スタッフのチカラ

資料に付着した汚れやカビのドライ・クリーニング

2015年12月2日島田要

本稿は「第34回文化財防虫防菌処理実務講習会」の講演テキストとして執筆したものを加筆補訂したものである。

資料表面のドライ・クリーニングとは

資料に付着する汚れはさまざまですが、紙の表面に載っているチリやほこり、虫の糞、カビの残滓、付着物などはドライ・クリーニングという方法で取り除きます。水や有機溶剤を使わずに、乾いた(ドライな)状態で表面のチリやほこりを取り除く方法を、コンサベーションの分野では「ドライ・クリーニング」と呼んでいます。対象資料と、それに合った適切な方法を選び、注意深く行えば、専門家に任せなくとも安全に行える作業の一つです。

資料表面のドライ・クリーニングは、物理的な汚れを除いて見栄えをよくすることにとどまらず、大気中のチリやほこりに含まれた有害な酸性物等を除くことも意味します。また、水を使った専門的なコンサベーションのウェット・クリーニングの前工程としても必須です。チリやほこりを除いておかないと、水が汚れを紙の繊維の中に運んでしまうためです。

チリやほこりは花粉、カビ胞子、害虫の死骸、紙や織物の繊維、劣化皮革、人のふけや皮膚の破片、ばい煙(煤)、大気汚染物質、有機物や無機物などの混合物質です。資料に付着するチリやほこりは表面に載っているか、紙の表面の繊維の間に絡まっている場合が多く、化学的に繊維と結合することはほとんどありません。しかし、これらの物質の多くは吸湿性(親水性)があり、時間の経過とともに酸素や水分と結合し、繊維そのものに深く入り込んだ形の「染み」や「焼け」になってゆきます。さらに、資料を汚損するだけでなく、放っておくと劣化が進行し徐々に紙の弾力性が失われます。また、適度な湿気と栄養素があるため、カビや虫などが繁殖しやすい状態になってしまいます。このような劣化の連鎖の要因となる汚損物質をできる限り除去し、劣化を予防するため、ドライ・クリーニングを行います。

チリ、ほこり(書籍) チリ、ほこり(地図資料) 大気からの粉塵や虫の糞
煤汚れ クロス表紙に生えたカビ 革の劣化(レッドロット)

主な紙の表面の汚れ

A. チリ、ほこり
B. 煤、脂分や油分を含むもの
C. 大気汚染(ガス状/粒子状汚染物質)
D. 指の跡、足跡
E. 虫の糞、蜘蛛の巣、抜け殻など
F. カビ、カビの残滓
G. ホチキスやクリップの錆跡
H. 膠などの接着剤
I. 装丁から出る皮革のかす(red rot)
J. 飲食物による汚損、水濡れ(漏水、結露等)
K. 修理処置の残留物(消しゴムのかすなど)

文化財への保存処置の重要な目的の一つは、対象物の化学的安定性を高めることにあります。ドライ・クリーニングは単純な作業ですが、往々にしてこのプロセスの重要な部分を占めます。これは対象物に付着した汚れが(たとえば、塩化物が銅の腐食反応を促したり、カビが紙や布地のような有機素材に繁殖したりといった)劣化の有力な原因となるからです。

汚れによる紙への影響

●美的考慮
資料情報の判読を困難にするだけでなく外観も損ないます。

●摩耗
粒子状物質が紙の間に溜まると表面の磨損・摩耗を生じます。

●染み
高湿度や水害で汚れが湿気を帯びると、紙中および紙全体に汚れが染み込み、周囲の溶解物質が凝縮して濡れた部分に溜まり染みを生じます。染みの除去には大掛かりな処理(洗浄処置や漂白など)が必要になります。

●カビ
空気中のカビ胞子は露出した紙面に定着します。相対湿度が高いとカビは成長を始め、資料がカビの酵素により紙力が極端に落ちる「老け」が生じたり、カビの代謝産物や色素によるシミを残します。蓄積した表面のほこりや汚れを除去するクリーニングは、カビ胞子の現存数だけでなくカビ胞子を育成する栄養素も減少させます。カビ胞子は環境中どこにでも存在し、完全に撲滅するのは不可能です。ただし、環境を制御することでカビの成長を防止することはできます。書籍やその他紙の作品に活性カビを発見したときは、クリーニングを試す前に専門家に相談してください。

●大気汚染物質
紙にとっては大気汚染物質も有害です。車の排気ガスや工場からの排気煙等に含まれるNOx(窒素酸化物)やSOx(硫黄酸化物)、粒子状物質(PM:Particulate Matter)などの大気汚染物質の他に、収蔵庫の壁材や棚等の内装材から出る酢酸やギ酸、ホルムアルデヒド、コンクリートから出るアンモニアも文化財の劣化・変質を促進させる要因であることが判っています。これらの空気汚染物質は紙に吸収され、紙のpHを著しく変化させます。高い酸性度は劣化の大きな原因の一つです。環境からの酸性物質が、低品質、または劣化した紙の高い酸性度に加わると、劣化はさらに早まります。例えば、二酸化硫黄は、光、湿気、そしてほこりや汚れ中の金属不純物に触れて、紙にとって有害な硫酸に変質します。硫酸は空気中で(沈降するほこりが酸性に変わり)、あるいは(二酸化硫黄が容易に吸収され)紙の中で形成されます。資料をチリやほこりから守るのがこの問題に対処する重要なステップになります。

■チリやほこりはダストと呼ばれる小さな粒子状の固体です。15~20ミクロンを境にして、これより小さいモノと大きなモノとに分類できます。小さなダストは、他の固体(紙など)に補足されなければ大気中に浮遊しています。大きなダストは、他の固体の表面に積もります。一般にドライ・クリーニングで除去できるのは15ミクロン以上の大きなダストです。これ以下だと、経時した紙の場合は水分の吸放湿が繰り返されることで紙の繊維の中に埋め込まれるため、物理的に除去することが難しくなります。例えば、煙中の煤粒子は直径1ミクロンと小さく、紙の表面の細かい隙間も貫通してしまいます。沈着した煤は時間が経つと周囲の物質と化学的な架橋結合し化合物となり、より扱いにくくなります。汚れの付着には分子間結合、静電気力、化学的結合の三つが考えられます。ドライ・クリーニングは静電気力によるものや、分子間結合があまり強くない表面の汚れを除去する処置です。

代表的な粒子のサイズ

クリーニングのための準備

● 作業にかかる前に、資料の状態やサイズ、形態、ほこりや汚れの種類と度合いを確認し、クリーニングの必要性があるかどうか、安全に実施できるかを判断します。

● カビの生えた資料を扱う時は、作業者がカビを吸入しないように排気装置を備えた設備、あるいは手元で排気可能な状況で行うことが必要です。資料のクリーニングを保管場所で行うか、または場所を移して行うかもを決めなければなりません。クリーニングは一般的に照明の明るい場所で行いますが、カビは明るい場所では見えにくいので、カビの存在が疑われる場合には、懐中電灯で書棚をくまなく照らして検査するのが予防策です。カビはその形状によってほこりと区別できます。発生の初期段階では、カビは大抵小さな円形の灰色をした繊維状の斑点ですが、ほこりは灰色/白/茶/黒色の滑らかな薄い膜状です。書籍では多くの場合、外装(表装、天、小口)に現れます。装丁に使われている材料(接着剤、皮革、クロス、布地、紙など)や年代によってもカビの生えやすさが変わりますが、比較的、目の粗い布クロス製本のものや、クロスの隙間に湿気がたまりやすい形態のものはカビが生えやすい傾向があります。カビが発生した資料の処置は、一般的には専門業者に依頼するのが安全です。被害の規模が大きい場合は汚染が広範囲に及んでいる可能性があるので、燻蒸業者や清掃業者に相談することをお勧めします。

● 資料のクリーニングはブラシがけや、台車から資料を取るのに手を伸ばすなどの反復動作の多い作業です。動作に支障がないような十分に広い作業空間で行います。また、作業に伴う動作、姿勢等への配慮も大事です。一定の時間ごとで交替しながら作業を行うことで効率良く進めて行くことができます。

必要な道具

使用する道具と資材は、行う処置内容や手持ち道具の状況に応じて選択します。

刷毛、ブラシ
資料を傷めないように柔らかめの毛のものを選ぶ。広い範囲でブラシをかけるならば製図用ブラシが良い。その他、紙の表面を傷めずにチリやほこりを除ける刷毛や筆を、大小そろえておく。

ケミカルスポンジ
100%ラテックスラバー(天然ゴム)で作られたスポンジ。元々は煤を除くスポンジとして商品化された。汚れたら洗って乾かして何度か使える。

ドライ・クリーニング作業用ケミカルスポンジ
株式会社パレット オンラインカタログより

固形消しゴム
現在の大半の消しゴムはゴム製ではなくてポリ塩化ビニル(PVC)等のプラスチックでできている。基本的には汚れを粘・吸着して除くもの。

粉消しゴム
対象物の表面の平滑さや粗さによって使い分ける。平滑ならば細かい粒子のものを、粗い表面ならば大きな粒子のものを使う。

超極細繊維クリーニングクロス
書籍の表紙や書棚のドライ・クリーニングに用いる。ミクロン単位の汚れやほこりを拭き取れる、拭き上がり面を傷つけにくい、残留物の心配がないなどの利点がある。使用後は中性洗剤で洗い、繰り返し使用できる。
 

HEPAフィルター付掃除機
屋内でのドライ・クリーニング作業時のカビの吸引・除去には特に有効である。掃除機のフィルターがHEPA基準※を満たすことが絶対の条件である。これ以外の掃除機は吸引しても、排気時に作業場全体に細かな塵やカビの胞子を撒き散らし、作業者にも資料にも被害をもたらす。

HEPAフィルター(High Efficiency Particulate Air Filter)について。
HEPAフイルター搭載の家庭用真空掃除機につては新製品が各社から次々に商品化されている。検索エンジンで調べていただきたい。

作業を行う上での安全対策

クリーニング対象となる資料にはほこりやカビだけではなく、その他の有害な物質に汚染されている可能性もあります。人体への安全性を第一に考え、長時間の作業で体調を崩すことのないよう、以下の点に十分に注意する必要があります。

● 換気に気をつけて作業する。屋内で行う場合には、塵埃を撒き散らさないようにHEPAフィルター付き掃除機で吸引しながら行う。また簡易的な設備(空気清浄機付き簡易ドライ・クリーニングボックス)を利用すると、周囲への粉塵の飛散を抑えられる。

● エプロンを着用するか、汚れてもよい服装で行う。

● 塵挨やカビ胞子が飛散する恐れがあるので、不織布マスク、NIOSH N95準拠※のマスクを着用する。どのような作業を行うのか事前に把握し、その目的に合ったマスクを使用する。大量にドライ・クリーニングを行う時、少量でもカビの残滓を除く時にはマスクは必須である。

● 資料の状態、汚れの程度、カビの有無など確認し、必要に応じて使い捨て手袋を使用する。ニトリル製、ラテックス製などの薄手のものが資料を扱いやすい。消毒用エタノールを使用した殺菌処置を行う場合は必須。

● 使用した刷毛・クリーニングクロスは他の用途に転用しないこと。作業が終わったら、良く洗浄してアルコール殺菌し乾燥させる。

● 作業後には手洗い・うがいを行う。

● 作業中に体に何らかの異変が起きた場合は、すぐに作業を中断して医師に談する。

NIOSH(米国国立労働安全衛生研究所)N95準拠のマスクについて。

例:3M 防護マスク 8200 N95

 

マスク
使い捨て手袋
作業服
紙製のウエス、クリーニングクロス
保護メガネ
消毒用エタノール(*76.9〜81.4v/v%)
スプレーボトル(霧吹き)
空気清浄機付き簡易ドライ・クリーニングボックス
チリやほこりやカビ残滓をボックスのなかで掃除するので作業環境を汚染しない。HEPAフィルタ付き空気清浄機が奥にあり、開口部(手前)から奥に向かって、穏やかに絶えず風が流れているために、作業者が粉塵を吸い込むことなく安全にクリーニング作業が出来る。

基本的なドライ・クリーニングの手順

以下に解説するドライ・クリーニング方法は書籍、文書、手稿、地図、その他の一枚物のほとんどの紙資料に適用できます。しかし、劣化していて物理的な強度が落ちていたり、破れや裂けがある対象物には、劣化を広げないように特に注意をして行う必要があります。また、パステルや鉛筆、チャコールなどの、紙の表面に載っているだけの状態でイメージ(文字や画像)を形成しているものには、ソフト・ブラシをかける程度にして、クリーニングクロスも消しゴムも使うことは避けて下さい。こうした資料はやはり専門家にまかせるのが安心です。また、いきなり全体のクリーニングにとりかからず、イメージ部分の目立たないところで、それぞれのクリーニング方法を一度は試してみてから、全体に適用した方が良いでしょう。普通の印刷物であっても紙の劣化状態によってはブラシをかけることさえ危険なものもあります。

ブラシがけ
刷毛、ブラシで表面のチリやほこりを掃き取ります。破れたところや欠損部に注意しながらブラッシングします。汚れが広がらないように、埃は基本的にはきれいな方向から汚れの方向へ払います。泥のように固着した汚れを除去するには、より硬めのブラシが必要になります。汚れの固まりを除去して紙の表面を露出させた後は、柔らかいブラシに替えます。

 

クリーニングクロス
繊維が非常に細いクリーニングクロスで、表面のチリやほこりを取り除きます。紙力が低下し、破損が著しい箇所については、柔らかい刷毛を使います。

 

クリーニング・スポンジ
粒子状の汚れや煙害を受けた対象物に使用します。表面にスポンジをゆっくり当てながら動かすと、汚れをスポンジが包み込むように吸収します。部分的にカットして新しい切り口で使うこともできます。

 

消しゴム
定着したほこり、べたつき汚れには、ブロック型の消しゴムを使用します。ブロック型は、汚れの跡がこびりつくのを防ぐため、直線的に往復させるよりも、円形に動かします。資料に強く押しつけると、表面の汚れを埋め込むことにもなるため注意します。一部分だけ明るくなりすぎないように全体のトーンを見ながら行います。

 

粉体の消しゴムを使う場合は、イメージ材料の部分は色落ちする事があるので、まず小さな範囲で試します。対象物の表面に粉体のイレーザーを振りかけ、折れ目や破損部に注意しながら、中心から端に向かって円を描くように指の腹を使って優しくこすります。資料の端は円を描くと裂けるおそれがあるので、まっすぐ中から外に指を動かします。

 

掃除機がけ
大きなチリやほこり、カビの残滓のクリーニングには掃除機が便利です。書架や周辺の床のクリーニングにも使用します。配架された書籍をクリーニングする場合は、基本的に上段の棚から始め下の棚に向かって進めます。書籍の表紙や本文が傷んでいる場合は注意して行います。極度に劣化した一枚物の資料や絹絵の上に積もったほこりは、資料に細かい目の柔らかいネットを被せ、掃除機のノズルの先端にブラシやガーゼを装着し、弱い吸引力で少しずつほこりを吸い込んでゆきます。

ドライ・クリーニングの注意点

毛先の柔らかいブラシで掃きとる、クリーニング・スポンジや超極細繊維布で拭きとる、ブロックや粉状の消しゴムで吸着する、掃除機で吸い取る、圧搾空気で吹き飛ばす等々、使用する道具は、資料の傷みの程度や紙の表面の粗密度によって使い分けます。どの方法を採るにしろ、処置中に擦り傷等を付けないこと、消しゴムを使う場合には消しゴムカスを資料に残留させないことが重要です。

やりすぎない
チリやほこりをできるだけ除くことはコンサベーションの基本ですが、ドライ・クリーニングは目に見えて資料がきれいになってゆくので、思わずやりすぎることがある危険な作業でもあります。繊維の中に入り込んだ汚れを無理に除こうとして強く「擦る」と資料を傷めることもあり、資料全体の汚れのトーンを確認しながら、ほどほどで切り上げることも大事です。ブラシ、粉体イレーザーは比較的間違いの少ない道具ですが、それでも資料を傷めることがあります。また固形消しゴムやスポンジもチリやほこりを繊維の中に埋め込む結果になる場合があるため、適切なドライ・クリーニング法は数をこなし経験的につかむしかありません。

最終的に紙の表層の汚れをよりきれいにしたいと思えば思うほど止めるタイミングの判断が難しくなります。過度のドライ・クリーニングは、平面性の歪み、擦れ、繊維の毛羽立ち、紙の繊維の潰れ、切れやすくなっていた部分の分離や欠損、紙表面の艶やキメの変化などを引き起こし、図1.に示すように対象物へのある程度の損傷は免れません。クリーニング方法は、紙表面のクリーニングで起こるかもしれない問題を考慮し、それぞれの資料に対し行うことのできる処置とのバランスをとりながら決定しなければなりません。

図1. 過度のドライ・クリーニングが及ぼす損傷の可能性

 

カビが発生した資料のクリーニング 

1. 作業者の装備

作業者は、カビの胞子を十分に除去できる性能の呼吸用マスクを必ず着用しさらにラテックスやポリエチレンなどの使い捨ての手袋、保護メガネ、作業服などを装着し作業を行います。病原性をもつカビとしては、Aspergillus fumigatusがよく知られていますが,それ以外にも多くのカビがマイコトキシンのような有害物質をつくることが知られています。多くのカビが、免疫力が低下している場合などに感染する “日和見感染”や、アレルギーを起こす危険性がありますので、できるだけ吸入しないようにしましょう。

2. 作業区画の確保

カビを除去する作業を行うときには、他の資料や書庫から隔離して、汚染を広げないようにするため作業場所を「区画」として確保します。また消毒に使うエタノールは揮発性が高いので、屋内で行う場合は換気に特に気をつける必要があります。可能ならば、空気清浄機を設置し空気を循環させます。

■参照:『今日の工房  2015年09月30日(水)カビや塵埃の処置に、飛散防止用のマスカーテープで作業場を隔離する』

カビ被害が甚大な資料や大量の塵埃が発生する資料を取り扱う際は、飛散防止のため作業場を隔離する。空間を隔離するカーテンとして、養生テープとポリシートが一体化したマスカ―テープを使用した。作業場所を囲うように壁や天井に貼り付け、ポリシートを広げる。必要なスペースに合わせて設置することができ、作業後の処分も手間がかからない。

 

2-1.新規受け入れ資料の害虫・カビチェック
書庫内での虫害の発生を防ぐためには、資料の受入時に害虫を外部から持ち込まないことが重要です。また、活性化したカビ胞子は飛散しやすいので、早急な対策が必要です。薬剤に頼らず、書庫への虫・カビの侵入を遮断し、安全な収蔵空間に資料を収納するため、新規受け入れ資料については、隔離しクリーニングをした上で書庫へ搬入する事をお勧めします。

2-2.隔離の方法
カビの被害を受けていない資料から隔離し、次の処置まで保管するためには、紙製の箱やガスバリアフィルム袋が有効です。ガスバリアフィルム袋は一時保管や搬送する場合などのカビの飛散防止にも使用します。この時に、カビを抑制するための脱酸素剤やシリカゲルのような除湿剤を封入すると、カビの被害を拡大させないための予防処置になります。

■参照:『今日の工房 2015年03月27日(金)「無酸素パックMoldenybeモルデナイベ®」の大型タイプを開発-段ボール4箱をそのままパックして安全に殺虫できる』

shimada09-33 85373f6e5eef0062e9598c503ac536c5 07cc956ac556baa31aef1e3e519a230b a74a04ed06c14e3eacbae748a08e1a65

資料の移送時や受け入れ時、また民具資料、博物資料、遺物等、大型の文化財も、袋の容積内ならば簡単に無酸素殺虫処理ができる。袋の中には脱酸素剤を入れるだけで、他の化学薬剤を使用せず、なおかつ材質への影響がほとんどない方法で、資料にも人にも安全である。

 

3. クリーニングの手順

3-1. 活性のあるカビ(生きているカビ)は、乾燥させて不活性にする
活性化しているカビ(ジメジメしていて、かび臭い)は乾燥させて不活性にしなければなりません。直接光の当たらない、風通しの良い作業区画を確保して、湿り気がなくなり、乾いた状態にまで乾燥することでカビは不活性になります。

3-2. HEPAフィルター付掃除機による吸い取り 
掃除機を使用する場合には、HEPA準拠のフィルターの付いたものを使用します。吸い込んだ不活性のカビは、周辺に撒き散らすことのないように、ポリ袋などに入れて密封し、廃棄します。

3-3. エタノールでの拭き取り
カビが付着した部分を、消毒用エタノール(濃度70~80%程度※)を含ませたペーパータオルで拭きます。汚れを広げないように一方向に拭き取ります。ペーパータオルは使用した面を折り込み、汚れのない面を使います。
※エタノールは、およそ70%vol.の濃度がもっとも殺菌効果が高いといわれていますが、処理対象物にも多少水分は含まれているため、70-90% vol.の濃度が殺菌に使用されます。また、エタノールに溶解してしまうような染料や樹脂などの媒材がある時は適用できない場合もあります。必ず、目立たない場所で影響がないかどうか、テストしてから使用します。

 「カビが発生した書籍のクリーニング」

周囲への塵埃飛散防止のため、空気清浄機付き簡易ドライ・クリーニングボックス内でクリーニングを行った。資料表面のほこりやチリ、カビの残滓を先端にブラシを装着したHEPAフィルター付掃除機を用いて吸引し、その後、消毒用エタノールをクリーニングクロスに染み込ませたもので 資料表面を拭き取り、発生した黴の除去と予防とした。

4.作業後

作業後は書棚の拭き取り清掃、机上や床面の清掃を行い、クリーニング作業で飛散したカビを集塵します。

カビの発生・再発を防ぐために

書庫環境の整備(適切な温湿度の管理、空気の循環)、定期点検による早期発見、定期的な清掃(カビの栄養となる埃やチリの除去)を行うことでカビの発生条件は総合的に緩和することができます。空調ダクトや移動書架などの設備上の改善が難しい場合は、送風機を取り入れ空気の流れを強制的に作りだすことも有効な防止策の一つです。またクリーニング後の資料の保存容器への収納は、温湿度変化への緩衝材の役割を果たし、チリやほこりからの防御にもなり、資料の保存と予防を兼ね備えた簡易的かつ効果の高い対策です。

■弊社の事例

2015/10/23
東京学芸大学附属図書館様 耐震改修工事に伴う、貴重書のモルデナイベ収納、および資料・書棚のクリーニング

2010/10/27
衆議院議事部議案課様所蔵資料へのクリーニング、綴じ直し、保存容器への収納事例

2009/04/21
東京大学社会科学研究所における「労働調査」資料及び「糸井文庫」の保全対策の事例

2008/10/30
新聞合冊製本の保存事例 ―読売新聞社様の導入事例―

ページの上部へ戻る