今日の工房 

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2020年9月10日(木)明治新聞雑誌文庫様より、一枚物「寺家村逸雅墓銘」の修理をご依頼いただきました。

東京大学大学院法学政治学研究科附属近代日本法政史料センター明治新聞雑誌文庫様は、明治初期から昭和戦前期にかけての新聞や雑誌等の収集・調査・整理を行っており、明治期に日本で刊行された新聞雑誌類では国内最大のコレクションを有しています。現在は耐震改修工事のため休館しており、再開館は2021年の夏に予定されています。

 

ご依頼いただいた資料は、明治新聞雑誌文庫の初代主任である宮武外骨の友人・長尾藻城より寄贈された一枚物の資料です。「改進新聞」社主・寺家村逸雅の墓銘を和紙に印刷したもので、明治新聞雑誌文庫のご担当者様のお話では、そのような資料が寄贈されたことは昭和6年6月発行の「公私月報」に記載されており把握していたが、所蔵資料として整理された記録がなかったため、これまで文庫内にはないと考えられてきたそうです。しかし、今回の耐震改修工事に伴う資料整理と移転作業の際に偶然発見されました。 

 

資料は厚手の台紙に貼られ剥き出しの状態で壁に掛けられていたため、埃が堆積し全面にフォクシングが発生しており、本紙周縁には破れが生じていました。更なる劣化の進行を防ぐことを目的に、本紙を酸性度の高い台紙から剥がして全面的にドライ・クリーニングをおこなった後、着色汚れの軽減、酸化・酸性劣化の抑制処置として洗浄と水性脱酸性化処置を行いました。その後、本紙の紙力回復のため極薄の和紙で裏打ちを行いました。 

 

ご返却後は、明治新聞雑誌文庫様の新たな所蔵資料の一つとして整理される予定です。

 

 

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