今日の工房 

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2019年12月18日(水)国立女性教育会館での実技コースへの出講と弊社見学会を行いました。

11月27日(水)~29日(金)独立行政法人国立女性教育会館主催のアーカイブ保存修復研修が開催され、昨年に引き続き、実技コースと会社見学会を弊社スタッフが担当しました。

 

実技コースでは、資料の保存修復を実習形式で学んでいただくという趣旨にてらして、様々な書籍サンプルを用いて下記のような基礎事項を解説しました。

 

■綴じ方や本紙との接合方法などの製本構造。
■のりや接着剤の種類と製本での使われ方。
■表紙に使われる芯材料・表装材料などの種類とそれぞれの劣化の特徴。

 

また、ケーススタディとして、資料の劣化の傾向と保存対策を視点におき、いくつかの書籍モデルの事例をとりあげながら素材や形態別の劣化・損傷要因などを考察しました。

 

こうした講義の内容を踏まえて、製本実習ではリンプ・ペーパー・コンサベーション・バインディング(Limp-paper conservation binding)を作製しました。「保存製本:コンサベーション・バインディング」の要である、本への負荷が少なく、可逆性のある構造とはどういうものか、製本構造と使用素材が機械的にどのように関連するかを実習を通して体験していただきました。

 

当日のレジュメ

1.本の綴じ形態を知り、コンサベーション・バインディングを試作する

2.リンプ・ペーパー・コンサベーション・バインディングを試作する

 

2日間の実技コースの後は会社見学会を行いました。修理(コンサベーション)部門では、弊社でお引き受けしている様々な資料への手当ての事例をご覧いただきながら劣化損傷の要因と保存処置方針を固めていく工程などをご案内しました。アーカイバル容器製造部門では、技術的なことというよりは「どのような箱を作るか?」という考え方を中心に、資料の特徴と容器の形状を決める際の着眼点を紹介しました。その後、資料の採寸から保存箱の設計、カッティングプロッターを使ったパーツの切り出し、組み立てに使われる原材料や道具など、保存箱製作の実際の工程をご覧いただきました。

 

参加者の皆様より「館内で補修を行う際の基準やあり方について改めて考えることができた」、「資料の構造や作り方がわかり、修理を外注する際の判断の一助となる」などのご感想やご意見を頂きました。このような機会は、実際に現場で資料管理を担当する方々と問題意識を共有するうえでも大変貴重です。これからも、見て納得、聴いて役に立つ、実用性の高い資料の保存方法や良質なアイデアをご案内できるよう努めてまいります。

 

ご参加いただいた皆さま、誠にありがとうございました。

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