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2026年6月1日(月)感熱紙の鉄道切符をどう保存するか ― 一覧性・収蔵性・保護性から考える保存形態 ―

ドット方眼を用いた切符配置用の間紙

ドット方眼を用いた切符配置用の間紙(収納状態)

まとまりを保って収蔵する仕切り付き保存箱

GasQを組み込んだ保存箱の収納例

一点ずつ保護するプリザーバー収納

多数の切符を管理するバインダー収納
鉄道切符は小さな紙片ですが、近年の自動券売機などで発行される切符には、感熱紙が多く使われています。
感熱紙は、熱によって発色する記録材料です。インクを使わず印字できる一方で、熱、光、圧力、可塑剤などの影響を受けやすく、長期保存では注意が必要な素材でもあります。
鉄道切符の印字方式には、熱で券紙自体を発色させる感熱方式と、インクリボンの色材を熱で転写する熱転写方式があります。同じ切符でも、印字方式によって保存上の注意点は異なり、特に感熱方式の切符では、熱や光、圧力、可塑剤などによる退色や変色に注意が必要です。
実際、古い感熱紙の切符は、印字が薄くなったり、背景が黄変したり、全体が黒っぽく変化したりすることがあります。また、スリーブや粘着材など、接触する素材の影響を受ける場合もあります。そのため、鉄道切符の保存では、「何に入れるか」だけでなく、「どう使い、どう見返すか」によっても、適した保存形態が変わってきます。
今回製作したのは、アーカイバル・バインダー用リフィルに使用する、中性紙製の間紙です。鉄道切符を1枚の台紙に並べて貼り付け、整理・比較しやすくするためのものです。鉄道切符は、年代や鉄道会社によって、地紋、書体、券面レイアウト、紙質、印字方式などが少しずつ異なります。こうした差異は、1枚ずつ見るより、並べて比較したときに見えやすくなります。ただ、白紙の台紙に配置していく場合、角度や位置が少しずつずれやすく、ページ全体で見たときの比較性が保ちにくくなることがあります。そこで今回は、配置基準として、10mm間隔のドット方眼を中性紙に印刷しました。ドット色はグレーとし、閲覧時に視線を邪魔しにくい濃度に調整しています。また、上下左右の中心ドットのみを少し大きくし、ページ全体の配置基準としています。
この構成では、切符を保護するだけでなく、一覧しながら比較しやすい状態を維持することを重視しています。感熱紙の切符では、見やすさだけでなく、接触する素材や貼付方法も重要になるため、配置のしやすさとあわせて、長期的に資料へ負担をかけにくい間紙やリフィルの選択も必要になります。
一方で、すべての鉄道切符に、一覧比較を重視した保存形態が適しているわけではありません。以前、芝浦工業大学豊洲図書館様の鉄道切符コレクションでは、寄贈資料として受け入れられた多数の切符を収蔵するため、切符サイズに合わせた仕切り付きの台差し箱を製作しました。[芝浦工業大学豊洲図書館様 鉄道切符コレクション保存容器]
寄贈資料の場合、個々の切符だけでなく、寄贈時のまとまりや並び、分類の単位も資料の一部と考える必要があります。そのため、この事例では一覧性よりも、高密度収納、長期保管、管理性に加え、もとのまとまりや形態をできるだけ崩さないことを重視しています。古い切符には酸性紙や感熱紙も含まれるため、箱内部には汚染ガス吸着シート GasQも組み込んでいます。
また、切符を1点ずつ保護しながら閲覧したい場合には、プリザーバーやアーカイバル・バインダーを用いた構成もあります。この方法では、接触を減らし、出し入れ時の負担を抑えながら、一点ごとの状態を確認しやすくなります。ただし、収納効率は下がるため、どの方法が適切かは、利用頻度、点数、整理方法、閲覧目的によって変わってきます。
鉄道切符には、感熱紙や酸性紙、印字の退色、可塑剤の影響など、保存上の課題が多くあります。そのため、保存用品は「何を優先して残すのか」によって選び方が変わります。一覧して比較するならバインダー形式、まとまりを保って収蔵するなら仕切り付き保存箱、一点ずつ保護して閲覧するならリフィルやプリザーバーも選択肢になります。
同じ鉄道切符でも、目的によって適した保存用品や構成は少しずつ異なります。感熱紙のように変化しやすい資料では、接触する素材、並べ方、閲覧頻度も、保存用品や保存形態を考える手がかりになります。
【関連情報】
▼ 感熱紙について
近現代資料では、紙そのものの劣化だけでなく、そこに記録された文字や画像が先に失われてしまうことがあります。特に感熱紙は、熱によって発色する性質を利用した記録材料であり、ワープロ印字紙やファックス紙、レシート、切符などに広く使われてきました。
公文書の分野でも、平成期に入ると、感熱紙にワープロで印字された文書や感熱ファックス紙が頻繁に見られるようになったことが報告されています。感熱紙に記録された情報は、熱や光、圧力などの影響を受けやすく、比較的早く退色・消失するおそれがあります。
そのため、紙資料の予防的保存処置では、作業中に感熱紙の公文書が見つかった場合、その場で中性紙に複写し、複製物を原資料の近くに添えて、中性こよりで綴じ直す対応が行われます。これは、原資料を残しながら、消えやすい記録情報を別のかたちで確保するための処置といえます。
感熱紙のほかにも、蒟蒻版、青焼、湿式コピー、写真紙焼、初期の電子複写など、近現代資料には記録内容そのものが不安定なものが多く含まれます。こうした資料では、媒体を保護するだけでなく、記録された情報をどのように残すかという視点も重要になります。




