今日の工房 

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2022年12月5日(月)自重のある書籍の本文を支える簡易型ブックシュー

日本体育大学図書館様よりハードカバー製本の図録の修理を承りました。この書籍の本文紙は厚手のコート紙で、自らの重みで前小口側に中身が垂れ下がることにより、ヒンジや見返しノド元に負荷がかかり、背表紙が裂け表紙ボードも変形していました。修理としては、表紙と背表紙を本体から外し、背固めをし直し、表紙と背表紙を本体に再接合する処置を行いました。
 
表紙は本体を保護するため「チリ」を設けて作られることがあります。チリ高が大きく本文紙の自重がある大型本やコート紙の本などは、中身が沈んでしまい、そのまま放置しておくと、表装材の裂けや綴じ糸の切断、地側表紙ボードの変形などが次々と発生することになります。このような現象に対して用いられるのが「ブックシュー(book shoe)」といわれるもので、チリ高に合わせたボードを本体の地に添わせることで前述の現象を未然に防ぐものとなります。
 
今回、修理をした図録の再配架にあたり、中性紙ボードで作成したブックシューの簡易型パーツを添えました。ブックシューよりも簡易的なものですが、これを本の下部に設置することで中身の沈み込みを防ぐことができます。(弊社では誰にでも作成でき簡単に着脱できることからslip-on shoeスリッポンシューと呼んでいます)。このパーツの材料は、本体の厚み(束)の幅にカットした3mm厚のアーカイバルボード1枚と、薄い中性紙1枚(A4サイズの本の場合A4の中性紙)のみです。添え方は、本の地側にボードを当て、中性紙をおもて表紙とうら表紙の内側に挟み、ボードに沿わせて折り目を付け、そのまま表紙を閉じればシューの装着完了です。縦置きされた大型書籍などは、損傷が起きる前にこうしたパーツを装着することで前述の現象を未然に防ぐことができます。予防的保存処置としてとても有用ですので是非お試しください。
 
本事例の掲載にあたり、日本体育大学図書館様にご協力いただきました。誠にありがとうございました。
 
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『今日の工房』
・2016年10月26日 ブック・シュー・スタンドの事例
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