今日の工房 

週替わりの工房風景をご覧ください。毎日こんな仕事をしています。

2021年1月15日(金)ろ紙を使って汚れた紙資料を洗浄する方法

紙中の水溶性の汚れを除去する洗浄処置にはいくつか方法があります。洗浄液に浸漬する方法や、サクションテーブルで吸引する方法、紙の浮力を利用して洗浄水に浮かべ不純物を取り除く方法(フロート法)、水の表面張力を利用して汚れを除去する方法、ゲランガムのようなゲルを使用して汚れを移す方法、ろ紙で汚れを吸い取る方法(ブロッティング法)などです。紙の性質や損傷状態、イメージ材料、洗浄目的が部分的か全面的かなどを考慮して方法を選択します。
 
今回は、水損による着色汚れが目立つ資料に対して、書写面のイメージ材料に変化がないよう観察しながら処置を進めるために、ろ紙に吸着させるブロッティング法で洗浄を行いました。あらかじめ濡らしておいた本紙の裏面に洗浄液をスプレーした後、同じく洗浄液を含ませたろ紙の上に、書写面が見えるように置いて、汚れの移動やイメージ材料の様子を観察します。汚れの除去が確認できたら、次は湿らせたろ紙で上下を挟んだり、板や重石を載せて洗浄効果を促します。この工程は、本紙の汚れが薄くなるまで、または本紙のpHの上昇など目的の効果が得られるまで、ろ紙を取り替えながら繰り返し行います。
 

 

【関連記事】

・『今日の工房』2019年2月20日(水)修理前に行うスポット・ テストとサンプリング・ テストとは?
・『今日の工房』2015年3月18日(水)修理の各工程で使う水にはこれだけの質が要求されます
・『今日の工房』2014年10月23日(木)新聞資料に対する洗浄・脱酸性化処置

ページの上部へ戻る