今日の工房 

週替わりの工房風景をご覧ください。毎日こんな仕事をしています。

2019年5月22日(水)アーカイバル容器の折り筋に骨ヘラでひと手間加えると、仕上がりがいちだんときれいになります。

弊社ではさまざまな形状や用途の保存箱を製作していますが、どの箱も弱アルカリ性のアーカイバルボードを折り込んだり貼り合わせて箱の形にしています。特に折り部分の加工は箱の成形にとって重要な部分で、そのひとつひとつが仕上がりに関わってきます。

 

この折り部分の加工で活躍するのが骨ヘラです。骨ヘラはボードや紙に筋を入れたり、折ったり、角をおさえたり、ほとんど手のように使う一番身近な道具です。

 

ボードの折り込み部分には機械で押圧した罫線や切込を入れますが、保存箱の素材として使われるアーカイバルボードは普通の段ボールをはるかに上回る硬さと強度をもつことから、そのままボードを折り込むと折線に沿って重なる紙同士の厚みで「反発」が生じます。この反発を解消せずに組み立てた箱は折り込み箇所が膨らみ、隙間や歪み、サイズが合わないなどといった不具合の原因になることがあります。

 

そこで、骨ヘラを使い、折線がV字型になるような筋をさらに入れて、ボードの反発を相殺し抵抗なくきれいにボードを折り込めるよう正確な折り込みラインを入れます。

 

また、完成した箱の角をヘラでひと撫でするだけでフォルムが整うので、見栄えの良いきっちりとした箱に仕上げる決め手として大変重宝しています。

2019年5月15日(水)NPOゲーム保存協会様からのご依頼でフロッピーディスクを長期保管するための専用容器を作成した。

NPOゲーム保存協会様からのご依頼でフロッピーディスクを長期保管するための専用容器を作成した。

 

ゲーム保存協会では、旧世代のデジタルゲームを扱う中で、フロッピーディスクやカセットテープなどのメディアを数多く所蔵しており、なかでも80年代のゲーム文化黄金期を伝える資料的意義の高い5.25インチフロッピーディスクと3.5インチフロッピーディスクの現物保管に注力している。併せてゲーム・デジタル・アーカイブとデータベース構築をすすめており文化財として継承に耐えうる適切な形での資料の保存に力を尽くしている。

 

フロッピーディスクには8インチ、5.25インチ、3.5インチなど様々な種類があり、これら磁気ディスクは湿気やホコリなどの汚れ、汚染ガス等の影響を受けやすい非常にデリケートなメディアだが、特にカビによる劣化に弱く、湿気の多い日本では保管に特別な注意が必要な資料である。

 

保存容器は酢酸他のVOCを吸着する汚染ガス吸着シートGasQ®を組み込んだ新きりなみ仕様。ガス吸着機能とともに、容器内の相対湿度を安定させる調湿効果を発揮し、環境要因からくる収納物の劣化を最大限に抑制できる。ゲーム資料は各々QRコードで管理され、中性紙でできた封筒と専用の保存容器に収納し、一定の温度・湿度管理のもとに保管されている。

 

関連情報

◆  Yahoo!Japan ニュース 2019年4月26日  コレクションは何と10万点! 有志の熱意と技術を結集したゲーム保存協会の取り組み

『今日の工房』2017年1月12日(木) ゲーム資料保存の喚起を促す小冊子『ゲーム保存の意義とその実践』–国内外の現状と課題、データ記録媒体の基本知識や保存等の実例も

『今日の工房』2016年6月1日(水)「GameOn ゲームをどう残すか」フォーラムに参加しました。

『今日の工房』2016年3月9日(水) ゲームソフトのフロッピー、テープ、CDを保存するには。

2019年5月8日(水)差し込み箱から、より安全・容易に資料を取り出すためのお包み(上智大学史資料室様)

上智大学史資料室様から額装絵画を、これまでの茶段ボール製の差し箱からアーカイバル容器への入れ替えのご依頼をいただきました。

 

保存容器は保存容器の側面から資料を出し入れする差し込み箱。出し入れの際には、額装絵画に直接触れずに安全かつ容易に行いたいとのご要望です。

 

そこで、これまで使用されてきた不確かな素材の布袋に代わり、 アーカイバルボードでのロの字お包みを作製しました。強度もあり、資料に負担のない出し入れが可能となりました。

2019年4月24日(水)紙の酸性度を測るためのメルク社のpHストリップの使い方。

資料の修理にとりかかる前の作業として、カルテの作成、状態撮影、スポット・テストとpH測定(※1)があります。なかでも、紙の酸性度合いをみるためのpH測定は、紙媒体記録資料の修理においてかかせない工程のひとつです。

 

和紙に墨書きされた文書や版本とは異なり、種類が豊富な近現代の文書や書籍の紙は、その劣化要因も損傷状況も様々です。特に、近現代の資料は、酸性紙問題(※2)として指摘されるように、紙の内部で化学的な酸性化が進むことで、紙力低下、それに伴う破れや欠損などの重篤な物理的損傷につながる恐れがあります。

 

こうした紙に対する修理技術の一つとして、紙中の酸を中和し内部にアルカリ・バッファー(※3)を残すための「脱酸性化処置」があります。pH値は、その化学的損傷度合いと、脱酸性化処置が問題なく、また、万遍なく行われたかを見るための指標として計測されます。pH値と、中和後のアルカリ・バッファー量とは全く別のものではあるものの、劣化度合いを測るためのいくつかある指標の中で、紙の保存性と密接につながっているといえます。

 

pHは、元々液体の水や水溶性の液体の酸性やアルカリ性を示す指標ですが、固体である紙にはそのままでは適用できません。厳密に紙のpHを測るときは、細かくカットした紙片を水の中に入れて、しばらく置いてから電極式のpH計測器で測定(JIS P 8133 1)しますが、この方法はいわゆる破壊的なサンプリング・テストになるので、修理の工程で行われることはほぼありません。代わりに使用されるのが「pHストリップ」です。これは、指示薬が塗布されている面をわずかな水分で濡らし、紙の表面と接触させ、その変色具合でpHを測定するという方法で、弊社ではメルク社のpHストリップを使用しています。

 

この方法で計測するのは紙の表面pHなので、厚みがあるものや、水の浸透性がよくない紙の内部のpHを測ることはできません。ただし、裏まで水が抜けるような紙質であればかなり正確に測定できます。

 

pHストリップの指示薬は水に濡れても色移りすることはありませんが、あまり水分が多いと、計測する紙の方がヨレたり、輪染みといわれる円形のシミを作ってしまうことがあります。pH測定もスポット・テスト同様、接触させる面をなるべく最小限に留めるために、例えば指示薬部分を半分に切って使用したり、計測後はすぐにろ紙を当ててしっかりと水分を取り除いたり、もちろん、水に滲むようなインクや色材の箇所では行わないなど、事前の準備を整えて行います。

 

[測り方]
①pHストリップを縦半分に切り、指示薬の部分も半分くらいにカットする。ポリエステルフィルムなどの小片を、計測する紙の下に敷く。
②蒸留水(脱イオン水であること)で、pHストリップの指示薬のついた面を湿らせる。浸したり、スポイトなどで滴下する。余分な水分はろ紙に吸い取らせる。
③指示薬の面を紙表面にあてて、上からもう一枚のフィルムで挟みマリネする。指で軽く押さえたり、ごく軽い重しを載せる。
④1分ほど経ったらストリップを外して、変色具合をカラーチャートと比較しpH値を確認する。

 

 

※1 pH:「水素イオン濃度指数」のこと。0~14までの数値によって水溶液の酸性またはアルカリ性の程度を表す。水溶液中のイオン化した水素イオン(H+)と、対極する水酸化物イオン(OH-)が同量存在するときが中性(pH7)、水素イオン濃度が上回ると酸性、逆に水酸化物イオンが多いとアルカリ性を示す。pはポテンシャル(potential)、Hは水素(Hydrogen)。

 

※2 酸性紙問題:紙の製造過程において、サイズ剤(にじみ止め)である「ロジン(松ヤニ)」の定着剤として、「硫酸アルミニウム(硫酸バンド)」が、19世紀後半から1980年代にかけて生産された紙に用いられた。硫酸アルミニウムと紙中の水分が反応することで強い硫酸が生成され、これが触媒となって紙のセルロースを加水分解し破断させる。さらに、硫酸の脱水作用により、潤滑油のような役割を担っている紙中の水分が奪われ、繊維の角質化が起こり紙が脆くなる。製造から50年足らずで紙力が極端に落ちてしまう資料が図書館やアーカイブズに大量に所蔵されていることが世界的な問題となり、これを契機に、中性紙の国際規格制定へとつながった。

 

※3 アルカリ・バッファー:紙中や大気中の酸性物質による劣化を予防するために紙に保持させるアルカリ残留物。ISO9706:1994 Paper for documents Requirements for permanence(永く残る紙)で定めている長期保存用紙の場合、「乾燥重量比で2%の炭酸カルシウム相当量を含んでいること」とされるが、文書や書籍の紙として長期に置かれ、かつ、すでに酸性化した紙に対して行う中和後のバッファー付与で、これだけの量を残留させることは難しい。

2019年4月17日(水)バインダー内の分類や仕切りに最適なタブ付きインデックスシート。

アーカイバル・バインダー内での分類・仕切りに使う中性紙製タブ付きインデックスシート。タブは見やすい山ずれ見出し式で、資料リストと連動したコードや管理番号などを印刷したラベルを貼れば、 ファイリングした資料をすばやく検索し、かんたんに識別できます。

 

とくに資料形態が多様な写真系資料の整理には最適で、形態・種類・年代などの大まかな分類で整理したものでもインデックスシートで仕切ればアーカイバル・バインダー1冊で一括収納・保管できます。

 

中性紙を使用しているのでインデックスシート自体にも印刷できます。例えば、資料形態(紙焼き、ネガ・ポジフィルム等)、撮影年月日、資料の中身(何の写真か)、保管場所などの「索引情報」をシートに印刷すれば、開かなくても中身が分かるような写真台帳としても使えます。

2019年4月10日(水)様々な機関様から寄贈していただく除籍本は、このように活用しています。

様々な機関様から、館で不要となった除籍本を譲って頂くことがあります。パンフレット、ハードカバーのくるみ製本、仮綴じ本、革装丁本、和装本、図版、図面、布帙など、種類や形態は様々です。資料の状態として、綴じ糸外れ(画像①)、過去の補修で使用された粘着テープの劣化(②)、金属留具の腐食(③)、革装丁本のレッドロット現象(④)、くるみ製本の表紙外れや背表紙外れ(⑤)、布帙の変色(⑥)、図版に掛けられた薄紙のフォクシングや変色(⑥)などが見られます。(画像は、ラベル等を一部加工しています。)

 

図書館総合展などの展示会での形態や損傷のモデル(⑦)、処置前のテストサンプル、お客様へ処置方法をご紹介する際のモデル(⑦)、実技講習の参加者の方に使用していただくサンプル(⑦)としてなど、多くの場面で活躍しています。心置き無く試すことができる資料がたくさんあるおかげで、日々の業務を円滑に進められ、大変助かっています。ご協力くださっている各機関の皆様、本当にありがとうございます。

2019年4月3日(水)大型箱の組み立ての時は、複数のスタッフで「せぇの!」と掛け声を合わせながら。

1辺が150㎝を超えるような大型箱を製作するときは複数のスタッフで組み立てを行っています。大きな部材の取り回しや接着剤の塗布、成形など、ひとりではとてもできない作業を分担し、無駄のない動線や立ち位置、道具の置き場所にも気を配りながら作業の流れを作っていきます。

 

また、動作のタイミングを合わせるときには必ず「せぇの!」と掛け声をかけるのが習わしで(うっかり言い忘れると怒られることも・・・)、お互いに息を合わせながら梱包までの作業を進めます。毎日様々なサイズや構造の箱を手掛けますが、こうしたスタッフの緊密な連携作業が常に製作を支えています。

2019年3月27日(水)作業台の上で大型本を固定して修理するためのベンチ・ プレス機を特注しました。

作業台(ワークベンチ)の上で大型本を固定して修理する際に使用するベンチ・ プレス機を、新しく特注しました。継ぎのない無垢の樺(カバ)の木から作られたプレス機で、通常のプレス機には入らない大きいサイズの本も挟めるように、ネジ間が大きくとれる仕様で作っていただきました。木製のネジも滑らかに動き、重量のある大型本もしっかりと締めて固定できます。製作は柏木工房様にお願いしました。作業に適した良い道具を使用すると修理の作業も捗ります。

2019年3月20日(水)お客様の元へ出向しての資料のクリーニングや解体・ 復元作業に必須の道具を定期的にメンテナンスします。

今年度も資料のクリーニングやデジタル化に伴う解体・復元等で、多くのお客様のもとにお伺いして作業する機会を頂きました。こうした出向作業の際に大いに活躍してくれたドライクリーニングボックスや掃除機、プレス機も、労をねぎらいメンテナンスをしてあげます。特に、ドライクリーニングボックスに付属する空気清浄機のフィルターは、十分な集塵・脱臭効果を得るためにも、定期的な掃除や交換が必要となります。フィルターの埃を取り除き、プレス機には油を差して、この先に控える出向作業に備えます。

 

【関連記事】
『今日の工房』2018年7月12日(水)本体をプルーフ加工し、使用後の汚れの拭き取りが楽な簡易ドライクリーニングボックスに。

『スタッフのチカラ』2015年12月2日 資料に付着した汚れやカビのドライ・クリーニング

2019年3月13日(水)絹布上に描かれた大型の曼荼羅作品を安全に移送と保管ができる保存箱。

二点一対になっている両界曼荼羅図の復元模写作品を収納する保存箱。曼荼羅は染色した綾織りの絹の上に金泥で描かれており、作品本体を四方から糸で木枠に張り、木枠ごと壁に掛けて展示できる。

 

ご依頼者からは作品の移送も安全に行える保存箱をご所望いただき、持ち運びの際にたわみやゆがみの起きない強固な構造の被せ蓋式の箱を製作した。箱内部で描画面が箱の内壁に接触しないように、木枠部分を文化財保護用のフォーム材AZOTE®(プラスタゾート)で固定する設計になっている。また、 平置きで保管する際に作品本体が絹布の糸の緩みで垂れ下がってくるのを防ぐために、AZOTE ® を本紙周囲の張り手部分(中に竹の芯棒が入っている)の裏面側に設置し、作品本紙を支えている。さらに、箱の身と蓋はボアテープで固定するので、箱を立てての移送も安全に行うことができる。

 

保管時は、作品の木枠から放散される酸性ガス対策と描画面の保護のために、汚染ガス吸着シート「GasQ ガスキュウ」で作品を覆っている。

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