今日の工房 2016年 6月

週替わりの工房風景をご覧ください。毎日こんな仕事をしています。

2016年6月29日(水) 明治期の英訳「舌切り雀」の和装本を修理しました。

日本昔話『雀の物語(舌切り雀)』 を海外向けに英訳し出版(明治22年)された本。英文のため左開きではあるが、本紙は袋綴じで角裂が付いていた跡があり、和装本の形態である。本紙の袋内には間紙が挟まれており、共に基材はパルプ紙である。

 

間紙は枯葉のようにパリパリの酸性紙と化し、紙力は残っておらず折り曲げると切れてしまうような状態に劣化している。本紙と比べても茶褐色化が著しい。

 

本来間紙は、薄い本紙を袋綴じする際に、間に一枚紙を入れて綴じ込むことで、薄い紙への印刷の裏抜けを覆い、読みやすくするために用いられる。今回の資料は、本紙はパルプ紙で厚みがあり、今後も裏抜けの心配はないため、処置するにあたり間紙はすべて除去し、損傷箇所の修補をした後、綴じ直した。

2016年6月22日(水) 第38回文化財の虫菌害・保存対策研修会に出展しました

6月16日、17日の2日間。国立オリンピックセンターにて、公益財団法人文化財虫菌害研究所主催 第38回文化財の虫菌害・保存対策研修会が開催されました。研修会には「文化財IPMコーディネーター」の有資格者や資格更新者、取得希望者、文化財を保存管理する一般市民や 博物館、美術館等の担当者など160名を超える方々が参加されました。

 

弊社は文化財の保存管理に役に立つ「無酸素パックMoldenybeモルデナイベ」、「汚染ガス吸着シートGasQ®ガスキュウ」、カビの残滓除去が館内でできる「簡易・ドライクリーニングボックス」を展示しました。ご来場いただいたお客様は資料保存や害虫防除にとても熱心な方が多く、様々なご意見やご感想を伺うことができ大変参考になりました。お立ち寄りいただいた皆様に心より御礼申し上げます。

2016年6月15日(水) 明治新聞雑誌文庫様所蔵の屏風の下張りに使用されていた新聞への保存修復手当て

東京大学大学院法学政治学研究科附属近代日本法政史料センター 明治新聞雑誌文庫様よりお預かりした屏風の下張り新聞。前回までの作業はこちら。下張りから新聞を取り出したところ、新聞同士が重なる箇所はデンプン糊でしっかりと接着されていることが分かった。これらを安全に分離させるため、一度温水に浸漬してデンプン糊を緩ませてから、1枚ずつ慎重に剥がした。

 

その後、刷毛で溶液をかけ流す方法で洗浄と水性脱酸性化処置を行った。水性処置によって、若干の紙力回復効果は確認されたが、取り扱いが可能なレベルとまではいかないものもあった。そこで一部の資料に対しては、和紙で裏打ち、もしくは両面から挟んで補強を行った。この処置では、全面的に和紙で文字を覆うことになるので、閲覧時の読みにくさを出来るだけ軽減するために、極薄の和紙を採用した(画像2段目左から裏打ち前、裏打ち後)。処置が完了した新聞は保存容器に収納し、明治新聞雑誌文庫様へ無事に返却された。

 

今回、下張りから解体した新聞(明治37年〜39年発行)は総数40枚ほどで、そのうち、修理を行うきっかけとなった「讃岐日日新聞」については23枚見つかった。この新聞は、国内に数日分・数枚の現存しか確認されていないという、大変貴重かつ稀少な資料であり、今後マイクロフィルム化等による複製物の活用が検討されている。

 

関連情報
白石慈『特集:新聞を読む  明治への窓、その向こう』びぶろす71号、2016、国立国会図書館総務部

2016年6月8日(水)スチール製キャビネットの引き出し専用収納箱を東京文化財研究所に

東京文化財研究所 企画情報部様からのご依頼を受け、スチール製キャビネットの引き出し専用の収納箱を作成した。既存のプラスチック製仕切り板は、資料の荷重によって湾曲し、出し入れがしづらい状態だった。そこで、箱の内寸に対し仕切り板の幅を大きくとり、スリットに差し込む時に外れにくく、資料がよりかかってもしっかりと支えられる構造にした。既存の引き出しの奥行きや幅に合わせて設計されているため、スペースを有効に使えるようになり、また検索しやすくなったことで出し入れも安全に行えるようなった。

2016年6月1日(水)「GameOn ゲームをどう残すか」フォーラムに参加しました。

日本科学未来館と株式会社角川アスキー総合研究所は2016年5月20日、企画展「GAME ON」の特別フォーラムとして「ゲームをどう残すか〜技術と体験のアーカイブ」を開催した。フォーラムでは、ゲームアーカイブに携わる講演者の取り組みの紹介、ゲームや周辺文化の保存を巡る社会的意義についてなど、ゲームを「なぜ残すか」という点を中心に幅広い話題を取り上げた中身の濃い議論が交わされた。プログラム概要は以下のとおり。

 

[司会]

 

遠藤諭(株式会社角川アスキー総合研究所)

今泉真緒(日本科学未来館)

 

[講演者]

 

■第1部 プレゼンテーション どう残すか -ゲームアーカイブの現状と課題-

「MANGAナショナル・センターの構想とは?」 桶田大介(弁護士/マンガ・アニメ・ゲームに関する議員連盟アドバイザー)

「CiP | Contents Innovation Programの紹介」 中村伊知哉(慶応義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授/CiP協議会 理事長)

「日本ゲーム博物館について」 辻哲朗(日本ゲーム博物館 館長)

「ゲーム資料保存の未来」 ルドン・ジョゼフ(NPO法人ゲーム保存協会 理事長)

「立命館大学のゲーム研究について」 細井浩一(立命館大学 映像学部/ゲーム研究センター 教授)

「文化資源アーカイブとしてのゲームアーカイブの位置付け」 柳与志夫(東京大学大学院情報学環 特任教授)

 

■第2部 ディスカッション なぜ残すか〜ビジョンの共有〜

 

-日本におけるゲームアーカイブの現状と課題-

 

現状:

現在の日本では、さまざまな立場の人が、個々の機関、分野ごとにアーカイブへのアプローチをしており、その取り組み状況にもばらつきがある。またそれらの連携が不十分であるため、一元的に保存・活用できるような環境整備が必要とされている。そうした状況のなかで、「MANGA(Manga, ANimation and GAme)ナショナルセンター構想」を始め、中核的なアーカイブ事業も進みつつあるが、その中でもゲームアーカイブが最も立ち遅れており、なかなか果が行かない状況とのことであった。

 

課題:

ゲームはマンガやアニメーションとならんで現代のポップカルチャーを代表するコンテンツであり、世界に誇れる日本の文化のひとつであるのは確実だが、それを支える制度・政策が存在せず、その文化を様々な形で支える基盤が成り立っていない。国や行政、大学、民間企業やゲーム企業、個人、各々が継続性や網羅性について課題を抱えているなど、いろいろなレベルの大小さまざまな課題が提示された。併せて、アーカイブに関わる技術的課題の他に、「文化資源」として「公共的」に残すという取り組みへの課題も示された。

 

関連情報

 『今日の工房』2016年3月9日(水) ゲームソフトのフロッピー、テープ、CDを保存するには

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