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2026年5月14日(木)磁器製釣花瓶の保存箱を製作しました-ドーナツ型綿布団による支持構造の工夫-

今回ご相談いただいたのは、磁器製の釣花瓶をどのように安全に保管するか、という内容でした。
釣花瓶は、上部と底部のリングに紐を通して吊り下げて使用する構造で、底部には紐と房が集まります。このため底面が安定せず、そのままではまっすぐ置くことができません。従来は横に寝かせて保管されてきましたが、接触面への負担や長期的な安定性を考えると、正位置での保管が望ましい資料です。

 

ただし、この形状にはいくつかの難しさがあります。
まず素材は磁器で、硬さはあるものの衝撃には弱く、接触や荷重のかけ方には注意が必要です。さらに形状は球体に近く、支持が一点に偏ると転がりやすくなります。加えて、底部のリングと紐が干渉するため、単純な受け構造では安定して支持することができません。

 

そこで今回は、箱内部を上下二層に分ける構造とし、花瓶を支える部分と紐を収める部分とを分けて考え、それぞれの役割を分離する設計としました。
上部は花瓶本体を支える空間です。ここでは、花瓶を面で受けながら安定させるための支持材として、ドーナツ型の綿布団を製作しました。中央に開口を設けた環状綿布団は、底部のリングと紐を下部へ逃がしつつ、花瓶本体は無理なく正位置で据えることができます。点ではなく面で支えることで、接触圧を分散し、局所的な負荷を抑えています。
さらに、側面と底面にはフォーム材(プラスタゾート)を貼り、外部からの衝撃を緩和する構造としました。あわせて、箱内の四隅には取り外し可能な柱状の綿布団を配置し、収納後の微細な動きも抑えています。
下部は、紐を収めるための空間です。この空間は全体の約4割を占めるため、花瓶を載せると重心が上部に偏り、箱として不安定になるおそれがありました。そのため、底部に重量調整用のボードを組み込み、重心を下げることで全体の安定性を確保しています。

 

見た目はシンプルですが、形状・素材・重心の条件を整理しながら、面で支えて安定させる支持方法を組み合わせた保存箱です。

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