今日の工房 

週替わりの工房風景をご覧ください。毎日こんな仕事をしています。

2017年8月17日(水) 厚くて重い大型洋装本にはブックシュー構造のシェル型保存箱をお勧めします。

書籍用保存箱は資料のサイズや用途に合わせて、製作する箱種を選び、お客様にお勧めするが、特に重量のある書籍を縦置きしたいというご要望にピッタリなのが、底上げしたシェル(二枚貝)型の保存箱だ。

 

書籍用の定番商品には、比較的薄い冊子などの資料向けのスリムフォルダーと、物理的な保護強度が求められる貴重書などの通常の書籍にはヒネリ留め具付きのタトウ式保存箱がある。タトウ箱は四方に展開できる構造なので、出し入れの時の資料への負担を大幅に軽減できる。しかしいずれの箱も、厚みがあってサイズも大きな書籍を縦置きしたい場合には、底部分にかかる重量を箱が支えきれず、取り扱い時に底が抜けてしまい、資料が落下する危険性がある。

 

図鑑や辞書、聖書などで特に重量のある大型書籍用にはシェル型の保存箱が強度面でより適している。中身の出し入れの際は書籍を厚手の板紙に載せてスライドさせるので、表紙が箱の内側で擦れる心配がない。洋装本の場合は表紙と本紙の底面の段差だけ底上げした構造(ブックシュー)にすることで、縦置きで保管する時の書籍へのストレスを軽減させている。また蓋をボアテープで固定することで、安全に持ち運びができる。

2017年8月9日(水)資料の修理に不可欠な道具のひとつがプレス機です。

弊社では様々な形状、大きさのプレス機を用途に合わせて使い分けています。

 

本の場合は、定位置に本を固定させてスムースに手作業をするために、作業台に載るような小・中型のプレス機を使います。本を挟んだプレスごと、縦に置いたり横にしたりできます。

 

一方、図面やポスタ―などの一枚モノで比較的大きなサイズの資料の場合は、床に据え置きの大型プレス機が不可欠です。波打ちしていたり、全面にわたる破損部を修補した後に、わずかに湿らせ、濾紙を挟み、何度も濾紙を交換しながら、資料が均一にフラットになり落ち着くまで、時間をかけて乾燥させます。

 

さらにより強い圧をかけたい場合はスタンディングプレスを使います。下段右端の画像は、水損した本をまとめてフラットニングと乾燥をしている様子。水分を含んで歪んでしまった本を、数日かけて徐々に圧を加え、歪みを正しながら元の形に直していきます。

2017年8月2日(水) 成城大学民俗学研究所様の所蔵する人形や郷土玩具の虫退治に、無酸素パック「モルデナイベ」が使われています。

成城大学民俗学研究所は、日本民俗学の創始者である柳田國男からの寄贈資料を集めた「柳田文庫・民俗学研究室」を基盤とし、昭和48年に設立されました。現在は、図書や文書資料にとどまらず、関連する様々なモノ資料も所蔵しています。

 

そのひとつが、日本各地から集められた人形や郷土玩具。民衆の生活に身近なワラ、木、土、布、紙などを材料としたものです。しかし、いずれも虫の餌や巣になりやすい素材で、特に木やワラは、収集時にすでに虫が潜んでいることもあるため、収蔵前の駆除は必須ということです。過去には外部に委託して燻蒸処置を行ったこともあったそうですが、民俗資料は数も種類も多く、収蔵時期も不定期のため継続が困難でした。

 

同研究所では以前、木製の人形に虫が出てしまったときには薬品では駆除することができず、弊社の無酸素パック「モルデナイベ」を使って駆除に成功しました。手軽に殺虫処置を行えることから常備品としてくれています。ただこれまでのサイズの「モルデナイベ」では小さくて、処置できない民具もありました。今回、新製品の大型サイズをすぐに導入していただき、大きなワラ馬(信州地方に伝わるワラでできた馬)の殺虫処置を実施していただいております

2017年7月26日(水)今年の夏の手ぬぐいはゴーヤ柄です。

毎年恒例となっている手ぬぐいの今夏バージョンは、ゴーヤ柄に決まりました。ゴーヤは夏バテ予防に効果的な野菜です。これからますます暑さが厳しくなりますが、この夏を元気にお過ごし下さい、というスタッフ一同の願いと一緒に、お客様の元へお届けいたします。

 

(柄の中にはゴーヤでできた顔が隠れています。ぜひ探してみて下さい。)

2017年7月19日(水)写真保存の第一人者 ラヴェンドリン氏の『写真技法と保存の知識』が出版に。

現在の写真保存における予防的保存の理論的な基礎を据えたベルトラン・ラヴェドリン氏 の主著『 Connaître et conserver les photographies anciennes(仏語タイトル)』の完全日本語版が『写真技法と保存の知識』として青幻舎から出版された。原書のフランス語版、英語翻訳版共にベストセラーとなっており、すでにスペイン語版、ベトナム語版が刊行されている。

 

著者のラヴェンドリン(Bertrand Lavédrine)氏はパリ自然史博物館・教授、フランス国立保存研究センター・所長(併任)。現在、国立民族学博物館客員教授。日本語版への翻訳は白岩洋子氏(紙本・写真修復家、白岩修復工房主宰)、監修は日本大学芸術学部教授 高橋則英氏(日本大学芸術学部教授)による。

 

本書では、 デジタル以前の主要な写真技法を網羅し、各技法の歴史・製作法・劣化とケアについて、わかりやすい図解と豊富な作成図版で一覧できる。第3部の「保存」には、保護包材、保管環境、展示、デジタル化–の項があり、写真の技法を判別した上で、 どのような劣化が起こり、 それに対しどのようにケアしていくかについて丁寧に解説されており、写真を長く保存するための手引書として真に役立つ一冊になっている。

 

 

(内容紹介 : 本書カバーより)

 

 「近年、初期写真への関心はコレクター、保存修復家、アーキビストだけでなく、家族アルバムや地域の写真の保存を望むアマチュアの人々の間でも高まっている。写真の歴史はわずか170年という短いものであるが、その歩みの中で数多くの技法が誕生してきた。本書はデジタル以前の写真を理解し保存するための総合的な入門書であり、写真の技法に関して役に立つ情報を集約した、類のない一冊であ る。筆者はそれぞれの技法—ダゲレオタイプ、アルビューメン(卵白)ネガ、ダイトランスファープリントなど一の歴史と発展、材料、劣化の原因やメカニズムを概説し、保存や取り扱い上の注意に関して具体的に助言している。

 

 本書はこの分野の近年の発展を開示し、包括的に解説した簡潔で理解しやすい一冊として、保存修復家、学芸員、コレクター、ディーラー、写真家、家族アルバムの持ち主、アーカイブや家族写真を長く大切にしたい人など、初期写真の保存に関する知識を求めるすべての人々に貢献することだろう。」 ※本書日本語版の翻訳にあたり、原文の内容を現在の状況に合わせて更新し、さらに本書の英語版も参照したうえで技術的な補足を付している。

 

 

以下は 青幻舎の案内 から。

『写真技法と保存の知識  デジタル以前の写真―その誕生からカラーフィルムまで 」

著者:ベルトラン・ラヴェドリン (フランス国立コレクション保存研究センター所長)
翻訳:白岩洋子(紙本・写真修復)
監修:高橋則英 (日本大学芸術学部教授/写真史・画像保存)
□ 判型:B5変
□ 総頁:368頁
□ 製本:並製
□ ISBN: 978-4-86152-617-6 C1072

定価:本体5,500円+税

2017年7月12日(水) 「第12回映画の復元と保存に関するワークショップ」で実習や講義を行います。

NPO法人映画保存協会主催による「第12回映画の復元と保存に関するワークショップ」が2017年8月25日(金)〜27日(日)に開催されます。弊社では、このうち25日の「ノンフィルム資料の保存と修復」と「ビネガーシンドロームの対策」での実習、26日の「映画保存のテクニカルソリューション」の講義を行います。

 

「ノンフィルム資料の保存と修復」では、映画に関連する紙媒体資料の長期保存のための手当てを、「ビネガーシンドロームの対策」では、劣化が進行している個々の映画フィルムへの対応とコレクション全体に対してできる取り組みを、実習やグループディスカッションを通して体験的に学んでいく講義を企画しています。参加者の方に実作業体験を通して今後の課題について理解を深め、参加者同士のネットワークの強化を目的としています。学芸員、司書、アーキビスト、研究者、技術者、学生、映画が大好きなすべての方々が対象です。

 

ワークショップの詳細と募集要項は、こちらです。

2017年7月5日(水)文化財向け保存容器を製作するアルバイトスタッフを募集

弊社では文化財や貴重資料を長期保存するための保存容器を製作するアルバイトスタッフを募集しています。ヘラやカッター、接着剤を使って箱を組み立てる仕事や、容器に収納する資料のサイズ採寸、納品の補助、資材の搬入や商品の梱包など、さまざまな仕事をお手伝いいただける方を募集しています。形や大きさの違う箱を一点ずつ手作業で完成させていく仕事ですが、ほとんどのスタッフが未経験から始めています。図書や博物資料の保存に興味のある方、手仕事や工作が好きな方はぜひご応募ください。詳しい募集要項は下記サイトをご参照ください。お問い合わせは担当(小林)までどうぞ。

 

◆募集要項◆ 文化財向け保存箱の製作アルバイトスタッフ募集(株式会社資料保存器材)

2017年6月28日(水) 明治期の国産リボン工場跡から発見された見本帳への手当て

洋装の浸透とともに、明治中期には一般にも普及したリボン。東京都台東区谷中にあった、日本で最初のリボン工場跡が2013年に解体・整地されました。工場はその屋根がノコギリの刃のような形状のために「鋸屋根工場」として、この地域の住民に親しまれてきました。 その後、リボン工場の建物は印刷工場として使われてきましたが、2013年の解体にあたり、 リボン工場時代のものと思われる洋書を中心とした1900年前後の繊維産業関係の文献資料や研究ノート、国内・国外製の多数のリボンを貼った見本帳などが発見され、これらの遺産の保存と継承を図る「谷中のこ屋根会」様が譲り受け管理してきました。今回の弊社でのリボン見本帳への処置は同会様からの委託です。

 

見本帳は、リボンを貼った二つ折りの台紙30枚を洋装本風のケースに収納したもの。リボンは織りの裏面を見ることができるよう、上辺のみ、あるいは4隅のうち3点のみで糊止めされている。そのため、開閉時にリボンが垂れ下がって折れた状態で挟まれやすく、繊維が脆弱になったリボンが、折れ目で破断しているものも見受けられる。

 

刷毛等で表面の塵、埃をクリーニングした後、接着剤が劣化して台紙から外れたリボンをデンプン糊で貼り戻した。リボンの折れは、わずかに加湿して折れを伸ばし、フラットニングした。リボン端のほつれは、糊差ししてほつれが広がらないよう止めた。処置後、台紙は二つ折りした中性紙のフォルダで挟んだ。フォルダは開閉時のリボンの垂れ下がりやリボン同士の接触を防ぐため、内側にも挟み込んだ。ケースは強度が低下しているため台紙の再収納はせず、革装部分に対して劣化した革表面の粉の剥落を抑えるレッドロット処置を行った。フォルダに挟んだ台紙を重ね、ケースを GasQシートに包み、まとめて保存容器に収納した。

2017年2月1日(水) お客様での保存箱の組み立てが、より容易になるように、説明書の改訂と更新を行なっています。

弊社の保存箱には、お客様の手で組み立てていただく商品も多数あります。組立式保存箱は、組み立てて使用する時まで平たいまま保管ができるので場所をとらないというメリットもあり、ここ数年は特に多くのお客様にご利用いただいております。初めてご購入いただいたお客様にもスムーズに組み立てていただけるよう、商品に添える組立説明書をより分かりやすいデザインの物へ順次刷新しております。きれいに箱を組み上げていただくためのコツをイラスト付きで解説しています。

2017年6月14日(水) 学習院大学図書館様所蔵の華族会館寄贈図書(漢籍・和装本)277点の修理報告書を掲載しました。

弊社では平成26年度から平成28年度までの3年間、学習院大学図書館様が所蔵するコレクション「華族会館寄贈図書」の保存修復処置をお引き受けする機会をいただき、処置を行ってきました。平成26年度は洋装本62点を対象とし、弊社HPにもその報告を掲載しております。今回は平成27年度から平成28年度までの2年間で行った漢籍、和装本277点に対する保存修復処置についての報告『学習院大学図書館様所蔵「華族会館寄贈図書」漢籍・和装本の保存修復処置事例』を掲載しました。

 

なお、このコレクションは同大学のデジタルライブラリーで公開されております。

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