今日の工房 

週替わりの工房風景をご覧ください。毎日こんな仕事をしています。

2020年10月23日(金)絨毯を保管する大型の保存箱を製作しました。

染織品や織物のように額装のない大きな作品を保管するときには、折れや皺ができないように中性紙の紙管を用いて、作品の表を外側にして筒に巻きつけ保管することがあります。特に絨毯やタペストリーなどは刺繡がほどこされている部分といない部分の境目に皺が生じる可能性があり、さらに紙管が折れ曲がりできる皺などで作品を傷つけないよう直径が大きい紙管を使い、保存箱は蓋があり他の箱が上に積み重ねられても十分耐えられる頑丈なものを選ぶ必要があります。作品を箱へ収めた後は、緩衝材を用いて内部の隙間を埋めていきます。これにより、箱の中で文化財が揺れるのを防ぐとともに、衝撃を吸収することができます。

 

今回保存箱を製作した絨毯は全部で20点あり、大きいものだと長さが4m、重さが35kgあります。

 

保存箱の形状は巻子用保存箱で、底面と天面を2重、側面は3重にアーカイバルボードを貼り込み補強しています。大きく重たい絨毯を収納する箱は、歪みが生じないように4重補強しています。絨毯を巻きつけた紙管を支える軸受も8㎜厚のボードを積層した通常より堅牢な構造です。絨毯が箱の底面に接しピンポイントで圧力がかかることがなく、また、紙管の口側を持ったまま軸受に置き、重たい絨毯も安全に出し入れできます。さらに、上から軸受を被せ、紙管を360度囲むことによって、箱の中で固定できるよう工夫されています。収納後は綿布団や薄葉紙をあて、全体を包み込むようにして保管します。

 

長さが4m、幅と高さが40㎝の保存箱は5人ががりで製作しました。大型の保存箱を製作する際は、接着剤を多く塗って補強し、硬化してしまう前に手の平でしっかりと圧着することで、より強い構造の保存箱になります。

 

 

【関連記事】

・『今日の工房』2014年03月13日(木)全長3メートルの巨大な巻子を収納するための大型箱

・『今日の工房』2014年05月16日(金)染織品を中性紙管に巻いたまま収納するための箱

 

2020年10月15日(木)公的機関や企業のお客様だけでなく、個人のお客様からのご依頼もお引き受けしております。

弊社では個人のお客様からの資料保存に関するご相談、修理や保存容器のご依頼も承っております。ご自宅にある古い書籍や思い出の写真アルバム、地区やお寺・神社に伝わる文書、大切にしている日記、賞状、手紙等々–過去にご依頼いただいた実績の中から、長年愛用されてきた革装の辞書と、代々伝わる地図の修理事例を紹介いたします。

 

革装の辞書は、表装革のレッドロット化(革が長期間にわたり空気中の汚染物質に曝されることで赤茶けた粉状に劣化する現象)が進行し、触れると革が剥がれる箇所もありました。背表紙は色あせ、表紙周辺にひび割れや欠損、ヒンジ箇所(表紙と本体の結合部)に裂けが見られました。本紙や本体に傷みは無く、もとの雰囲気を保ちつつ本を開くことができるようにという、ご依頼でしたので、処置としては、表装革に生じたレッドロットに対する手当てを行い、背表紙を本体から一旦外し、背をこしらえ、新たに和紙でヒンジを設け、本体と背表紙を再接合しました。表装革の欠損箇所は革の色に合わせて染色した和紙で補填しました。

 

地図資料は、A1サイズ程の薄い和紙に墨で描かれた手書彩色図。数枚の和紙を継ぎ足して一枚に描き、渋引きされた和紙で裏打ちされていました。この地図は頻繁に使われたのか、周辺に破れや摩擦による穴が見られ、また、折り畳んだ状態で保管されていたため折れ皺や折りクセが強く残っていました。お客様のご希望は、地図を電子化し、資料の利用はデジタルデータで、現資料は今以上に傷まないように保管したいということでしたので、処置としては、フラットニングし、破損箇所を和紙とでんぷん糊で修補したのち、デジタル撮影をしました。その後、ロール・エンキャプシュレーションを行い、複数本まとめて保存箱に収納しました。

 

ご相談はお気軽にお寄せください。

 

 

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2020年10月7日(水)共立女子大学・共立女子短期大学図書館様所蔵の版画作品133点への保存処置 -既存台紙からの取り外し・マッティング・保存容器収納まで-

版画作品の来歴について

近代教育学の始祖・絵本の父と呼ばれるコメニウスの生誕400年を記念し、 1992年に開催された「国際蔵書票コンペティション」にて選ばれた52作家の版画作品、全133点。

 

版画作品の状態と保存処置方針について
版画作品は酸性紙の台紙に接着剤や粘着テープで貼りこみそのまま額装され段ボール箱に収納されていました。貴重書室に保管されていましたが、保存の観点から見た場合、適切ではない作品の保存形態であることが問題となりました。

 

古い台紙には酸性紙が使用されていることが多く、額縁の内部環境を酸性に傾けたり長期間接触していると作品の紙や色材に酸の影響がでる恐れがあります。また、台紙に固定するための接着剤やテープ類がしみの原因となることもあります。一部の作品は額縁内で剥がれ落ちており、表面が損傷する恐れもあることから、作品を酸性台紙から外しクリーニングなどの保存処置を行ったのち、1点ごとにブックマット[※1]へ装着しました。処置後の版画作品は、専用の保存箱へ収納し、保存性と取り扱い易さを考慮した形にしました。

 

[※1]ブックマットは版画作品などを額装にするときに使われているマウント方法です。窓抜きした表側のボード(ウィンドウマット)と作品を支える裏側のボード(台マット)を、本のように一辺をテープなどで接合する形式です。このようなマット装丁は作品本体へのアクセスも容易で、作品の固定方法によっては背面の観察もできます。ブックマット装で作品を長期に保存するためには、作品に悪影響を与えない素材を選択することが大切です。

 

主な保存処置は下記のとおりです。

 

1. 台紙からの取り外し
糊や粘着テープで台紙に貼り込まれた版画作品を取り外した。糊による接着の場合は、接着面の台紙を一層剥がし版画の裏面に残った台紙に僅かな湿りを与えて除去した。粘着テープによる接着の場合は、温めたスパチュラを差し込み粘着剤を緩めて除去した。版画の裏に貼られたキャプションは粘着テープの除去後、でんぷん糊で元の位置に貼り戻した。

 

2. ドライ・クリーニング
取り外した版画作品は、画面を傷つけないよう細心の注意を払いながら刷毛やクリーニングクロスを使い表面の塵や埃を除去した。その後、元の並び順や登録番号のまとまりごとにポリエステルフィルム製リフィルに入れ一時保管し、ブックマットへのマウント作業に備えた。

 

3. 採寸、ブックマットの作製とマウント作業
版画作品それぞれのサイズに合わせたブックマット[※2] を作製した(レモン画翠へ依頼)。ブックマットの窓部分は作品サイズに合わせて作製し、全体の外寸は額縁サイズに統一した。台紙マットへの固定はでんぷん糊と和紙を使いTヒンジ形式で行った。作品をめくれば裏に貼付したキャプション等の情報が確認できる。

 

[※2] ブックマットのボードは特種東海製紙株式会社製ピュアマットを使用。窓マット:特厚口(2.5㎜)/ 台マット :厚口(1.7㎜)

 

4. 保存容器の作製、収納
ブックマットを15点ずつ収める保存容器を作製した。版画作品と窓マットの間には新薄葉紙Qlumin™くるみんを挟み、各ブックマットの間には中性紙(ピュアガード)を間紙として挟んだ。こうした間紙は作品表面を保護し外からの湿気や酸性ガスを緩衝するので、作品の部分的な変色や劣化を防ぎ保存性が向上する。保存容器にはブックマットの出し入れを安全に行えるようにトレイを付けた。

 

 

【関連記事】

・『今日の工房』2009年4月23日(木)デザイン画を収納するブックマット 
・『今日の工房』2014年9月18日(木)ブックマット形式の染織布用保存箱 
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・『今日の工房』2020年7月31日(金)慎重な取り扱いが必要な資料にはフラップ付保存箱に「トレイ」を組み合わせて 

2020年9月29日(火)パーチメント、ヴェラムで装丁された本の劣化を予防する

「革(leather)」とは、動物の原皮を石灰につけて毛や脂肪を除去した後、植物タンニンやクロム等で鞣し、皮のコラーゲン繊維を安定、固定化させたものです。
これに対し、「パーチメント(parchment)」「ヴェラム(vellum)」とは、原皮を石灰につけて毛や脂肪を除去した後、鞣しを行わず木枠に張った状態で乾燥させ、シート状にしたものを言います。表面は密で摩耗に強く、用途にあわせて表面を削って厚みを調整し、中世から書写材料として使用されてきました。

 

16世紀以降には、これらを本の表装材として用いたものがあります。
パーチメント、ヴェラムは吸湿性があり、反りやうねりが発生しやすい素材です。湿気を吸うことでコラーゲン繊維が膨潤し、乾燥する過程で収縮します。表装材として用いられている場合、収縮によりヒンジ部の亀裂やこれらの損傷部分の捲れ、巻き込み部分の剥がれや、表紙そのものの反りを引き起こすことがあります。
ヴェラム装丁本のように形態変化が心配な資料は、適したサイズの保存容器に収納することで、こうした周囲の環境変化による影響を最小限に抑え、損傷の拡大を予防します。

 

▶参考:画像や文化財保存のためのツール開発と教育、実践を行っている米国のImage Permanence Institute(IPI:ロチェスター工科大学画像保存研究所)が、湿度条件の変化によってヴェラム装丁本の表紙に生じる影響の実験映像をYouTubeで公開しています。

 

この実験映像は、相対湿度を55%の平衡状態から25%へ、そして55%に戻し、最後に75%に移行させながら、貴重書の表紙の物理的な変化を撮影したものです。室温で12時間かけて行われています。日常的に起こっている環境湿度の変動に対し、資料がどのように反応するのか、どういった負荷がかかり、時間の経過で劣化へと繋がるかを示唆する非常に興味深い映像です。

 

 

 

 

 

 

 

 

Effect of Humidity Fluctuation on a Rare Book

RIT | Image Permanence Institute

 

 

2020年9月10日(木)明治新聞雑誌文庫様より、一枚物「寺家村逸雅墓銘」の修理をご依頼いただきました。

東京大学大学院法学政治学研究科附属近代日本法政史料センター明治新聞雑誌文庫様は、明治初期から昭和戦前期にかけての新聞や雑誌等の収集・調査・整理を行っており、明治期に日本で刊行された新聞雑誌類では国内最大のコレクションを有しています。現在は耐震改修工事のため休館しており、再開館は2021年の夏に予定されています。

 

ご依頼いただいた資料は、明治新聞雑誌文庫の初代主任である宮武外骨の友人・長尾藻城より寄贈された一枚物の資料です。「改進新聞」社主・寺家村逸雅の墓銘を和紙に印刷したもので、明治新聞雑誌文庫のご担当者様のお話では、そのような資料が寄贈されたことは昭和6年6月発行の「公私月報」に記載されており把握していたが、所蔵資料として整理された記録がなかったため、これまで文庫内にはないと考えられてきたそうです。しかし、今回の耐震改修工事に伴う資料整理と移転作業の際に偶然発見されました。 

 

資料は厚手の台紙に貼られ剥き出しの状態で壁に掛けられていたため、埃が堆積し全面にフォクシングが発生しており、本紙周縁には破れが生じていました。更なる劣化の進行を防ぐことを目的に、本紙を酸性度の高い台紙から剥がして全面的にドライ・クリーニングをおこなった後、着色汚れの軽減、酸化・酸性劣化の抑制処置として洗浄と水性脱酸性化処置を行いました。その後、本紙の紙力回復のため極薄の和紙で裏打ちを行いました。 

 

ご返却後は、明治新聞雑誌文庫様の新たな所蔵資料の一つとして整理される予定です。

 

 

【関連記事】
・『今日の工房』2019年7月18日(木)汚れた紙資料の水性処置では、洗浄の前にまず「濡らす」ことがなぜ重要なのか?

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・『今日の工房』2014年10月23日(木)新聞資料に対する洗浄・脱酸性化処置

・『スタッフのチカラ』2015年12月2日(水)資料に付着した汚れやカビのドライ・クリーニング

 

2020年9月3日(木)「特大のポスター作品を収納するタトウフォルダー」

縦1.8×横1.2メートルの超大判ポスター作品を、3枚まとめて保管するタトウフォルダーの製作依頼を受けました。

 

タトウフォルダーは、大判で1枚物の紙資料を挟み込んで収納するための薄型のアーカイバル容器です。大きく分けて2種類のパーツを組み合わせて製作します。外側のパーツは二つ折りに加工したアーカイバルボードを使用し、縁に取り付ける平紐を結んでとじる構造です。資料を収納する内側のパーツは、無酸・無アルカリの中性紙を使ったタトウ形状の十字型フォルダーで、4辺のフラップを立ち上げ包み込むように畳む構造です。資料が直接触れる面が平滑でより良い保存状態になるように配慮されています。

 

今回製作したタトウフォルダーは縦1.8×横1.2メートルの超大型サイズのため、使用する紙・ボードの原紙サイズの都合から、内外のパーツは2分割にしつなぎ合わせています。

 

作品が収納される中性紙のタトウは外側からボードに挟み込まれ、上下左右均等に付いた平紐を結び固定されているので、垂直に立てて持ち運んでも開く心配がなく、安全に保管・管理することができます。縦置きにも対応でき、厚みの外寸が15mm程度のため場所をとらず省スペースで保管できます。

 

 

【関連情報】
『今日の工房』2014年4月24日「A1サイズのタトウフォルダーを大量に製作するための、特設作業台」

 

2020年8月26日(水)お客様の現場に出かけて和装本の綴じ直し作業を行いました。

目白にある徳川林政史研究所様にて、和装本の綴じ直し作業を行いました。

徳川林政史研究所は尾張徳川家第19代当主徳川義親によって設立された公益財団法人徳川黎明会に所属する研究所です。国内で唯一の民間林政史研究機関であり、現在は林政史の分野に留まらず、尾張藩の研究や江戸幕府に関する研究なども行っています。

 

同研究所の所蔵史料のうち、和綴じ、主に四ツ目綴じの糸が切れている史料を綴じ直す作業を2017年度より継続的に行っています。史料の持ち出しが難しいことや、特殊な道具が必要なく、糸、針、はさみがあればできる処置のため、研究所の閲覧室の一角をお借りし、スタッフ2名、約一日かけて70~80冊の綴じ直し作業を行います。

 

歴史ある重厚な建物の内部は、都会の喧騒を感じさせない静謐な空気に包まれています。趣のある閲覧室での作業は、工房とはまた違う雰囲気を味わうことができ、毎年の楽しみとなっています。

 

 

【関連記事】
・『今日の工房』2015年9月9日(水)和装本の綴じ直しに使う絹の糸と布。
・『今日の工房』2017年3月15日(水)和装本(四つ目)を仕立て直す。 

2020年8月20日(木)たばこと塩の博物館様からのご依頼で「嗅ぎたばこ入れ」を収納する保存容器を製作しました。

「嗅ぎたばこ入れ」はヨーロッパで嗅ぎたばこが広く嗜まれ始めた17~18世紀ごろ、外出時の携帯や卓上での保管のために使われていました。当時の宮廷社会を中心に広まり、その流行は上流階級の人々のファッションとなったことに深い関係があります。貴金属製の本体にエナメル加工を施したものや宝石を散りばめたものなど、美麗な装飾を施した嗅ぎたばこ入れもありました。また、嗅ぎたばこ入れは中国にももたらされ、瓶や壺の形をした独特の鼻煙壺(びえんこ)となりました。単なる道具にとどまらないその優れた意匠や質感から工芸品的価値が高く、現在でも収集家は少なくありません。

 

*たばこの歴史と文化-嗅ぎたばこ- たばこと塩の博物館様ホームページ参照
https://www.tabashio.jp/collection/tobacco/t7/index.html

 

たばこと塩の博物館様所蔵の嗅ぎたばこ入れは、ある収集家から寄贈されたものが中心で、貴金属や動物の角などの様々な素材からできています。そのうち約400点は収集家自身がしつらえた仕切り付きの布張り箱に収納され、恒温恒湿の収蔵庫の棚に2段に重ねて保管されていましたが、この元箱には蓋が無く、粉塵や紫外線など外環境からの影響が懸念されました。

 

そこで、容器内の仕切りや棚に2段重ねできるサイズ、といった元の布張り箱の利点を踏襲しながら、「仕切りを嗅ぎたばこ入れのサイズに合わせて動かせる」、「より安定して2段に重ねられる」、「外環境からの影響を低減させる」といった機能を追加したアーカイバル容器をご依頼頂きました。

 

今回製作した保存容器には、内部に可動式の仕切り、底面に2段重ねを安定させる凸部、天面に開口部を覆う蓋を付けています。

 

容器の長辺側内壁には複数の切り込みを設け、任意の位置で仕切りを差し込むことができます。これにより嗅ぎたばこ入れのサイズに合わせて容器内を仕切ることができます。また、容器を2段に重ねる際、下段容器に本体の裏側に設けた凸部を嵌め合う構造で安定性が増すとともに構造上の補強となり歪みに強い作りです。この構造は全ての容器に共通しているため、従来の運用と同じく、どの容器の組み合わせでも2段に重ねることができます。

 

そして上段容器には平板状の蓋をのせ、粉塵や紫外線などの影響を防ぎます。蓋の裏側には容器裏側と同様、開口部に合わせて設計した凸部を貼り付け、容器の幅と奥行きを増やすことなく、本体容器にぴたっと嵌まる構造になっています。

 

なお、本稿の掲載ならびに写真の撮影・使用にあたり、たばこと塩の博物館様の多大なるご協力を頂きました。誠にありがとうございました。

 

 

【関連商品】
・アーカイバル容器オプション 仕切り

2020年8月6日(木)超音波ミストを作る -修理に用いる手道具

修理に用いる道具や機械は様々ありますが、専門の道具(リーフキャスターや刷毛など)を使用する場合もあれば、ほかの分野の用途、例えばキッチンツールや医療用器具、ホビーグッズなどの中にも応用できる道具があります。私たちが普段使っている手道具もそうした工夫から見つけることが多く、「ポータブル超音波ミストスプレー」もその一つです。装置の中に水を入れてスイッチをつけると、超音波振動により微細なミストが発生する仕組みで、本来、喉や肌が乾燥した際にミストを顔に吹きかけたり口から吸引するための機器です。

 

このスプレーは、狙った範囲に部分的にミストを当てることができるので、書写材料や本の構造に負担をかけずに紙を伸ばしたい時や、破れの修補を行う際、あらかじめシワや折れを伸展しておきたい時などに使用しています。

 

また、超音波振動により発生するミストは、紙に対しゆっくり穏やかに水分を与えることができ、紙資料の修理分野ではトレーシングペーパーなど水分に敏感な素材のフラットニング処置にも用いられています。「少しの水分で十分」という場面ですぐ手に取れる小回りの良さと、瞬時に均一な加湿が行える点で重宝しています。

 

【関連記事】
・2019年5月22日(水)アーカイバル容器の折り筋に骨ヘラでひと手間加えると、仕上がりがいちだんときれいになります。

・2018年8月8日(水)粘着台紙に貼られた写真の剥離は、刃先を温めたペインティグナイフで。

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・2017年11月15日(水) 修理工房で使う2種類の加湿器

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・2017年5月31日(水) 耐水性を付与できるシクロドデカンを線状に資料に含浸して水性処置をする。

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・2016年2月17日(水) 大判の汚染ガス吸着シートGasQは手作業で一枚ずつカット

・2007年03月05日 いろいろな重さと形の重石

2020年7月31日(金)慎重な取り扱いが必要な資料にはフラップ付保存箱に「トレイ」を組み合わせて

傷んだ資料や構造的に繊細な資料は「トレイ」にのせてフラップ付保存箱へ収納することで、資料に直接手を触れずに安全に出し入れでき、取り扱いに起因する物理的な損傷を軽減できます。

 

「トレイ」の形状を決めるには、資料そのものの特徴(形・材質・寸法)、重量・状態(脆い、凹凸がある等)の他、保管条件、利用頻度なども考慮します。

 

割れやすいガラス瓶には文化財保護用フォーム材AZOTE® (プラスタゾート)を貼り合わせたトレイをおすすめしています。フォーム材で底部を固定でき安全に出し入れができます。

 

織物や染織品などの布資料には、アルカリに反応しやすいものもあるので、弱アルカリ性のボードに直接触れないように緩衝材を用いたり、ノンバッファー紙で包みトレイにのせます。

 

細かい突起物がある立体模型や装飾のある立体物には、移動時に箱の内側に当たらないよう縁付きのトレイを作成したり、振動や摩擦を防ぐため緩衝材を取り付けたりできます。重量のあるものにはトレイを補強し歪みやたわみが出ないよう堅牢な構造にもできます。

 

割れたガラス乾板や傷みのひどい染織品など、極力触れない方が良いものに対しては、シンク型のトレイをおすすめします。取り扱いが楽で保存箱に重ねて収納できます。

 

「トレイ」は複雑な形状の工芸品や陶磁器、立体物や博物系の資料、ガラス乾板写真など、様々な資料の適切な取り扱いを補助するツールとして有効です。資料の形や傷み具合、取り扱い方法の違いに応じたトレイの形状をご提案いたします。

 

 

【関連記事】
・『今日の工房』2018年4月11日(水)より安全に出し入れしたい資料にはフラップ付きをお勧めしています。

・『スタッフのチカラ』日本郵船歴史博物館様所蔵「船体模型」用アーカイバル容器の収納事例

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