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2026年2月9日(月)明治学院歴史資料館様所蔵 沖野岩三郎手稿コレクション ― 修復とデジタル公開の取り組み

弊社では2023年より、株式会社紀伊國屋書店、株式会社インフォマージュと協業し、明治学院歴史資料館様が所蔵する「沖野岩三郎手稿コレクション」の修復および電子化作業に取り組んできました。その成果として、2025年10月より、これらの貴重な資料が明治学院歴史資料館デジタルアーカイブズにて公開されています。

 

作家、牧師として知られる沖野岩三郎(1876-1956)は、1904年(明治37年)28歳で明治学院に入学しました。卒業後も学院との関係を大切にし、晩年には、持病である糖尿病の悪化により視力を失いつつあるなかで、自身の蔵書や書簡、原稿類を明治学院へ寄贈しています。 本プロジェクトで修復・電子化を行った資料は、これら寄贈資料の一部にあたります。

 

今回修復の対象となったのは、主に草稿や原稿資料です。2023年から2025年までの3ヵ年にわたり、計22点の資料に処置を施しました。資料の多くは200字詰または400字詰の原稿用紙に記されており、なかには1作品で1,000枚を超える分量のものも含まれていました。

 

200字詰原稿用紙は、ボール紙の簡易表紙を付け、紙縒りで平綴じされた状態で保管されていましたが、原稿を捲る動作によって綴じ部分に負荷が集中し、表紙や綴じ部が破損している資料がほとんどでした。一方、400字詰原稿用紙は、原稿束を二つ折りにした状態で保管されていたため、強い折れ癖が生じていました。さらに、原稿の冒頭および末尾の頁では破れや欠損が顕著で、取り扱い自体が困難な状態でした。これらに加え、すべての資料に共通して、酸化や酸性劣化による紙力の低下、紙の茶褐色化が見受けられました。

 

こうした状態を踏まえ、電子化にあたっては、資料を安全に取り扱えるようにするための補修処置として、綴じられていた資料をすべて解体し、損傷部には和紙(楮)で修補を行い、劣化や破損が著しい原稿用紙は、裏打ちによって全体を補強しました。電子化完了後には、酸性劣化の進行を抑制するため、Bookkeeper法を用いた脱酸性化処理を施しています。その後、資料のサイズや形態に合わせて製作した専用の保存容器に収納しました。今後の展示や利用を考慮し、あえて綴じ直しは行わず、原稿束を3Fフォルダー(無酸・無アルカリ・無サイズの厚紙製)で包み、固定した状態で保存容器に収納しています。

 

修補 裏打ち 原稿束を3Fフォルダーで包み安定した状態で保護 資料サイズに合わせた専用保存容器に収納

処置後 200字詰原稿用紙

処置後 400字詰原稿用紙

 

 

なお、デジタルアーカイブ公開に先立ち、2025年9月1日より、企画展『書いて、書いて、また書いて 沖野岩三郎が伝えた資料たち』が開催されています。 原稿には、推敲の跡や赤字による修正が数多く残されており、沖野岩三郎の思考の過程をたどることのできる、非常に貴重な資料群です。ぜひ会場にてご覧ください。

 

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