今日の工房 

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2016年4月13日(水) ステープルやクリップなどの鉄製の留め具を安全に外すには

金属製の留め具の中でも鉄製のものは、時を経て空気中の酸素と水分に反応することで錆びが発生し、留め具そのものだけでなく、接触する本紙が腐食したり、汚れてしまう。また、糸の代わりにステープルを使うワイヤーソーイング法で綴じられた本のように、本の構造全体が崩壊することもある。

 

これらを安全に除去するために、資料の状態に合わせてマイクロスパチュラ、ニッパー等の道具を使い分ける。市販の文具のリムーバーは、劣化状態によっては、除去する際に無理な負荷がかかり、さらに資料を傷めることがあるので、特に貴重な資料等には用いない方がよい。また、錆びて脆くなった留め具は粉状に崩れることがあるため、本紙を汚さないようにドライ・クリーニングも同時に行う。

 

 

ステープルの除去

 

ステープルの足と本紙の間にマイクロスパチュラを差し込み、ステープルの足を立ち上げて、本紙をひっくり返し、ニッパーで挟んでまっすぐに引き抜く。紙力が低下している場合は、間にポリエステルフィルム等を挟んで本紙を保護しながら作業を行うと、さらに安全である。しかし、中には、酸性紙化が進み脆くなった紙や、薄い紙束等、ステープルの足を立ち上げる際の負担に耐えられない資料もある。そのような場合はステープルの足を資料面ぎりぎりのところでニッパーで切断する方が、手早く、安全である。また、雑誌や小冊子等からステープルを除去する際は、一度に引き抜くのではなく、数ページずつめくりながらステープルの足をこまめに切断し、その都度本紙を外す作業を繰り返すと、本紙にかかる負担が軽減できる。

 

 

クリップの除去

 

紙力が十分な場合は、長い輪の方を親指で抑えつつ、短い輪の方を持ち上げて除去する。紙力が低下している場合は、クリップの両面にポリエステルフィルム等を差し込んで保護した上で行う。しかし、本紙と錆が一体化してしまっていたり、紙が脆く、フィルムを差し込めないほど劣化している際は、ニッパーでクリップの上部を切断した方が安全な場合もある。

 

 

ピンや鉄釘の除去

 

紙力が十分な場合はそのまま引き抜くことができるが、紙力が低下している場合は、本紙とピンの間にフィルムを挟んで、そっと引き抜く。また、太い鉄釘等は、しっかりと握れるペンチやニッパーを使用して、釘全体を左右にわずかに回転させながら慎重に引き抜く。その際、釘の頭が深く埋まっていて、引き抜く際に道具の先端で傷つける恐れがある場合は、厚い紙等で本紙を保護する。

 

 

対象資料に合わせて適切な道具や除去方法を判断するには、経験と慎重な姿勢が求められる。

 

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