今日の工房 2026年 9月

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2026年9月3日(木)台差し箱・被せ箱の設計 ― 使い方に合わせて選ぶ蓋の形と構造

本体と蓋が分かれる台差し箱/被せ箱は、資料の出し入れがしやすく、さまざまな資料の保管に使われる保存箱です。
一見するとよく似た形ですが、箱の内寸高さや使い方によって、蓋の深さや形を変えています。今回は、弊社での基本的な設計の考え方と、用途に合わせた蓋の加工例をご紹介します。

 

 

左:被せ箱/右:台差し箱

 

[内寸高さ100mm未満:台差し箱]

弊社では通常、箱の内寸高さが100mm未満の場合は「台差し箱」、100mm以上の場合は蓋を浅くした「被せ箱」として設計しています。台差し箱は、蓋が本体の底近くまで被る形です。蓋を外しやすくするため、箱の下部には通常6mm程度の指をかける隙間を設けています。比較的厚みの少ない資料の収納によく使われます。

[内寸高さ100mm以上:被せ箱]

内寸高さが100mm以上の場合は、蓋を浅くした被せ箱にします。蓋が深くなるほど本体と蓋が重なる部分も長くなるため、箱の大きさや形によっては開け閉めしにくくなることがあります。特に大型の箱では、蓋を無理に持ち上げようとすると、箱や中の資料を動かしてしまうこともあります。そのため弊社では、蓋の深さと開け閉めのしやすさのバランスを考え、内寸高さ100mmをひとつの目安にしています。ただし、これは絶対的な基準ではありません。収納する資料の形状、大きさ、重量、箱の置き方などに合わせて、蓋の深さを調整します。

 

[取っ手やカードホルダーを取り付ける場合]
内寸高さが100mm未満でも、取っ手カードホルダーを取り付ける場合は、蓋を浅くすることがあります。蓋を本体の底まで被せると、これらを取り付けるスペースがなくなるためです。必要な位置に取り付けられるよう、蓋の深さを調整します。
※箱の内寸高さによっては、取っ手やカードホルダーを取り付けられない場合があります。

 

蓋を浅くし、取っ手とカードホルダーを取り付けた被せ箱

 

[箱を縦置きで保管する場合]
額装作品や大型作品では、保管場所に合わせて箱を縦置きすることがあります。この場合は、内寸高さが100mmを超えていても、蓋が本体の底まで被る形にすることがあります。浅い蓋では本体との境目に段差ができ、縦に並べて収納したときに、隣の箱に引っ掛かったり、棚からの出し入れの妨げになったりすることがあるためです。また、移動や出し入れの際に蓋がずれたり開いたりしないよう、面ファスナーの留め具や平紐などで蓋と本体を固定することもあります。

 

縦置きを想定し、蓋が本体の底まで被るように設計した台差し箱 留め具で蓋を固定し、縦置きで収納した台差し箱

 

台差し箱や被せ箱のほかにも、収納する資料や使用場所に合わせて、さまざまな形の蓋を製作しています。

 

[印籠蓋]
桐箱などでよく使われる形です。箱本体の内側に「ヤロウ」と呼ばれる立ち上がりを設け、そこに蓋をはめ合わせて閉じます。蓋と本体の外側がほぼ同じ位置で合うため、閉じたときに段差ができにくく、すっきりとした外形になります。

 

印籠蓋(開けた状態) 印籠蓋(閉じた状態)

 

[乗せ蓋]
蓋を本体の上に載せる、シンプルな形です。写真の箱では、蓋の裏側に設けた段差が本体の内側に収まるように製作しています。開け閉めがしやすい一方、蓋は簡単に外れるため、必要に応じて平紐などで固定します。

 

乗せ蓋(開けた状態) 乗せ蓋(閉じた状態)。平紐で蓋を固定

 

[落とし蓋]
本体の内側に蓋を落とし込む形です。仕切りや受けの上に蓋が載る構造で、引き出しやキャビネットの中に箱を置き、細かな資料を整理する場合などに使います。蓋が箱の外側に張り出さないため、限られた収納スペースにも納めやすい形です。

 

落とし蓋(開けた状態) 落とし蓋(閉じた状態)

 

 

ここからは、蓋の形だけでなく、資料の出し入れや確認のしやすさに合わせて、箱そのものの構造を変えた事例をご紹介します。

 

[本体の開口部を側面にした台差し箱]
通常の箱は上から資料を出し入れしますが、資料によっては、持ち上げて出し入れすることが取り扱い上の負担になる場合があります。ガラス製品や陶器などでは、台差し箱を90度横にしたような構造にして、本体の開口部を側面に設けることがあります。資料を高く持ち上げず、横から出し入れできるため、落下や周囲への接触を避けながら取り扱えます。

 

陶器製のカップを横から出し入れできるよう、本体の開口部を側面にした台差し箱

 

[窓付きの台差し箱]
蓋に透明なポリエステルフィルムの窓を設け、箱を開けずに中の資料を確認できるようにすることもあります。形状の異なる立体資料などを多数管理する場合には、箱を開けなくても中身を確認できるため、資料の整理や管理がしやすくなります。一方、窓を設けると光を通す部分ができます。長期の保管を優先するのか、中身を確認しやすくするのかなど、用途に応じて窓の有無を決めます。

 

箱を開けずに中身を確認できるよう、蓋に窓を設けた台差し箱

 

保存箱づくりでまず必要になるのは資料の寸法ですが、それだけで形が決まるわけではありません。横置きか縦置きか、棚の中で使うか持ち運ぶか、どの方向から出し入れするか、箱を開けずに中身を確認したいか——こうした使い方によって、適した蓋の深さや箱の形は変わってきます。ほんの少しの違いが、開け閉めや出し入れのしやすさを左右します。
資料を保護することと、無理なく取り扱えること。その両方に目を配りながら、一つひとつの箱を設計しています。

 

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