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2026年10月28日(水)マイクロフィルム資料の保存箱―ロールフィルムとマイクロフィッシュの収納事例

ロールフィルムとマイクロフィッシュ

ロールフィルム用の箱 GasQ封筒と保存箱

ロールフィルム用の箱をまとめた収納トレイ

持ち手を設けた収納トレイと書架からの取り出し

マイクロフィッシュ用のフォルダ

仕切りの位置を変更できるマイクロフィッシュ用保存箱

マイクロフィッシュを仕切りごとに収める様

一般の書架に収納した保存箱
マイクロフィルムは、資料を縮小撮影して写真フィルム上に記録する方法として、官公庁や教育機関、図書館、文書館などで長く利用されてきた記録・保存媒体のひとつです。現在も各機関で所蔵され、利用が続いています。
近年、資料のデジタル化が進み、マイクロフィルムを取り巻く環境も大きく変わってきました。そうしたなか、マイクロフィルム資料を、保管場所や利用方法に合わせてどのように収めるかというご相談も寄せられます。たとえば、専用キャビネットから一般の書架や集密書架へ移す場合や、古くなった収納箱を入れ替える場合などです。
マイクロフィルムにはさまざまな形態があり、それぞれの形に合わせて収納方法も変わります。ここでは、リールに巻かれたロールフィルムと、シート状のマイクロフィッシュ、それぞれを収める保存箱を順にご紹介します。マイクロフィッシュのようなシート状の資料を保存箱に収めた事例はあまり見かけないので、後半では製作で工夫した点も交えて取り上げます。
[ロールフィルムとマイクロフィッシュ]
ロールフィルムは、長いフィルムをリールに巻いた形態で、代表的なものに16mmと35mmがあります。多数の画像を順番に連続して記録できるため、文書や新聞、逐次刊行物など、順序やまとまりをもつ資料の記録にも利用されてきました。保管時には、リールごと1本ずつ紙製の箱に収められているものを多く見かけます。
マイクロフィッシュは、シート状のフィルムに縮小した画像を行・列に配列して記録したものです。上部にはタイトルなどを示す見出しが設けられ、1枚のシートに多数の画像をまとめて記録できるのが特徴です。文書や報告書、地図、手稿など、さまざまな資料の記録に利用されてきました。シート単位で分類・整理しやすく、専用の引き出し式キャビネットなどにまとめて収納されていることが多いようです。
このほかにも、35mmフィルムをカードの開口部に取り付けたアパーチュアカードなど、マイクロ資料には記録する資料や利用方法に応じて、さまざまな形態があります。こうした形状の違いによって、収め方も変わります。今回製作した保存箱も、それぞれの形状やこれまでの収納方法を踏まえ、一般の書架や集密書架での保管と取り出し方を考えて設計しました。
[ロールフィルム用の保存箱]
長期間使用されてきたロールフィルムの個装箱には、変色や傷みが見られることもあり、箱の入れ替えについてご相談をいただくことがあります。弊社では、シート状資料向けのスリムフォルダーの形状を応用し、ロールフィルムを1本ずつ収める箱を製作しています。古くなった個装箱からフィルムを移し替え、リール単位で保護しながら収納するためのものです。また、この箱を複数まとめて収めるトレイも製作しています。棚からの出し入れを考え、トレイの正面には手を掛けて引き出せる持ち手を設けています。
[マイクロフィッシュ用の保存箱]
マイクロフィッシュ用の保存箱は、専用キャビネットではなく、一般の書架に収めて使用することを想定したものです。
マイクロフィッシュは、保存用のマスターでは1枚ずつ保存用のスリーブやエンベロープに収めて保護する方法が一般的です。個別のスリーブには、薄いフィルムを取り扱う際の擦れや汚れなどから保護する役割があります。閲覧・利用するフィッシュでは、まとまりごとにキャビネットや収納箱へ直接収めて管理されている場合もあります。今回の資料も個別のスリーブを用いずに管理されていたため、これまでの整理・利用方法を大きく変えず、そのまま保存箱へ移せる仕様としました。
当初は、箱の内部を仕切らず、一つの空間にまとめて収納する仕様も検討していました。しかし、ご担当者との打ち合わせのなかで、マイクロフィッシュは1枚が薄く、収納量によっては箱の中で偏ったり、傾いた状態で保持されたりする可能性があるという話がありました。そこで、これまで使用されていたマイクロフィルム用キャビネットの構造も参考に、箱の内部に取り外しのできる仕切りを設けました。仕切りの位置を複数設けることで、収納量に合わせて区画の大きさを変えられるほか、資料を分類して収める際にも使えるようにしています。
仕切りには、もう一つ役割があります。
保存箱は書架の奥行きに合わせて製作することが多く、奥行きが深くなれば収納量も増えます。その反面、マイクロフィッシュを隙間なく収めると箱全体が重くなり、特に書架の上段や下段では出し入れの負担が大きくなります。そこで、仕切りの位置を変えてあえて資料を入れない区画をつくり、置く場所に合わせて収納量を調整できるようにしました。上段や下段では少なく、中段ではより多く収めるといった使い分けができます。仕切りは資料を区分するだけでなく、箱の重量を調整する役割も持たせています。
一つの箱にできるだけ多く収めるだけでなく、書架のどこに置き、どのように取り出すのかまで考えることで、仕切りの使い方にも幅が生まれました。
[マイクロフィルムの保存と規格]
ロールフィルムやマイクロフィッシュの支持体がセルロースアセテートの場合には、劣化に伴って酢酸が発生することがあります。いわゆる「ビネガーシンドローム」と呼ばれる現象で、マイクロフィルムに限らず、セルロースアセテートを支持体とする映画フィルムなどにもみられます。セルロースアセテートの劣化は、発生した酢酸によってさらに進行が促される性質があります。そのため、低温・適切な湿度環境での保管に加え、劣化の進んだフィルムを分けて管理することも考えます。A-D Stripなどを用いて、酢酸の発生状況から劣化の程度を確認する方法もあります。
ポリエステル(PET)支持体では、セルロースアセテートと同じ機序によるビネガーシンドロームは起こりません。PETはフィルム支持体として化学的に安定性の高い材料ですが、フィルム資料の保存性は支持体だけで決まるものではありません。銀・ゼラチンフィルムでは画像銀の酸化や変色、乳剤層への湿度や汚染物質の影響などもあり、支持体とは別に画像層や保存環境についても考えることになります。
マイクロフィルムの長期保存については、フィルムの種類や保存環境に関する規格が定められています。処理済みの銀・ゼラチン型白黒フィルムには、保存性の要求事項を示したISO 18901があり、国内では、JIS Z 6009「銀-ゼラチンマイクロフィルムの処理及び保存方法」があります。実際の保存では、こうした規格も参照しながら、フィルムの種類や状態、保管環境を確認していくことになります。
専用キャビネットから一般の書架へ移すときや、古くなった収納箱を入れ替えるときも、考え方は同じです。資料そのものと、それを収める場所や日々の取り扱いを合わせて見ていくことで、必要な箱の形が見えてきます。
【確認した一次・準一次資料】
・ISO 18901:2010 — ISO公式 — ISO 18901の名称、対象範囲、現行状況(2025年再確認)の確認。
・JIS Z 6009:1994 — 日本規格協会 — 規格名称、適用内容、現在「有効」であることの確認。
・Film Preservation — Image Permanence Institute — セルロースアセテートの自己促進的な劣化、低温保存、A-D Stripsの用途の確認。
・Care of Plastic Film-based Negative Collections — Canadian Conservation Institute — A-D Stripsによるセルロースアセテートフィルムの状態評価について確認。
・A-D Strips Instructions — Image Permanence Institute / FilmCare — A-D Stripが酸性蒸気を介してフィルム劣化を間接評価する仕組みの確認。




