今日の工房 

週替わりの工房風景をご覧ください。毎日こんな仕事をしています。

2020年4月9日(木)定番・規格製品の専用梱包箱について

製品の梱包方法について過去に何度か紹介してきましたが、弊社の定番・規格製品には、使用、保管するときの利便性を考えた専用の梱包箱をご用意しております。
実際にどんな種類の梱包箱があるのか、その一部を紹介します。

 

Moldenybe®モルデナイベのガスバリア袋(写真1、写真2)や、Qlumin™くるみんGasQ®ガスキュウのロール品(写真3)など、通常時は梱包箱に入れておくことで保管や移動を安全に行えるようになります。

 

保管性だけでなく、製品の利便性を高める梱包箱もあります。Qlumin™くるみんの断裁品の梱包箱はその一つです。箱のフタを中央の位置で折ることができ、手間なく必要な枚数だけを取り出すことができます。(写真4)

 

またドライクリーニング・ボックスの梱包箱は空気清浄機とドライクリーニング・ボックス本体をまとめて保管しておけるだけでなく、側面に取っ手穴を付けることで持ち運びやすさを高めています。この取っ手穴は展示会でお伺いしたお客様のご要望をもとにしたものです。(写真5、写真6)

 

このような定番・規格製品以外についても、弊社では小さなものから大型のものまで、形状も多種多様な製品を提供しています。それらを安全に輸送するためには、既存の梱包材を使用するだけでなく、梱包箱を一から設計することが必要になるケースもあります。
製品の形状・性質に応じて、形態、方法、緩衝材の材質などを選択し、輸送時に発生する衝撃、振動などのあらゆるリスクから荷物を保護するため、一つひとつに適した梱包箱をカスタマイズしています。

 

 

【関連記事】
・2012年06月07日(木)今日の工房『段ボール加工のためのアイデア治具』

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・2015年05月13日(水)今日の工房『様々な梱包用粘着テープを使い分ける』

2020年3月27日(金)虫損が著しい文書修理の第一歩は「剥がす」

折状などの古文書や、糸綴じされている和装本のように、主に和紙を基材とした資料に多く見られる損傷が虫損です。紙の表面を舐めるように虫に喰われていたり、紙束の上から下を貫通するように穴が開いていることもあります。その穴の周りに虫糞を残しながら侵食していくのですが、虫糞が固まって隣の丁の虫穴と固着、さらに隣の丁と固着してしまうため、そこだけ紙が貼りついている様に見えます。虫穴が一箇所、あるいは数カ所だけであれば、ゆっくりめくることで虫糞が落ちて固着を外すことはできます。しかし虫損が全面に生じると、紙束は板のように固まってしまい剥がすことは非常に困難です。

 

こうした資料の修理をお客様からご相談いただく際、「剥がすために何か機械を使うのですか?」「コツはありますか?」など話題になりますが、何より人手と根気が必要な作業といえます。文字情報を損ねることなく安全な状態で次の処置へ移るために、時間をかけて丁寧に行なっています。

 

 

【関連情報】
今日の工房2016年8月24日(水) 虫損がひどい資料へのリーフキャスティング(漉き填め)による修理

今日の工房2017年3月15日(水)和装本(四つ目)を仕立て直す

スタッフのチカラ2017年6月7日学習院大学図書館様所蔵「華族会館寄贈図書」漢籍・和装本の保存修復処置事例

2020年3月19日(木)【文献紹介】『Preventive Conservation: Collection Storage』が上梓

『Preventive Conservation: Collection Storage』 
編者= Lisa Elkin and Christopher A. Norris
協力連携=SPNHC(The Society for the Preservation of Natural History Collections; 自然史コレクションの保全に関する国際学会、通称スピナッチ)、 AIC(American Institute for Conservation of Historic & Artistic Works; アメリカ文化財保存修復学会)、Smithsonian Institution(スミソニアン協会)、George Washington University Museum Studies Program(ジョージ・ワシントン大学博物館研究)

 

文化財全般の維持管理に関連する幅広い課題と保存対策について、世界の専門家を結集し実証的な観点から論じた『Preventive Conservation: Collection Storage』が昨年9月に刊行された。編者はアメリカ自然史博物館のLisa Elkin(Chief Registrar and Director of Conservation)とイェール・ピーボディ自然史博物館のChristopher A. Norris(Senior Collection Manager)。本書は、予防保存の基本的な概念や保存計画の立て方・考え方に始まり、保存アセスメント、保管施設の計画と構築、環境管理、防災・救助計画、コレクションの移動、セキュリティ、保管施設の運営方法、保管状況における安全と健康の問題、害虫管理、多様な文化財の種類と特徴、包材のマテリアルテスト、デジタル記録の保存、環境モニタリング、保存資材と材料、保管ガイドラインとリスク管理—と、デジタルコレクションを含むあらゆるタイプの所蔵品を対象とした、現時点でのコレクションの維持管理に関する総合的なハンドブックになっている。

 

▼下記サイトに目次と各章の詳細が掲載されている。

 

SPNHC wiki : Collection Storage

 

https://spnhc.biowikifarm.net/wiki/Collection_Storage

 

 

2020年3月11日(水)寒川文書館での資料保存ワークショップに出講しました

2月1日(土)、神奈川県寒川町の公文書館、寒川文書館にて開催された資料保存ワークショップ「錆びや傷みから記録を守る」で弊社スタッフが講師を担当しました。

 

寒川文書館は公文書館法に基づき寒川総合図書館の4階に設置されている公文書館であり、行政資料や古文書、郷土資料等を収集、整理、保存する施設です。今回のワークショップは、文書館利用者やボランティアの方などの町民や地域の一般の方々、寒川文書館館長ならびに職員の皆さまを対象として開催されました。

 

本や小冊子などへの簡易的な手当てについて、下記のプログラムで資料保存実習を行いました。

 

* 傷んだ冊子の劣化、損傷の原因、本体の構造、綴じ方について
* 修理に使う道具の説明
* 金属除去、修補、綴じ直し

 

傷んだ冊子を解体し、普段あまり見ることのない本の内側を観察することで、劣化や損傷が起きた要因を確認しました。

 

資料の修理には特殊な道具を使用することも多いのですが、今回のワークショップでは修理道具の中でも割とポピュラーなマイクロニッパー、綴じ糸、綴じ針、筆、糊、ろ紙、不織布などの道具を使用し、これらの使い方や注意点についてご紹介しました。

 

破れてしまったページの修理には水で薄めたでんぷん糊を使います。でんぷん糊は中性であること、水溶性なので後で剥がせることから、資料保存の観点で非常に優れた接着剤ですが「水分量」の調整が肝になり、刷毛や筆への糊の含み具合や塗布後の処理などに気を遣います。とくに劣化資料への修補では、糊が薄すぎると和紙が剥がれたり輪染みになったり、濃すぎると紙がこわばる原因にもなるので、こうした点に気をつけながら実践していただきました。

 

質疑応答では、資料保存に関する実践的な質問が多く寄せられ、基本技術の習得のみならず、資料の取り扱いを注意することで予防できる損傷も多いことを弊社の事例を紹介しながら解説しました。

 

ご参加いただいた皆さまに心より御礼申し上げます。

 

◇具体的な資料の修理手順はこちらで紹介しています。また、弊社で行った資料保存ワークショップはHPで掲載しておりますので、ご興味のある方はぜひご覧ください。

 

《関連情報》
独立行政法人国立女性教育会館主催『アーカイブ保存修復研修』
私立大学図書館協会和漢古典籍研究分科会主催『古典籍資料の補修実演講座』
NPO文化財保存支援機構主催『平成30年度文化財保存修復を目指す人のための実践コース』

 

2020年3月4日(水)3月に入り工房は繁忙期の佳境に入りました

今年も3月に入り、弊社では修理部門、保存容器製作部門ともに繁忙期も追い込みの段階となりました。毎日フル回転で修理作業や商品の製作を行い、仕上がったものから順次お客様のもとへお届けしています。保存容器部門では大型箱の受注が多く、なかでも一番大きなものは全長4メートルに及び、工房の窓から7人がかりでの搬出となりました。チャータートラックで送り出した後はまた次の大型箱にとりかかります。
ご注文頂いているお客様にはお待たせしてしまい大変申し訳ございませんが、一日も早くご納品できるようスタッフ一同努めてまいります。

2020年2月26日(水)壊れてしまった無線綴じの写真集へ、どのような手当てが行えるか。

無線綴じとは、糸や金属等を使用せず、本紙の背を断裁して接着剤で綴じただけの製本方法をいいます。これら無線綴じに用いる接着剤は紙を断面で接着する強度と見開きに沿う柔軟性が求められます。近年はより耐久性や柔軟性に優れた接着剤に移行しつつありますが、従来より無線綴じに使用されてきたEVA系ホットメルト(エチレン酢酸ビニール樹脂を主体とする接着剤。60℃以上の熱で溶解し、常温で硬化する)は、製本後、経年や温度変化により再溶解が始まったり、印刷インクの影響を受けて劣化するとされています。特に写真集のように紙が厚く重い資料には、接着剤の劣化に伴い本紙がバラバラに外れてきてしまっているものが見受けられます。
可逆性のある材料として修理に用いるでんぷん糊等の接着剤は、無線綴じ製本を行う用途には適していないため、構造的な修理を行う際は糸綴じする方法を基本としています。

 

①綴じ穴をあけて糸で平綴じする処置の場合は、ノド元の余白は十分にあるか、製本後の見開き具合は適切か、糸の強度は十分か等を検討します。

 

②より見開きの良い方法として、断裁された本紙の背を和紙でつないで折丁に仕立て、糸でかがり直す処置があります。大きく構造を作り替えても元の表紙・背表紙に収まるか、ノド元まで印刷されているページは和紙を貼ることで視認性に影響しないか等を検討します。

 

③印刷されている画像を重視する場合など、資料の性質によってはあえて構造的な修理は行わず現状を維持するための保存容器への収納のみをお勧めすることもあります。バラバラになった本紙が散逸しないよう、中性紙のフォルダに包み保存容器に収納します。

 

【関連情報】
『今日の工房』2017年10月18日(水)接着剤で無線綴じされた図録を折丁仕立てに作り直し、きれいに見開くように再製本する。

2020年2月19日(水)資料を安全に取り扱うためのフラットニング作業

本紙の折れやシワによって文字が隠れてしまったり、巻いたり折ったりしたことによって巻き癖や折り目がついてしまった資料に対し、無理に広げたり伸ばそうとすると新たな破れやシワをつくってしまうことがあります。例えば、巻かれたポスターを広げる際に巻き戻る力によって破損箇所が拡がったり、本のページが何枚も重なって折れ曲がっていることに気づかずにめくれば、折り目に沿って破れてしまったりします。このような状態の資料に対しフラットニング処置を行うことで、資料を傷めることなく、安心して取り扱いできるようになります。

 

フラットニング処置は、資料を加湿した後濾紙に挟み、重石やプレス機などで圧力を調整しながら乾燥させ、紙表面を均一に平坦化する処置のことです。ページの角にみられる折れなどは、湿らせた濾紙を当てて部分的に加湿し、乾燥させることで十分軽減させることができますが、資料のサイズや折れ・シワの範囲が大きくなれば、全体を均一に加湿し、乾燥させることが難しくなるため、フラットニングの回数を重ねたり、こまめに確認しながら行います。特に、トレーシングペーパーのような水に敏感な素材の資料については、必要最小限の水分量をコントロールしながら処置を行う必要があります。

 

フラットニングを行うにあたっては、使用されているインクや紙に対しての十分な調査はもちろん、資料の持つ情報を把握して、それぞれの資料にあった適切な加湿方法で与える水分を調整し、折れやシワの伸展具合を確認しながら慎重に進めていくことが重要となります。

 

【関連記事】
『今日の工房』2012年2月16日(木)経年劣化により物理的強度が低下したトレーシング・ペーパーの修復
『今日の工房』2009年6月5日(木)原稿のフラットニング

『今日の工房』2019年2月20日(水)修理前に行うスポット・テストとサンプリング・テストとは?

2020年2月14日(金)巨大な木製オープンラックに嵌め込む中性紙製大型コンテナボックスを作る

美術館のお客様より、収蔵庫の木製オープンラックの内側をアーカイバルボードで覆う囲いを製作して欲しいと依頼を受けた。

 

ラックの内寸法は幅80cm×高さ60cm×奥行き85cmあり、これを2台連結させ奥行きを170cmにして使用している。お客様からは「このラックの内側を覆い、収納物の出し入れを棚の手前と奥の両側からできるように。また、扉を外した状態でも設置した囲いの天井がたわむ事が無いような工夫を」というご要望をいただいた。

 

ラックに収納される資料は主に工芸品や美術品で、重量があり且つ慎重な取り扱いが必要な物も含まれている。そのため、囲いは簡便な物ではなく、ラックにそのまま嵌め込む堅牢な造りのコンテナボックスを作り、扉にはフラットなデザインで取り外しが楽にできる倹飩式の蓋を設計した。

 

コンテナボックスの上枠と箱内の天井にはH型のアルミを補強材として組み込み、蓋のはめ込み部や箱内の天井がたわまないようにした。また、本体側面はアーカイバルボードを4重に積層する補強を加え、扉を外した状態でも本体が歪まない構造となっている。床面にはつぶれや摩擦に強く平滑性の高い0.9mm厚のAFハードボードを貼り込み、重量物の出し入れでもスムーズに引き出せるように加工した。

 

コンテナボックスに機能性を高めるオプションパーツを組み合わせることで、既存の木製オープンラックの収納性を損なわずに、資料保存に適した保管空間が形成された。

 

【関連情報】

スタッフのチカラ 2012年07月20日
 東京大学地震研究所図書館様におけるトレー付き倹飩式棚はめ込み箱の導入事例

今日の工房 2018年3月21日(水)
 神奈川県立歴史博物館様所蔵の屏風を収納するコンテナ・ ボックス

2020年2月5日(水)保存製本の手法を取り入れた一事例

お客様より製本のご依頼をいただきました。
お預かりした資料は、本紙は綴じられておらず、一葉一括(一枚一折り)の本紙束が表紙に模したコの字型カバーに挟まれ、スリップケースに収納されていました。これを、元のコの字型カバーを表紙として活かし、本体を綴じて製本してほしいとのご依頼でしたが、本の形態に仕立てるには2つの問題がありました。

 

①本体の背幅とコの字型カバーの背幅が合っていない。約8㎜程度本体の背幅が薄い。

②表紙となるコの字型カバーは、本の表紙を想定して作られていないため、本体と表紙を接合した際に、ヒンジ部に過度の負荷がかかり損傷の原因になってしまう。

 

上記2点を解決するため、保存製本(コンサベーション・バインディング)の手法を取り入れ製本しました。

 

まず、①の問題を解決するために、“concertina guard”とよばれる本来は本体の括の背を保護するために用いる方法を取り入れました。蛇腹状に折り畳んだ和紙の間に括を挟み入れて、本体の背の厚みを増し、さらに綴じていく糸でも厚みが増すことで、カバーと本体の厚みの差を調整しました。

 

次に、②のヒンジ部の負荷を分散させるために、“hinged hollow”と呼ばれるヒンジ部が2段階構造になる方法を取り入れました。この製本方法は1980年代にフィンランドの製本業者が開発した“OTABIND”という方法から発展し、現在は保存製本の一つとして応用されています。今回は、本体の見開きを考慮して表紙側のみ、この方法を取り入れました。

 

元の角背の構造を活かしつつ、本の開閉時にかかるヒンジ部の負担を軽減することができ、元のスリップケースにも納まるよう仕上がりました。

 

【関連リンク】
OTABAINDについて
“hinged hollow”を利用した修理事例

2020年1月29日(水) 東京造形大学附属美術館様の所蔵品、写真家高梨豊氏の作品を保存箱に収納しました。

前回(『絵本作家小野かおるの立体作品の保存箱』事例紹介はこちら)に続いて、東京造形大学附属美術館様所蔵の高梨豊写真作品を収納する保存箱のご依頼をいただきました。写真作品は木製パネルに貼られたものやフォトアクリル加工されたものなど、形態や大きさ、重量も様々なものがあり、これら作品の多くがクラフト紙やエアキャップで簡易梱包され茶段ボール製の箱に収納されていました。こうした酸性紙からできた梱包材は、経時劣化して酸や酸化物を発生し、接触による酸の移行やオフガスを生起して資料を汚染するものが大半です。今回は、こうした旧包材を写真作品の長期保存に適した包材へ交換し、保管場所や棚の収納効率も考慮して作成した保存箱への入れ替え作業を行いました。

 

①フォトアクリル加工された写真パネルは薄葉紙の上からエアキャップで包まれた状態で茶ダンボール箱に収納されていました。これらの作品は1点毎に薄葉紙で梱包し直し、台差し箱に入れ替えました。

 

②重量のある木製パネルに貼られた写真作品は2点ずつトレーシングペーパーとエアキャップで包まれ、専用の収蔵棚に収納されていました。これらの作品は元の保管形態は変えずに取り扱いやすく安定した状態で保管できるよう作品サイズに合わせて作成した大型額装作品用の差し込み箱に収納しました。また、画像表面同士の接触を避けるために間紙を挟みました。間紙には酸もアルカリも含まないノンバッファー紙を使用しています。

 

③シリーズものの木製パネルの写真作品は、クラフト紙に包まれ平置きで茶段ボール1箱にまとめて収められていました。画像面に間紙を挟み2枚ひと組みを対にして重ね、さらにパネル同士の間に中性紙ボードを1枚入れ収納しました。このボードは箱内での余計な動きを抑え表面の擦れを防ぐ緩衝材の役割を果たします。同じように保管されていたフォトアクリル加工の作品は、元の梱包形態を踏襲し、個別に薄葉紙Qlumin™で梱包して中性紙ボードで挟み重ねながら保存箱へ収納しました。

 

④大型サイズの木製パネル作品は、保存箱には収納せず縦置きで保管したいというご要望から、保存資材を使った梱包のみ行いました。全体を新しいエアキャップで梱包する前に、パネルをGasQシートでしっかりと養生します。また、移動させる際の衝撃や保管中の負荷を最小限に抑えるため、作品サイズに合わせて作成した「中性紙製角あて」を入れるなどの対策を行いました。

 

【関連記事】
2019年11月7日(木)東京造形大学附属美術館様の所蔵品、絵本作家小野かおるの立体作品の保存箱を製作しました

 

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