今日の工房 2016年

週替わりの工房風景をご覧ください。毎日こんな仕事をしています。

2016年7月20日(水)この夏の手ぬぐいの柄はオクラです

お客様にお届けする暑中お見舞いの手ぬぐい、今夏の柄は旬を迎える夏野菜のオクラ。つつむ、ぬぐう、敷く、かける、巻く、かざる、使い方は色々。工房でも重宝しています。

 

続きを読む

2016年7月13日(水) SPレコードを保存するには

SPレコードはLPレコードに比べて約3倍の重量があるため、縦置きで長期間保管すると熱による反りなどの変形を起こしたり、床に接触している部分が欠ける恐れがある。そのためSPレコードは平置きで保管するのが望ましい。(LP盤は縦置きの保管も可能だが、反りが起こらないように硬めのボードで挟むなどの工夫が必要だ。)

 

写真にある元のレコードスリーブは酸性紙で作られているので、アルカリバッファーの中性紙封筒に入れ替えた。保存箱にはレコードを平置きで10枚収納できる。フタがボアテープで固定されているため、持ち運びの際にレコードの重みで箱の身が不用意に開かないようになっている。

 

オリジナルのレコードジャケットも保存の対象である場合は汚染ガス吸着シート「GasQ ガスキュウ」で包み、中性紙封筒に入れたレコードと同じ保存箱に収納して保管する。

 

 

 

 参考:SPレコードとLPレコード

 

SP(Standard Playing)レコードとは、1897年~1950年代後半に製造されていたレコードで、1948年に長時間の記録が可能なLP(Long Playing)レコードの販売が始まり徐々に移行していった。SP盤とLP盤の違いは以下の通りである。

 

SPレコード
・直径:12インチ(30cm)と10インチ(25cm)
・毎分78回転、記録時間:最大片面5分
・主原料:シェラック(東南アジアに生息するラックカイガラムシが分泌する天然樹脂)
・材質:硬度がある半面、弾力が無くもろい。摩耗しやすく、落とすと瓦の様に割れる
・重量:最大400g程度
・シェラックは粒子が粗いので長時間の記録ができない(細かい溝を掘れない)

 

LPレコード
・直径:12インチ(30cm)と10インチ(25cm)
・毎分33と1/3回転、記録時間:最大片面35分
・主原料:硬質塩化ビニール
・材質:弾性があり割れにくく丈夫
・重量:130g程度(重量盤は180g)
・粒子が細かいので細密な記録が可能になり、SP盤では不可能な長時間記録を実現

 

日本では、明治末期からSPレコードの製造が始まった。戦中戦後の物資が不足した時代には、シェラックの輸入が止まり、代替材料を使用した物や、A面とB面の間にボール紙を挟み込んだ、劣悪な素材のレコードが製造されていた。1951年にLPレコードの輸入が始まり、SPレコードの国内生産は1963年に終了した。SP盤からLP盤への過渡期にはフェノール樹脂や塩化ビニールのSPレコードも製造されていた。

続きを読む

2016年7月6日(水) 修理の第一歩はカルテの作成、時間をかけて丁寧に。

修理にとりかかる前に事前調査を行いカルテを作成する。資料の形態(和装本、洋装本、図面、小冊子等)、基材(和紙、パルプ紙、洋紙等)、イメージ材料(墨、顔料、スタンプ、インク等)、資料の劣化状況(破れ、欠損、虫損、カビ、粘着テープ、金属物等)などを観察しカルテに記す。さらに、pHチェックやスポットテストを行うことで、より詳細に資料の性質を把握する。これらの調査結果を受けて、時には想定していた修理方針を修正する場合もあるため、時間はかかるが丁寧に行わねばならない非常に重要な工程である。また、処置に使用した材料(和紙、接着剤、溶剤)や工程、処置後に収納した保存容器の形態、かかった作業時間を記録しておくことで、同じような資料に対して、より適確な処置を施すための判断材料にもなる。さらに処置を行った資料そのものにとっても、将来的にさらに修理や保存対策が必要になった際、重要な情報源となる。

続きを読む

2016年6月29日(水) 明治期の英訳「舌切り雀」の和装本を修理しました。

日本昔話『雀の物語(舌切り雀)』 を海外向けに英訳し出版(明治22年)された本。英文のため左開きではあるが、本紙は袋綴じで角裂が付いていた跡があり、和装本の形態である。本紙の袋内には間紙が挟まれており、共に基材はパルプ紙である。

 

間紙は枯葉のようにパリパリの酸性紙と化し、紙力は残っておらず折り曲げると切れてしまうような状態に劣化している。本紙と比べても茶褐色化が著しい。

 

本来間紙は、薄い本紙を袋綴じする際に、間に一枚紙を入れて綴じ込むことで、薄い紙への印刷の裏抜けを覆い、読みやすくするために用いられる。今回の資料は、本紙はパルプ紙で厚みがあり、今後も裏抜けの心配はないため、処置するにあたり間紙はすべて除去し、損傷箇所の修補をした後、綴じ直した。

続きを読む

2016年6月22日(水) 第38回文化財の虫菌害・保存対策研修会に出展しました

6月16日、17日の2日間。国立オリンピックセンターにて、公益財団法人文化財虫菌害研究所主催 第38回文化財の虫菌害・保存対策研修会が開催されました。研修会には「文化財IPMコーディネーター」の有資格者や資格更新者、取得希望者、文化財を保存管理する一般市民や 博物館、美術館等の担当者など160名を超える方々が参加されました。

 

弊社は文化財の保存管理に役に立つ「無酸素パックMoldenybeモルデナイベ」、「汚染ガス吸着シートGasQ®ガスキュウ」、カビの残滓除去が館内でできる「簡易・ドライクリーニングボックス」を展示しました。ご来場いただいたお客様は資料保存や害虫防除にとても熱心な方が多く、様々なご意見やご感想を伺うことができ大変参考になりました。お立ち寄りいただいた皆様に心より御礼申し上げます。

続きを読む

2016年6月15日(水) 明治新聞雑誌文庫様所蔵の屏風の下張りに使用されていた新聞への保存修復手当て

東京大学大学院法学政治学研究科附属近代日本法政史料センター 明治新聞雑誌文庫様よりお預かりした屏風の下張り新聞。前回までの作業はこちら。下張りから新聞を取り出したところ、新聞同士が重なる箇所はデンプン糊でしっかりと接着されていることが分かった。これらを安全に分離させるため、一度温水に浸漬してデンプン糊を緩ませてから、1枚ずつ慎重に剥がした。

 

その後、刷毛で溶液をかけ流す方法で洗浄と水性脱酸性化処置を行った。水性処置によって、若干の紙力回復効果は確認されたが、取り扱いが可能なレベルとまではいかないものもあった。そこで一部の資料に対しては、和紙で裏打ち、もしくは両面から挟んで補強を行った。この処置では、全面的に和紙で文字を覆うことになるので、閲覧時の読みにくさを出来るだけ軽減するために、極薄の和紙を採用した(画像2段目左から裏打ち前、裏打ち後)。処置が完了した新聞は保存容器に収納し、明治新聞雑誌文庫様へ無事に返却された。

 

今回、下張りから解体した新聞(明治37年〜39年発行)は総数40枚ほどで、そのうち、修理を行うきっかけとなった「讃岐日日新聞」については23枚見つかった。この新聞は、国内に数日分・数枚の現存しか確認されていないという、大変貴重かつ稀少な資料であり、今後マイクロフィルム化等による複製物の活用が検討されている。

 

関連情報
白石慈『特集:新聞を読む  明治への窓、その向こう』びぶろす71号、2016、国立国会図書館総務部

続きを読む

2016年6月8日(水)スチール製キャビネットの引き出し専用収納箱を東京文化財研究所に

東京文化財研究所 企画情報部様からのご依頼を受け、スチール製キャビネットの引き出し専用の収納箱を作成した。既存のプラスチック製仕切り板は、資料の荷重によって湾曲し、出し入れがしづらい状態だった。そこで、箱の内寸に対し仕切り板の幅を大きくとり、スリットに差し込む時に外れにくく、資料がよりかかってもしっかりと支えられる構造にした。既存の引き出しの奥行きや幅に合わせて設計されているため、スペースを有効に使えるようになり、また検索しやすくなったことで出し入れも安全に行えるようなった。

続きを読む

2016年6月1日(水)「GameOn ゲームをどう残すか」フォーラムに参加しました。

日本科学未来館と株式会社角川アスキー総合研究所は2016年5月20日、企画展「GAME ON」の特別フォーラムとして「ゲームをどう残すか〜技術と体験のアーカイブ」を開催した。フォーラムでは、ゲームアーカイブに携わる講演者の取り組みの紹介、ゲームや周辺文化の保存を巡る社会的意義についてなど、ゲームを「なぜ残すか」という点を中心に幅広い話題を取り上げた中身の濃い議論が交わされた。プログラム概要は以下のとおり。

 

[司会]

 

遠藤諭(株式会社角川アスキー総合研究所)

今泉真緒(日本科学未来館)

 

[講演者]

 

■第1部 プレゼンテーション どう残すか -ゲームアーカイブの現状と課題-

「MANGAナショナル・センターの構想とは?」 桶田大介(弁護士/マンガ・アニメ・ゲームに関する議員連盟アドバイザー)

「CiP | Contents Innovation Programの紹介」 中村伊知哉(慶応義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授/CiP協議会 理事長)

「日本ゲーム博物館について」 辻哲朗(日本ゲーム博物館 館長)

「ゲーム資料保存の未来」 ルドン・ジョゼフ(NPO法人ゲーム保存協会 理事長)

「立命館大学のゲーム研究について」 細井浩一(立命館大学 映像学部/ゲーム研究センター 教授)

「文化資源アーカイブとしてのゲームアーカイブの位置付け」 柳与志夫(東京大学大学院情報学環 特任教授)

 

■第2部 ディスカッション なぜ残すか〜ビジョンの共有〜

 

-日本におけるゲームアーカイブの現状と課題-

 

現状:

現在の日本では、さまざまな立場の人が、個々の機関、分野ごとにアーカイブへのアプローチをしており、その取り組み状況にもばらつきがある。またそれらの連携が不十分であるため、一元的に保存・活用できるような環境整備が必要とされている。そうした状況のなかで、「MANGA(Manga, ANimation and GAme)ナショナルセンター構想」を始め、中核的なアーカイブ事業も進みつつあるが、その中でもゲームアーカイブが最も立ち遅れており、なかなか果が行かない状況とのことであった。

 

課題:

ゲームはマンガやアニメーションとならんで現代のポップカルチャーを代表するコンテンツであり、世界に誇れる日本の文化のひとつであるのは確実だが、それを支える制度・政策が存在せず、その文化を様々な形で支える基盤が成り立っていない。国や行政、大学、民間企業やゲーム企業、個人、各々が継続性や網羅性について課題を抱えているなど、いろいろなレベルの大小さまざまな課題が提示された。併せて、アーカイブに関わる技術的課題の他に、「文化資源」として「公共的」に残すという取り組みへの課題も示された。

 

関連情報

 『今日の工房』2016年3月9日(水) ゲームソフトのフロッピー、テープ、CDを保存するには

続きを読む

2016年5月25日(水) 平綴じされた機械パルプ紙製の小冊子やノートのヒンジ部破損の修理

機械パルプ紙製の小冊子や大学ノートなどによく見られる表紙ヒンジ部の損傷。ヒンジ部とは、冊子の表紙の開閉時の「ちょうつがい」になる部分。酸化と酸性劣化により紙の耐折強度が低下している機械パルプ紙の資料の場合、同じ位置で強制的に折られる表紙ヒンジ部は、真っ先に破断などの損傷が起きる。閲覧利用の際や、デジタル化撮影の際、あるいは冊子を開いた状態で展示する際などに、何度か冊子を開け閉めしていると、気が付いたら表紙がヒンジ部で切れてしまった、と言ったご相談もあります。

 

今回取り上げている小冊子は、本体は針金による平綴じで、表紙が本体の綴じ代で糊付けされ、それによりできた綴じ代の内側のヒンジ部に負担が集中して破れが起きている。修理方法の一つとして、表紙のちょうつがいの位置を移動し、冊子の開閉時に表紙が折れない構造にする処置がある。処置工程は、冊子の金属留め具を除去して表紙と本体を解体し、破れている箇所を和紙とでんぷん糊で修補する。表紙以外の本体を糸で綴じ直し、表紙は本体の綴じ代に糊付けしない。(平綴じでなく、かがり綴じでの綴じ直しができるのであれば、かがり綴じの方がさらに負担が少なくて良い。)これにより、表紙のヒンジ部は背表紙の表紙側の角に移った。

 

表紙と本体の接合方法については、資料によって様々であるため、各資料に合わせて十分な接合が確保できるような構造にする。

続きを読む

2016年5月18日(水)ラベルを定位置にきれいに貼るための簡単な治具

保存容器などにラベルを貼る際は、「蓋の中央」「下から1cm」というように、位置を正確に決めて貼りたい。特に複数の容器に貼る際には、並べた時にラベルの位置が揃っていると、見た目もきれいである。とはいえ、貼るたびに定規を当てて印をつけて、というのも面倒なもの。そんな時は専用の治具を作ると便利である。治具は、大きさの違う板紙を2枚貼り合わせたもので、裏面にくる段差を箱の縁にあてて使う。シンプルで使い勝手が良く、簡単に作ることができるので、ラベル貼りにお困りの方はぜひお試しください。

 

【例:端から1cmのところにラベルを貼るための治具】

○材料
・硬い板紙 または アクリル板
・両面テープ または のり

○作り方
① 板紙から扱いやすい大きさの四角形を2つ切り出す。片方の一辺は1cm短くする。
(例)4×4cmと4×3cm 

② 両面テープで貼り合わせる。

 

関連情報

中性ラベル

 

続きを読む

2016年5月11日(水) 電動ドリルで資料に穴を開ける。

電動ドリルで穴を開ける。目打ちが紙を「押し広げて」穴を開けるのに対し、ドリルは紙を「削り取って」穴を開ける。酸化・酸性紙化により紙力が低下した紙は、目打ちで押し広げて穴を開けると、周囲にひび割れが広がってしまう場合がある。特に小冊子に綴じ穴を開ける処置ではドリルを用いた方が資料にかかる負担が少ない。また、ハードカバーの外れた表紙を本体に再接合する方法のひとつのタケッティング法では、表紙ボードの断面から正確に細い貫通孔を開ける必要がある。このため、径が1㎜以下の刃を装着したペン型のドリルを使う。一見大胆な道具にも思えるが電動ドリルの使用が適している処置は多々あり、修理に欠かせない道具のひとつである。

続きを読む

2016年4月27日(水) 日本郵船歴史博物館の方々の工房見学

日本郵船歴史博物館様から5名の方々が工房見学に来られました。今回、同館から当方が初めてお預かりしている資料の修理(主に洗浄・脱酸性化処置)の作業工程を、人、場所、材料とともにじっくりとご覧いただいたことで、ご納得・ご安心いただけました。合わせて保存容器部門もご案内しました。どちらの部門でも、熱のこもったご質問とご意見をいただき、弊社にとっても大変貴重な見学会となりました。

 

 

・日本郵船歴史博物館様の保存容器導入の事例

  「船体模型用アーカイバル容器の収納事例」

  「絵画84点用アーカイバル容器の収納事例」

 

見学をご希望されるお客様は、あらかじめお問い合わせください。ご希望の日程や人数等をお知らせいただければ、当方の予定と擦り合わせて、ご返答いたします。

続きを読む

2016年4月20日(水) 早稲田大学演劇博物館の森律子等身大人形のコンテナ型保存箱。

早稲田大学演劇博物館様所蔵「森律子等身大人形」(資料番号04040)を収納するコンテナ型保存箱。森律子(1890-1961)は最初期のスター女優。コンテナの蓋は人形を出し入れする際に邪魔にならないように、前面はめ込み蓋になっている。身と蓋はマジックテープで固定する仕組みで、取り外しが簡単。足元の土台に合わせて固定用スペーサーを設置しており、人形本体が内壁に接触しない構造になっている。

続きを読む

2016年4月13日(水) ステープルやクリップなどの鉄製の留め具を安全に外すには

金属製の留め具の中でも鉄製のものは、時を経て空気中の酸素と水分に反応することで錆びが発生し、留め具そのものだけでなく、接触する本紙が腐食したり、汚れてしまう。また、糸の代わりにステープルを使うワイヤーソーイング法で綴じられた本のように、本の構造全体が崩壊することもある。

 

これらを安全に除去するために、資料の状態に合わせてマイクロスパチュラ、ニッパー等の道具を使い分ける。市販の文具のリムーバーは、劣化状態によっては、除去する際に無理な負荷がかかり、さらに資料を傷めることがあるので、特に貴重な資料等には用いない方がよい。また、錆びて脆くなった留め具は粉状に崩れることがあるため、本紙を汚さないようにドライ・クリーニングも同時に行う。

 

 

ステープルの除去

 

ステープルの足と本紙の間にマイクロスパチュラを差し込み、ステープルの足を立ち上げて、本紙をひっくり返し、ニッパーで挟んでまっすぐに引き抜く。紙力が低下している場合は、間にポリエステルフィルム等を挟んで本紙を保護しながら作業を行うと、さらに安全である。しかし、中には、酸性紙化が進み脆くなった紙や、薄い紙束等、ステープルの足を立ち上げる際の負担に耐えられない資料もある。そのような場合はステープルの足を資料面ぎりぎりのところでニッパーで切断する方が、手早く、安全である。また、雑誌や小冊子等からステープルを除去する際は、一度に引き抜くのではなく、数ページずつめくりながらステープルの足をこまめに切断し、その都度本紙を外す作業を繰り返すと、本紙にかかる負担が軽減できる。

 

 

クリップの除去

 

紙力が十分な場合は、長い輪の方を親指で抑えつつ、短い輪の方を持ち上げて除去する。紙力が低下している場合は、クリップの両面にポリエステルフィルム等を差し込んで保護した上で行う。しかし、本紙と錆が一体化してしまっていたり、紙が脆く、フィルムを差し込めないほど劣化している際は、ニッパーでクリップの上部を切断した方が安全な場合もある。

 

 

ピンや鉄釘の除去

 

紙力が十分な場合はそのまま引き抜くことができるが、紙力が低下している場合は、本紙とピンの間にフィルムを挟んで、そっと引き抜く。また、太い鉄釘等は、しっかりと握れるペンチやニッパーを使用して、釘全体を左右にわずかに回転させながら慎重に引き抜く。その際、釘の頭が深く埋まっていて、引き抜く際に道具の先端で傷つける恐れがある場合は、厚い紙等で本紙を保護する。

 

 

対象資料に合わせて適切な道具や除去方法を判断するには、経験と慎重な姿勢が求められる。

 

続きを読む

2016年3月30日(水) デジタル化のためなど、お客様の館内へ出向しての作業をお引き受けすることが増えました。

弊社では資料のクリーニングや配架ラベルの除去、デジタル化やマイクロ化に伴う資料の解体・復元といった作業を、出向でも承っております。とりわけ今年度は出向での作業が立て込みました。館外に資料を持ち出すことができない場合や、館内で作業した方が効率がいい場合などに、お客様の一部スペースをお借りして現地で作業を行います。作業内容によって必要資材は様々ですが、弊社では作業内容別に資材リストを作成しており、このリストに添って資材を揃え出向準備を行います。今回はデジタル化の撮影のためにペラ(一枚ずつの状態)に解体したハードカバーの簿冊資料を元の状態に復元する作業(ペラの綴じ直し、元表紙との再接合)の場合の必要資材を揃えました。組み立て式の作業台やプレス機なども持ち込み現地に設えます。

 

関連記事

 ・東京学芸大学附属図書館様 耐震改修工事に伴う貴重書のモルデナイベ収納、および資料・書棚のクリーニング

・衆議院議事部議案課様所蔵資料へのクリーニング、綴じ直し、保存容器収納事例

・防衛省防衛研究所戦史研究センター様 「戦史史料等の保存管理作業」ー 戦史史料、戦史関連図書約17万冊の保存箱への収納、および整理・配架作業

・寒川町寒川文書館における公文書劣化防止事業

続きを読む

2016年3月23日(水) 茶道具の風炉先屏風を木箱ごと収納する差し込み箱

都内のある美術館様からのご依頼で、風炉先屏風を収納する保存容器を作成した。この屏風は、茶の湯で茶室と道具畳の向こうを囲む茶道具の一つである。屏風は木箱に収められており、これまでは木箱をエアキャップにつつみ、輸送に使用した茶色の段ボールに収納されていた。ご担当者様より「1箱に複数の木箱(屏風)を収納するため、利用頻度の高い木箱(屏風)の出し入れが容易な箱を」との希望をいただき「差し込み箱」を提案した。出し入れの際の摩耗の抑制と重量補強用に床面にポリプロピレン製のボードを設置した。

続きを読む

2016年3月16日(水) 明治新聞雑誌文庫様所蔵の屏風の下張りから新聞を取り出す。

東京大学大学院法学政治学研究科附属近代日本法政史料センター 明治新聞雑誌文庫様よりお預かりした屏風の下張り。今回、下張りの一部に明治期の貴重な新聞資料が使われていることがわかり、解体して新聞を取り出し修理を行うことになった。資料は下骨から2層目(胴張り)にあり、酸性紙化によって紙力が極限まで低下していて非常に脆い。まずは1枚の新聞紙になるまで、張りついた和紙を少しづつ丁寧に剥がす作業を行っている。

 

屏風やふすまの下張りは5〜6層の紙の重なりで構成されており、不要になった書類や手紙、新聞紙など再利用されることがよくある。今回も新聞以外の層からは、地方の尋常小学校の試験問題や答案用紙、成績表などが多数見つかった。

 

 

関連記事

 

新聞資料に対する洗浄・脱酸性化処置

阪神・淡路大震災の記録を残す:「1995年1月16日~31日付け 神戸新聞」への保存修復手当て

続きを読む

2016年3月9日(水) ゲームソフトのフロッピー、テープ、CDを保存するには。

NPOゲーム保存協会様からのご依頼で磁気ディスク用(3.5インチFD、カセットテープ、5.25インチFD)、CDなどのゲーム資料の保存容器を作成した。ゲーム資料は複数の異なる素材から構成されている。例えばゲームソフトであれば、フロッピーやテープなどのデータを記録した媒体とともに、プラスチック製のケース、紙に印刷されたマニュアルや外カバーがあり、これらも大事な資料である。こうした資料は、構成素材や環境要因が複合的に影響することで劣化が進んでしまう。ゲーム保存協会では、資料を素材ごとに分離し、各々適した方法で、環境や素材からの腐食性ガスを吸着し、温湿度の急激な変化がない、涼しく乾燥した場所(温度20℃以下/湿度50%RH以下)でメディアを保管している。保存容器は酢酸他のVOCを吸着する汚染ガス吸着シートGasQ®を組み込んだ新きりなみ仕様。ガス吸着機能とともに、容器内の相対湿度を安定させる調湿効果を発揮し、環境要因からくる収納物の劣化を最大限に抑制できる。

続きを読む

2016年3月2日(水) 活字の鋳造から組版までの作業の見学会に参加しました。

新宿区榎町にある有限会社佐々木活字店で鋳造から組版までの作業を見学しました。佐々木活字店は大正6年に活字鋳造販売業を始め、今年で創業99年。現在では、鋳造、文選、植字、組版から印刷までの全行程を請け負っている。鋳造の作業場内には、ポイント(活字の大きさ)違いの鋳造機10台ほどや、鉛・アンチモン・錫の合金からなる活字の材料のインゴット、珍しい花型を含む母型庫などが所狭しと並び、鋳造機が小気味好い音をたてながら、次々に活字を作っていた。文選も体験させてもらい、自分の氏名を探してみましたが、常用漢字4文字にもかかわらず数十分かかりました。昔は歩合制の日雇いの職人さんが何人もいたとのこと。近年では地金屋さんも減ってきて調達が簡単でないことや、昔の鋳造機には、インゴットの適正な溶融状態を見るための温度計がついていなかったので、職人さんは溶融釜に紙を当てて燃やし、火加減を確認していたなど、興味深いお話をたくさん伺うことができました。最後の1枚の画像は、最近ある展示会用のポスターの組版。様々なポイントや書体、行間、段落、スペースを使ってデザインしていく、気の遠くなるような作業が続く。

続きを読む

2016年2月24日(水) 映像フィルムの劣化要因「ビネガーシンドローム」と、劣化の進行を低減できる保存容器。

映像フィルム用のシェルボックス。写真や映画の撮影フィルムのうち、特にアセテートベースの物は密閉性の高い容器に入れて長期保管すると、酢酸を放出し、それが再びフィルムに吸着することで加速的に劣化が進む「ビネガーシンドローム」が起きる。映像フィルムの長期保存には低温低湿に管理された保管環境が不可欠だが、収納する容器内に酢酸を充満させないことも重要だ。 ある程度の通気性があるアーカイバルボード製の保存容器に入れ、さらに容器の底に交換可能な汚染ガス吸着シート「GasQガスキュウ」を敷く事で、より効果的に劣化の進行を低減できる。付属の下敷きボードは、中心の突起がフィルムコアの穴にぴったりとはまり、固定できる構造だ。また、古くなったコアは抜いて保管する場合には、フィルムの内径に合わせた円盤スペーサーを取り付ける。

続きを読む
ページの上部へ戻る