今日の工房 

週替わりの工房風景をご覧ください。毎日こんな仕事をしています。

2019年3月20日(水)お客様の元へ出向しての資料のクリーニングや解体・ 復元作業に必須の道具を定期的にメンテナンスします。

今年度も資料のクリーニングやデジタル化に伴う解体・復元等で、多くのお客様のもとにお伺いして作業する機会を頂きました。こうした出向作業の際に大いに活躍してくれたドライクリーニングボックスや掃除機、プレス機も、労をねぎらいメンテナンスをしてあげます。特に、ドライクリーニングボックスに付属する空気清浄機のフィルターは、十分な集塵・脱臭効果を得るためにも、定期的な掃除や交換が必要となります。フィルターの埃を取り除き、プレス機には油を差して、この先に控える出向作業に備えます。

 

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2019年3月13日(水)絹布上に描かれた大型の曼荼羅作品を安全に移送と保管ができる保存箱。

二点一対になっている両界曼荼羅図の復元模写作品を収納する保存箱。曼荼羅は染色した綾織りの絹の上に金泥で描かれており、作品本体を四方から糸で木枠に張り、木枠ごと壁に掛けて展示できる。

 

ご依頼者からは作品の移送も安全に行える保存箱をご所望いただき、持ち運びの際にたわみやゆがみの起きない強固な構造の被せ蓋式の箱を製作した。箱内部で描画面が箱の内壁に接触しないように、木枠部分を文化財保護用のフォーム材AZOTE®(プラスタゾート)で固定する設計になっている。また、 平置きで保管する際に作品本体が絹布の糸の緩みで垂れ下がってくるのを防ぐために、AZOTE ® を本紙周囲の張り手部分(中に竹の芯棒が入っている)の裏面側に設置し、作品本紙を支えている。さらに、箱の身と蓋はボアテープで固定するので、箱を立てての移送も安全に行うことができる。

 

保管時は、作品の木枠から放散される酸性ガス対策と描画面の保護のために、汚染ガス吸着シート「GasQ ガスキュウ」で作品を覆っている。

2019年3月6日(水)年度末までのご納品に間に合うようにと、工房はいまフル回転です。

例年と同様、年度末を控えた工房はいま繁忙期真っ只中です。スタッフはフル回転で仕事に取り組んでいます。完成した保存容器、修理の終わった資料は、お出しする書類の最終確認後、順次お客様の元へ発送、ご納品に伺っております。今年度は遠方の関西や九州からのご依頼も多く、早めの対応を心掛けております。また、ご納品と併せて、修理と保存容器の両部門共に新しい案件のご相談もいただき、おかげさまで次年度も忙しい一年になりそうです。

2019年2月27日(水)資料の同じシリーズや付属品を一つの箱に収納する場合、立体パズルのように設計していきます。

関連する同じシリーズの資料や付属品を、一つの箱に入れて、分かりやすく管理したいというご依頼をいただくことがあります。そういった場合は、立体パズルのように考えて箱を設計していきます。

 

まずは、お客様から収蔵場所の状態や棚の寸法をお伺いして、箱全体のサイズを想定します。基本的には、視認性や小スペースを考慮し、仕切りでスペースを分けて製作しますが、大きさや重さが極端に違う場合、全体のバランスを考えて設計します。例えば、1点だけ大きくて重く、他が軽い場合は、重いものを下に、軽いものを上に収納できる2階建構造にして、重心のバランスがとれるようにします。

 

他にも、資料が取り出しやすい工夫をしています。

 

画像①:余ったスペースを埋めるスペーサー。指かけがついており、スペーサーを取り外せば、資料も取り出しやすい。

画像②:淵に切りかけをつけて、資料を取り出しやすくする。

画像③:大きく重たい資料でも、手を入れ、安定して持つことができる。

 

それぞれの資料の材質によっては、同じ一つの箱に収納することはお勧めできない場合もございますので、都度当方からご提案をさせていただき、最終仕様を決定します。

2019年2月20日(水)修理前に行うスポット・ テストとサンプリング・ テストとは?

修理にとりかかる前に行う作業として、カルテの作成、状態撮影、さらにスポットテストとpH測定があります。このうちスポット・テストは大別すると2種類に分けられ、目的がそれぞれ異なります。

 

まず一つは、資料の基材となる紙やイメージ材料に対して、スポット(点)状に試薬を接触させて行うテストです。このテストでは、処置に使用する水溶液や溶剤に対し、修理対象となる紙やインクがどのような反応を示すかを見ています。例えば水に「滲むか滲まないか」だけでなく、その程度や感度、脆弱性をみることで、想定する処置をより具体的にシミュレーションすることが可能となり、場合によってはこの段階で処置方法を再考し、より効果的な手法に転換できることもあります。簡便さ、速さが利点ではありますが、試薬を接触させることで見た目を変えることがないよう、テスト範囲は最小限に留める必要があります。一紙面の中でもどの箇所で行うべきかは慎重に判断しなければなりません。

 

もう一つは、本紙から落ちた微細な破片や、資料を構成する付属材料(粘・接着剤など)に対して試薬を用いて行うサンプリング・ テストです。反応をみるためのスポット・テストとは異なり、本紙や付属材料に含まれる物質を識別するために行います。精密な検査を求める場合はより専門的な分析機器が必要になりますが、修理の方向性を見定めたい時には短時間かつ目視で分かりやすく判別することが可能です。例えば試薬の一つにデンプンを検出する「よう素よう化カリウム溶液」があります。これは、過去の補修時にデンプン糊が使用されたことが分かれば、その補修紙を除去する際、デンプン糊の接着力を緩ませるために水を用いた水性処置は効果的で安全性が高いという判断ができます。

2019年2月14日(木)「京都映画ノンフィルム資料アーカイブ セミナー&シンポジウム」で映画ポスターや台本の修理について講演しました。

文化庁が進めている「アーカイブ中核拠点形成モデル事業 (撮影所等における映画関連のノンフィルム資料)」の一環として、2月6日(水)に「京都映画ノンフィルム資料アーカイブ セミナー&シンポジウム(主催:文化庁、共催:特定非営利活動法人映像産業振興機構(以下VIPO)」が京都大学楽友会館にて開催されました。

 

ノンフィルム資料とは、フィルムを除く、映画の製作で使われる脚本やポスターなどの映関連資料を指します。

 

今回のセミナーでは弊社スタッフが「映画資料の特性を生かした修復・保存について」と題して、東映太秦映画村様ご所蔵のポスター3枚と台本3冊の「紙資料」の修理を主に解説しました。また、これまでの弊社が手掛けた映画関係資料の事例を交え、その修理と保存について必要な考えと、方法や保護のための包材等をご提案しました。

 

質疑応答では聴衆の方々が実際に直面している問題の具体的な内容をお寄せいただき、私共にとって大変有意義な時間となりました。ご参加いただいた皆様だけでなく、貴重な機会をくださった文化庁様、VIPO様にもお礼申し上げます。ありがとうございました。

2019年2月6日(水)東京文化財研究所様からのご依頼で、閲覧や資料複写時の支持具を安定した品質のフォーム材で作成。

東京文化財研究所文化財情報資料部に所属する研究員様が進めている科研費課題[※1]の一環で、同研究所資料閲覧室の閲覧机や複写台で使う、脆弱な資料を閲覧・撮影するための支持具を作成した。

 

支持具の盤面はAZOTE®(エイゾート)[※2]と呼ばれる文化財保護用のフォームマットを使った。マットは湾曲や折れ曲がり防止のため中性紙の厚紙に貼り合わせた。表地がグレー、裏地が黒のリバーシブル構造になっているのが特徴で、撮影した画像の用途等に合わせて地の切り替えが可能。複写台の幅と奥行きに合わせて設計されているため撮影台のスペースを有効に使え、資料がきれいに撮影できのせたまま安全に移動できる。

 

[※1] 科研費課題「ポスト1968年表現共同体の研究:松澤宥アーカイブズを基軸として」研究代表者 橘川英規氏(東京文化財研究所文化財情報資料部)

 

[※2] AZOTE®(エイゾート):文化財保護用のフォームマット
ポリエチレン樹脂を特殊発泡させたフォームマット。一般的なフォーム材の製造には化学発泡剤が使われており、発泡体に残留したホルムアルデヒドやアンモニア系のガスが接触した資料に腐食や染みを起こす原因となることがある。AZOTE®は化学発泡剤を用いない超臨界窒素ガス発泡方式で製造され、有害ガスを放出する危険がない素材。また純粋なポリエチレンが原料なので対候性や耐薬品性も高く、一つ一つの気泡が均一なため物理的強度が高く耐水性にも優れている。ヨーロッパ諸国の博物館・美術館では壊れやすい美術品や資料の収納・梱包、引き出しや箱のライニング、額装など 多目的に使われている。その他、精密機器や軍需品など様々な分野での輸送にも採用されている。PAT(ISO18916:2007長期保存用包材のための写真活性度試験)もパスしており、直接資料に長期間接しても問題のないことを確認している。

 

2019年1月30日(水)東京大学総合図書館から14名の方々をお招きし、保存容器と修理の部門をご案内しました。

東京大学総合図書館の職員の方々14名を弊社の見学にお招きし、保存容器制作部門と修理部門のそれぞれをご案内致しました。

 

制作部門では、保存容器に収納する資料や作品の採寸から部材の切り出し、組み立てまでの流れをご覧いただいたほか、無酸素パック『モルデナイベ』や『ドライクリーニング・ボックス』の解説や事例をご紹介しました。

 

修理部門では、スタッフそれぞれが担当しているお客様の資料の処置工程をご覧頂きました。和装本、ポスター、新聞、簿冊、小冊子、洋装本などといった形態の資料の、手繕い、リーフ・キャスティング、裏打ち、脱酸性化処置、デジタル化の撮影前後の手当て、エンキャプシュレーション、修理製本などの処置工程や処置の使い分けをご紹介しました。職員の方の中には、館内で修補を行っている方もおられるとのことで、貴重な意見交換もできました。見学後、「職員のなかでの資料保存についての選択肢が広がった。」との感想をいただきました。

 

見学中、採寸道具に大きな関心を持ってくださったことをきっかけに、見学後に初代(約23歳)の採寸道具を久しぶりに出して組み立て、触れてしみじみ味わいました。(最後の2枚の画像が採寸道具。白い本体が初代。もう一台が現役。)

 

今回の見学も、スタッフ一同、大変勉強になりました。東京大学総合図書館の職員の方々には、お忙しい中ご来社くださり、心より感謝申し上げます。

2019年1月23日(水)版画やデッサンなどの紙に描かれた作品類をまとめて保管するには。

版画やデッサンなどの紙の上に描かれた作品類をまとめて箱に入れて保管する際、作品と作品の間に一枚ずつ間紙を挟んだり、それぞれの作品を二つ折りフォルダーに挟むことがある。どちらも作品の保護や色移りの防止などに役立つ包材だが、上手く使い分けることでより効率的な保管ができる。

 

作品を取り出すことが多い、整理番号を明記したいなど個別に扱うことが多い場合は一点ずつ二つ折りフォルダーに挟み、フォルダーごと扱えば作品の保護にもなるし管理もしやすい。

 

一方、作品を取り出すことがほとんどなく、なるべく嵩ばらないように保管したい場合は、薄手の間紙で十分間に合う。包材の紙質については作品の素材や大きさも考慮しながら、厚みや表面のなめらかさなどを検討すると良い。

 

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新薄葉紙「Qlumin(くるみん)

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2019年1月16日(水)厚い台紙の写真アルバムを修理する。

厚い本文台紙の端を接着剤で貼り合わせて冊子状にした写真アルバム。貼り付ける写真の紙の厚み分を、台紙の端をL字に折って作り、折ったところを隣りの台紙の端に貼り合わせている。

 

表紙が外れ、台紙の切れや剥がれが起きている。剥がれた台紙を貼り合わせたのち、背ごしらえして表紙と再接合する処置を行う。一般的な書籍の場合は見開いた際に背を支えるよう、和紙をしっかりと貼り重ねて背ごしらえを行うが、この形態の資料は台紙が厚く柔軟性がないため、厚い背ごしらえを行うと見開けなくなってしまう。そのため、和紙の他に薄くとも強度がある寒冷紗を背ごしらえに使い、柔軟な動きに対応できる背を作った。

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