今日の工房 

週替わりの工房風景をご覧ください。毎日こんな仕事をしています。

2019年4月10日(水)様々な機関様から寄贈していただく除籍本は、このように活用しています。

様々な機関様から、館で不要となった除籍本を譲って頂くことがあります。パンフレット、ハードカバーのくるみ製本、仮綴じ本、革装丁本、和装本、図版、図面、布帙など、種類や形態は様々です。資料の状態として、綴じ糸外れ(画像①)、過去の補修で使用された粘着テープの劣化(②)、金属留具の腐食(③)、革装丁本のレッドロット現象(④)、くるみ製本の表紙外れや背表紙外れ(⑤)、布帙の変色(⑥)、図版に掛けられた薄紙のフォクシングや変色(⑥)などが見られます。(画像は、ラベル等を一部加工しています。)

 

図書館総合展などの展示会での形態や損傷のモデル(⑦)、処置前のテストサンプル、お客様へ処置方法をご紹介する際のモデル(⑦)、実技講習の参加者の方に使用していただくサンプル(⑦)としてなど、多くの場面で活躍しています。心置き無く試すことができる資料がたくさんあるおかげで、日々の業務を円滑に進められ、大変助かっています。ご協力くださっている各機関の皆様、本当にありがとうございます。

2019年4月3日(水)大型箱の組み立ての時は、複数のスタッフで「せぇの!」と掛け声を合わせながら。

1辺が150㎝を超えるような大型箱を製作するときは複数のスタッフで組み立てを行っています。大きな部材の取り回しや接着剤の塗布、成形など、ひとりではとてもできない作業を分担し、無駄のない動線や立ち位置、道具の置き場所にも気を配りながら作業の流れを作っていきます。

 

また、動作のタイミングを合わせるときには必ず「せぇの!」と掛け声をかけるのが習わしで(うっかり言い忘れると怒られることも・・・)、お互いに息を合わせながら梱包までの作業を進めます。毎日様々なサイズや構造の箱を手掛けますが、こうしたスタッフの緊密な連携作業が常に製作を支えています。

2019年3月27日(水)作業台の上で大型本を固定して修理するためのベンチ・ プレス機を特注しました。

作業台(ワークベンチ)の上で大型本を固定して修理する際に使用するベンチ・ プレス機を、新しく特注しました。継ぎのない無垢の樺(カバ)の木から作られたプレス機で、通常のプレス機には入らない大きいサイズの本も挟めるように、ネジ間が大きくとれる仕様で作っていただきました。木製のネジも滑らかに動き、重量のある大型本もしっかりと締めて固定できます。製作は柏木工房様にお願いしました。作業に適した良い道具を使用すると修理の作業も捗ります。

2019年3月20日(水)お客様の元へ出向しての資料のクリーニングや解体・ 復元作業に必須の道具を定期的にメンテナンスします。

今年度も資料のクリーニングやデジタル化に伴う解体・復元等で、多くのお客様のもとにお伺いして作業する機会を頂きました。こうした出向作業の際に大いに活躍してくれたドライクリーニングボックスや掃除機、プレス機も、労をねぎらいメンテナンスをしてあげます。特に、ドライクリーニングボックスに付属する空気清浄機のフィルターは、十分な集塵・脱臭効果を得るためにも、定期的な掃除や交換が必要となります。フィルターの埃を取り除き、プレス機には油を差して、この先に控える出向作業に備えます。

 

【関連記事】
『今日の工房』2018年7月12日(水)本体をプルーフ加工し、使用後の汚れの拭き取りが楽な簡易ドライクリーニングボックスに。

『スタッフのチカラ』2015年12月2日 資料に付着した汚れやカビのドライ・クリーニング

2019年3月13日(水)絹布上に描かれた大型の曼荼羅作品を安全に移送と保管ができる保存箱。

二点一対になっている両界曼荼羅図の復元模写作品を収納する保存箱。曼荼羅は染色した綾織りの絹の上に金泥で描かれており、作品本体を四方から糸で木枠に張り、木枠ごと壁に掛けて展示できる。

 

ご依頼者からは作品の移送も安全に行える保存箱をご所望いただき、持ち運びの際にたわみやゆがみの起きない強固な構造の被せ蓋式の箱を製作した。箱内部で描画面が箱の内壁に接触しないように、木枠部分を文化財保護用のフォーム材AZOTE®(プラスタゾート)で固定する設計になっている。また、 平置きで保管する際に作品本体が絹布の糸の緩みで垂れ下がってくるのを防ぐために、AZOTE ® を本紙周囲の張り手部分(中に竹の芯棒が入っている)の裏面側に設置し、作品本紙を支えている。さらに、箱の身と蓋はボアテープで固定するので、箱を立てての移送も安全に行うことができる。

 

保管時は、作品の木枠から放散される酸性ガス対策と描画面の保護のために、汚染ガス吸着シート「GasQ ガスキュウ」で作品を覆っている。

2019年3月6日(水)年度末までのご納品に間に合うようにと、工房はいまフル回転です。

例年と同様、年度末を控えた工房はいま繁忙期真っ只中です。スタッフはフル回転で仕事に取り組んでいます。完成した保存容器、修理の終わった資料は、お出しする書類の最終確認後、順次お客様の元へ発送、ご納品に伺っております。今年度は遠方の関西や九州からのご依頼も多く、早めの対応を心掛けております。また、ご納品と併せて、修理と保存容器の両部門共に新しい案件のご相談もいただき、おかげさまで次年度も忙しい一年になりそうです。

2019年2月27日(水)資料の同じシリーズや付属品を一つの箱に収納する場合、立体パズルのように設計していきます。

関連する同じシリーズの資料や付属品を、一つの箱に入れて、分かりやすく管理したいというご依頼をいただくことがあります。そういった場合は、立体パズルのように考えて箱を設計していきます。

 

まずは、お客様から収蔵場所の状態や棚の寸法をお伺いして、箱全体のサイズを想定します。基本的には、視認性や小スペースを考慮し、仕切りでスペースを分けて製作しますが、大きさや重さが極端に違う場合、全体のバランスを考えて設計します。例えば、1点だけ大きくて重く、他が軽い場合は、重いものを下に、軽いものを上に収納できる2階建構造にして、重心のバランスがとれるようにします。

 

他にも、資料が取り出しやすい工夫をしています。

 

画像①:余ったスペースを埋めるスペーサー。指かけがついており、スペーサーを取り外せば、資料も取り出しやすい。

画像②:淵に切りかけをつけて、資料を取り出しやすくする。

画像③:大きく重たい資料でも、手を入れ、安定して持つことができる。

 

それぞれの資料の材質によっては、同じ一つの箱に収納することはお勧めできない場合もございますので、都度当方からご提案をさせていただき、最終仕様を決定します。

2019年2月20日(水)修理前に行うスポット・ テストとサンプリング・ テストとは?

修理にとりかかる前に行う作業として、カルテの作成、状態撮影、さらにスポットテストとpH測定があります。このうちスポット・テストは大別すると2種類に分けられ、目的がそれぞれ異なります。

 

まず一つは、資料の基材となる紙やイメージ材料に対して、スポット(点)状に試薬を接触させて行うテストです。このテストでは、処置に使用する水溶液や溶剤に対し、修理対象となる紙やインクがどのような反応を示すかを見ています。例えば水に「滲むか滲まないか」だけでなく、その程度や感度、脆弱性をみることで、想定する処置をより具体的にシミュレーションすることが可能となり、場合によってはこの段階で処置方法を再考し、より効果的な手法に転換できることもあります。簡便さ、速さが利点ではありますが、試薬を接触させることで見た目を変えることがないよう、テスト範囲は最小限に留める必要があります。一紙面の中でもどの箇所で行うべきかは慎重に判断しなければなりません。

 

もう一つは、本紙から落ちた微細な破片や、資料を構成する付属材料(粘・接着剤など)に対して試薬を用いて行うサンプリング・ テストです。反応をみるためのスポット・テストとは異なり、本紙や付属材料に含まれる物質を識別するために行います。精密な検査を求める場合はより専門的な分析機器が必要になりますが、修理の方向性を見定めたい時には短時間かつ目視で分かりやすく判別することが可能です。例えば試薬の一つにデンプンを検出する「よう素よう化カリウム溶液」があります。これは、過去の補修時にデンプン糊が使用されたことが分かれば、その補修紙を除去する際、デンプン糊の接着力を緩ませるために水を用いた水性処置は効果的で安全性が高いという判断ができます。

2019年2月14日(木)「京都映画ノンフィルム資料アーカイブ セミナー&シンポジウム」で映画ポスターや台本の修理について講演しました。

文化庁が進めている「アーカイブ中核拠点形成モデル事業 (撮影所等における映画関連のノンフィルム資料)」の一環として、2月6日(水)に「京都映画ノンフィルム資料アーカイブ セミナー&シンポジウム(主催:文化庁、共催:特定非営利活動法人映像産業振興機構(以下VIPO)」が京都大学楽友会館にて開催されました。

 

ノンフィルム資料とは、フィルムを除く、映画の製作で使われる脚本やポスターなどの映関連資料を指します。

 

今回のセミナーでは弊社スタッフが「映画資料の特性を生かした修復・保存について」と題して、東映太秦映画村様ご所蔵のポスター3枚と台本3冊の「紙資料」の修理を主に解説しました。また、これまでの弊社が手掛けた映画関係資料の事例を交え、その修理と保存について必要な考えと、方法や保護のための包材等をご提案しました。

 

質疑応答では聴衆の方々が実際に直面している問題の具体的な内容をお寄せいただき、私共にとって大変有意義な時間となりました。ご参加いただいた皆様だけでなく、貴重な機会をくださった文化庁様、VIPO様にもお礼申し上げます。ありがとうございました。

2019年2月6日(水)東京文化財研究所様からのご依頼で、閲覧や資料複写時の支持具を安定した品質のフォーム材で作成。

東京文化財研究所文化財情報資料部に所属する研究員様が進めている科研費課題[※1]の一環で、同研究所資料閲覧室の閲覧机や複写台で使う、脆弱な資料を閲覧・撮影するための支持具を作成した。

 

支持具の盤面はAZOTE®(エイゾート)[※2]と呼ばれる文化財保護用のフォームマットを使った。マットは湾曲や折れ曲がり防止のため中性紙の厚紙に貼り合わせた。表地がグレー、裏地が黒のリバーシブル構造になっているのが特徴で、撮影した画像の用途等に合わせて地の切り替えが可能。複写台の幅と奥行きに合わせて設計されているため撮影台のスペースを有効に使え、資料がきれいに撮影できのせたまま安全に移動できる。

 

[※1] 科研費課題「ポスト1968年表現共同体の研究:松澤宥アーカイブズを基軸として」研究代表者 橘川英規氏(東京文化財研究所文化財情報資料部)

 

[※2] AZOTE®(エイゾート):文化財保護用のフォームマット
ポリエチレン樹脂を特殊発泡させたフォームマット。一般的なフォーム材の製造には化学発泡剤が使われており、発泡体に残留したホルムアルデヒドやアンモニア系のガスが接触した資料に腐食や染みを起こす原因となることがある。AZOTE®は化学発泡剤を用いない超臨界窒素ガス発泡方式で製造され、有害ガスを放出する危険がない素材。また純粋なポリエチレンが原料なので対候性や耐薬品性も高く、一つ一つの気泡が均一なため物理的強度が高く耐水性にも優れている。ヨーロッパ諸国の博物館・美術館では壊れやすい美術品や資料の収納・梱包、引き出しや箱のライニング、額装など 多目的に使われている。その他、精密機器や軍需品など様々な分野での輸送にも採用されている。PAT(ISO18916:2007長期保存用包材のための写真活性度試験)もパスしており、直接資料に長期間接しても問題のないことを確認している。

 

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