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日本郵船歴史博物館様所蔵「船体模型」用アーカイバル容器の収納事例

2014年04月3日

日本郵船歴史博物館は日本郵船株式会社の明治初頭より現在に至る歴史を様々なエピソードを交えて伝えていくと共に、企業文書、写真、客船パンフレット、絵葉書、モデルシップ、映像等を用いた展示を行っている。日本海運の歴史への理解と親しみを広める目的として1993年に日本郵船歴史資料館として開館し、2003年に横浜郵船ビルに移り現在の名称へと改称した。1936年に竣工した横浜郵船ビルはギリシャ・コリント式の建物外観及び内装を保存しつつ、周辺街並との調和や景観を保ちながら博物館として機能している。

 

今回、日本郵船歴史博物館所蔵、大澤浩之氏の製作による船体紙模型の収納方法見直しの一環として、アーカイバル容器製作依頼を受けた。

大澤氏は幼少期より船に魅せられ、材料は全て紙による船体模型を作り始めた。その完成度は非常に高く、日本郵船所有船の成り立ちが分かるだけでなく藝術品としても評価されてしかるべきものである。大澤氏の製作による縮尺1/200の船体模型が50数点あり、製作者不明模型と合わせ対象資料は全61点となった。※出典1

アーカイバル容器は、資料の出し入れをスムースに行えるようにトレイに載せたまま横に引き出せるようになっている。そして船首と船尾が接触する部分には100%ポリエステル製の綿布団を取り付け、資料が保存容器内部に当たり損傷するのを防ぐ役割を果たしている。また、模型に使用されている塗料や接着剤などからは汚染ガスが発生し、資料そのものを傷める恐れがあるため、汚染ガスを吸着する不織布「GasQ」を資料の周囲に設置した。※出典2

 

元々は茶段ボールに入っていた

 

採寸作業

模型一点毎に、全長、全幅、全高だけでなく、船首と船尾や細かい突起物など様々な箇所を計測した。計測の際には、模型を傷付けないよう主に布製のメージャーを駆使し、慎重に行った。ミリ単位での計測の必要があるため、特別にご許可をいただき、アクリル製や金属製定規も使用した。

 

納品作業

ご担当者様立ち会いのもとに、1点ずつ確実にアーカイバル容器に収納していった。まず、トレイに資料を乗せ、そのトレイを保存容器へ収納した。その後、GasQを資料周囲に回し、蓋を被せて完成となる。資料へ悪さをしない素材を厳選して使用するのはもちろんのこと、ご担当者様と打合せを重ね、その後の利用も考えた必要にして充分な保存容器が完成した。

トレイに収納

トレイを保存容器に収納

細かい部品を逃がす工夫

綿布団

重量があり、引き出す方法が難しい模型は、内箱の壁全面が倒れるタイプ

GasQを模型周囲に回す

蓋をして収蔵棚へ

 

 

出典
1. 大澤浩之『紙模型でみる日本郵船船舶史1885-1982』シーズ・プランニング,2007.10
2.『YUSEN』678,日本郵船株式会社,p.7,2014.2

 

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