今日の工房 

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2025年9月5日(金)ガラス製テーブルランプ用の保存容器を製作しました。

有限会社修復研究所二十一様のご依頼により、補修処置を終えたテーブルランプ作品のための保存容器を製作しました。同社は全国の美術館・博物館・資料館や個人コレクションを対象に、絵画・壁画・立体作品など幅広い修復を手がけています。

 

今回対象となったテーブルランプは、半球形のガラスシェードと、台座から支柱にかけて外側までガラスで覆われた、非常に繊細な作品です。こうしたガラス製品は、展示中だけでなく、収蔵庫内での保管や展示替えの際の移動でも破損の危険が高く、専用の保存容器が欠かせません。この点をふまえ、クライアント様のご希望に沿うかたちで、シェードとスタンドをそれぞれ専用の保存容器に収め、さらに2つの箱を外箱にまとめて収納できる構造としました。ガラスの脆さを守りつつ、収蔵庫や展示室での取り扱いのしやすさも兼ね備えた、安全性と実用性の両立を目指した設計です。

 

[スタンド用保存容器]

スタンドは上下二箇所のスペーサーで固定します。床面のスペーサーは台座の直径に合わせて円形にくり抜き、底面にもクッション材を敷くことで衝撃を和らげます。支柱部分は二分割のスペーサーで軽く挟み込み、容器を動かしても支柱が点で支えられ、接触面が最小限に抑えられる仕様です。これにより「固定しすぎず、揺れても壊れない」バランスを実現しました。スペーサーには文化財保存用フォーム材プラスタゾートを使用。軽量かつ弾力があり、長期収蔵にも適しています。容器本体は前面が大きく開くフラップ仕様被せ箱で、スタンドを無理なく出し入れできます。

 

8.収納イメージ図
左:スタンド用容器 右:シェード用容器

 

 

[シェード用保存容器]

ガラスシェードは上下と周囲をポリエステル製の綿布団で包み込み、柔らかい弾力で全体を守ります。綿布団は空隙を埋めることで揺れを抑え、万一の衝撃も吸収する仕組みです。容器本体はスタンド用と同じフラップ仕様を採用しました。

 

[外箱]

2つの保存容器は幅・奥行きを同寸に設計し、外箱に積み重ねて収められます。外箱には高さのある収蔵物の出し入れに適したつづら式保存箱を採用しました。布製の平紐を取り付けており、持ち手としての機能と補強の役割を兼ねているため、学芸員の方が収蔵庫から展示室へ安心して移動できるよう配慮しています。

完成した保存容器一式は、修復研究所二十一のスタッフ様により作品が収納され、無事にクライアント美術館の収蔵庫へ納められました。

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