。鉄道切符は、年代や鉄道会社によって、地紋、書体、券面レイアウト、紙質、印字方式などが少しずつ異なります。こうした差異は、1枚ずつ見るより、並べて比較したときに見えやすくなります。ただ、白紙の台紙に配置していく場合、角度や位置が少しずつずれやすく、ページ全体で見たときの比較性が保ちにくくなることがあります。そこで今回は、配置基準として、10mm間隔のドット方眼を中性紙に印刷しました。ドット色はグレーとし、閲覧時に視線を邪魔しにくい濃度に調整しています。また、上下左右の中心ドットのみを少し大きくし、ページ全体の配置基準としています。

 

この構成では、切符を保護するだけでなく、一覧しながら比較しやすい状態を維持することを重視しています。感熱紙の切符では、見やすさだけでなく、接触する素材や貼付方法も重要になるため、配置のしやすさとあわせて、長期的に資料へ負担をかけにくい間紙やリフィルの選択も必要になります。

 

一方で、すべての鉄道切符に、一覧比較を重視した保存形態が適しているわけではありません。以前、芝浦工業大学豊洲図書館様の鉄道切符コレクションでは、寄贈資料として受け入れられた多数の切符を収蔵するため、切符サイズに合わせた仕切り付きの台差し箱を製作しました。[芝浦工業大学豊洲図書館様 鉄道切符コレクション保存容器]

 

寄贈資料の場合、個々の切符だけでなく、寄贈時のまとまりや並び、分類の単位も資料の一部と考える必要があります。そのため、この事例では一覧性よりも、高密度収納、長期保管、管理性に加え、もとのまとまりや形態をできるだけ崩さないことを重視しています。古い切符には酸性紙や感熱紙も含まれるため、箱内部には汚染ガス吸着シート GasQも組み込んでいます。

 

また、切符を1点ずつ保護しながら閲覧したい場合には、プリザーバーやアーカイバル・バインダーを用いた構成もあります。この方法では、接触を減らし、出し入れ時の負担を抑えながら、一点ごとの状態を確認しやすくなります。ただし、収納効率は下がるため、どの方法が適切かは、利用頻度、点数、整理方法、閲覧目的によって変わってきます。

 

鉄道切符には、感熱紙や酸性紙、印字の退色、可塑剤の影響など、保存上の課題が多くあります。そのため、保存用品は「何を優先して残すのか」によって選び方が変わります。一覧して比較するならバインダー形式、まとまりを保って収蔵するなら仕切り付き保存箱、一点ずつ保護して閲覧するならリフィルやプリザーバーも選択肢になります。

 

同じ鉄道切符でも、目的によって適した保存用品や構成は少しずつ異なります。感熱紙のように変化しやすい資料では、接触する素材、並べ方、閲覧頻度も、保存用品や保存形態を考える手がかりになります。

 

 

【関連情報】

 

写真資料収納リフィル:プリントプリザーバーとは

 

▼ 感熱紙について
近現代資料では、紙そのものの劣化だけでなく、そこに記録された文字や画像が先に失われてしまうことがあります。特に感熱紙は、熱によって発色する性質を利用した記録材料であり、ワープロ印字紙やファックス紙、レシート、切符などに広く使われてきました。
公文書の分野でも、平成期に入ると、感熱紙にワープロで印字された文書や感熱ファックス紙が頻繁に見られるようになったことが報告されています。感熱紙に記録された情報は、熱や光、圧力などの影響を受けやすく、比較的早く退色・消失するおそれがあります。
そのため、紙資料の予防的保存処置では、作業中に感熱紙の公文書が見つかった場合、その場で中性紙に複写し、複製物を原資料の近くに添えて、中性こよりで綴じ直す対応が行われます。これは、原資料を残しながら、消えやすい記録情報を別のかたちで確保するための処置といえます。
感熱紙のほかにも、蒟蒻版、青焼、湿式コピー、写真紙焼、初期の電子複写など、近現代資料には記録内容そのものが不安定なものが多く含まれます。こうした資料では、媒体を保護するだけでなく、記録された情報をどのように残すかという視点も重要になります。

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2026年5月14日(木)磁器製釣花瓶の保存箱を製作しました-ドーナツ型綿布団による支持構造の工夫-

今回ご相談いただいたのは、磁器製の釣花瓶をどのように安全に保管するか、という内容でした。
釣花瓶は、上部と底部のリングに紐を通して吊り下げて使用する構造で、底部には紐と房が集まります。このため底面が安定せず、そのままではまっすぐ置くことができません。従来は横に寝かせて保管されてきましたが、接触面への負担や長期的な安定性を考えると、正位置での保管が望ましい資料です。

 

ただし、この形状にはいくつかの難しさがあります。
まず素材は磁器で、硬さはあるものの衝撃には弱く、接触や荷重のかけ方には注意が必要です。さらに形状は球体に近く、支持が一点に偏ると転がりやすくなります。加えて、底部のリングと紐が干渉するため、単純な受け構造では安定して支持することができません。

 

そこで今回は、箱内部を上下二層に分ける構造とし、花瓶を支える部分と紐を収める部分とを分けて考え、それぞれの役割を分離する設計としました。
上部は花瓶本体を支える空間です。ここでは、花瓶を面で受けながら安定させるための支持材として、ドーナツ型の綿布団を製作しました。中央に開口を設けた環状綿布団は、底部のリングと紐を下部へ逃がしつつ、花瓶本体は無理なく正位置で据えることができます。点ではなく面で支えることで、接触圧を分散し、局所的な負荷を抑えています。
さらに、側面と底面にはフォーム材(プラスタゾート)を貼り、外部からの衝撃を緩和する構造としました。あわせて、箱内の四隅には取り外し可能な柱状の綿布団を配置し、収納後の微細な動きも抑えています。
下部は、紐を収めるための空間です。この空間は全体の約4割を占めるため、花瓶を載せると重心が上部に偏り、箱として不安定になるおそれがありました。そのため、底部に重量調整用のボードを組み込み、重心を下げることで全体の安定性を確保しています。

 

見た目はシンプルですが、形状・素材・重心の条件を整理しながら、面で支えて安定させる支持方法を組み合わせた保存箱です。

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2026年4月28日(火)マンガ原画を保存する保存容器

マンガは日本発のコンテンツとして広く読まれていますが、近年は原画そのものも、メディア芸術の資料として位置づけられるようになってきました。保存対象としての関心も高まり、2023年には一般社団法人マンガアーカイブ機構が設立され、昨年にはマンガ原画保存の手引きも公開されています。

弊社でも、作家やスタジオ、管理団体、出版社などから保存に関するご相談をいただき、用途に応じた保存用品や保存箱の製作を行ってきました。今回ご紹介するのは、出版社のご要望に基づいて製作した保存容器の事例です。

 

マンガ原画は一般に、紙(原稿用紙)を支持体として、インクやトーンなどで構成された複合的な資料です。インク(主に耐水性のある描画材)やスクリーントーン、修正材、糊など、複数の素材が重なっており、部分ごとに性質が異なります。このため、擦れや圧による表面の損傷、支持体(紙)の反りや変形、素材間の接触による影響といったリスクを前提に、保管方法を考える必要があります。

 

今回のケースでは、出版社からの要望として、透明なOPP袋での保管が前提にありました。原画は印刷やグッズ制作などで使用されることが多く、1枚単位での出し入れや確認が必要になります。そのため、中身が見えることと作業性の良さは重要な条件です。OPP袋はこの点で扱いやすく、コスト面も含めて現実的な選択です。保管方法を検討する際には、OPP袋の特性にも配慮が必要になります。OPP袋は軽量で透明性が高く、扱いやすい一方で、柔らかいため面支持には制約があります。また、フィルム素材のため、取り扱いには配慮が必要です。これらの特性を踏まえ、可視性と作業性を優先してOPP袋での保管を基本としています。

 

保管は、単行本単位でまとめる構成としています。原画は巻ごとに管理されることが多いため、組立式のシェルボックスに収納しています。巻ごとに厚みが異なるため、スペーサーを用いて内部寸法を調整し、箱内で動かないようにしています。また、長期保管を考慮し、汚染ガス吸着シート(GasQ)を併用しています。

 

なお、長期保管や取り扱い時の安定性をより重視する場合には、アーカイバルクリアホルダーと保存用台紙を組み合わせる方法もあります。この構成では、
– 台紙によって原画を面で支えることができる
– 反りや歪みを抑えられる
– 1点ごとの取り扱いが安定する
といった利点があります。透明ホルダーを用いることで、保護しながら内容を確認できる点も特徴です。

 

本事例では、作業性(中身の確認・出し入れ)、コストバランス、長期保管時の安定性、この3点のバランスを踏まえて構成を組み立てています。マンガ原画は、保管だけでなく使用されることも前提とされる資料であるため、保存性と運用の両方に無理のない構成としています。

今回ご紹介したように、保管方法は用途や運用条件によって適切な構成が異なります。OPP袋、クリアホルダー、シェルボックスはいずれも個別仕様での対応となりますので、詳細はお問い合わせください。

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2026年4月13日(月)棚はめ込み保存箱に、スライド式格納扉タイプを追加しました

弊社のアーカイバル容器の定番品 組み立て式棚はめ込み箱は、棚に設置したまま資料の出し入れができる保存箱です。これまでの通常仕様では扉が前方に倒れて開く構造でしたが、このたび、扉を箱内部に格納できる「スライド式格納扉タイプ」を別注オプションとして追加しました。

 

■格納扉の開け方
通常タイプでは扉を固定するストッパーが上部にありますが、格納扉タイプでは下部に配置されています。ひねり留め具を開けてストッパーを倒すと、扉を引き出すための紐が現れます。紐をつまんで扉を天井部まで持ち上げ、そのまま内側へスライドして格納します。
箱内部の左右には樹脂製のレールを設けており、扉の出し入れがスムーズで、繰り返しの開閉による摩耗も抑えます。

 

■このタイプを開発した背景
設置場所によっては、前方に倒れる扉が資料の出し入れの妨げになる場合がありました。格納扉タイプは、こうした課題を解消するために開発しています。
<使用例①:棚の上段など、目線より高い位置に設置する場合>
脚立を使用した作業では、前方に倒れる扉が作業者に干渉することがあります。格納扉タイプでは扉が天井部に収まるため、干渉なく安全に作業できます。
<使用例②:棚の最下段など、床に近い位置に設置する場合>
通常タイプでは扉が床面に当たり十分に開かないことがあり、扉を避けて腕を伸ばす必要があります。格納扉タイプでは資料の正面から無理なくアクセスでき、作業負担の軽減につながります。

 

■そのほかの利点
格納扉タイプは、設置高さ以外の場面でも有効です。
扉を箱内部に収めて使用できるため、前方への張り出しがなく、通路が狭い収蔵庫でも作業スペースを確保しやすくなります。また、隣接する箱同士の干渉も避けることができます。
棚の中段など、扉の開閉が作業に影響しない場所に箱を設置する場合は、通常タイプでも問題ありませんが、設置条件に応じて格納扉タイプを選択いただくことで、より高い利便性を発揮します。
なお、格納扉タイプはオプション仕様(別途お見積り)となりますので、詳細はお気軽にお問い合わせください。

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2026年3月19日(木)写真資料収納リフィル 57-4P Ⓜ 販売開始のお知らせ

平素より弊社製品をご利用いただき、誠にありがとうございます。

 

このたび、写真資料収納リフィル 57-4PⓂ(米国 Print File 社製/弊社ODM品)が入荷し、販売を開始いたしましたのでご案内いたします。

 

|▶ プリントプリザーバーとは

ARCHIVAL PHOTO PRESERVER(プリントプリザーバー/フォトページ)は、プリント写真を保護しながら整理・閲覧するための収納リフィルです。バインダーや吊り下げファイルに綴じて使用し、写真を取り出さずにそのまま確認できる点が、封筒型やスリーブ型の保存方法との大きな違いです。

 

研究室や大学・図書館の写真資料整理、博物館・資料館の収蔵写真の管理、社史や広報写真のアーカイブなど、閲覧と保存を両立した管理方法として広く使用されています。写真保存用リフィルは、収納する写真サイズに合わせて選ぶことが最も重要です。本製品では用途に応じてサイズを選択できるラインナップを用意しています。

 

|▶ なぜアーカイバル品質が必要か

一般的なビニール製ポケットには可塑剤・触媒・溶剤などが含まれていることがあり、長期保管において写真乳剤に化学的影響を与える場合があります。57-4PⓂはPVCを一切使用せず、ポリプロピレンのみを素材に採用することで、そうした影響を避けながら写真資料を長期にわたり保護します。また、写真保存材料の安全性評価基準であるPAT試験(Photographic Activity Test)にも合格しており、写真保存用途の材料として国際的に認められたアーカイバル品質の製品です。日常的な資料整理から長期保存が必要なアーカイブまで、安心してお使いいただけます。

 

|▶ プリントプリザーバーの利点

写真は触れる回数が多いほど、指紋・摩耗・折れ・角欠けのリスクが高まります。プリザーバーに収納しておけば写真を取り出さずに閲覧できるため、取り扱いによる損傷を減らすことができます。また、箱や封筒での保管では取り出した際に順序が崩れやすくなりますが、プリザーバー方式では時系列・撮影場所・イベント単位などの整理状態を維持したまま管理できます。

 

バインダーに収納することで、何枚あるか・どこに何があるかを一覧で確認でき、「探す・取り出す・戻す」という手間が少なくなります。さらに、新しい写真を途中に追加したり、テーマ別に並び替えたりと、原秩序を維持したまま資料の追加整理を行うことができます。

 

写真保存に適した高透明ポリプロピレン素材を使用しているため、ポケット形状が安定しており、収納・閲覧ともにしやすい構造です。また、写真サイズに合わせたポケット設計により、大きすぎ・小さすぎによる折れ・波打ち・角潰れを防ぎ、安定した状態で収納することができます。

 

|▶ 57-4PⓂ の使い方と特長

57-4PⓂは上下2段・2ポケット仕様のリフィルです。1ポケットに写真を2枚背中合わせに収納でき、ページをめくるだけで両面の写真を確認できます。素材には高透明ポリプロピレンを使用しており、収納したままでも写真の細部まで鮮明に見ることができます。

 

総厚8mil(上下各4mil)の適度な厚みと剛性があり、写真がずれにくく・角が折れにくく・ページが扱いやすい設計です。薄手フィルムにはない安心感があり、日常的な閲覧や参照を伴う資料管理にも適しています。

 

|▶ サイズについて

57-4PⓂのポケットサイズは 130mm × 205mm です。現在欠品中のA5-4P(147×210mm)と、代替品としてご案内してきた57-4PⓈ(130×179mm)の中間サイズにあたります。57-4Psでは横幅がやや足りない場合や、130×180mm程度の大キャビネ判写真をゆとりをもって収納したい場合に特に適しています。

 

サイズ 品番 ポケットサイズ 状況
S 57-4PⓈ 130 × 179 mm 取り扱い中
M 57-4PⓂ 130 × 205 mm ★今回入荷
L A5-4P 147 × 210 mm 現在欠品中

 

|▶ 収納目安

Lサイズ:A5判・大判資料

Mサイズ:大キャビネ判・長め資料

Sサイズ:キャビネ判・2L判

 

⚠ サイズをお間違えのないようご注意ください

・A5サイズ(148×210mm)の資料は、S・Mサイズには収納できません。

・各サイズのポケット内寸をご確認のうえご注文ください。ご不明な場合はお問い合わせください。

なお、S・M・Lの各サイズは外寸を統一した設計となっており、バインダーやボックスバインダー、吊り下げファイルに複数サイズを混在させて綴じても、整理状態を保つことができます。

 

|▶ 価格・納期

3,190円(25枚入・税込・輸送費別)
在庫品のため、納期はご発注より約1週間となっております。

 

|▶ 57-4PⓂ の仕様

品番  57-4PⓂ(弊社ODM品) 
ポケットサイズ  130mm × 205mm 
構造  上下2段・2ポケット(1ポケット2枚収納可) 
素材  高透明ポリプロピレン 
材質特性  PVC不使用・総厚8mil 
保存品質  アーカイバル品質・PAT試験合格 
入り数  25 
価格  3,190円(税込・輸送費別) 
納期  在庫品:約1週間 

 

|▶ 上下2段・2ポケット仕様 ラインナップ(更新)

  Sサイズ  Mサイズ  Lサイズ 
品番  57-4P Ⓢ  57-4P NEW  A5-4P 
ポケットサイズ  130×179mm  130×205mm  147×210mm 
収納目安  キャビネ判・2L  大キャビネ判・長め資料  A5判・大判資料 
区分  メーカー標準品  弊社ODM  メーカー品 
取り扱い  取り扱い中  販売開始  欠品中 
納期  取り寄せ(約1か月~)  在庫品(約1週間)  未定 
価格(25枚入)  3,190円(税込・輸送費別) ※全サイズ共通 

 

|▶ Lサイズ(A5-4P:147×210mm)をお使いのお客様へ

A5-4Pは現在、製造ロットに起因する不具合が確認されたため、販売を一時見合わせております。製造元にて次回ロットからの品質改善が予定されておりますが、現時点では入荷時期は未定です。

 

57-4PⓂのポケットサイズは 130×205mm です。A5判(148×210mm)ジャストには対応しておりませんが、大キャビネ判写真や短辺が130mm以内の資料であれば実用的にご使用いただけます。収納予定の資料サイズをご確認のうえご検討ください。ご不明な点はお気軽にお問い合わせください。

Lサイズ(A5-4P)の入荷につきましては、進展があり次第あらためてご案内いたします。

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2026年3月12日(木)2025年度 東京造形大学附属美術館様 博物館実習と髙橋淑人大型作品の保存容器製作・収納事例

東京造形大学附属美術館では、桑澤洋子関連資料や小野かおる関連資料をはじめとする多数の資料を所蔵し、授業や展示に活用されています。弊社は株式会社紀伊國屋書店株式会社インフォマージュと協業し、所蔵資料の保存整理や修復、保存容器の製作に携わってまいりました。

 

昨年に引き続き、東京造形大学で学芸員課程を学ぶ学生の皆様を対象に、博物館実習の一環として各提携先の専門業務を見学する会が行われました。
弊社では修復部門と保存容器製作部門の業務を見学・体験していただきました。

 

修理部門では、実際の作業を見学しながら、修復が必要になる背景や目的、処置工程について解説を行いました。体験実習として、保存製本の基礎技法である「リンプ・ベラム・バインディング(Limp vellum binding/リンプ製本)」を取り上げ、それぞれ1冊ずつのサンプル製本を完成させました。

 

保存容器製作部門では、完成させたリンプ製本を採寸し、その寸法に合わせて専用の保存容器を製作し、組み立てから収納までの一連の工程を体験していただきました。あわせて、東京造形大学様が所蔵する髙橋淑人氏の大型作品を収納するための保存容器「台差し箱」の製作工程を見学していただきました。作品の特徴や収蔵場所に合わせオーダーメイドで設計された保存容器です。箱の構造や工夫についての解説を受けながら、スタッフが組み立てていく様子をご覧いただきました。

 

後日、完成した保存容器へ作品の収納を行いました。作品は6枚1組の大型絵画で、1点のサイズは約1,300×1,630×60㎜。重厚な木枠にキャンバスを貼った構造で、重量は20㎏程と推測されます。絵画面は絵具の塗り重ねによる凹凸感があり、とても繊細です。収納にあたっては、表面をキズや擦れから保護するため、滑らかなポリエステル製不織布で包んだうえで保存容器に収納しました。箱の天側には、取り出しやすいよう手が入る余白を設けています。保管時はその余白に着脱可能なスペーサーを挿入し、箱内部で作品が動かない構造としています。蓋は側面に取り付けた面ファスナーで固定され、縦置きの状態でも蓋が開くことなく、安定した移動・保管が可能です。

 

東京造形大学附属美術館では、専用の収蔵庫の替わりに校内各所の部屋を収蔵庫環境として整え、作品を分散保管しています。そのため、作品の保管・移動・環境からの保護を目的として、これらの保存容器が重要な役割を果たしています。

 

今回は収蔵作品のための保存容器を製作する工程をご覧いただくことができ、保存容器の役割をより身近に感じていただけたのではないかと思います。

 

 

【関連情報】
・2024年11月14日(木) 2024年度 東京造形大学附属美術館様 博物館実習の一環として見学会を行いました。
・2024年1月29日(月)2023年度 東京造形大学附属美術館様 博物館実習の一環で見学会を行いました。

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2026年2月9日(月)明治学院歴史資料館様所蔵 沖野岩三郎手稿コレクション ― 修復とデジタル公開の取り組み

弊社では2023年より、株式会社紀伊國屋書店、株式会社インフォマージュと協業し、明治学院歴史資料館様が所蔵する「沖野岩三郎手稿コレクション」の修復および電子化作業に取り組んできました。その成果として、2025年10月より、これらの貴重な資料が明治学院歴史資料館デジタルアーカイブズにて公開されています。

 

作家、牧師として知られる沖野岩三郎(1876-1956)は、1904年(明治37年)28歳で明治学院に入学しました。卒業後も学院との関係を大切にし、晩年には、持病である糖尿病の悪化により視力を失いつつあるなかで、自身の蔵書や書簡、原稿類を明治学院へ寄贈しています。 本プロジェクトで修復・電子化を行った資料は、これら寄贈資料の一部にあたります。

 

今回修復の対象となったのは、主に草稿や原稿資料です。2023年から2025年までの3ヵ年にわたり、計22点の資料に処置を施しました。資料の多くは200字詰または400字詰の原稿用紙に記されており、なかには1作品で1,000枚を超える分量のものも含まれていました。

 

200字詰原稿用紙は、ボール紙の簡易表紙を付け、紙縒りで平綴じされた状態で保管されていましたが、原稿を捲る動作によって綴じ部分に負荷が集中し、表紙や綴じ部が破損している資料がほとんどでした。一方、400字詰原稿用紙は、原稿束を二つ折りにした状態で保管されていたため、強い折れ癖が生じていました。さらに、原稿の冒頭および末尾の頁では破れや欠損が顕著で、取り扱い自体が困難な状態でした。これらに加え、すべての資料に共通して、酸化や酸性劣化による紙力の低下、紙の茶褐色化が見受けられました。

 

こうした状態を踏まえ、電子化にあたっては、資料を安全に取り扱えるようにするための補修処置として、綴じられていた資料をすべて解体し、損傷部には和紙(楮)で修補を行い、劣化や破損が著しい原稿用紙は、裏打ちによって全体を補強しました。電子化完了後には、酸性劣化の進行を抑制するため、Bookkeeper法を用いた脱酸性化処理を施しています。その後、資料のサイズや形態に合わせて製作した専用の保存容器に収納しました。今後の展示や利用を考慮し、あえて綴じ直しは行わず、原稿束を3Fフォルダー(無酸・無アルカリ・無サイズの厚紙製)で包み、固定した状態で保存容器に収納しています。

 

修補 裏打ち 原稿束を3Fフォルダーで包み安定した状態で保護 資料サイズに合わせた専用保存容器に収納

処置後 200字詰原稿用紙

処置後 400字詰原稿用紙

 

 

なお、デジタルアーカイブ公開に先立ち、2025年9月1日より、企画展『書いて、書いて、また書いて 沖野岩三郎が伝えた資料たち』が開催されています。 原稿には、推敲の跡や赤字による修正が数多く残されており、沖野岩三郎の思考の過程をたどることのできる、非常に貴重な資料群です。ぜひ会場にてご覧ください。

 

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2026年1月5日(月)新年のご挨拶

謹んで新年のお慶びを申し上げます。

 

旧年中は格別のご厚情を賜り、誠にありがとうございました。 本年もスタッフ一同、技術およびサービスの維持・向上に努めてまいります。

 

引き続きご支援、ご指導を賜りますようお願い申し上げます。 本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

 

🐎 本年のご挨拶状と手ぬぐいは、「干支午」を題材に、イラストレーターのYuzukoさんにデザインしていただきました。

 

九頭の馬が駆ける姿に、「万事うまくいく」という意味を重ねた縁起語「馬九行駆(うまくいく)」をテーマとしています。メリーゴーランドの馬をモチーフに、馬が跳ねたり、猫が背に乗ったりと、躍動感のある楽しい表情を持たせています。また、すべての馬を、商いや勝負事に良いとされる「左馬」の向きで描き、新年のスタートにふさわしい吉祥の意図を込めています。

 

皆様の一年が「うまくいく」年となりますよう、お祈り申し上げます。

 

■ デザイン:株式会社アトリエ柚子

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2025年12月26日(金)年末のご挨拶

早いもので、2025年も残すところあとわずかとなりました。

 

今年は、社内見学や資料保存実習、博物館研修の受け入れなど、社外の方をお迎えする機会が多い一年でした。図書館や博物館などで資料保存に携わる方々だけでなく、これまで直接的な接点のなかった分野の企業の方がご相談にいらっしゃることもありました。

 

そうした機会を通じて、日々当たり前のように行っている判断や手順を、改めて言葉にする場面が増え、資料保存という仕事を、あらためて外から捉え直す時間にもなりました。

 

年末を迎え、作業場や執務スペースを整えながら、この一年の積み重ねを振り返っています。本日は仕事納めとなり、恒例の大掃除で工房も気持ちも整えています。

 

今年も一年、弊社ブログをご覧いただき、誠にありがとうございました。
来年も引き続き、資料保存に関する日々の仕事や取り組みの様子をお伝えしてまいりますので、ご覧いただけましたら幸いです。

 

本年も大変お世話になり、心より御礼申し上げます。
来る年も変わらぬお付き合いのほど、よろしくお願い申し上げます。

 

どうぞ良いお年をお迎えください。

 

なお、年内は12月26日(金)17時まで営業し、
新年は1月5日(月)より通常営業いたします。

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2025年12月2日(火)ライオン株式会社様所蔵 ポスター資料の保存修復処置事例を『スタッフのチカラ』に掲載しました

この度、ライオン株式会社様より、昭和初期頃のポスターの修理をご依頼いただき、処置の詳細をスタッフのチカラ『ライオン株式会社様所蔵 ポスター資料の保存修復処置事例』に掲載いたしました。
また、このポスターの作者であり、同社のパッケージデザイナーであった藤橋正枝(ふじはしまさえ)氏の活躍をまとめたウェブページが「ライオンミュージアム」に公開されました。その中で、『蘇った昭和レトロポスター』と題して今回の修復処置のことを取り上げていただいています。
ライオン株式会社ホームページより:ライオンミュージアム「藤橋正枝」

 

ライオン株式会社は1891年(明治24年)10月30日に小林富次郎商店として創業し、来年2026年に創業135周年を迎えます。ハミガキ、石鹸・洗剤などのトイレタリー用品や医薬品、ペット用品などの化学製品の製造・販売を通じて、人々の健康で快適な暮らしを支えてきました。時代を象徴する製品や広告を数多く生み出してきた同社では、1935年(昭和10年)に初の社史を刊行して以降、自社の歩みを示す製品関連資料の収集と保存を続けてきました。現在、登録されている史資料は3万点を超え、商品、パッケージ、写真、ポスター、図書など多岐にわたります。

 

このようなアーカイブ資料は、社内教育プログラムや、情報発信のコンテンツとして活用され、アーカイブ担当部門の活動は社史編纂にとどまらず、インターナルブランディングと社会への発信をつなぐ基盤として位置づけられています。

 

今回修理の対象となったポスターは、制作年は特定されていないものの昭和初期頃と考えられています。今後の研究活用を見据え、資料の情報価値を損なわず、構造安定性の回復と、紙基材の保存状態の改善を目的として、 処置方針を組み立てました。

 

処置前のポスターは、中央縦の破断によって二分されているという損傷状況が目立ちますが、表面に塗布されていたワニス層の経年による黄変のため、画面全体が暗く、ひび割れも生じており、傷みの激しさを強調するような印象がありました。視認性の回復と基材の保存性向上のために、これらの古いワニス層の除去を行いました。

 

ワニスは主に油彩画に使用される画材ですが、近現代の紙資料では、掛図装の大型地図やポスターの表面に塗布されていることがあります。このワニス層は水分を含むと白化するため、洗浄やフラットニングなど水を用いる処置を行う前に除去が必要です。

 

ワニス層の除去作業(タイムラプス動画 ショート)
動画のロングバージョンはYouTubeライオン公式チャンネルより、『藤橋正枝氏描画ポスター修復の様子』でご覧いただけます。

 

 

処置後は、分断されていた図像が再び一枚の画面としてつながり、紙資料としての統一性と、取り扱いにおける安全性が回復しました。さらに、紙面に付着していた汚損や、変色したワニス層が取り除かれたことで、広告のビジュアルイメージが明瞭に視認できるようになりました。

 

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2025年10月21日(火)博多人形を保管する保存箱を製作しました

博多人形は、素焼きの土人形に彩色を施した、博多を代表する伝統工芸品です。釉薬をかけて本焼きする陶人形に比べて脆く、湿度の変化や摩擦に弱いため、取り扱いには注意が必要です。保存環境では、湿度の急変防止と接触・振動をできるだけ抑えることが重要です。

 

今回ご依頼いただいた人形は、歌舞伎の一場面を表現したもので、立ち姿や座り姿など、さまざまな型が見られます。サイズは小さいものが約5㎝、大きいものは約10㎝で、全体で約80点あり、保管方法についてご相談を受けました。

 

保存箱は、人形の高さに合わせて「背の低い人形用」と「背の高い人形用」に分け、1体ずつ独立した部屋に収められるよう仕切りを設けました。箱は取り扱いやすい550㎜角程度のサイズで、3箱に収まる構成としています。

 

陶器やガラス製品などの壊れやすいものを保管する際は、まずポリエステル製の綿布団で全体を包む方法を基本とします。ポリエステル綿は、繊維の間に空気層を多く含み、押してもすぐに形が戻る弾力性があります。この構造によって外部からの衝撃を吸収し、内部へ伝わる力を分散させることができます。ただし、厚みが均一なため、人形のように凹凸のある形を包むと、一部に圧力がかかったり、隙間ができて動いてしまうことがあります。そのため、姿勢や形に合わせて巻く方向や折り返し方を工夫し、安定した状態で支えることが重要です。

 

今回は、こうした保護方法に加えて、輸送と保管の両方に対応できる保存箱が求められました。そこで、現場での作業性と安全性を考慮し、綿布団の代わりに薄葉紙 Qluminを用い、人形を一体ずつ包んで保護する方法をご提案しました。

 

Qlumin は、表面の滑らかさによって彩色面への摩擦を抑えます。また、軽く巻きつけるだけで形状に沿う柔軟性があり、引取り現場での包み直しや位置の調整にも適しています。保存作業のしやすさと安全性を兼ね備えた素材です。

 

博多人形は、1点ずつ薄葉紙で包み、表面の彩色を守ります。箱内の隙間には薄葉紙を詰めて固定し、仕切り内で動かないように保持する構成としました。底には綿布団を敷き、素焼きの人形を下からの衝撃や振動から守る設計としています。

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2025年10月8日(水)立教大学図書館様所蔵 活字組版への処置・保存容器の作成

立教大学図書館様より、活字組版への処置と保存容器の作成をご依頼いただきました。
この活字組版は、活版印刷が衰退していく過程で「技術を示す資料」として、印刷会社から立教大学図書館に寄贈されたものです。木製の台の上に小学館刊行「日本国語大辞典」と推測される紙面1ページ分の活字が組み上げられており、寄贈以来、大切に所蔵されてきました。今回、新たに保存環境を整えるため、処置と保存容器の作成を行いました。

 

「組版」とは
現代の印刷工程における「組版」とは、印刷物の紙面に文字や図版などを配置し、読みやすさや美しさを整える作業を指します。もともとは鉛合金製の活字を一本ずつ組み合わせて結束糸で固定し、印刷のための版を作る工程を意味しました。
初期の活版印刷では、この組版そのものを用いて印刷していましたが、やがて大量印刷の需要に応じて、組版から「紙型」や「鉛版」と呼ばれる型を取って複製版を作り印刷するようになりました。印刷や型取りが済んだ組版は解体され、活字は新たな版を組むために再利用されます。重く、崩れやすい組版そのものが長期間残されることは稀でした。

 

今回の組版は辞書の1ページで、ひらがな、カタカナ、漢字に加えて、アルファベットや記号、号数の異なる文字まで、多様な活字が組み合わされています。一見すると一枚の版のように見えますが、結束糸を解けば数千個の活字に分解されます。空白部分には隙間を埋める「インテル」「コミ」「クワタ」と呼ばれる色々なサイズの「込物(こめもの)」が詰められ、文字間が微調整されています。活字は鉛を主成分とするため、この組版の重量は約13kg。間近で見ると、その緻密さと重量感に圧倒的な迫力を感じます。

 

資料は今後の展示活用を想定し、安全に保管できるよう処置と保存容器の作成を行いました。
隙間に詰められていた段ボールと、これを固定していたガムテープを除去し、木製部分に付着した粘着剤は有機溶剤を用いて丁寧に除去しました。隙間部分にはアーカイバルボードと文化財保存用フォーム材プラスタゾートで作成した取り外し可能なスペーサーを入れ、組版が動いて崩れないようしっかりと固定しました。組版は木製の台ごと、高強度のポリプロピレン樹脂製パネルで底部を補強したトレイに乗せ、側面が開くフラップ付きの被せ式保存箱に収納しました。取り出す際は持ち上げずにトレイごと引き出します。また、寄贈時に用いられていた包み紙も、試し刷りを再利用した貴重な付属資料と考えられるため、仕切り板を設けて同じ保存容器に収めました。

 

立教大学図書館様には、弊社ホームページへの掲載をご快諾いただき、誠にありがとうございました。
ご協力に心より感謝申し上げます。

 

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2025年9月26日(金)学習院大学大学院アーカイブズ学専攻の学生の皆さんと、保存修復の特別実習をおこないました

先日、学習院大学大学院アーカイブズ学専攻の皆さんをお迎えし、保存修復の特別実習を行いました。

 

同専攻では、学生が保存修復の基礎を体験的に学ぶ『アーカイブズ保存修復実習』を実施しており、今回は修士課程の学生と修了生あわせて8名が参加し、下重教授のご協力のもと、当社スタッフが終日指導を担当しました。少人数ならではの雰囲気の中で質問や意見交換を交えながら進めました。

 

午前:和紙資料の補修

虫損による損傷が著しい和書に対する補修について、まずは、虫損程度の違いにより適用する技術と材料の使い分けを紹介しました。サンプル和書を用いて、綴じの解体、本紙の展開、虫糞や付着物のクリーニングを行った後、補修用和紙と小麦デンプン糊を用いて部分的に虫損箇所を補填する繕いについて、解説を交えながらご覧いただきました。

 

続いて、同じサンプル和書の中から、虫損が全体に広がり取り扱いが不便な本紙に対して、和紙を用いた裏打ちや、漉き嵌め機による補填作業を体験していただきました。裏打ちは本紙の裏面に補助紙を貼って強度を高め、全体の安定性を得る方法で、大きな破れや構造的な弱さを補うのに有効です。ただし、厚みや硬さが増すことで手触りや透光性に変化が生じ、原本の質感が損なわれる場合もあります。

 

一方、漉き嵌め補填は欠損部を紙繊維で埋め込み、本紙と一体化させる方法で、境界の段差が目立たず、透光性や表面の表情も本紙に近い仕上がりとなります。その反面、繊維の漉き具合や乾燥管理など技術を要します。二つの方法を比較することで、仕上がりや触感、透過光での見え方など、条件の違いが質感にどのように反映されるかを体感していただきました。

 

午前後半〜午後冒頭:製本用素材の解説とリンプ製本の製作

午前後半から午後冒頭にかけては、製本の素材・構造・歴史について解説し、書物の形態をご紹介しました。題材に、中世ヨーロッパで広く用いられた「リンプ・ベラム(Limp vellum binding/リンプ製本)」を取り上げ、糸綴じから表紙の取り付けまでを実際に体験していただきました。

 

リンプ製本は、板紙を使わず柔らかい羊皮紙などで本文をくるむ簡素な構造を特徴とし、軽量で一定の強度を備えた装丁様式です。装飾的な豪華本や木板・厚紙で仕立てた装丁に比べて経済的かつ効率的であったため、16〜17世紀には学者や修道院で日常的に用いられ、現在も多くの実例が残されています(Foot 1993, Pickwoad 1995)。

一部では後に改装されるまでの仮綴じ的な使い方も確認されていますが、多くはそのまま廉価な実用装丁として長く使われました。こうした「簡素で負担が少なく、必要に応じて解体や再製本も容易」という特性は、現代の保存修復においても利点となります。1966年のフィレンツェ洪水では、英国の製本家クリストファー・クラークソンが被災書物の救済活動に参加し、伝統的なリンプ製本を調査・応用しました。彼はこれを保存修復に適した「コンザベーション・バインディング」として体系化し、国際的に広めました(Clarkson 1975, 1982)。そのためリンプ製本は、歴史的には廉価で簡素な装丁でありながら、今日では保存製本の基礎技法として位置づけられています。

 

• Clarkson, Christopher. Limp Vellum Binding and its Potential as a Conservation Type Structure for the Rebinding of Early Printed Books. 1975; revised 1982.

• Foot, Mirjam. Studies in the History of Bookbinding. Aldershot: Variorum, 1993.

• Pickwoad, Nicholas. Pickwoad, Nicholas, “The Interpretation of Bookbinding Structure: An Examination of Sixteenth-Century Bindings in the Ramey Collection in the Pierpont Morgan Library” 1995.

 

修理実習のおわりに

処置中の劣化した資料を観察しながら、素材や書写・印刷材料、記録方法の特徴を説明し、損傷の程度を解説しました。あわせて、お預かりの経緯や修理方針を紹介し、質疑応答を交えて進めました。保存修復の基本である「観察→判断→処置」の流れを確認し、部分的な補修にとどまらず資料全体を対象に課題を捉える方法を伝えました。

 

保存修復は補修だけで完結するものではなく、状態調査、修理方針の立案、ドライクリーニング、形態の安定化といった初期処置を経て、段階的に修理手順に移ります。今回の実習では、この流れを確認し、損傷の程度に応じて処置を選択する判断基準と基本的な考え方を共有しました。

 

午後:保存容器づくり

午後後半は保存容器の制作を行いました。採寸から展開図の確認、ボードの裁断、折り筋入れ、折り加工、組み立てまでを体験し、資料に合わせて仕立てる工程を学びました。保存容器は、補修と並ぶ予防保存の方法であり、箱やフォルダーといった容器が湿度、光、埃、機械的な衝撃などの外的要因から資料を守る役割を果たします。

「保存容器(enclosure)」という概念は、米国の製本家ヘディ・カイルが 「Library Materials Preservation Manual(1983年)」で示したことで広まりました。エンクロージャーは単なる箱や封筒ではなく、保護を要する資料を収める保存目的の容器を指し、現在では、preservation enclosuresの名称で保存分野の文献や資材カタログに広く定着しています。

 

ヘディ・カイルが考案した「カイル・ラッパー(Kyle wrapper)」は、一枚の厚紙を折るだけで冊子や薄い資料を包む簡易容器です。糊や金具を使わず短時間で作れるため、現場で一次的に資料を保護する方法として適しています。シンプルな構造の中に、資料を安全に包むという保存の考え方が形になっています。

 

• Kyle, Hedi. *Library Materials Preservation Manual: Practical Methods for Preserving Books, Pamphlets, and Other Printed Materials.* New Castle, DE: Oak Knoll Books, 1983.

 

実習では、参加された方々が熱心に取り組み、落ち着いた姿勢で学びながらも楽しむ様子がとても印象的でした。長時間に及びましたが、その熱意が自然と場をつくり、最後まで和やかな雰囲気の中で進みました。

 

破れや欠損の補修にとどまらず、素材や構造、劣化の広がりを踏まえて資料全体を見つめ、どのような処置や対応がふさわしいかを共に考える時間は、私たちにとっても貴重な経験となりました。

 

 

 

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2025年9月5日(金)ガラス製テーブルランプ用の保存容器を製作しました。

有限会社修復研究所二十一様のご依頼により、補修処置を終えたテーブルランプ作品のための保存容器を製作しました。同社は全国の美術館・博物館・資料館や個人コレクションを対象に、絵画・壁画・立体作品など幅広い修復を手がけています。

 

今回対象となったテーブルランプは、半球形のガラスシェードと、台座から支柱にかけて外側までガラスで覆われた、非常に繊細な作品です。こうしたガラス製品は、展示中だけでなく、収蔵庫内での保管や展示替えの際の移動でも破損の危険が高く、専用の保存容器が欠かせません。この点をふまえ、クライアント様のご希望に沿うかたちで、シェードとスタンドをそれぞれ専用の保存容器に収め、さらに2つの箱を外箱にまとめて収納できる構造としました。ガラスの脆さを守りつつ、収蔵庫や展示室での取り扱いのしやすさも兼ね備えた、安全性と実用性の両立を目指した設計です。

 

[スタンド用保存容器]

スタンドは上下二箇所のスペーサーで固定します。床面のスペーサーは台座の直径に合わせて円形にくり抜き、底面にもクッション材を敷くことで衝撃を和らげます。支柱部分は二分割のスペーサーで軽く挟み込み、容器を動かしても支柱が点で支えられ、接触面が最小限に抑えられる仕様です。これにより「固定しすぎず、揺れても壊れない」バランスを実現しました。スペーサーには文化財保存用フォーム材プラスタゾートを使用。軽量かつ弾力があり、長期収蔵にも適しています。容器本体は前面が大きく開くフラップ仕様被せ箱で、スタンドを無理なく出し入れできます。

 

8.収納イメージ図
左:スタンド用容器 右:シェード用容器

 

 

[シェード用保存容器]

ガラスシェードは上下と周囲をポリエステル製の綿布団で包み込み、柔らかい弾力で全体を守ります。綿布団は空隙を埋めることで揺れを抑え、万一の衝撃も吸収する仕組みです。容器本体はスタンド用と同じフラップ仕様を採用しました。

 

[外箱]

2つの保存容器は幅・奥行きを同寸に設計し、外箱に積み重ねて収められます。外箱には高さのある収蔵物の出し入れに適したつづら式保存箱を採用しました。布製の平紐を取り付けており、持ち手としての機能と補強の役割を兼ねているため、学芸員の方が収蔵庫から展示室へ安心して移動できるよう配慮しています。

完成した保存容器一式は、修復研究所二十一のスタッフ様により作品が収納され、無事にクライアント美術館の収蔵庫へ納められました。

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2025年8月21日(木)明治大学博物館所蔵 内藤家文書「宮崎舊御領絵図」の保存修復処置 ― 絵図の保存・活用に向けた取り組み ―

明治大学博物館では、江戸時代の譜代大名・延岡藩主であった内藤家に伝わる、膨大な記録群「内藤家文書」を約5万点にわたり所蔵されています。 譜代大名は領地の転封(てんぽう)がたびたび行われたため、文書などの記録資料がまとまった形で伝わることは少なく、その点でも内藤家文書は、当時の大名家と幕府との関係を知る手がかりとなる、きわめて貴重な歴史資料です。

 

弊社では近年、この内藤家文書の中から領地に関する大型絵図の修復をご依頼いただき、継続的に保存修復処置を行っています。

 

今回処置を行った「宮崎舊御領絵図」(内藤家文書2-23-11-36-27)は、縦1,650mm × 横1,500mmにおよぶ大判の絵図で、もともとは20枚の本紙を糊付けで貼り継ぎ、一枚に仕立てられていたものです。 ところが、処置に着手した時点では、その糊継ぎはほとんど剥がれており、絵図は一体としての形を失っていました。紙片はすべてばらばらに分かれ、それぞれがどこに位置していたのか、順序や接合関係も不明な状態でした。

 

そのため、全体の構成を把握するには、各紙片の内容や余白の形、継ぎ目の痕跡などを手がかりに、位置や順番を一つひとつ丁寧に照合していく必要がありました。まさに、断片となったパズルを組み直すように、元の図像構成を読み解いていきました。また、保管時の物理的な状態や環境要因により、折れぐせやシワが定着し、一部にはカビや虫害による劣化も確認されました。

 

修復処置では、まず、かろうじて残っていた既存の糊継ぎもすべて丁寧に剥がし、20枚の本紙に解体。そのうえで、一枚ずつに対してドライ・クリーニング、欠損部分の補修、シワ・折れぐせの伸展処置を行い、再接合のための準備を整えました。

 

その後、絵図の構成に合わせて南側・北側の二群に分け、隣接する本紙同士を順に継ぎ合わせながら、全体を段階的に組み上げていきました。最後に中央部分で両群を接合し、一枚の絵図として再構成されました。

 

資料は今後も折りたたんだ状態で保管されることを考慮し、本紙の継ぎ目や構成に配慮しながら、広げやすくなるよう新たな折り筋をつけて仕上げました。

 

修復を経て、資料の可読性と保存性は大きく改善され、今後の活用と継承に適した状態へと整えることができました。

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2025年8月5日(火)夏のごあいさつ:今年も「オリジナルガーゼハンカチ」をお届けしています。

暑さが本格的になってきました。
毎年この時期にお配りしている、夏のごあいさつハンカチ。今年も、ささやかな感謝の気持ちを込めてお届けしています。デザインは、アトリエ柚子 イラストレーターYuzukoさんによるオリジナルです。

 

今回のテーマは「海のいきもの」。
深い海を思わせる青に、クラゲやイカ、小さな魚がふわりと泳ぎ、ところどころにサンゴが彩りを添えています。海の中をのぞき込んでいるような静けさと、どこか愛らしさのある一枚です。

 

やわらかな綿のガーゼ生地で、日常使いにもなじみます。暑い季節に、そっと気持ちを和らげる一枚になれば幸いです。

 

今年の夏も、どうぞ健やかにお過ごしください。

 

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あわせて、弊社の夏季休業期間についてお知らせいたします。

 

【休業期間】2025年8月9日(土)~8月17日(日)

 

期間中にいただいたメールでのお問い合わせにつきましては、
8月18日(月)以降、順次対応させていただきます。

 

ご不便をおかけいたしますが、何卒ご理解のほどよろしくお願い申し上げます。

 

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2025年7月2日(水)修復作業に使用する和紙の染色について

紙資料の修復作業では、欠損した部分を補うための補填作業に「染色和紙」を使用します。本紙の欠けや表紙の破損部を補填するほか、表面を被覆して補強する際にも使用します。生成りの和紙(未染色)を使う場合もありますが、染色された補修紙の方が文字や図像が読み取りやすくなることもあり、資料の性質や運用方法に応じて選択されています。

 

補修紙の染色は社内で調合
修復作業に用いる材料は他にも様々ありますが、この染色和紙については、既製品ではなく自社内で調合・染色しています。使用する染色材料には、天然染料、化学染料のほかアクリル絵具などがあり、当社では紫外線に対して高い堅牢性をもつ直接染料を中心に選定しています。染色後は乾燥・蒸し工程を経て熱定着させ、さらに洗浄して余分な染料を取り除きます。工程自体はシンプルですが、乾燥後の色味がテスト時と異なって見えることもあるため、その都度、スタッフ同士で調整方法や色の再現についてノウハウを共有しています。

 

補修紙の厚みと素材選びの考え方
染色だけでなく、補修紙の厚みの選定も重要です。基本的には原本の紙に近い厚みを選びますが、近現代資料では酸性劣化によって本紙が非常にもろくなっているケースが多くあります。このような場合には、あえて厚みを抑えて補修しないと、接着面にかかる負荷に本紙が耐えられず、新たな破損を生じさせてしまいます。そのため、厚すぎず薄すぎず補強として十分な効果が得られるかどうか、補修後の状態が安定することはもちろん、他の修復処置との整合性や、保存容器・収納形態との相性も考慮しながら、十分な検討の上で慎重に厚みを決定しています。使用する紙の種類は楮紙が中心ですが、資料の素材感や質感に応じて、雁皮紙や三椏紙を選ぶこともあります。

 

劣化による色の多様性
和紙の種類と厚みを決めたら、次に行うのが色の調合です。経年劣化した紙は、その素材、資料の性質や使われ方、劣化の要因、保管環境などによって、実に多様な色に変化します。「白は200色ある」というフレーズは最近耳にすることもありますが、本来は白かったはずの紙も、時間とともに黄変・褐変し、黄みがかった肌色や、赤みのある淡い黄土色、くすんだカラシ色など、部位によっても異なる色あいを見せます。とくに本の天と地や、ポスター、地図の周辺と中央など、露出や劣化の度合いに応じて色のムラが顕著に現れることもあります。そのため、染色する際はベースの染色液をいくつかに取り分けておき、補色を加えてくすみを調整したり、彩度を抑えたりして、近い色相の染色和紙も作製しておきます。こうした準備を重ねておくことで、実際の補填作業時に、より自然で違和感のない仕上がりを目指すことができます。

 

資料と調和する色を選ぶ―補填作業の裏側
補填作業は、本紙と補修紙の色を完全に一致させることが目的ではありません。資料の紙質や経年による色の変化に合わせて、最も自然に見える補修紙を選ぶことが重要です。作業時には、色の基本トーンを基に、色相・明るさ・鮮やかさの微妙な違いを見極め、資料に馴染む近似色・類似色の補修紙を数種類から数十種類準備します。わずかな色差で印象が大きく変わるため、「どの程度までなら自然に見えるか」という“許容の幅(トレランス)”を考慮し、必要な色のバリエーションを整えています。

 

こうした準備や判断には、スタッフ一人ひとりの丁寧な観察と気配りが欠かせません。染色の調合から補修紙の選択に至るまで、日々意見を交わしながら感覚と経験を共有し補い合っています。わずかな違いにも目を向け、熟慮し、調整する。その工夫と積み重ねが補填作業の確かさを支えています。

 

 

コンサベーション・グループ(修理部門)に関する記事はこちらからまとめてご覧いただけます。
『今日の工房』より コンサベーション事例まとめ

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2025年6月13日(金)創立25周年ノベルティのご紹介

おかげさまで、株式会社資料保存器材は創立25周年を迎えることができました。
この節目の年にあたり、日頃よりご支援いただいている皆さまへの感謝の気持ちを込めて、記念のノベルティを製作いたしました。ご挨拶やお礼の機会にあわせて、順次お渡ししております。

 

手に取っていただいた方の記憶に、そっと残る一冊となりましたら嬉しく思います。
これからも変わらぬご支援を賜りますよう、どうぞよろしくお願いいたします。

 

ノベルティについて
今回のノベルティは、弊社のコーポレートカラーを基調にした2種類のオリジナル測量野帳です。作業着の胸ポケットにもすっきり収まるスリムでコンパクトなスタイルと、立ったままでも筆記できる硬い表紙が特長です。現場で働く方々にも実用的にお使いいただける一冊となっています。

 

ノベルティ全体のデザインは、創業当初よりご一緒しているイラストレーター・Yuzukoさん(株式会社アトリエ柚子)によるオリジナルです。弊社の企業姿勢や想いを、長年にわたりデザインを通じて丁寧に形にしてくださっています。

 

封筒は、福永紙工株式会社様による特製仕立てで、用紙には株式会社竹尾様の「ルミネッセンス マキシマムホワイト」を使用しています。
節目の年に、これまでのご縁にあらためて感謝をお伝えできればと思います。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

 

▪️デザイン:株式会社アトリエ柚子 イラストレーター Yuzuko
▪️封筒製作:福永紙工株式会社
▪️用紙:株式会社竹尾「ルミネッセンス マキシマムホワイト」

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2025年5月19日(月)大型台差し箱を縦置きで保管するための平紐加工

額装された美術資料や大型の紙資料など、形が特殊で重さのある貴重な資料を安全に保管するために、弊社では「台差し箱」をおすすめしています。
本体と蓋が分かれる堅牢な構造で、収納時の安定感があり、資料の出し入れがしやすく、長期保存にも適した仕様です。

 

従来より、大型の台差し箱を縦置きで保管し、限られた保管スペースを有効に活用したいというご要望が、文化施設を中心に寄せられてきました。
ただ、縦置きにすることで蓋が自重や振動で開きやすくなり、内部の資料が不安定になるおそれがある点が課題とされてきました。

 

その対策として、弊社ではこれまで、別添えの平紐で蓋を固定する方法をご案内してまいりましたが、特に大きなサイズの保存箱になると、紐が長くなりやすく、取り扱いにやや手間がかかる場面もありました。

 

こうした課題に対応するために、今回ご紹介するのが、平紐をあらかじめ箱本体に組み込んだ新しい仕様です。紐は資料に干渉しないよう、箱の外周部に取り付けられており、蓋を閉じたあとに箱の側面で結べる構造になっています。この工夫により、紐がたわむことなく、大型の箱でも蓋をしっかりと固定することができます。

 

 

[主な特長と利点]
・操作が簡単で、誰でも同じ手順で結ぶことができる
紐の位置が決まっているため、誰でも迷わず操作でき、締め忘れや誤操作を防げます。紐の紛失や再装着の手間もありません。

 

・縦置きでも安定した保管が可能
結ばれた紐がしっかり蓋を固定するため、縦置きでも蓋の開閉や資料の飛び出しを防ぎます。自立性も高く、棚や保管ラックにも安心して収納できます。

 

・資料保存に適した素材と構造
平紐には、化学的に安定した無漂白コットンを使用。中性紙と同様、長期保存に適しています。結び目も柔らかく、他の資料や手を傷つける心配はありません。

 

・資料に触れない設計
紐は資料に接触しない位置に取り付けてあり、圧迫や摩擦といった物理的な影響を避ける構造になっています。

 

・用途に応じた結び方のカスタマイズ
標準仕様は「蝶々結び」がしやすい長さと位置に設定されていますが、用途や運用方法等のご要望に応じて、より密着性や操作性を重視した仕様にも対応可能です。

 

 

資料の形状や運用環境に応じて、最適な設計をご提案いたしますので、どうぞお気軽にご相談ください。

 

 

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