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週替わりの工房風景をご覧ください。毎日こんな仕事をしています。

2021年4月1日(木)香雪美術館様のご依頼で刀装具(とうそうぐ)を収納する保存箱を製作しました。

香雪美術館は朝日新聞社の創業者・村山龍平が蒐集した日本、東洋の古美術コレクションなどを収蔵する美術館として昭和48年(1973)に開館しました。所蔵品は、仏教美術、書跡、絵画から茶道具、武具に至るまで幅広く、重要文化財19点、重要美術品33点を数えます。広大な敷地内にある旧村山家住宅は、和洋の建物を擁する明治、大正期の邸宅の面影を今に伝え、国指定重要文化財となっています。また、同美術館が開館45周年を記念し、新たな展示施設として2018年にオープンさせたのが中之島香雪美術館です。大阪屈指のビジネス街である中之島エリアの中之島フェスティバルタワー・ウエスト4階にある美術館では、村山コレクションが順次公開されています。

 

今回、刀装具(とうそうぐ)を収納する保存箱のご依頼をいただきました。およそ600点ある刀装具は昨年から調査が進められており、さまざまな形や種類の刀装具を分類・整理するための保存箱を製作しました。

 

保存箱は、鍔、目貫、笄(こうがい)などの各刀装具の寸法に応じて、一つの箱内で、分かりやすく収納できるよう、簡単に取外し組み替え可能な仕切りを設けました。刀装具を収納する各部屋には、資料番号と資料画像を印刷したラベルが貼られ、資料情報を一目で識別でき、出し入れ等などの管理が楽にできます。また、保存箱の外寸を揃えたことにより、保管する収蔵棚やキャビネットに無駄なく納まり、取り扱いがし易い状態になっています。

 

本稿の掲載ならびに写真の撮影・使用にあたっては香雪美術館様の多大なるご協力を頂きました。誠にありがとうございました。

 

 

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郷土玩具(土人形・土鈴)を収納する仕切り付台差し箱の製作 めぐろ歴史資料館様の事例

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たばこと塩の博物館様からのご依頼で「嗅ぎたばこ入れ」を収納する保存容器を製作しました。

2021年2月3日(水)仏像の宝冠(ほうかん)、装身具を収納する保存容器

仏像の装身具を平置きで収納するための保存容器を製作しました。薄い銅板製の装身具には精巧な細工が施されており、5つのパーツが容器の中で接触し破損しない工夫が必要でした。そこで、パーツの輪郭線を縁取り実寸大にくり抜いたボードを積層し、装身具を個別に収納できるベースを台差し式保存箱の中に組み込みました。宝冠を収納する箇所には、宝冠の湾曲した空洞部分を支えるアーチ状の土台を取り付けました。

 

こうした複雑な形状の資料に合わせた保存容器を作成する場合、資料の輪郭を写し取った型紙をスキャンして取り込み、CADデータに変換してから製図します。この方法により、精度の高さが求められる難しい形状の加工図面も簡単に作成することができます。

 

 

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2020年12月4日(金)郷土玩具(土人形・土鈴)を収納する仕切り付台差し箱の製作 めぐろ歴史資料館様の事例

郷土玩具は日々の生活の中で伝承されてきた土地々々に特有の玩具です。現在でもだるまやこけし、張子、独楽などは身近な存在なのではないでしょうか。
玩具にはそれぞれに厄除け、お祝い、幸運祈願、更には地域風習の教材、教訓といった意味があります。そのため同じ動物をかたどった玩具でも土地柄が反映されて色彩や造形に違いがあったり、それと反対に離れた場所でも共通点があったりもします。このような性格を持つ郷土玩具は各地の文化や生活を知ることのできる貴重な資料であり、研究や収集の対象となっています。

 

めぐろ歴史資料館様所蔵の郷土玩具は同区内にお住まいだった菱田忠夫氏のコレクションを中心としています。上記玩具のほか土人形、土笛、土鈴、絵馬、御札、トランプ、かるた、マッチ箱、凧などを所蔵し、その数は1200点を超えます。
このうち菱田氏のお気に入りの土人形と土鈴は樹脂製のコンテナに収納していました。土人形(土鈴)の大きさに対してコンテナの容量が大きく、人形同士の接触防止のために、個々に箱に収めていたため、資料の出し入れがしづらい状態でした。

 

そこで上記の懸念点の解消を念頭に置いた保存容器製作のご依頼を頂きました。
箱内に仕切りを付け底面に緩衝材(プラスタゾート)を敷いたことで資料の出し入れを安全かつ容易に行えるようになりました。
また保管場所に合わせて大きさを統一し、保存容器自体の取り扱いやすさも上がりました。

 

保存箱の収納を終えて、担当の方々から「床の緩衝材で、土人形(土鈴)の出し入れに不安がなくなった」、「中仕切りがあることで閲覧性が向上した」、「担当者とやりとりを重ねたことで、必要な機能を盛り込んだ箱にすることができた」などの感想をいただきました。資料館の方々から、今回は所蔵資料の整理保存において、その緒に就いたところであり、継続して進めていきたいとの意気込みを頂きました。

 

なお本稿の掲載並びに写真の撮影・使用にあたり、めぐろ歴史資料館様の多大なるご協力を頂きました。誠にありがとうございました。

 

 

【関連商品】
台差し箱・被せ箱

仕切り

 

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2020年11月18日(水)陶器製のカップ作品を収納する保存容器を製作しました。

陶造形作家の村上仁美様よりご依頼を受け、カップアンドソーサーの作品を収納する保存容器を製作しました。作品を保存容器に収納した上でご購入されたお客様へ納品されるということで、収納作業は村上様立ち会いの元、作品を取り扱っているぎゃらりい秋華洞様にて行いました。

 

作品は「不思議の国のアリス」をモチーフにしたティーカップとソーサーが組みになっている陶製のオブジェです。立体的で可憐な装飾が繊細かつ複雑に施されており、些細な衝撃でも破損してしまう恐れがあるため、カップとソーサーはそれぞれ薄葉紙くるみんで丁寧に包装をしました。特に注意が必要な細工の細かい部分には、揉み込んで柔らかくさせたくるみんを緩衝材として当てています。包みを結ぶ紐にも細く裂いたくるみんを使用しています。

 

保存容器は被せ蓋式の箱の身を90°横に倒し、作品を横から出し入れできるように設計しました。箱の中は上下2部屋に仕切り、カップとソーサーを別々に収納する部屋を設けています。蓋を被せた箱は安全に持ち運びができるよう、箱紐で結びました。収納作業を終えた作品は、後日ぎゃらりい秋華洞様から購入者様へ無事納品されました。

2020年8月20日(木)たばこと塩の博物館様からのご依頼で「嗅ぎたばこ入れ」を収納する保存容器を製作しました。

「嗅ぎたばこ入れ」はヨーロッパで嗅ぎたばこが広く嗜まれ始めた17~18世紀ごろ、外出時の携帯や卓上での保管のために使われていました。当時の宮廷社会を中心に広まり、その流行は上流階級の人々のファッションとなったことに深い関係があります。貴金属製の本体にエナメル加工を施したものや宝石を散りばめたものなど、美麗な装飾を施した嗅ぎたばこ入れもありました。また、嗅ぎたばこ入れは中国にももたらされ、瓶や壺の形をした独特の鼻煙壺(びえんこ)となりました。単なる道具にとどまらないその優れた意匠や質感から工芸品的価値が高く、現在でも収集家は少なくありません。

 

*たばこの歴史と文化-嗅ぎたばこ- たばこと塩の博物館様ホームページ参照
https://www.tabashio.jp/collection/tobacco/t7/index.html

 

たばこと塩の博物館様所蔵の嗅ぎたばこ入れは、ある収集家から寄贈されたものが中心で、貴金属や動物の角などの様々な素材からできています。そのうち約400点は収集家自身がしつらえた仕切り付きの布張り箱に収納され、恒温恒湿の収蔵庫の棚に2段に重ねて保管されていましたが、この元箱には蓋が無く、粉塵や紫外線など外環境からの影響が懸念されました。

 

そこで、容器内の仕切りや棚に2段重ねできるサイズ、といった元の布張り箱の利点を踏襲しながら、「仕切りを嗅ぎたばこ入れのサイズに合わせて動かせる」、「より安定して2段に重ねられる」、「外環境からの影響を低減させる」といった機能を追加したアーカイバル容器をご依頼頂きました。

 

今回製作した保存容器には、内部に可動式の仕切り、底面に2段重ねを安定させる凸部、天面に開口部を覆う蓋を付けています。

 

容器の長辺側内壁には複数の切り込みを設け、任意の位置で仕切りを差し込むことができます。これにより嗅ぎたばこ入れのサイズに合わせて容器内を仕切ることができます。また、容器を2段に重ねる際、下段容器に本体の裏側に設けた凸部を嵌め合う構造で安定性が増すとともに構造上の補強となり歪みに強い作りです。この構造は全ての容器に共通しているため、従来の運用と同じく、どの容器の組み合わせでも2段に重ねることができます。

 

そして上段容器には平板状の蓋をのせ、粉塵や紫外線などの影響を防ぎます。蓋の裏側には容器裏側と同様、開口部に合わせて設計した凸部を貼り付け、容器の幅と奥行きを増やすことなく、本体容器にぴたっと嵌まる構造になっています。

 

なお、本稿の掲載ならびに写真の撮影・使用にあたり、たばこと塩の博物館様の多大なるご協力を頂きました。誠にありがとうございました。

 

 

【関連商品】
・アーカイバル容器オプション 仕切り

2020年7月31日(金)慎重な取り扱いが必要な資料にはフラップ付保存箱に「トレイ」を組み合わせて

傷んだ資料や構造的に繊細な資料は「トレイ」にのせてフラップ付保存箱へ収納することで、資料に直接手を触れずに安全に出し入れでき、取り扱いに起因する物理的な損傷を軽減できます。

 

「トレイ」の形状を決めるには、資料そのものの特徴(形・材質・寸法)、重量・状態(脆い、凹凸がある等)の他、保管条件、利用頻度なども考慮します。

 

割れやすいガラス瓶には文化財保護用フォーム材AZOTE® (プラスタゾート)を貼り合わせたトレイをおすすめしています。フォーム材で底部を固定でき安全に出し入れができます。

 

織物や染織品などの布資料には、アルカリに反応しやすいものもあるので、弱アルカリ性のボードに直接触れないように緩衝材を用いたり、ノンバッファー紙で包みトレイにのせます。

 

細かい突起物がある立体模型や装飾のある立体物には、移動時に箱の内側に当たらないよう縁付きのトレイを作成したり、振動や摩擦を防ぐため緩衝材を取り付けたりできます。重量のあるものにはトレイを補強し歪みやたわみが出ないよう堅牢な構造にもできます。

 

割れたガラス乾板や傷みのひどい染織品など、極力触れない方が良いものに対しては、シンク型のトレイをおすすめします。取り扱いが楽で保存箱に重ねて収納できます。

 

「トレイ」は複雑な形状の工芸品や陶磁器、立体物や博物系の資料、ガラス乾板写真など、様々な資料の適切な取り扱いを補助するツールとして有効です。資料の形や傷み具合、取り扱い方法の違いに応じたトレイの形状をご提案いたします。

 

 

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2020年5月15日(金) 収蔵庫の限りあるスペースを効率的に使うには?〜実例からみる収納アイデア~

保存箱は資料の寸法に合わせて作成するのが基本ですが、収納棚に大小様々な保存箱を並べると、余分な空間ができてしまうことがあります。

 

収蔵棚やキャビネットのスペースを無駄なく使うために大切なことは、3つあります。ひとつは、棚の奥行きや幅に合うように箱の「外寸を揃える」こと。箱の外寸を揃えると、安定して積み重ねることができ、上下に空いた空間を有効活用できます。箱を並べたときの統一感を作るポイントでもあります。

 

次は、資料を整理・分類し、サイズ違いのものをまとめて収納する「しまい方」を工夫すること。箱の中を仕切りやスペーサーで区切ることで、取り出しやすく一目でわかる収納ができます。

 

最後に、資料を計測して寸法と数量を確認する。同時に、収納用品を置きたいスペースの広さも測る。もの、場所、大きさを意識し、全体のバランスを考えながら整理・収納することで、収蔵庫の限りあるスペースを効率的に使うことができます。

 

弊社では、お客様のところに伺い資料を採寸するサービスを行っていますが、資料に合った保存箱を作成するだけでなく、収納スペースや利用頻度などをお伺いし、お客様それぞれの状況に合った保存箱のご提案を心がけています。

 

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2020年2月14日(金)巨大な木製オープンラックに嵌め込む中性紙製大型コンテナボックスを作る

美術館のお客様より、収蔵庫の木製オープンラックの内側をアーカイバルボードで覆う囲いを製作して欲しいと依頼を受けた。

 

ラックの内寸法は幅80cm×高さ60cm×奥行き85cmあり、これを2台連結させ奥行きを170cmにして使用している。お客様からは「このラックの内側を覆い、収納物の出し入れを棚の手前と奥の両側からできるように。また、扉を外した状態でも設置した囲いの天井がたわむ事が無いような工夫を」というご要望をいただいた。

 

ラックに収納される資料は主に工芸品や美術品で、重量があり且つ慎重な取り扱いが必要な物も含まれている。そのため、囲いは簡便な物ではなく、ラックにそのまま嵌め込む堅牢な造りのコンテナボックスを作り、扉にはフラットなデザインで取り外しが楽にできる倹飩式の蓋を設計した。

 

コンテナボックスの上枠と箱内の天井にはH型のアルミを補強材として組み込み、蓋のはめ込み部や箱内の天井がたわまないようにした。また、本体側面はアーカイバルボードを4重に積層する補強を加え、扉を外した状態でも本体が歪まない構造となっている。床面にはつぶれや摩擦に強く平滑性の高い0.9mm厚のAFハードボードを貼り込み、重量物の出し入れでもスムーズに引き出せるように加工した。

 

コンテナボックスに機能性を高めるオプションパーツを組み合わせることで、既存の木製オープンラックの収納性を損なわずに、資料保存に適した保管空間が形成された。

 

【関連情報】

スタッフのチカラ 2012年07月20日
 東京大学地震研究所図書館様におけるトレー付き倹飩式棚はめ込み箱の導入事例

今日の工房 2018年3月21日(水)
 神奈川県立歴史博物館様所蔵の屏風を収納するコンテナ・ ボックス

2020年1月22日(水)オプションサービス「ラベル作製・貼付」のご紹介

資料を保存・管理する上で、欠かせないアイテムがラベルです。保存容器にラベルを貼ることで、資料の表題や出納番号などの書誌情報が一目で識別でき、資料へのアクセシビリティが格段に上がります。

 

印刷する項目やラベルの貼り方などは、資料の性質や形態、使われ方によって異なるため、この項目だけ書けばよい、というテンプレートがありません。他にも、資料の活用段階によっても項目や用途が異なりますし、運用によっては、ロケーション番号のみを記載した方が良い場合もあります。

 

弊社では、効率的に資料を探し出せる機能的なラベルだけでなく、分類や管理の方法、様々な箱種・ファイル用品への対応等々、固有の要件に応じたラベルの作製・貼付サービスをご提案しています。自然史標本、美術品や服飾品、モノ資料などには、印刷したラベルと中性紙タグを組み合わせる場合もあり、くるみんで包んだ資料には、くるみんのひもに取り付けることも可能です。このように、整理と検索のしやすさに配慮したラベルのご相談も承ります。

 

ご要望等ございましたらお気軽にお申し付けください。

 

◆資料保存用のラベル用紙について
接着剤付きラベル用紙を使う場合は、パーマネントペーパーで作られているか、接着力が長期に持続するか、接着剤が乾いて接着力がなくなりラベルがめくれたりはがれ落ちたりしないか、接着剤がしみ出してきてべたつき、ホコリを付着させ隣接する資料の劣化原因にならないか、こういった点に配慮されたラベル用紙を推奨しています。

 

弊社の「中性ラベル」は上記の推奨要件を満たしています。用紙には中性紙として定評のあるAFプロテクトH(特種東海製紙株式会社製)を、裏糊にはアクリル系エマルジョン樹脂(弊社製)を採用し、長期の安定品質保証のために、ラベル用紙として国内では初めて、ISOのPAT(写真活性度試験=Photographic Activity Test) に合格いたしました。同試験は名称通り、直接的に接した写真画像に対する包材や接着剤の画像への影響度を試験し、包材として合格か否かを見る試験法ですが、これにパスすることは、他の資料への影響度も極めて少ないことを意味します。ただし、資料等へ直接貼るのではなく、弊社等で提供しているアーカイバルボード製資料保存容器向けに限っての品質保証になります。また、プリンタは顔料インクでのインクジェット・プリンタをお勧めします。

 

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2019年4月17日(水)今日の工房『バインダー内の分類や仕切りに最適なタブ付きインデックスシート』

2016年9月7日(水)今日の工房『保存容器に貼付する中性ラベル』

2010年1月14日(木)今日の工房『中性ラベル用紙で作成した様々なデザインのラベル』

 

関連商品
中性ラベル

カードホルダーR

新薄葉紙Qlumin™くるみん

2019年11月7日(木)東京造形大学附属美術館様の所蔵品、絵本作家小野かおるの立体作品の保存箱を製作しました

作品はレリーフがほどこされた円盤の上にオブジェがのる構造で、円盤にはオブジェをはめ込み固定するための金属製の支柱がついています。円盤は木製の土台に樹脂や金属粉などを複合的に組み合わせて成形されたもので、重量が10kg程あります。オブジェは円盤から外され薄葉紙で養生・梱包し別置保管されていました。

 

現状は展覧会後の輸送梱包のまま、エアキャップと茶段ボール製に入れられ荷造り用の梱包バンドで括られている状態で、作品をアーカイバル容器へ入れ替え、重量のある作品の円盤を縦置きで保管したいというご要望のもと保存箱の仕様を検討しました。

 

保存箱は、台差し箱をベースにマジックテープ留め具をつけた縦置きでも蓋が開かないような構造にしました。箱内部には、文化財保護用のフォーム材 AZOTE® (プラスタゾート)を円盤の形に沿うようカットし、前後左右の要所で作品を固定できるように設置。縦置きしても作品の重量を分散できるような仕組みです。また、作品を取り出しやすいよう手を入れられる空間もつくっています。さらに内蓋には、プラスタゾートで作成したスペーサーに穴を開け、蓋を閉める際に円盤を押さえつつ金属突起部分が干渉しないよう工夫しました。円盤を内蓋でしっかり押さえられるので、振動により箱の中で動くこともなく、繊細なレリーフを守ります。

 

重さがあり、平置きで重ねて収納することが難しい作品も、縦置きできる構造にしたことで、収蔵庫に効率よく収納できるようになりました。

 

 

【関連リンク】

東京造形大学附属美術館様

2019年7月31日(水)大きい資料や、重たい資料には、「底板補強」でより堅牢な箱の仕様に。

一人では持てないほどの大きな資料や、重たい資料を保存箱に入れたい場合、底板を底面に貼り付け、二重にして補強する、「底板補強」という仕様があります。 弊社の保存箱の中では、額装絵画や大型楽器、民具など、重量物を収納することが多い台差し箱や被せ箱にあわせてご提案させていただくことが多いです。

 

大きな保存箱を取り扱う際には、底面にどうしても「ねじれ」や「たわみ」が生じてしまいますが、底面を二重に補強することで、剛性が高くなり、ゆがみによる資料への負荷を軽減させ、資料をより安定した状態で持ち運ぶことができます。 また、特に重い資料は底面に大きな力が加わるため、剛性が高く、重みでつぶれることもない、ポリプロピレン製のプラスチック段ボールを底板に使用する場合もございます。

 

「底板補強」の仕様は、資料の大きさや材質、重さや量をお伺いして、ご提案させていただきます。

2019年4月3日(水)大型箱の組み立ての時は、複数のスタッフで「せぇの!」と掛け声を合わせながら。

1辺が150㎝を超えるような大型箱を製作するときは複数のスタッフで組み立てを行っています。大きな部材の取り回しや接着剤の塗布、成形など、ひとりではとてもできない作業を分担し、無駄のない動線や立ち位置、道具の置き場所にも気を配りながら作業の流れを作っていきます。

 

また、動作のタイミングを合わせるときには必ず「せぇの!」と掛け声をかけるのが習わしで(うっかり言い忘れると怒られることも・・・)、お互いに息を合わせながら梱包までの作業を進めます。毎日様々なサイズや構造の箱を手掛けますが、こうしたスタッフの緊密な連携作業が常に製作を支えています。

2019年2月27日(水)資料の同じシリーズや付属品を一つの箱に収納する場合、立体パズルのように設計していきます。

関連する同じシリーズの資料や付属品を、一つの箱に入れて、分かりやすく管理したいというご依頼をいただくことがあります。そういった場合は、立体パズルのように考えて箱を設計していきます。

 

まずは、お客様から収蔵場所の状態や棚の寸法をお伺いして、箱全体のサイズを想定します。基本的には、視認性や小スペースを考慮し、仕切りでスペースを分けて製作しますが、大きさや重さが極端に違う場合、全体のバランスを考えて設計します。例えば、1点だけ大きくて重く、他が軽い場合は、重いものを下に、軽いものを上に収納できる2階建構造にして、重心のバランスがとれるようにします。

 

他にも、資料が取り出しやすい工夫をしています。

 

画像①:余ったスペースを埋めるスペーサー。指かけがついており、スペーサーを取り外せば、資料も取り出しやすい。

画像②:淵に切りかけをつけて、資料を取り出しやすくする。

画像③:大きく重たい資料でも、手を入れ、安定して持つことができる。

 

それぞれの資料の材質によっては、同じ一つの箱に収納することはお勧めできない場合もございますので、都度当方からご提案をさせていただき、最終仕様を決定します。

2018年10月3日(水) 傷みやすい資料は、保存箱に収納する前に”包む”ことで、より安全に保存し、取り扱うことができます。

弊社では、様々な資料を保存箱に収納することをお勧めしていますが、脆弱でデリケートな資料は、箱に収納する前に資料を適切な素材で”包む”ことで、より安全に保存し、取り扱うことができます。

 

▶︎物理的に守る
ガラス乾板やレコードなど、表面がデリケートな資料は、中性紙のフォルダーに包んで箱に収納することで、箱内での接触や、塵や埃などによる物理的な損傷を防ぎます。痛みが激しく繊細な資料は、両面がなめらかな新薄葉紙くるみん™️を1枚のせたり、巻くことで、表面を保護できます。

 

▶︎汚染ガスを除去する
資料にダメージを与える、空気中の有害ガスを除去するには、GasQ ®シートで包みます。折りたたむことでクッション性が出るので緩衝材にもなります。

 

▶︎資料をより扱いやすく
背を解体してバラバラになった本や、簿冊や新聞などの重くて持ちにくい資料、また、紙力が低下してもろくなった資料も、包んだりはさんだりすることで、しっかりと資料を持つことができ、まとめて箱から取り出せるので資料の出し入れがしやすくなります。

 

資料の状態によって様々な方法をご提案できますので、ぜひご相談ください。

2018年9月12日(水)新薄葉紙「くるみん」の紙ヒモ用小型ロール品を発売しました。

今年1月に販売を開始した新薄葉紙「Qluminくるみん」を紙ヒモ用の小型ロール品にした「くるみんのひも」の販売を開始します。

 

文化財や美術品を梱包する現場では薄葉紙は欠かせない存在であり、「包む」以外にも、緩衝材と資料を固定する「紙ヒモ」としてよく使われています。通常は大判の薄葉紙を、お客様が自ら細長く裂いて作るため、均一に裂けずに切れやすいヒモになったり、また長いヒモが必要なときは短いものを繋ぐなど、作るのにとても手間がかかるものでした。

 

「くるみんのひも」は幅150ミリ×100メートルのロールタイプです。スリット加工で仕上げているため切り口が綺麗で丈夫な紙紐が作成できます。扱いやすく、好きな長さでカットできるのが特徴で、大型品の梱包に限らず、破損した資料の固定や、小物用の緩衝材としてもご利用いただけます。「薄くても丈夫」、「スペースをとらずに、すぐに作れて、扱いやすい」、「大きな紙からカットしないので無駄なく作れる」等々と好評です。

 

◆販売形態と価格
・「くるみんのひも」幅150ミリ×100メートル 1本 3,000円
*別途消費税及び梱包輸送費を頂戴いたします。

2018年6月13日(水) 紙ヒモ用の「薄葉紙くるみん」を試作しました。

1月に販売を開始した新薄葉紙「Qluminくるみん」で、このほど紙ヒモ用の小型ロール品を試作しました。お客様に試していただいている段階ですが、「薄くても丈夫」、「スペースをとらずに、すぐに作れて、扱いやすい」、「大きな紙からカットしないので無駄なく作れる」等々と好評です。

 

文化財や美術品を梱包する現場では薄葉紙は欠かせない存在であり、「包む」以外にも、緩衝材と資料を固定する「紙ヒモ」としてよく使われています。大判の薄葉紙を細長く裂き、それをしごいてヒモ状にするのですが、紙の柔らかさと加工性の良さで資料を傷つけず、手早く作れるのが利点です。

 

今回、より簡単に紙ヒモを作るための「紙ヒモ用くるみん」を試作しました。ロール型なので扱いやすく、好きな長さでカットできるのが特徴です。大型品の梱包に限らず、破損した資料の固定や、小物用の緩衝材としてもご利用いただけます。

 

※追記:小型ロール品「くるみんのひも」、販売を開始しました。新薄葉紙「Qluminくるみん」のページをご覧ください。

 

2018年4月11日(水) より安全に出し入れしたい資料にはフラップ付きをお勧めしています。

資料を保管するための容器に大切なことは、使用材料の品質や、容器としての強度もさることながら、資料の出し入れの際の「使いやすさ」が挙げられます。容器への出し入れがスムーズにできれば、資料にかかるストレスを軽減し、かつ安全に取り扱うことができるからです。

 

弊社の製品も、なるべく使いやすい形状にすることを心がけています。例えば、被せ蓋式保存箱は蓋と身からなる最も基本的な形状の箱ですが、ご希望に合わせて箱の身の側板が開く「フラップ式」という構造にすることができます。これにより、資料を箱の横から取り出すことができるようになります。例えば、壊れやすく高さのある花瓶は、箱の上から手を入れて持ち上げて出し入れするよりも、フラップを倒して横からしっかり持って引き出す方が安全です。また、つかみにくい書類束や重量のある書籍など、箱の底までしっかりと手先を入れて取り出したい資料にも効果的です。

 

箱型の容器に入れたいのだが「どうも出し入れが面倒だな」という資料がありましたら、ちょっとした工夫で解消できるかもしれません。お気軽にご相談ください。

2017年12月13日(水)強い衝撃から資料を守るポリエチレンフォームAZOTE®を組み込んだ保存箱

物理的な衝撃に弱い資料の保管には緩衝材付きの保存箱をお勧めしている。緩衝材にはポリエステル製の綿布団以外に、腐食ガスが発生しない、ポリエチレン樹脂を特殊発泡させたフォーム材AZOTE®(プラスタゾート)を採用している。

 

一般的なフォーム材の製造には化学発泡剤が使われており 、発泡体に残留したホルムアルデヒドやアンモニア系のガスが接触した資料に腐食や染みを起こす原因となることがある。AZOTE® は化学発泡剤を用いない超臨界窒素ガス発泡方式で製造された、有害ガスを放出する危険がないクリーンなフォーム材だ。また純粋なポリエチレンが原料なので対候性や耐薬品性も高く、一つ一つの気泡が均一なため物理的強度が高く耐水性も優れている。 AZOTE® はヨーロッパ諸国では何十年もの間、多くの博物館・美術館などで保存用クッション材として採用されており、精密機器や軍需品など様々な分野での輸送にも使われている。 PAT(ISO18916:2007 写真保存用包材のための写真活性度試験)もパスしており、直接資料に長期間接しても問題のないことが確認済みだ。

 

AZOTE® を使用した保存箱の事例をいくつか紹介する。

 

①ガラス乾板用のシンク付き保存箱

割れや画像の剥離が起きている乾板は縦置きでの保管ができないため、乾板サイズに合わせたシンクに平置きして箱に収納する。 AZOTE®で作る乾板用シンクはクッション性があり、たわまない強度も保持している。

 

②小物をまとめて収納するための仕切り付きの保存箱

陶器製の香合の身と蓋をそれぞれ落とし込む部屋をAZOTE® で作った。加工性が高く、資料がぴったりと収まる設計で作ることができる。

 

③複雑な形状の陶芸作品用の保存箱

立体的な造形作品などは「薄葉紙 Qlumin くるみん」で包んでから、AZOTE® を内側に貼り込んだ保存箱へ収納すると、より安全に保管ができる。

 

④額装作品用にコーナーを取り付けた保存箱

額などを四隅で固定するコーナーにAZOTE®を使用した。接触面の摩擦が少ないので、額に対してタイトに取り付けても額を傷つけない。蓋の内側の額に接触する箇所にAZOTE®を取り付けると、描画面に接触させずに額をしっかりと固定ができる。

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