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2021年1月27日(水)本の見返しに用いられたマーブル紙の修補

革装本の見返しに色彩豊かなマーブル紙が使われているものがあります。表装が傷み、埃をかぶった古い書物の外見とは対照的に、表紙を開いた時のカラフルな色合いとマーブル模様の美しさに驚くことがあります。マーブル紙は本の装丁の装飾紙として欠かせないものの一つです。

 

こうしたマーブル紙の欠損箇所を修補をする際は、元の印象を崩さないよう心掛けて処置を行っています。

 

欠損部が小さい場合は、似寄りの染色和紙(単色)で補填するだけで違和感のない仕上がりとなりますが、欠損部が大きい場合は弊社では下記のような方法で修補を行っています。

 

1. 見返し紙のマーブル紙をデジタルカメラで撮影します。

 

2. 画像をExcelのシートに挿入します。Excelのセル幅・高さを1㎝四方に調整し、セルを利用して画像を原寸大の模様サイズになるよう調整します。

 

3. 紫外線や水にも強い顔料インクのインクジェットプリンターで和紙に出力し、マーブル模様の補修紙を作成します。

 

4. 補修紙から欠損部と似た模様の箇所を選び、欠損部の大きさに合わせて、補修紙を切り抜きます。切り口はハサミで断ち切りにする場合や、水筆を利用して喰裂にする場合もあります。

 

5. 補修紙を欠損部に当てて全体の印象を確認した後、でんぷん糊を塗布して修補します。

 

以前は大きな欠損部も染色和紙(単色)で修補し、アクリル絵の具や色鉛筆等で補彩をしていましたが、複雑なマーブル模様の再現が難しく時間を要する作業でした。和紙にマーブル模様をプリントする方法を取り入れてからは、再現性も上がり、作業もスムーズになり、何より自然な仕上がりにお客様からもご満足いただいております。

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