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2021年1月22日(金)定型サイズの保存容器のご紹介

弊社のフルオーダー以外の保存容器には規格サイズの資料に適したものが多くあります。写真、フィルム系資料、レコードなどに代表される、ISOやJISの統一規格に基づいた資料は素材や形状が標準化されています。そのため、これらの資料にはサイズ、形状、保存に適した保存容器を定型品としてご用意しています。

 

下記の表は、資料の種類とそれに対応する定型サイズの保存容器の一覧です。比較的低価格でシンプルなデザインの保存容器が多いのですが、フルオーダーの保存容器と同様に、取り扱いの利便性、運搬時の安全性、効率的な収納を念頭に置いて設計されています。こうした定型の保存容器は、お見積り前に形状と価格が分かりますので、ご使用・ご予算のイメージがつきやすいというメリットもあります。

 

 

     対象資料           保存容器
紙焼き写真、写真フィルム アーカイバルバインダー+写真資料用リフィル
紙焼き写真
ガラス乾板
映像フィルム
レコード グラモボックス+中性紙レコードスリーブ
1枚もの(地図、ポスターなど)
封筒、文書ファイル

 

 

資料のサイズごとのおおよその比率を把握しており、厚さ重さも含めて定型サイズに収まる場合は、ぜひご利用ください。

 

なお収納したい資料の特徴に合わせて上記保存容器の寸法を変更することや、上記にない保存容器を設計してお作りすることも可能です。保存容器への収納を検討しているが、どの保存容器にすれば良いのかお困りのときはお気軽にご相談ください。

 

「今日の工房」 これまでの保存容器への収納事例はこちら

2019年6月5日(水)放送業務用映像記録ディスクを持ち運びできる、窓付き保管ケース

某放送局様からのご依頼で、映像制作の現場で広く使用されているXDCAMファイル記録用光ディスクの保管ケースを製作した。

 

保管ケースの設計に関してお客様からの4点のリクエストを頂戴した。

 

①ディスクのタイトルラベルが覗ける窓が欲しい。
②局内等で安全に持ち運びできるよう持ち手が欲しい。
③外部への持ち出しも想定し、汚れや少々の水濡れに耐えるようにして欲しい。
④収録内容のデータをプリントアウトした紙が収納できるホルダーを付けて欲しい。

 

ケースの基本形状は、蓋の開閉が容易に行えて且つ持ち運びの際に不用意に開かぬよう、ポリアセタール製留め具付きで蓋と身がつながっている箱にした。覗き窓にはポリエステル製のフィルムを使用し、天面にはポリエチレン製の提げ手を取り付けた。ケース表面には不活性フィルムをコートするプルーフ加工を施し、撥水性と汚れが拭き取れる防汚性を持たせた。収納するディスクに付随するカードを差し込めるホルダーを、ケースの外面2か所に取り付けた。

 

弊社で製作する各種アーカイバル容器は、ご要望に合わせて細かい設計変更が可能です。是非ご相談ください。

 

<関連記事>
・今日の工房 「2016年9月2日(金)大容量磁気媒体 LTO用の専用保存容器を開発」

2019年5月15日(水)NPOゲーム保存協会様からのご依頼でフロッピーディスクを長期保管するための専用容器を作成した。

NPOゲーム保存協会様からのご依頼でフロッピーディスクを長期保管するための専用容器を作成した。

 

ゲーム保存協会では、旧世代のデジタルゲームを扱う中で、フロッピーディスクやカセットテープなどのメディアを数多く所蔵しており、なかでも80年代のゲーム文化黄金期を伝える資料的意義の高い5.25インチフロッピーディスクと3.5インチフロッピーディスクの現物保管に注力している。併せてゲーム・デジタル・アーカイブとデータベース構築をすすめており文化財として継承に耐えうる適切な形での資料の保存に力を尽くしている。

 

フロッピーディスクには8インチ、5.25インチ、3.5インチなど様々な種類があり、これら磁気ディスクは湿気やホコリなどの汚れ、汚染ガス等の影響を受けやすい非常にデリケートなメディアだが、特にカビによる劣化に弱く、湿気の多い日本では保管に特別な注意が必要な資料である。

 

保存容器は酢酸他のVOCを吸着する汚染ガス吸着シートGasQ®を組み込んだ新きりなみ仕様。ガス吸着機能とともに、容器内の相対湿度を安定させる調湿効果を発揮し、環境要因からくる収納物の劣化を最大限に抑制できる。ゲーム資料は各々QRコードで管理され、中性紙でできた封筒と専用の保存容器に収納し、一定の温度・湿度管理のもとに保管されている。

 

関連情報

◆  Yahoo!Japan ニュース 2019年4月26日  コレクションは何と10万点! 有志の熱意と技術を結集したゲーム保存協会の取り組み

『今日の工房』2017年1月12日(木) ゲーム資料保存の喚起を促す小冊子『ゲーム保存の意義とその実践』–国内外の現状と課題、データ記録媒体の基本知識や保存等の実例も

『今日の工房』2016年6月1日(水)「GameOn ゲームをどう残すか」フォーラムに参加しました。

『今日の工房』2016年3月9日(水) ゲームソフトのフロッピー、テープ、CDを保存するには。

2018年1月31日(水)【文献紹介】 水没した電子記録媒体の復旧はどこまで可能か? 最良の乾燥法は? 保管の3-2-1 ルールとは?

水漏れや洪水や火災時の消火により、水を被ってしまった記録物の救助の要点は記録媒体内の中身(データ)がどこまで復旧できるかである。しかし、本や文書などの紙媒体ならば、現在ではある程度の復旧の予測は可能だし、その方法も決まっているが、フロッピーディスクや磁気テープ、CDなどの光学ディスク、USBカード等々の電子的な記録媒体については未だ充分な知見がない。

 

本稿 “The Soaking Resistance of Electronic Storage Media”(Restaurator, Vol.38, No.1, 2016)は、こうした電子媒体を、清浄な水道水、腐蝕物を含む汚水を真似た水道水(塩化ナトリウム、塩酸を混入)、海水を真似た水に6つの異なる期間(1日から28日)浸し、データの復旧がどこまで可能か、また必須の復旧法である乾燥はどの方法が有効かを研究したものである。

 

それによると清浄な水道水を被ったものならば、大半の媒体が復旧できたが、一部のCDやVHSテープでは問題が生じた。だが、汚れた水道水や擬似海水では電子媒体の復旧は更に困難になる。光学ディスクのデータのダメージの程度は、媒体の元々の製品品質にも大きく依存することも分かった。

 

乾燥法としては、一度清浄な水で洗浄後に、風乾法(風を当てながらの自然乾燥)で乾かすのが最良である。風乾後もそのまま2日ほど放置し、完全に乾いてからデータのダメージを確認する。冷凍乾燥法および真空冷凍乾燥法はCDやDVDも破壊してしまうので絶対に避ける。

 

乾燥は水没後48時間以内に着手するのが原則だが、それができない場合には、清浄な冷水(5 °C)に浸しておいた方が劣化の進行を顕著に防げる。媒体が泥など汚れている場合は、そのまま乾かすと汚れが強固に付着してしまう。これを物理的に除去すると媒体を傷める。冷水に浸しておくことで汚れの固着も防げる。

 

電子媒体の保管は3-2-1ルールに従う。すなわち、3つの複製物を作り、このうち2つは異なる種類の媒体に移す。残りの1つはオフサイト(前記の2つが保管されている場所と離れた別の場所)に保管する。

 

 

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