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2016年6月15日(水) 明治新聞雑誌文庫様所蔵の屏風の下張りに使用されていた新聞への保存修復手当て

東京大学大学院法学政治学研究科附属近代日本法政史料センター 明治新聞雑誌文庫様よりお預かりした屏風の下張り新聞。前回までの作業はこちら。下張りから新聞を取り出したところ、新聞同士が重なる箇所はデンプン糊でしっかりと接着されていることが分かった。これらを安全に分離させるため、一度温水に浸漬してデンプン糊を緩ませてから、1枚ずつ慎重に剥がした。

 

その後、刷毛で溶液をかけ流す方法で洗浄と水性脱酸性化処置を行った。水性処置によって、若干の紙力回復効果は確認されたが、取り扱いが可能なレベルとまではいかないものもあった。そこで一部の資料に対しては、和紙で裏打ち、もしくは両面から挟んで補強を行った。この処置では、全面的に和紙で文字を覆うことになるので、閲覧時の読みにくさを出来るだけ軽減するために、極薄の和紙を採用した(画像2段目左から裏打ち前、裏打ち後)。処置が完了した新聞は保存容器に収納し、明治新聞雑誌文庫様へ無事に返却された。

 

今回、下張りから解体した新聞(明治37年〜39年発行)は総数40枚ほどで、そのうち、修理を行うきっかけとなった「讃岐日日新聞」については23枚見つかった。この新聞は、国内に数日分・数枚の現存しか確認されていないという、大変貴重かつ稀少な資料であり、今後マイクロフィルム化等による複製物の活用が検討されている。

 

関連情報
白石慈『特集:新聞を読む  明治への窓、その向こう』びぶろす71号、2016、国立国会図書館総務部

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