今日の工房 

週替わりの工房風景をご覧ください。毎日こんな仕事をしています。

2018年5月23日(水)寄贈資料のカビのクリーニング作業を、出向して屋外で実施しました。

松竹大谷図書館様より、寄贈された資料のカビのクリーニング作業を依頼された。対象は演劇台本など約700点。湿気の多い環境に長い間保管されていたようで、全体に湿っており、カビが発生していた。この状態で書庫に入れることは困難であるため、資料の乾燥とクリーニング作業を行うことになった。

 

他の資料へのカビ胞子の飛散を防ぎ、さらに資料の乾燥もあわせて行うため、図書館の近くにある東銀座・ 東劇ビル屋上をお借りして、屋外でのクリーニング作業を行った。当日は快晴で、屋上に資料を広げ、乾燥を促しながら、1点1点クリーニングを行った。

 

カビの付着が著しいものはブラシを装着させたHEPAフィルター付き掃除機で吸引した後、消毒用エタノールをクリーニングクロスに滲み込ませたもので、拭き取った。通常クリーニング作業は手袋を装着して行うが、今回は資料の乾燥状態を確認しながらの作業であったため、手袋は外して素手で行った。その後、乾燥が確認できた資料から無酸素パック「モルデナイベ」に収納し、万が一取り残しのあったカビ胞子の不活性化と殺虫を行った。

 

作業に当たっては、松竹大谷図書館様のスタッフの方々にもお手伝いいただき、スムーズに作業を進めることができました。暑い中お手伝いいただきましたこと、心より御礼申し上げます。

2018年5月16日(水)夏のごあいさつにむけて手拭いの柄はどれに?

毎年お正月と夏にお客様にお配りする弊社オリジナルの手拭い。風鈴、ラムネ、金魚と夏らしい柄が候補にあがりました。これからスタッフ一同どれにするか検討します。どのデザインかは、皆さまのお手元に届く7月中頃までお待ちください。

 

2018年5月9日(水)資料を洗浄する時の水の物性の変化を確認する計測機器。

修理作業では、毎回異なる性質の資料を扱うにあたり、処置結果を同じレベルにするための目安として、計測機器を用いて処置に使用する材料の物性の変化も測り、その値を参考にしながら処置を行います。特に資料の洗浄などの水性処置では、処置中の水のpH・TDS(総溶解固形分)・温度等の変化を測り、処置後の各種値の変化を確認します。

 

これまでは計測結果の表示画面と計測用の電極が一体になったハンディータイプの計測機を使用していましたが、新たに、河川などの水質検査用の電極投げ込みタイプを導入しました。手元の画面で数値の変化を確認しながらチェックシートの記入が行え、また、大きな洗浄槽の中でも計測機の水濡れを気にせず処置を行いながら数値が確認できるようになり、重宝しています。なお、4枚目の画像は処置中・処置後の洗浄液の色の変化を比較したもので、数値の確認と併せてこうした目視観察・記録も行っています。

2018年4月25日(水) アニメプロダクションのアーカイブ構築に大型ドライ・クリーニングボックスが活躍

アニメ製作プロダクションの株式会社トムス・エンタテインメントのアーカイブ部様よりご依頼をいただき、セル画や原稿、絵コンテなどのクリーニング用に大型サイズのドライ・クリーニングボックスを製作しました。

 

同社では、映像資産としての利活用を目的としたアニメーション資料のアーカイブ化に取り組んでおり、整理作業の一環で資料のクリーニングを行っています。セル画のクリーニング作業では、固着したセルを剥がしたり、作画時のインクの 微細な飛び散りを除去する際に有機溶剤を使用し、また、セル画の材料である酢酸セルロース(トリアセチルセルロース)は経年劣化によって加水分解し酢酸ガスが生じるなど、チリやホコリだけでなく、作業者がこうした有害化学物質を吸引しないように、これまでも様々な対策を講じられてきました。

 

今回製作したのは、ボックス内の作業スペースが定型品(幅550×奥行き350×高さ220ミリ)に比べて約2倍の幅1,000×奥行き700×高さ330ミリのもの。幅、奥行き、高さ共に広くしたことで、資料が収納されたB4やA3サイズのクリアブックからセル画を出し入れしながら作業できる十分なスペースが確保できました。また、周囲へのホコリの飛散防止のために取り付ける透明アクリル板のたわみを抑制するため端にL字曲げ加工を施し、サイドバーには開閉時の衝撃吸収とボックス内の密閉度を高めるための緩衝材(プラスタゾート)を設置。十分な吸引気流が発生するよう作業に支障のない範囲内で開口部も小さく調整し、作業中に舞い散る細かいチリやホコリ、カビ、有機溶剤蒸気などに汚染された空気を作業者が吸い込まないようになっています。

 

 

関連情報
・『今日の工房』2018年2月7日(水)スタッフの健康を守るために、 有機溶剤などの化学物質、粉塵・ カビなどへの対策の一環として、防塵・ 防カビマスクを一新しました

2018年4月19日(木) 北原白秋の晩年を記す籔田義雄の日記を修理し展示へ

小田原市立図書館様より、昭和初期の日記帳2点の修理製本をご依頼頂きました。この日記帳は、北原白秋のお弟子さんで、秘書も務めた、詩人の籔田義雄(1902-1984)の昭和14年と昭和17年のもの。ともに、白秋の晩年の記録にあたります。4月21日(土)からの町田市民文学館ことばらんど企画展「童謡誕生100年 童謡とわらべ唄 ー 北原白秋から藪田義雄へ 」に、昭和17年のものが展示されます。

 

処置としては、破れや欠損のあるブックジャケットへの修補と、外れたヒンジの修理を行いました。修補ではジャケットの色に染色した和紙とでんぷん糊で繕い、ヒンジの修理ではオリジナルの背ごしらえを除去し、新たに和紙や中性紙で背ごしらえを行いました。新しい背ごしらえにより背が支えられ、本体を開いた状態での展示にも、安全に対応できるようになりました。

2018年4月11日(水) より安全に出し入れしたい資料にはフラップ付きをお勧めしています。

資料を保管するための容器に大切なことは、使用材料の品質や、容器としての強度もさることながら、資料の出し入れの際の「使いやすさ」が挙げられます。容器への出し入れがスムーズにできれば、資料にかかるストレスを軽減し、かつ安全に取り扱うことができるからです。

 

弊社の製品も、なるべく使いやすい形状にすることを心がけています。例えば、被せ蓋式保存箱は蓋と身からなる最も基本的な形状の箱ですが、ご希望に合わせて箱の身の側板が開く「フラップ式」という構造にすることができます。これにより、資料を箱の横から取り出すことができるようになります。例えば、壊れやすく高さのある花瓶は、箱の上から手を入れて持ち上げて出し入れするよりも、フラップを倒して横からしっかり持って引き出す方が安全です。また、つかみにくい書類束や重量のある書籍など、箱の底までしっかりと手先を入れて取り出したい資料にも効果的です。

 

箱型の容器に入れたいのだが「どうも出し入れが面倒だな」という資料がありましたら、ちょっとした工夫で解消できるかもしれません。お気軽にご相談ください。

2018年4月4日(水) 修復業務のアシスタントを募集します。

近現代紙資料(図書、雑誌、和装本、洋装本、新聞、地図、図面、写真など)の修復業務のアシスタントを募集します。

 

仕事内容は、処置に必要な資材の準備などのほか、実際の処置業務の補助をお任せします。そのほか、保存容器の作製、劣化調査、出向業務、事務作業などもお手伝いいただきます。

 

募集要項はこちらをご確認下さい。

2018年3月28日(水) 工房は年度末の繁忙期で、修理・ 容器部門共にフル回転。

例年同様、工房はいま繁忙期真っ只中。スタッフはフル回転で仕事に取り組んでいます。完成した保存容器、修理の終わった資料は、お出しする書類の最終確認後、順次お客様の元へ発送、ご納品に伺っております。ご納品と併せて、両部門共に新しい案件のご相談も相次ぎ、おかげさまで次年度も忙しい一年になりそうです。

2018年3月21日(水) 神奈川県立歴史博物館様所蔵の屏風を収納するコンテナ・ ボックス

神奈川県立歴史博物館は横浜市にある博物館で、神奈川にまつわる歴史・民俗資料や美術品などを収蔵・展示している。今回、同館からご依頼をいただき、屏風を立てて収納するコンテナ・ ボックスを製作した。

 

ボックスは外寸が高さ1800㎜×幅900㎜×奥行800㎜あり、1ボックスに屏風が4〜6隻程度収納出来る。蓋は慳貪式の前扉にし、留め具などの飛び出しがない設計になっている。また前扉の密閉度を高めるため、ボックス本体の壁にはアルミの補強材を垂直に入れている。これによって紙製の箱とは思えない程の強度が得られ、屏風を立てかけても壁がたわまない構造になった。 屏風の重みでボックス内部の床が凹まないよう、プラスチック製の底板を貼り込んだ。製作時にはスタッフが乗って強度を確かめている。

2018年3月14日(水) 専図協セミナー、1966年のフィレンツェ被災本の救出作業から生まれたコンサベーション・ バインディングを試作する

2月27日(火)に開催された専門図書館協議会主催の「資料保存セミナー(関東地区)」を昨年度に続き今年度も担当しました。今回は「本の綴じ形態を知り、コンサベーション・バインディングを試作する」というテーマで講義と実習を行いました。

 

コンサベーション・ バインディングは、1966年のフィレンツェでの大洪水で被害を受けた膨大な数の書籍の救出作業(画像① ②)をきっかけに生まれました。それらの書籍の中で、最も被害の少なかった書籍の構造(綴じ方、表紙の接合方法、接着剤の採用の有無、可逆性など)を調べることで行き着いた考え方と技術です。講義では、それを元にした書籍の構造を、現在図書館やアーカイブズ等で保存されている冊子形態の様々な製本構造と比較し、その特徴や損傷傾向をサンプル本を見ていただきながら解説しました。

 

実習では、コンサベーション・バインディングの代表的な方法の一つであるリンプ・バインディングを試作し、本への負荷が極めて少なく、可逆性のある構造とはどういうものかを実際に試作し、体験していただきました。

弊社が担当したセミナーで、折り丁(括)を綴じていくという作業を盛り込んだのは今回が初めてでしたが、参加者の方々は皆さん、すぐにコツを掴んでどんどん綴じ上げて下さり、足並みを揃えて時間内に終わることができました。

 

また、セミナー後に実施されたアンケートの集計結果では、「全体としての感想」として参加者17名すべての方が「大変良い」と回答して下さいました。その他の設問に対しては、以下のような回答をいただきました(抜粋して掲載)。アンケート結果は今後の参考にしてまいります。

 

 

「受講して、あなたが最も興味深く学んだ(印象に残った)ことは何ですか?」

▶︎資料の強度について。立派そうな装丁のものがもろく、接着剤を使わないものが強いというのが印象にのこりました。

▶︎書籍は1点ずつ、保存・修理の方法が異なるということ。貴重な資料については、慎重に方法を検討することが大切だと思った。

▶︎手で製本するのはとても手間がかかっているということがわかりました。ただ、とてもしっかりしていると実感しました。

▶︎可逆性のある装丁が保存には重要だということ。接着剤は使ってはいけませんね。(つい使ってしまうけど)

▶︎可逆性のある製本=コンサベーション・バインディング という概念を知ることができたのがまず大変有意義でした。本の構造についても様々なバージョンがあることも知れて良かったです。

 

「他に聞きたかった(不足していた)ことは何ですか?」

▶︎今回の製本は図書館でどのようなときに使うべきか具体例をもっと聞きたかった。

▶︎質問に答えていただいたので不足はありません。

▶︎日々直面している破損本の修理方法と具体的対応方法。

 

 

関連情報

[動画]  The restoration of books: Florence – 1968

 

(修理でのコンサベーション・ バインディングの事例)

学習院大学図書館様所蔵「華族会館寄贈図書」資料に対する保存修復処置事例

 

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