今日の工房 

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2022年2月1日(火)和装本の表紙に使われている再生紙

修理でお預かりする和装本の表紙を見ていると、表紙の紙には青色や黄色、栗皮色などの染紙が使われていたり、植物文様や刷毛目、卍繋ぎといった文様が印刷、空押しされているなど意匠が凝らされているものをよく見ますが、芯材の多くは灰色で厚さにもムラがあり、藁や紙片、髪の毛などが混じっていることが肉眼でも確認できます。芯材に使用されているこのような紙は古紙を再生した「漉返紙」と呼ばれるもので、墨書きの反故紙を原料として漉いているため、紙の色が全体的に灰色をしています。漉返紙が作られていた地名をとって「浅草紙」や「湊紙」、「西洞院紙」などとも呼ばれ、明治以降も安価な下級紙として浸透していたようです。手元にあった明治時代の和装本のサンプル(『明治新刻 易経 坤』、明治15年)の表紙の芯材にも髪の毛や糸くずが見られました。

 

芯材は通常見返しが貼られているため隠れている部分ですが、修理を通して、古くから製紙原料として古紙を再利用してきた様子や当時の文化などをうかがい知ることができます。

 

【参考文献】
小川剛生・中野真麻理編、『表紙文様集成 調査研究報告 25号別冊』、国文学研究資料館調査研究事業部、2004

 

 

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