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2026年7月6日(月)徳川宗家史料 『諸事留』修復事例 ― 著しく損傷した近代古文書の保存修復

処置前の『諸事留』

右上部の大きな欠損部

汚損・水損・虫損により著しく脆弱化し、ページ同士の境界も判別しにくい状態


処置後の『諸事留』

欠損部の補填箇所

本紙を補強し、保存・活用に耐えられる状態へ


ドライ・クリーニング

脆弱化した箇所の部分的な表打ち

欠損部の補填

裏打ち
公益財団法人徳川記念財団は、幕末維新期から、公爵家となる明治以降の近代の歴史資料を中心に、徳川宗家伝来の品々約2万点を所蔵しています。主な収蔵品は、重要文化財の初花肩衝をはじめとする歴代将軍関連資料、天璋院(篤姫)、静寬院宮(和宮)を中心とした将軍正室・側室関連資料、16代家達、17代家正の旧華族資料です。 (公益財団法人徳川記念財団ホームページより引用)
このたび、同財団様より所蔵資料の修復をご依頼いただき、古文書8点の修復を行いました。今回はそのなかから『諸事留』の修復事例をご紹介します。
『諸事留』(明治30年)は、徳川宗家第16代当主・家達を中心に、徳川宗家に関する書状や記録類を綴じ合わせた資料です。宗家の事務を担う家扶(かふ)は、当主の日々の動静を記した「家扶日記」や会計帳簿などを年ごとにまとめていました。ところが、明治30年については、会計帳簿も「家扶日記」も現存していません。この年の徳川宗家の様子を伝えるほぼ唯一の史料が、本『諸事留』なのです。こうした歴史的・学術的価値の高さから、保存・活用を目的にご依頼いただきました。
資料は、平綴じの綴り形態でしたが、綴じ紐はすでに切れて、綴じ穴には糸だけが残っている状態でした。汚損や水損、害虫被害による損傷も著しく、右上部には大きな欠損がありました。本紙はフケ(紙力が低下し、表面が脆く崩れやすくなった状態)が進み、ページ同士の境界さえ判別しにくいほどでした。とくに茶色く変色した部分は非常に脆く、一部は粉状になっており、欠損部の周囲には塵埃や虫糞などが堆積していました。全体に損傷が進行し、慎重な取り扱いと修復処置が求められる状態でした。
作業は、ドライ・クリーニングと解体を並行して進めました。まず表紙を取り外し、本紙同士の境界が確認できる箇所から慎重にヘラを入れて、一枚ずつ剥離しました。続いて、袋折りを開き、毛先の柔らかい刷毛で表面の塵埃や虫糞を丁寧に除去しました。
次に本紙の修補を行いました。本紙は一枚の中でも紙力にばらつきがあったため、とくに脆弱な箇所には極薄の和紙で部分的な表打ちを施し、あらかじめ補強したうえで、裏面から修補を進めました。欠損部は本紙と同程度の厚みの和紙で補填し、最後に本紙全体の強度を確保するため裏打ちを施しました。今後の展示や活用を見据え、補填箇所が目立たないよう、補修には染色和紙を用いました。仕上げに元の折りに折り直し、一定期間プレスしたのち、丁を揃えて綴じ直して修復を完了しました。
公益財団法人徳川記念財団様には、弊社ホームページへの掲載をご快諾いただきました。心より御礼申し上げます。
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