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2015年03月27日(金) 無酸素パックの大型タイプを開発—-段ボール4箱をそのままパックして安全に殺虫

「無酸素パック Moldenybeモルデナイベ®」の大型タイプを開発した。図書や文書向けの従来サイズ(40L:ほぼ段ボール箱ひとつの容積)に比べ容積は約10倍(450L)。茶段ボール製文書箱や中性文書保存箱を積み重ねて密封できるので、資料の移送時や受け入れ時に箱ごとまとめて、また民具資料、博物資料、遺物等、大型の文化財も、容積内ならば簡単に無酸素殺虫処理ができる。袋の中には脱酸素剤を入れるだけで、他の化学薬剤を使用せず、なおかつ材質への影響がほとんどない方法で、資料にも人にも安全である。

 

文化財の害虫12種類(カツオブシムシ、オビカツオブシムシ。ヒラタコクヌストモドキ、ヒメマダラカツオブシムシ、キクイムシ、タバコシバンムシ、マダラシミ、アメリカカンザイシロアリ、コイカ、チャオビゴキブリ、チャバネゴキブリ、ワモンゴキブリ)の成虫、幼虫/若虫、卵に対して、どのぐらいの期間、無酸素下で生存し、その後に致死するかはタバコシバンムシが「指標」になる。

 

成虫、幼虫/若虫、卵のいずれでも無酸素下でタバコシバンムシがもっとも長く生存する。成虫は約120 時間、幼虫/若虫は約144時間、卵は約192時間。無酸素下でこの時間が経過すれば致死する。また、タバコシバンムシ以外の害虫の成虫、幼虫/若虫、卵は、これらの時間以下で致死する。したがって、封印して無酸素環境が形成されたと確認されてから10日間放置すれば、これらの害虫は駆除できることになる。

 

参考文献   Shin Mekawa et al.  The Use of Oxygen-Free Environments in the Control of Museum Insectm Pests, Getty Publications (2003)

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