今日の工房 2025年 5月

週替わりの工房風景をご覧ください。毎日こんな仕事をしています。

2025年5月19日(月)大型台差し箱を縦置きで保管するための平紐加工

額装された美術資料や大型の紙資料など、形が特殊で重さのある貴重な資料を安全に保管するために、弊社では「台差し箱」をおすすめしています。
本体と蓋が分かれる堅牢な構造で、収納時の安定感があり、資料の出し入れがしやすく、長期保存にも適した仕様です。

 

従来より、大型の台差し箱を縦置きで保管し、限られた保管スペースを有効に活用したいというご要望が、文化施設を中心に寄せられてきました。
ただ、縦置きにすることで蓋が自重や振動で開きやすくなり、内部の資料が不安定になるおそれがある点が課題とされてきました。

 

その対策として、弊社ではこれまで、別添えの平紐で蓋を固定する方法をご案内してまいりましたが、特に大きなサイズの保存箱になると、紐が長くなりやすく、取り扱いにやや手間がかかる場面もありました。

 

こうした課題に対応するために、今回ご紹介するのが、平紐をあらかじめ箱本体に組み込んだ新しい仕様です。紐は資料に干渉しないよう、箱の外周部に取り付けられており、蓋を閉じたあとに箱の側面で結べる構造になっています。この工夫により、紐がたわむことなく、大型の箱でも蓋をしっかりと固定することができます。

 

 

[主な特長と利点]
・操作が簡単で、誰でも同じ手順で結ぶことができる
紐の位置が決まっているため、誰でも迷わず操作でき、締め忘れや誤操作を防げます。紐の紛失や再装着の手間もありません。

 

・縦置きでも安定した保管が可能
結ばれた紐がしっかり蓋を固定するため、縦置きでも蓋の開閉や資料の飛び出しを防ぎます。自立性も高く、棚や保管ラックにも安心して収納できます。

 

・資料保存に適した素材と構造
平紐には、化学的に安定した無漂白コットンを使用。中性紙と同様、長期保存に適しています。結び目も柔らかく、他の資料や手を傷つける心配はありません。

 

・資料に触れない設計
紐は資料に接触しない位置に取り付けてあり、圧迫や摩擦といった物理的な影響を避ける構造になっています。

 

・用途に応じた結び方のカスタマイズ
標準仕様は「蝶々結び」がしやすい長さと位置に設定されていますが、用途や運用方法等のご要望に応じて、より密着性や操作性を重視した仕様にも対応可能です。

 

 

資料の形状や運用環境に応じて、最適な設計をご提案いたしますので、どうぞお気軽にご相談ください。

 

 

【関連記事】

2017年4月5日(水)大きな額装作品を縦置きで保管する、留め具付きの台差し箱

続きを読む
ページの上部へ戻る