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2024年1月29日(月)2023年度 東京造形大学附属美術館様 博物館実習の一環で見学会を行いました

東京造形大学附属美術館では、桑澤洋子関連資料や小野かおる関連資料をはじめとする多数の資料を所蔵し、授業や展示に活用しています。これらの資料群は、これまで株式会社紀伊國屋書店によるプロデュースのもと一貫した資料の保存整理と電子化事業が進められてきました。弊社は紀伊國屋書店との業務提携において、資料の保存整理作業や電子化前後の処置を担当しています。

 

2023年11月、紀伊國屋書店のアテンドにより、東京造形大学附属美術館博物館実習の一環として、学芸員課程を学ぶ学生の方々に提携する各社をご見学いただきました。
電子化を行う株式会社インフォマージュでは、近年大学に追加で寄贈され、保存整理作業を行っている最中の「小野かおる」絵本原画の電子化工程を見学しました。
弊社の保存容器製作部門では、保存容器を切り出し組み立てるまでの工程をスタッフが実演し、さまざまな種類の保存容器を実際に手に取って見ていただきました。修理部門では近現代資料の修復の現場をご紹介し、サンプル資料によるリーフキャスティングの体験実習も行いました。

 

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『今日の工房』2019年11月7日(木)東京造形大学附属美術館様の所蔵品、絵本作家小野かおるの立体作品の保存箱を製作しました

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2023年10月25日(水)国立工芸館様所蔵のガラス乾板の整理と保全作業

国立工芸館は1977年、東京都千代田区北の丸公園に「東京国立近代美術館工芸館」として開館しました。2020年秋、石川県金沢市に移転し、2021年4月に正式名を「国立工芸館」として再オープンしました。

 

今回、移転準備中に発見されたガラス乾板(以下、乾板)の保全処置をご依頼いただき、乾板のクリーニング、状態等の記録、写真保存包材への入替え・整理作業を行いました。これらの乾板は、1977年の開館記念展で展示した資料の記録画像で、酸性紙製の箱(元箱)に収められており、同一サイズの乾板347枚と、プリント写真やネガフィルム125枚が含まれています。元箱には分類名や当時のメモ書きが残っており、乾板にはマジックで固有の番号が振られたものもありました。(写真①②③)

 

乾板のクリーニングと保存・整理作業は以下の手順で行いました。まず、作業環境を整え、マスクと手袋を着用し、HEPAフィルターを搭載した空気清浄機を使用しました。また、乾板の取り扱い中に損傷しないよう、ポリエチレンフォーム緩衝材AZOTE®を下敷きにして作業しました。

 

最初に、各元箱に収納されている乾板の全体写真を撮り、分類名、固有番号、状態(剥離や割れなど)を記録しました。

 

乾板に付着したチリ、ほこり等の汚れをクリーニングしました。乳剤面は柔らかい刷毛を使用し、ガラス面は刷毛によるクリーニングの後、写真専用クリーナーPEC PADで汚れを拭き取り、カビや汚れがひどい場合にはエタノールを使用してから乾いたクリーナーで拭き取りました(写真④⑤)。

 

クリーニング後、乾板は一枚ずつ中性紙のタトウ乾板フォルダーに収納し、プリント写真とネガは二つ折りフォルダーに包みました。各フォルダーには、分類名と固有番号を記載した中性紙ラベルを貼付しました。損傷のない乾板、プリント写真、ネガは、縦置き専用保存箱に納め、割れや膜面が剥離している乾板は、平置き用の保存箱に収納しました。平置きの場合、落とし込み式の容器シンクに収納し、シンクは5枚をまとめて1つの台差し箱に収納しました。シンク型容器は、重ねても乾板に負担がかからないように設計されており、安全です(写真⑥⑦⑧)。

 

今後、専門の撮影業者によって電子化が行われる予定です。

 

本記事の掲載にあたり、国立工芸館様にご協力をいただきました。誠にありがとうございました。

 

▼ガラス乾板について
乾板は、ガラス板の上に感光乳剤(ゼラチンを媒体とした臭化銀)を塗布・乾燥したもので、写真フィルムが普及するまで様々な分野で活用されていました。ガラスは高い解像度と歪みがないため、天文学、物理学など専門的な研究分野では1990年代まで使用されていました。
しかし、乾板は取り扱いに注意が必要で、衝撃や落下によって割れやヒビが生じやすく、乾板同士がぶつかることで傷ができることもあります。また、保存環境の影響も受けやすく、光、温度、湿度、大気中の汚染物質などが原因でカビ、銀鏡化、剥離などが発生することがあります。さらに、乾板の劣化の特徴として、ゼラチンをバインダーとする画像層と支持体であるガラスとで性質が異なるため、数種類の劣化症状が複合的に生じることもあります。

 

そのため、ガラス乾板の適切な保存方法と保管環境は、ISO18918:2000 imaging materials−Processed photographic plates−Storage practices(JIS K7644:2010 写真―現像処理済み写真乾板―保存方法)として規格化されています。保存箱やフォルダーには、PAT(ISO18916:2007)合格品の素材を使用し、乾板に悪影響を与えないことが求められている他、保管については、乳剤同士が接触しないよう立てて保管することが推奨され、水平に保管する場合は、下部の乾板に負担がかかるため重ねて保存しないことなど、適切な保管方法、保管環境が規格化されています。

 

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2023年9月22日(金)立正大学図書館様 移動書架用棚はめ込み箱の導入事例

立正大学図書館様より、立正大学でも教鞭をとられた法学者鈴木安蔵(1904-1983)の旧蔵資料である「鈴木安蔵旧蔵資料」を収納するためのアーカイバル容器をご依頼いただきました。資料は文書や書籍などが封筒に収納されており、これらを貴重書庫の移動書架へ配置するため、書架に合わせた保存容器を検討する必要がありました。

 

今回採用されたアーカイバル容器は、棚の寸法に合わせてつくる「組み立て式棚はめ込み箱」です。箱の外面が棚の内側にぴったりと沿うように設計するため内寸を広く確保できます。さらに、箱の蓋前面が開く仕様になっているため、資料の出し入れが、棚に配架されている状態と同じくらい簡単に行えます。平積みの資料に対しても、箱の蓋を前面から開けることで、側面から資料を確認できます。通常の棚はめ込み箱は、蓋の留め具に樹脂製のひねり留め具を使用しますが、移動書架に設置されることから、向い合う棚の箱同士が干渉しないようにマジックテープを使いました。

 

本記事の掲載にあたり、立正大学図書館の吉水様にご協力をいただきました。誠にありがとうございました。

 

 

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2023年7月18日(火)1点物の陶彫作品を収納する保存容器を製作しました。

美術画廊GALLERY SCENA様からのご依頼で、陶造形作家・村上仁美様の陶彫作品を収納するアーカイバル容器を製作しました。

 

作品は陶製のオブジェで、表面にアクリル絵の具等で焼成後の彩色が部分的に施されています。以前は作品を購入されたお客様へご納品する際、桐箱などをご利用されていたとのことですが、市販の桐箱ではぴったりと合うものがなく、作品の大きさと形状の正確な測定や固定治具の取り付けなど、カスタムフィットの対応が難しいと感じていたとの事です。また、木材から放散される有機酸などのガスが作品の彩色部に悪影響を与える危険性を憂慮されており、なるべく製作当初の状態のままご購入されたお客様の手元で大切にしていただきたいとの思いで、弊社のアーカイバル容器をご活用いただいております。

 

アーカイバル容器は、身の前面が開くフラップ仕様の被せ式保存箱です。この形状により、作品を横から安全に出し入れすることができます。作品のサイズや重量に応じて、底面や側面に補強を施しています。収納対象となる陶彫作品には、植物がモチーフの繊細な装飾が施されており、些細な衝撃で破損してしまう可能性があります。そのため、容器内で作品が横に動かないように、容器の底面には作品の輪郭に合わせてくり抜いた固定用のスペーサーを取り付けました。作品をお客様に納品する際などの輸送時には、緩衝材として新薄葉紙『Qlumin™くるみん』やエアキャップなどが使用されます。さらに、容器の外側には樹脂製の取っ手を取り付けています。これにより、収納された作品を安全に運搬することができるようになっています。

 

今回掲載させていただいた作品の展示会は既に終了しておりますが、2023年7月15日から30日までBunkamura Gallery 8にて開催される企画展『Opening Selection -Bright,Calm,Dark- Vol.3 Dark』にて村上様の作品も展示されます。

 

本記事の掲載にあたり、GALLERY SCENA様、村上仁美様にご協力をいただきました。誠にありがとうございました。

 

 

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2023年6月13日(火)中性紙製紙管による大型作品のローリング(巻き取り)保管について

弊社では、中性紙製紙管を、大判の古地図、織物や染織品資料、大型ポスターなどを巻き取り保管するための太巻き用資材として利用しています。

 

非常に大きなシート状の資料は、マップケースや大型の保存箱に平らに広げて保管するのが理想的なのですが、専用の収納具やフォルダを使用してさらに保護する必要があり、特にマウントされていない場合や補強がない場合には、取り扱いによる物理的な破損を受けることがあります。こうした資料は、平らな状態で保存するのには大きすぎるため、紙管に巻き取り、箱へ収納することも一つの解決策です。また、この方法によって保管庫のスペースも有効に利用することができます。

 

今回製作した紙管付きの保存容器には、サイズが約2,100×2,800ミリの鳥の子紙に描かれたペン画作品が収納されます。巨大な作品を、直径の大きくて長い紙管で緩やかに巻き取ることで、作品の皺や折れを最小限に抑えて保存することができます。国内ではこのサイズに対応する紙管が手に入らなかったため、ドイツのKLUG Conservation社から紙管(Tubes)を取り寄せました。紙管は2本を歪みができないよう平行に連結加工し、保存箱には紙管を乗せる軸受けを取り付けています。さらに、上から軸受けを被せ、紙管を360度囲むことによって、箱の中で固定できるよう工夫されています。収納後は綿布団や薄葉紙をあて、全体を包み込むようにして作品を保管します。

 

▶︎ドイツKLUG Conservation社の紙管Tubesについて

ドイツのKLUG Conservation社では、文化財保護用資材として使用される紙管Tubesについて、品質試験であるPATの結果を公開しています。製品ページから品質表をダウンロードすることができます。また、同社では保存箱や紙管の主素材である、紙・ボードのPAT[※1]合格証明書やODDY Test[※2]結果、その他の品質表も公開しており、ユーザーにとっては安心できる情報となっています。

 

KLUG Conservation – Tubes made from conservation board -  

 

[※1] PAT Test(Photographic Activity Test)PATテストは、写真画像に損傷を与える可能性のある材料(紙・ボード、布、接着剤、フィルム、保存資材など)を評価するための試験です。一部の材料は、写真画像と化学反応を起こし、モノクロ・カラー写真の劣化や変色を引き起こす可能性があります。PATテストでは、潜在的にネガティブな反応を示す有害な物資の影響を検査します。もし影響が確認された場合、その材料は不合格となり、写真包材や文化財保護用包材として使用できません。PATは、写真保存材料の品質をテストし検証するために開発された公式なラボ試験です。この試験は米国のImage Permanence Instituteによって設計されました。PATに合格した接着剤などの写真保存製品は、安全であり、時間の経過とともに写真や他の素材への損傷を引き起こすことはありません。したがって、PAT合格製品は信頼できると言えます。

 

Rochester Institute of Technology/IPI – PAT testing –  

PAT(写真活性度試験=Photographic Activity Test)の概要と有用性 -アーカイバル容器の確かな信頼性のために- 

 

[※2] ODDY Test  ODDYテスト(オディテスト)は、1973年に大英博物館の保存科学者アンドリュー・オディによって開発された加速腐食試験です。この試験は、素材(展示、保管に使用される紙、ボード、木、布、発泡体、プラスチック、接着剤など)から発生する可能性のあるオフガス(放出ガス)を予測し、収蔵品に使用しても安全かどうかを判断するためのテストです。ODDYテストでは、収蔵品と密接に接触する素材が長期間にわたって有害な揮発性物質を放出する程度を半定量的に測定し、その素材の適合性を予測することができます。さらに、素材の安定性はImage Permanence Instituteの「A-Dストリップ」を使用してさらに評価することもできます。このストリップは、揮発性有機酸の短期間の放出を測定するために使用されます。

 

米国文化財保存学会(AIC)が提供する情報サイトで、さまざまな素材のODDYテストによる品質試験結果がまとめられています。ODDYテストでは、対象素材を高温恒湿環境で28日間置き、素材から発生する物質やガスが3種類の金属クーポン(銀、銅、鉛)にどのような腐食や変質を引き起こすかを調べます。このテストによって、対象素材が安心して使用できるかどうかが評価されます。結果はP、T、Uの3つの基準で判定されています。

 

P = Pass, Permanent: 長期利用可能(金属クーポンに腐食が見られない)

T = Temporary: 一時的な利用のみ(金属クーポンにわずかな変色や腐食が見られ、変色の膜が形成される)

U = Fail, Unsuitable: 使用不可(金属クーポンに明確な腐食が見られる)

 

AIC Conservation Materials & Materials Testing – Oddy Test Protocols – 

 

▶︎弊社では、強度のある箱や紙製保存箱を作成する際に、合成接着剤や接着テープ、樹脂系部品、紐などの素材を使用しています。保存箱や保存資材は、アーカイバルボードや厚紙(特種東海製紙社製/TTトレーディング社販売品)を主素材に、接着剤やテープなど、他の素材と組み合わせて作られています。これらの箱や資材は、単体、複合材においてODDY testやA-Dストリップテスト結果が良好でPAT合格品です。また、保存箱内の腐食性ガスの影響を測定するために、エコチェッカII(蛍光X線分析専用腐食性ガス測定キット)を使用した品質確認試験を行っています。このキットには、電機・電子機器に一般的に用いられる金属である、銅(Cu)、銀(Ag)、鉄ニッケル(FeNi)、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)の金属片がセットされており、一定期間暴露した後に腐食性物質のスクリーニングや金属の変色を観察することで、腐食性物質の有無と種類、ごく低濃度の数ppbの腐食性ガスの影響を定量化し、大気環境の監視、腐食性物質や腐食性ガスの改善を正確に行うことができます。保存箱の内部、収蔵庫、保管倉庫、オフィスなどで長期間保管されている製品において、梱包部材による腐食性ガスの影響や保存箱の内部をテストし、金属クーポンの腐食によって腐食性物質やガスの有無とおおよその腐食度合いを診断し、放散ガスの影響がないことを確認しています。

 

 

 

ユーロフィン社製 蛍光X線分析専用腐食性ガス測定キット - エコチェッカⅡ –

 

 

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2023年4月18日(火)大型で重量のある作品の保管に「つづら式保存箱」の改良版を製作しました

つづら式保存箱は、上箱、底箱、側板の3つのパーツで構成される箱で、底箱に立てた側板に上箱を被せる形状です。底箱には紐を貼り付け、上箱で結んで固定します。

 

この保存箱の特徴は、側板を外せば、箱の中に入った作品に360度どの方向からでもアクセスでき、複雑で立体的な作品の取り扱いが簡単にできます。また、収納時は上箱を被せることができるため、大型で重い作品の保管にも適しています。

 

今回、大型作品を覆いそのまま管理できるような保管箱をご依頼いただき、つづら式保存箱をベースに、応用して製作しました。

 

5メートルを超える大型形状のため、側板を取り回しやすいサイズに分割し、収納品の取り出しやすさを確保するとともに、製造の効率化も図りました。また、側板をヒネリ留め具でつなぎ、2重のボードで強度を出すことで、大型作品をしっかりと保管できる強度を確保できます。さらに、ボードをずらして貼り合わせて隙間をなくすことで埃の侵入を防ぎます。最後に、補強した上箱を被せることで、保存箱全体の強度を高めることができます。

 

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2023年3月29日(水)上智学院ソフィア・アーカイブズ様所蔵の歴史資料「大学紛争ビラ」の保存処置事例

上智学院ソフィア・アーカイブズ様より大学紛争ビラ約3,100枚の保存処置をご依頼いただきました。ビラは上智大学を中心とした学生運動に関係する資料群で、市販の事務用品リフィルに収納され、リングファイルで年代順に整理・保管されていました。全体的に保存状態は良好でしたが、経年劣化によりファイルの樹脂製リングがベタつき、ステープルやクリップなど鉄製の留め具の腐食が進行していました。今後の利用を考慮し、資料の閲覧性をそのままに、長期保存を目的とした保存処置と小環境の整備を行いました。

 

具体的な整理作業に着手する前に状態調査を行い、個々の資料の状態、形態、必要な取り扱いを考慮しつつ、ステープルやクリップ類の金属除去とクロスや刷毛を使い資料に付着したホコリなどの細かい汚れを除去するドライ・クリーニングを行いました。クリーニングを終えた資料は中性紙(リフィル用間紙:収納する資料が曲がらないようサポートし出し入れもしやすくなる。またバインダーの開閉時に資料が摩擦して傷つくことを防ぐ)と一緒に透明リフィル(A4用リフィル)に入れ替え、アーカイバル・バインダーに収納しました。最後に、元の資料番号を印字したラベルをバインダー内のインデックスシートとアーカイバル・バインダー本体に貼付しました。

 

この度の事例掲載にあたり、上智学院ソフィア・アーカイブズの後藤様、大塚様にご協力をいただきました。誠にありがとうございました。

 

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2023年2月3日(金)大型のカッティングプロッターを導入しました

昨年秋の事務所移転に合わせて、新しいカッティングプロッターを導入しました。弊社工房の事情に合わせた省スペースの縦型「スタンドタイプ」で、設置面積は平型タイプの約3分の1とコンパクト。今までのカッティングプロッターでは加工ができなかった強化ダンボールをはじめプラスチックボードやフォーム材、薄い紙など、さまざまな材料の加工ができるカット性能を備えたモデルです。保存箱の設計図をつくるためのCADソフトも操作性がよく扱いやすいソフトに変えました。

 

保存箱の原材料であるアーカイバルボード(特種東海製紙社製造/TTトレーディング社販売品)は、一般の段ボールに比べ強度がある反面、カッティングプロッターのような機械で加工をする際に、室内の湿度条件によっては罫線ライン(箱の折り筋)が割れやすくなる、といった加工上の難点があります。日中に低湿度になる季節は、ボードの罫線割れによる不良カット品や資材ロスが一定量発生してしまい、寸法精度が問われる仕事ゆえにその手直しや品質管理に対策が必要でした。

 

この問題をクリアするため、今回導入した機械の罫線ツールは弊社で指定した形状で特注製作しました。標準装備の一般段ボール用罫線ツールと特注した罫線ツールを使って、それぞれ同じ圧力で加工をしたアーカイバルボードを比較すると、標準ツールを使ったボードは表面が割れていますが、特注の罫線ツールで加工をした方は割れのない折り筋がついています。新型機械の導入でボードの割れによる資材ロスが削減され、保存容器組み立ての作業性も向上する事ができました。

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2022年9月2日(金)大倉精神文化研究所附属図書館様所蔵 貴重和装本に対する保存手当て

大倉精神文化研究所は、1932年(昭和7年)に、実業家である大倉邦彦氏が私財を投じて設立しました。附属図書館は同時にオープンした精神文化の専門図書館です。哲学・宗教・歴史・文学などを中心に、10万6千冊を収集・保存しており、そのうち約4万冊が、附属図書館が誇る貴重コレクション。古文書をはじめとする和装本や、研究所の開設に先立ち大正末から昭和初期に欧州で購入された洋書、大倉氏と親交のあった著名人より寄贈されたものなど多岐にわたります。専門的図書館機能をもった公共図書館として、多くの資料が広く一般に公開され、館内で閲覧できます。また、2022年4月9日には開館90周年を迎え、横浜市の指定有形文化財にも指定されている美しい洋館内にあり、開館当時の什器類などを現在も使い続けるという伝統ある図書館です。

 

研究所について:https://www.okuraken.or.jp/study/
図書館紹介:https://www.okuraken.or.jp/library/about/
貴重コレクション:https://www.okuraken.or.jp/library/collection/

 

今回、附属図書館様より名古屋大周寺文庫全4,056冊の保存相談を受けました。文庫のほとんどが江戸初期から明治初期の仏教関係の木版本で、ボール紙製の簡易帙に納められていました。簡易帙には金属製の留め具がついており、この留め具の厚みが影響して書架の収納効率を下げ、また、本と本の間にできる隙間にチリやほこりが溜まりやすくなっている状態でした。文庫の保存対応については、既存の簡易帙を活かし、スペースも有効活用したいというご要望から、資料のドライ・クリーニングを行い組み立て式棚はめ込み箱へ収納する方法を提案しました。

 

クリーニング作業は、ブラシノズルを装着したHEPAフィルター付き掃除機とクリーニングクロスを使い、資料の外装(表紙、背表紙、裏表紙、天地、前小口)と見返しについたチリやほこりを丁寧に除去しました。簡易帙の留め具箇所は錆が発生しており、また、スペースを圧縮したいというお客様のご希望もあり、カッターで裁ち落としたのちクリーニングしました。スチール棚の汚れは消毒用エタノールを含ませたペーパータオルで拭き取って清掃しました。全73段分に棚はめ込み箱を設置し、元の順番通りに資料を再配架しました。

 

この度の事例掲載にあたり、公益財団法人大倉精神文化研究所附属図書館様よりご協力をいただきました。誠にありがとうございました。

 

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2022年7月26日(火)資料形態や用途に合わせ4種類の素材から選べる二つ折りフォルダー

版画・素描・写真プリント・ポスター・チラシ・生原稿など1枚物の紙資料や、写真フィルム・テキスタイルなど薄手の資料を挟み込んで保管をするための二つ折りフォルダー。資料を重ねて保管する際の表面保護の役割はもちろん、閲覧などで1点ずつ利用する際には資料に触れずに安全に持ち運ぶことができます。フォルダーは用途に合わせて以下の4種類の素材からお選びいただけます。

 

書類や原稿などの一般紙資料用には、弱アルカリ紙のフォルダーを2種類の厚みから選択できます。薄口のAFプロテクトH104.7g/㎡(厚み0.13mm)は保存封筒に使用されている紙で、比較的軽めの資料を挟み込む場合や、収納後に厚みを出したくない場合に利用ください。厚口のAFプロテクトH209.4g/㎡(厚み0.26mm)は紙面にダメージがある資料用など、より安全に取り扱う必要がある場合にお勧めします。

 

アルカリに敏感な、写真(フィルム・プリント)、青焼き図面、テキスタイル(染色品・ウール・シルク)などの資料用には、アルカリを含まないノンバッファ紙のフォルダーを使用ください。薄口のピュアガード120(厚み0.15mm)は写真用封筒などに使われています。厚口の3F(厚み0.8mm)は画用紙ほどの厚みがあるため、大判の紙資料なども安全に持ち運ぶことができます。

 

定型品はA4用・B4用・A3用の3種類のサイズがあります。仕様と価格は商品ページでご確認ください。定型品は各サイズの定型封筒へ収納ができます。また、定型品以外のオーダーサイズも各種素材で製作可能です。

 

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2018年9月26日(水)閲覧時の出納をし易くした浮世絵用保存箱の作製(専修大学図書館様の事例)

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2022年7月1日(金)文豪・泉鏡花の兎(うさぎ)コレクションを収納する保存箱を作製しました。

慶應義塾大学三田メディアセンター(慶應義塾図書館)様では、泉鏡花の自筆原稿・遺品を多数所蔵しており、今回は、そのなかから泉鏡花の兎コレクションを収納する保存箱をご依頼いただきました。

 

鏡花は自身の干支(酉)の向かい干支である兎(卯)の置物を愛し生涯に渡って蒐集しました。そのきっかけは、幼少のときに母親からもらった水晶の兎だそうです。向かい干支にまつわるものを身の回りに置くと縁起がいいという言い伝えから、置物や玩具などの物に留まらず、身に着ける着物の帯に兎柄をいれるほど徹底していたそうです。

 

■泉鏡花が憑かれたように集めた兎の置物【文士の逸品No.16】2018/4/19 サライ.jp|小学館の雑誌『サライ』公式サイトより
https://serai.jp/hobby/302443

 

兎の置物は陶磁器、張り子、竹細工など、いろいろな材料が用いられており、薄葉紙に包まれ一つの箱にまとめて収納されていました。

 

保存箱として、兎の置物を個別に収納するための仕切り付き台差し箱と、コレクションをまとめて収納するための被せ箱を製作しました。個々の兎は、和紙の揉み紙のように揉みこんで柔らかい布地のようにした新薄葉紙Qlumin™くるみんで包み、各部屋へ収納しました。部屋の隙間にもクッションのように使用しています。箱の床面には緩衝材としてプラスタゾートを敷いています。

 

本事例の掲載にあたり、慶應義塾大学三田メディアセンタースペシャルコレクション担当の倉持隆様、竹内美樹様に多大なるご協力をいただきました。誠にありがとうございました。

 

 

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『今日の工房』2021年10月29日(金)慶應義塾大学三田メディアセンター様所蔵「A.N.L. Munby旧蔵 書字の歴史に関する資料箱」を収納する保存容器を作成しました。

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2022年4月15日(金)貴重な書籍や資料の展示に使う展示台をアーカイバルボードで製作しました。

今回180点にも上る展示台を作製するにあたり、書籍一点一点の特徴に合わせて、文字や挿絵が鑑賞しやすいよう、ご担当者様との綿密な打ち合せを行いました。

 

書籍ごとに展示台の左右の大きさや傾斜角度、展示台にかかる荷重バランスも変わるため、強度が必要な箇所には補強を入れたり、重く分厚い書籍の場合には本の背を支える背当てを組み込んだり、コンパクトな構造ですが開いた状態の書籍をしっかりと支えかつ開いたページを鑑賞しやすいつくりになっています。また、該当ページをきれいに開きたい場合は、傾斜面の裏にポリエステル製のテープを通して資料の端を抑えることもできます。

 

資料を展示する際に、より良く見せたい、また展示品に変化をつけたいと思うあまり、書籍の背やページが湾曲したり、無理な力がかかり全体がゆがんだ状態になったり、負担のかかる展示方法をとることがあります。また、本は綴じの構造や装丁形式そのものが破損の原因になることもあるので、それぞれの装丁形式の特徴やストレスポイントを考慮しながら展示台を設計しました。

 

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・2021年11月11日(木)アーカイバルボードで作品展示用の斜台を製作しました。
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2022年2月28日(月)長期保存文書約200箱の殺虫・殺卵とカビの不活性化、クリーニング処置 事例紹介

日常的には使用しないものの残しておく必要がある大量の重要な長期保存文書があり、段ボール箱に入った状態でコンクリート壁・床の倉庫に保管されていました。段ボール箱は文書が重いために変形、破損しているものもあり、中の文書は表紙や小口への塵芥の堆積、虫の死骸や、卵、巣、カビが発生した痕跡が見受けられました。こうした資料は、利用の際に手を介して表面に堆積した汚れを本紙の内側に広げてしまったり、飛散した塵芥やカビによる健康への影響があるだけでなく、資料の移動に伴い付着していた虫やカビなどを別の場所に持ち込んでしまう恐れがあります。これら文書のうち、約200箱の目録化と保存倉庫への移動を行うにあたり、事前にクリーニングと無酸素処置による殺虫・殺卵、カビの不活性化処置を行いました。

 

資料は、飛散を防止するためのドライクリーニング・ボックスやHEPAフィルター付きの掃除機を使い、1点ずつ表紙や小口、段ボール箱を吸引し、資料の素材に応じて消毒用エタノールを噴霧したクリーニングクロスで表面のふき取りを行いました。さらに、本紙の点検を行い、汚れの著しい箇所をクリーニングしました。
今回の事例では、運び出しまで引き続き倉庫に保管されるため、クリーニング後に段ボール箱ごと無酸素パック「モルデナイベ」に収納し、3週間以上無酸素状態にすることで完全な殺虫・殺卵、カビの不活性化処置を行い、搬出までその状態を維持するようにしました。対象の文書には薬剤に敏感な青焼き図面が多数含まれていましたが、無酸素パック「モルデナイベ」による処置は薬剤を用いないため、こうした多様な素材の紙を含む文書類にも区別なく使用することができ、文書1冊、1箱からの処置も可能です。

 

 

【関連情報】
資料に付着した汚れやカビのドライ・クリーニング
東京学芸大学附属図書館様 耐震改修工事に伴う、貴重書のモルデナイベ収納、および資料・書棚のクリーニング

 

『今日の工房』
2019年6月19日(水)共立女子大学図書館様の貴重書1900点のカビ被害のクリーニングから保存容器収納まで。

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2022年2月18日(金)早稲田大学中央図書館様での組み立て式棚はめ込み箱の設置事例。

早稲田大学中央図書館は全体で27,705平方メートルを有し、収蔵可能規模は400万冊にのぼります。すべての図書は一部の重要書をのぞき利用者がじかに手にとってみることができる開架式書架に配架されています。この他に、閲覧個室、展示室、AVホール、マイクロ資料閲覧室など、多彩な利用者のニーズにこたえる施設が準備されています。
早稲田大学中央図書館ホームページより抜粋https://www.waseda.jp/library/libraries/central/about/

 

今回、図書館蔵書の未製本雑誌(特殊コレクション)約9,000冊を収納するための組み立て式棚はめ込み箱の製作と設置作業をご依頼いただき、雑誌・新聞が配架されているバックナンバー書庫の棚50段に100箱を設置しました。棚はめ込み箱の前蓋には書誌情報カードを差し込むカードホルダーRを取り付けています。

 

この度の事例紹介にあたり、 早稲田大学中央図書館様より掲載のご協力をいただきました。心よりお礼申し上げます。

 

 

【関連商品】
組み立て式棚はめ込み箱
カードホルダーR

 

【関連記事】
『スタッフのチカラ』
2008年10月30日 新聞合冊製本の保存事例 ―読売新聞社様の導入事例―
2009年07月21日 東京国立博物館における両開き棚はめ込み式保存箱
2012年07月20日 東京大学地震研究所図書室様におけるトレー付き倹飩式棚はめ込み箱の導入事例

 

『今日の工房』
2021年2月15日(月)山階鳥類研究所様のご依頼で棚はめ込み式保存箱を製作しました。

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2022年1月21日(金)「文書資料の整理・保存に欠かせない収納容器を考えるー 」

古文書と新聞用の組み立て式保存箱を試作しながら検討を行っています。
従来品の中性紙製もんじょ箱は容積が大きく、古文書や新聞を大量に収納できることがメリットですが、重量がかさむと持ち方によっては持ち手部分が破けてしまったり、通い箱のように何度もくり返し使用すると裂けたりすることがありました。また、書架の棚サイズに合わないことから、もんじょ箱に収納した状態で書庫の床や廊下に直接置かれて埃が積もったり、積み重ねた状態で環境が安定しない場所に長期間置いたことで、箱が潰れて資料が損傷してしまうなどの状況も多々見受けられました。

 

大量収納できる点とその価格から多くの支持をいただいているベストセラーの箱ですので、新しい視点で従来品を見直し、組み立てやすさや使用感を一段と改善することを目標に試作を続けています。

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2021年12月17日(金)汚染ガス吸着シートGasQ®ガスキュウの保管に便利なガスバリア袋

汚染ガス吸着シートGasQ®ガスキュウのロール品を購入されたお客様よりその保管方法をご相談いただくことがあります。ご相談の理由は、保管場所に問題がある、茶段ボールでの梱包は避けたい、既存の梱包材を再利用できなくなってしまった、密封してガス吸着性能を維持したい、汚れやホコリから守りたい等々、空気に触れることがないように状態良く保管できる「密封袋」が欲しいという声もありますので、ロール品専用の保管袋として使うガスバリア袋をあわせてご案内しています。

 

この保管袋はMoldenybe®モルデナイベの大型サイズ「内寸:310×幅1,360ミリ」を転用したもので、GasQ®ガスキュウのロール品を収納するのに最適なサイズです。長辺開口部がスライドチャック式で使い勝手が良く、保存性にも優れています。

 

モルデナイベのガスバリア袋は空気と液体を通さない高いバリア性能を持つので、大気中の汚染物質、汚染ガス、外気からの湿気を遮断します。袋内に入れるシリカゲルや吸湿剤の吸湿効果を長く持続させることもでき、これらと組み合わせて文化財修復で使用する和紙や裂、不織布シートなどの素材を適切に保管するための袋としても活用されています。

 

GasQロール品専用保管袋の価格:1枚 4,500円(別途消費税10%・梱包輸送費)

 

【関連商品】
無酸素パックMoldenybe®モルデナイベ 
汚染ガス吸着シートGasQ®ガスキュウ 

 

【関連記事】

『今日の工房』

・2016年8月3日(水) 無酸素パック「モルデナイベ」は工房でも加湿や修理用の材料の保管などに活用しています。

・2017年3月9日(木)殺虫処理が館内で簡単・安全・確実にできる無酸素パック『Moldenybe®モルデナイベ』の大型サイズをラインアップしました。

・2020年6月25日(木)これからの時期に気をつけたい虫菌害―無酸素パック「モルデナイベ」の効果的な導入・運用のために

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2021年11月11日(木)アーカイバルボードで作品展示用の斜台を製作しました。

美術館・博物館の展示ケース内で使われる作品置台や展示台は、木製の下地材の上にクロスを貼ったものが多く、用いている材料から発生する微粒子や揮発性ガスが文化財を傷めることがわかっています。また、展示ケースは温湿度の安定や大気汚染物質等の流入を防ぐために高気密設計となっており、これはー方で、展示物に影響を与えるガスの残留と改善の難しさの要因にもなっています。

 

こうした汚染ガスは、枯らし換気等による軽減、展示ケースにも使用可能なガス吸着材・ガス吸着シートを使用した、対症療法的な対応が行われていますが、確実な効果が必ずしも担保されるものではありません。そのため、展示ケースの内装材、展示台の素材には、化学物質含有量の低い素材を選び、また十分な枯らしをおこなったうえで、施工、制作することが望ましいとされています。

 

今回製作した展示台に使用した材料は、資料に直接触れても影響の出ない素材でPhotographic Activity Tests(PAT):ISO18916:2007 写真保存用包材のための写真活性度試験に合格したものを使用しています。アーカイバルボードの断面が露出しない作りで正面から見た時の鑑賞の妨げにならない、斜面に対して直角の「かえし」を取り付け展示物に負担がかからないようにする、内部を補強した堅牢な作りで大きな展示台でも安定して展示物を載せられるなど、デザイン面でも構造面でも工夫しました。アーカイバルボードを使用しているためオフガスや汚染物質の影響はなく、また、展示する資料の大きさや形態に合わせて、斜台角度や高さを自由設計できる点もメリットの一つです。

 

 

【関連記事】
『今日の工房』

・2018年8月22日(水)本を展示する際の簡易な「支え」は、アーカイバルボードで自作できます。

・2009年09月10日(木)本の閲覧や展示のために使われる書見台

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2021年10月29日(金)慶應義塾大学三田メディアセンター様所蔵「A.N.L. Munby旧蔵 書字の歴史に関する資料箱」を収納する保存容器を作成しました。

歴史的な資料を数多く所蔵している慶應義塾大学三田メディアセンター(慶應義塾図書館)では、その特性を生かし、多岐にわたるテーマでの展示が随時企画されています。今年4月には、(西洋)文字景―慶應義塾図書館所蔵西洋貴重書にみる書体と活字とのタイトルで、様々な時代の貴重な手書き写本や活版印刷本、特殊コレクションが展示されました。現在この展示会は終了していますが、KeMCo(慶應義塾ミュージアム・コモンズ)360 VIEWで「(西洋)文字景」のデジタル展示がご覧いただけます。

 

 

 

今回、三田メディアセンター様よりご依頼いただき、本展示会で展示された「A.N.L. Munby旧蔵 書字の歴史に関する資料箱」の保存容器を作成しました。

 

A.N.L. Munby旧蔵 書字の歴史に関する資料箱」について Keio Object Hub

 

資料箱の蓋を開けると木製の引き出しが3つ積み重ねられており、各引き出しには様々な形態、素材でできた資料が仕切り板で区切られた部屋に納められていました。なかには額入りの手書き写本やガラス板で挟まれたパピルス文書も収納されていました。これらの引き出しや仕切り板は、経年劣化で所々に傷みがみられ緩衝材なども劣化が進み変質していました。そのため、資料を個別に収納するための仕切り付き保存箱と、資料箱本体を収納する箱を作成しました。額、ガラス板は蓋付きのシンクに収納しました。緩衝材には新薄葉紙Qluminくるみんと文化財保護用フォーム材のプラスタゾートを使用しています。

 

本事例の掲載にあたり、慶應義塾大学三田メディアセンタースペシャルコレクション担当の倉持隆様、竹内美樹様に多大なるご協力をいただきました。誠にありがとうございました。

 

▼慶應義塾大学三田メディアセンターのスペシャルコレクション担当では、職員と利用者に対して、閲覧前に手を洗い清潔な手で資料を扱うよう促しています。また、「貴重書を閲覧するにあたって」(PDF) では、取扱いに際し「資料は素手で取り扱い、手袋等は使用しないでください。また資料は閲覧机の上に置いたままご覧ください。」と明記しています。貴重で繊細な資料ほど、手から伝わる触感が材料の脆弱性を理解するために必要だからです。資料の適切な取扱いについて利用案内等に明記することは資料の破損・汚損の予防につながります。

 

【参考文献】
『スタッフのチカラ』

・2008年09月19日「貴重書は白手袋を着けて」という誤解 蜂谷伊代訳

・2011年04月05日 洋装貴重書の取扱い ブリティッシュ・コロンビア大学図書館貴重書・特別資料室の指針 高田かおる訳

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2021年8月20日(金)長さ4m超の水引幕を平置き保管するための、大型保存箱

神社の祭礼の出し物として使われる「笠鉾」の胴体部に巻く水引幕を収納する保存箱の製作依頼を受けました。水引幕は豪華な刺繍が施された飾り付け用の幕で、広げると全長が4mを超える物もあります。幕の刺繍や布地の保護のため、なるべく折り畳まずに平置きで保管ができるよう幅1.1m×長さ4.3mの大型の保存箱を製作することになりました。

 

保存箱の身は持ち運びの際にたわみや歪みが起きないよう壁を6重に積層し補強をしています。また納品先での搬入通路を通るためには荷物の長さを3m程度に収める必要があり、保存箱の身を半分に折り畳んだ状態で輸送ができる箱の構造を考案しました。箱の身は収蔵庫内へ搬入後畳んだ状態から開いて箱の形に戻し、箱中央(折り目部分)の壁の切断箇所を固定するため、アルミ板の留め具を壁に埋め込みました。

 

蓋は取り外しを簡便にするため乗せ蓋式とし、全体を3分割にして、それぞれの蓋裏に四方桟を取り付けました。箱を積み重ねて保管するため、上からの荷重で蓋がたわまないように蓋の四方と中央にH型のアルミハカマを組み込み補強しました。水引幕を収納した箱は箱紐で結び蓋が不用意に外れないよう固定しました。

 

 

【関連記事】
『今日の工房』2018年12月26日(水)全長4メートルの大型保存箱を製作しました。

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2021年7月19日(月)横浜英和学院様所蔵の卒業アルバムのドライクリーニング、保存容器への収納

横浜英和学院は1880(明治13)年にアメリカの女性宣教師H.G.ブリテンにより横浜山手の居留地に女学校として創立されました。1886(明治19)年には校名を「横浜英和女学校」と改めました。その後、生徒数の増加に伴い、1916(大正5)年に現在地の横浜市蒔田に移転しました。戦争の影響などでの幾度かの校名変更を経て、2014年(平成26年)の中学高等学校と青山学院大学との提携を機に、2016(平成28)年に校名が青山学院横浜英和中学高等学校となり、2018(平成30)年には中高男女共学化となりました。 
▪学院の沿革:横浜英和学院ホームページより抜粋 https://www.yokohama-eiwa.ac.jp/
 
同学院では、横浜英和学院の歴史に関する文書、写真、記念品のほか、卒業生寄贈資料の卒業アルバムを、大切な歴史資料として収集・保存を行っています。今回、2020年の創立140周年記念事業の一環で、1910(明治43)年~2019年(令和元年)までの卒業アルバム約100冊の内、カバーのない約80冊分のドライクリーニングと保存容器への収納を行ないました。これらの卒業アルバムは、スチール製の引き戸付きキャビネットに収納されていましたが、アルバムの外装、特に小口に経年によるチリやほこりの堆積が見られました。 
 
卒業アルバムは作られた時代によって様々な形態があります。1980年代以前の古い卒業アルバムの特徴として、外装に布クロスやビニールレザーが使われていたり、綴じ紐・金具、台紙の厚紙、プリント写真、手書き文書(インク、墨書き)の貼り込みがあるなど、さまざまな材料が複合してつくられていることが挙げられます。構造的に見ると、写真が台紙に貼られていたり、三角コーナーで留められていたりするので、書籍や冊子にくらべ「隙間」が多く、内部にまで細かなチリや埃が入りやすいといった特徴もあります。そのため、クリーニングする際のポイントとして、各ページののど、そして写真の縁や画像面もクリーニングすることをお勧めします。 
 
クリーニング作業では、ブラシノズルを装着したHEPAフィルター付き掃除機とクリーニングクロスを使い、アルバム外装と本体内部のチリやほこりを除去しました。スチール棚は、消毒用エタノールを含ませたペーパータオルで拭き取って清掃しました。 
 
酸性台紙に貼られた写真は、台紙から発生する酸性物質の影響で、画像面の銀鏡化、退色が生じるため、新薄葉紙Qlumin™くるみんで台紙サイズに合わせた間紙を作りました。ページごとに挟むことで酸性台紙の影響から画像面を保護します。 
 
クリーニング処置を行い各頁に間紙を挟んだアルバムは、一点毎に採寸しタトウ式保存箱へ収納しました。保存箱の背に発行年度を印字したラベルを貼付し、キャビネットへ発行年度順に再配架しました。 
 
本事例掲載にあたり、横浜英和学院理事長の伊藤美奈子様に多大なるご協力をいただきました。誠にありがとうございました。 
 
 
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・2019年6月19日(水)共立女子大学図書館様の貴重書1900点のカビ被害のクリーニングから保存容器収納まで。 
・2021年5月17日(月)小石川植物園様所蔵の大型革装丁本のドライクリーニングと保存容器収納を行ないました。 
・2021年6月28日(月)野外彫刻展作品をおさめた写真アルバムの修理 

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