今日の工房 2016年

週替わりの工房風景をご覧ください。毎日こんな仕事をしています。

2016年12月22日(木) 恒例の「手ぬぐい」、新年は鳩笛で。

年の瀬が迫ってきました。弊社の年内の仕事も仕上げに入っています。新年のご挨拶といっしょにお客様にお送りする「手ぬぐい」の、2017年お正月バージョンも仕上がりました。干支の酉にちなみ、デザインは鳩笛です。先日訪問させていただいたお客様の給湯室では、今年の夏の手ぬぐい(オクラ)をご利用いただいておりました。
 

弊社の営業は、年内は12月28日(水)まで、年明けは5日から開始します。本年も格別のお引き立てを賜り、心より感謝申し上げます。皆様、どうぞ良いお年をお迎えください。

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2016年12月14日(水)お客様の元での資料サイズの採寸にはこんな道具一式を持ち込みます。

弊社スタッフがお客様のところに伺い資料を採寸するときに使う採寸道具。道具一式をスーツケースに入れて持ち運ぶ。また、遠方の場合にはあらかじめ、お客様の元へ宅配便で送ることもある。メインは木製の組立式計測器具だが、その他にもスチール定規、布製メジャー、直角を測るための L字治具などを揃えている。また、必要に応じて手袋、マスク、刷毛やクロス、付せん紙などを入れておく。採寸作業は現場の環境や資料の状態など、様々な条件に対応しながら数百冊/日のペースで行うため、必要にして十分な道具を揃えて置くことが大切だ。

 

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2015年07月08日(水) 最適なアーカイバル容器作成は正確な資料の計測から

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2016年12月7日(水) アーカイブ保存修復研修では、金属腐食による小冊子の綴じ直しやハードカバー本の表紙の付け直しを実習していただきました。

国立女性教育会館女性アーカイブセンターが主催する平成28年度アーカイブ保存修復研修。このうち2日間、オプション企画としての弊社の工房見学と、実技コース「紙資料の修復関連実習」を担当いたしました。 実技コースでは、図書資料に多く見られる金属綴じの小冊子とヒンジ部が損傷したくるみ製本への簡易処置の実習を行いました。

 

小冊子には、ステープル等の金属物の腐食や紙力の低下、ステープル等の金属の腐食やそれに伴う落丁などの損傷で閲覧が困難になるものがあります。まず酸化・酸性劣化した本紙に注意して、マイクロニッパーを使い金属を除去。新しく3箇所の綴じ穴を開け、麻糸で綴じ直す。綴じ穴を開ける際に電動ドリルをお勧めする理由や、綴じ直しの際に綴じ糸を縫ってしまうと糸切れや緩みの原因になるため針先をやすりでつぶしておくなど、適切な処置をする上で必要な細かな点も確認していきました。

 

くるみ製本とは本体をハードカバーの表紙でくるむ製本で、負荷がかかるヒンジ部が損傷しやすい。まず表紙をいったん外した後、背ごしらえをし、和紙のハネを貼る。表紙の背は本体の背に直接貼らないホロー・バック構造を作り、ハネを表紙に貼って表紙と本体を再接合するという工程を、接合する箇所や、しっかりと接着するための道具、手順に沿って、くるみ製本の構造を解説しながら作業を進めていきました。

 

簡易修理を館内で日常的に実施することは難しいかもしれませんが、資料の構造や、適切な簡易処置とはどのようなものか知っておくことは、資料の保存を考える上で役に立つことと思います。ご参加いただいた皆さま、まことにありがとうございました。

 

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「利用のための資料保存」という考え方を踏まえた修理マニュアル。セミナーの実技コースの参加者にも好評です。同コースの講師を務める弊社スタッフによる翻訳です。

アルテミス・ボナデア 著 (伊藤美樹 訳)『館内で本を修理する』PDF 全168ページ、3.8MB

 

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2016年11月30日(水)パソコン内蔵のHDD用の保存箱、より長期保存が可能なLTOなどへの移行時に使用。

映像制作会社や放送局では、デジタル制作された作品の動画素材や、関連する文書・画像などの資料がデータファイルで保管されている。現在、それらのデータをパソコン内蔵のHDDなどから、LTO(大容量磁気テープ)に代表される長期データ保存用の記録メディアへ移行する作業が進められている。

 

アニメ制作会社株式会社プロダクション・アイジー様よりご依頼を受け、データ移行までのHDDの保管と、作業のための持ち運びにも安全な専用箱を製作した。

 

パソコン内蔵のHDDは基盤部分がむき出しになっており、ホコリや静電気、落下の衝撃などによるデータ破損のリスクが大きい。そこで、箱の中で各HDDが接触しないよう仕切りを設け、床面は振動を吸収するクッション構造にした。データ移行作業が終わったものは箱の仕切り板を組み替えて、LTOテープの保存箱として利用される。

 

磁気テープやディスクの記録層を湿気や酸性ガスから保護するため、箱は表面をプルーフ加工にし、中に、取替え可能な汚染ガス吸着シート GasQ®︎を組み込んだ。

 

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2016年11月23日(水) 女性教育会館主催のアーカイブ保存修復研修で実技コースを担当します

国立女性教育会館女性アーカイブセンターが主催する平成28年度アーカイブ保存修復研修(基礎コースと実技コース)が11月30日から12月2日にかけて開催されます。このうち実技コースは、昨年に続き弊社が担当いたします。

 

昨年は紙資料の保存・修復方法の基礎実習として、基礎的かつ無理なく導入できる保存手当てを中心に道具の紹介や作業の実演・実習を行いましたが、今年は応用編として、図書館やアーカイブに膨大に所蔵されている金属綴じ・無線綴じされた小冊子や、表紙が外れかかったくるみ製本図書に対する簡易処置の実習を行います。また、12月1日午前中には、オプション企画として弊社の工房見学も予定しております。

 

参加者の方々にご満足いただける実習となるように十分に準備して臨みたいと思っております。

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2016年11月16日(水)紙焼き写真資料の整理と保存のためのアーカイバルバインダーとリフィル

紙焼きの写真資料は環境の影響を受けやすく、取り扱いには細心の注意が必要です。なかでも温湿度や大気中の汚染ガス、光、ほこり等に曝されると退色、変形、剥離などを引き起こします。

 

一般的な写真用のアルバムやバインダーは天地や前小口など露出する面が多いため、光やほこりの影響を受けます。また、写真を収納するリフィルには可塑剤や溶剤を含んでいるものがあり、素材の劣化等により発生した揮発物等で写真に化学的影響を与えます。

 

弊社のアーカイバルバインダーは写真用リフィルとともにISO18916:2007 PAT=写真保存用包材のための写真活性度試験をパスしており写真包材の国際基準に準拠しています。バインダーは蓋を綴じると外気への露出部分がなくなり、光やほこりの影響を防ぎます。オプションで汚染ガス吸着シート「GasQ®」 の組み込みも可能です。

 

リフィルのバリエーションは全部で12種類。L判やキャビネ、六つ切りなどの紙焼き写真用、35㎜、6×6(ブローニーサイズ)、4×5などネガ・ポジフィルム用、スライドマウント用と一般的な写真資料を網羅しております。

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2016年11月9日(火)第18回図書館総合展に出展中 修理部門スタッフも常駐しています

11月8日(火)から10日(木)まで、パシフィコ横浜で第18回 図書館総合展が開催されています。

 

今回、弊社展示ブースでは、例年よりも修理部門の展示スペースを広く取り、実際に使用している作業台や、和紙、刷毛、ヘラなどの道具を持ち込み、作業風景をブース内に再現しました。修理に関する質問はもちろん、保存方法の悩み、費用や期間など様々なご相談を頂戴し、大変ご好評いただいております。期間中は修理部門スタッフが常駐しています。お気軽にお声がけ下さい。

 

アーカイバル容器部門では、汚染ガス吸着シート「GasQガスキュウ®」、無酸素パック「モルデナイベ ® 」などのラインナップに加え、映画フィルムや古いビデオテープ、音声テープ、磁気ディスク、レコード等の視聴覚資料媒体専用のアーカイバル容器をご紹介しています。どうぞお手にとってご覧下さい。

 

開催は明日10日(木)まで、皆さまのご来場をお待ちしております。

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2016年11月2日(水) 茶道具を仕覆(しふく)ごと収納する保存箱。

茶道具の茶碗・茶入・棗などを「仕覆(しふく)」ごと収納する保存箱。仕覆は茶道具全体を覆う布製の保護容器だが、名物裂や古代裂と言われる歴史のある染織布が使われているものも多く、剥き出しだと光や大気中の汚染物質に曝されて傷む。

 

これを「汚染ガス吸着シート GasQ®ガスキュウ」を敷いた中敷ボードに乗せて収納する専用の容器を製作した。染織布に直接触れることなく収納でき、また蓋にはポリエステルフィルム製の窓が付いているので、そのまま棚に飾り蓋を閉じた状態のままでも仕覆を眺めることができる仕様となっている。

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2016年10月26日(水) 洋装本の表紙と背表紙の負担を軽減させるブック・シュー・スタンド(book shoe stand)の導入事例。

洋装本を本棚に縦置きで配架すると、表紙のヒンジ部分(表紙の開閉時の蝶番箇所)に本の本体(text block、本紙のブロック)の自重によるストレスが掛かるため、ヒンジ部に破れや外れなどの損傷が起きやすい。大型の本や、重量のある本、ヒンジ部の構造が脆弱なものは、とくに損傷を受けやすい。

 

対策として、本のチリ(本体と表紙の大きさの差)の厚み分のシュー(shoe、靴)をボードで作成し内蔵させたブック・スタンド(book stand)で本を支える。本の厚みにも合わせたスタンドのため、縦置き時に前小口が広がることもない。

 

このお客様の場合、この閲覧室の書棚は、「見せるための書棚」であるため、背表紙は見えるようにしておきたいが、ヒンジの損傷は防ぎたいので、箱でなくスタンドの導入となった。

 

参照:ブック・シュー内蔵の保存箱についてはこちら

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2016年10月19日(水) 大量の大型保存箱を遠方に送る。

倉庫いっぱいに積まれた大型箱を4トントラックに積み込む。積み方を間違えると全て載せきれないこともあるので確認しながら載せていく。最後の一つを入れると、荷崩れしないようトラックのドライバーさんが養生材でしっかり固定し、無事に出発。これほど大がかりな出荷は年に一度くらいだが、行先は遠く九州や北海道のこともある。お客様から着荷の連絡を受けると一安心だ。

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第24回芸工展2016「修復のお仕事展’16~伝えるもの・想い~」に出展しています。

芸工展は、平成5年から「まちじゅうが展覧会場」をキーワードに谷中/根津/千駄木/日暮里/上野桜木/池之端界隈を舞台に毎年10月に開催されています。

 

弊社は、伝世舎主催で旧平櫛田中邸アトリエにて開催されている「修復のお仕事展’16 ~伝えるもの・想い~」に初出展しています。 今年は「しまう」が統一テーマで、弊社は様々な分野に合わせた保存容器を中心に他の出展社様のブースや、展示会場のアチコチに展示しています。 皆様、是非お立ち寄りください。

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2016年9月28日(水) 出向作業時のエプロンを統一しました。

お客様のもとでの作業時に、作業スタッフであることが一目でわかるよう揃いのエプロンを導入しました。今週も資料の採寸をはじめ、現地での保存容器の組み立てと資料のクリーニング・収納、出張しての革装丁本への手当てなどが予定されています。本日よりさっそく、出向作業に向かうスタッフ達が着用します。

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2016年9月21日(水) 第18回ICA大会 2016 韓国・ソウルのブース展示に参加しました。

2016年9月5日~10日に韓国ソウル市で開催された、国際公文書館大会(International Congress on Archives)のブース展示に弊社も参加した。今大会は 「アーカイブズ、調和、友情: グローバル社会における文化的感受性、正義、連携の確保」をテーマに、世界中から参加したアーカイブズの専門家による基調講演やワークショップ、保存・修復に関わる公的機関や一般企業によるブース展示が行われた。大会のハイライト動画はこちらから。

 

弊社製品の韓国での現地取扱店となるDoosung Paper Co., Ltd.様の出展ブースにて弊社製品が多数展示され、日本国内から韓国への販売代理店となる株式会社竹尾様、保護紙の開発と販売を行っている株式会社TTトレーディング様各社ご担当者と共に弊社スタッフもブースに立ち、来場者への商品説明などを行った。ブースへは韓国内のみならず、中東やアフリカ、欧米諸国から参加された多くの方々にお立ち寄りいただいた。展示した保存箱には実物の資料を収納し、一目で用途や効果が分かるようにしたため、興味を持ち立ち止まり見学される来場者が多かった。来場者からは、汚染ガス吸着シートGasQ®︎無酸素パックMoldenybe®︎の機能や効果についての質問が最も多く、他にはない高い機能性を持った商品であるとの評価を多数いただいた。

 

次回のICA大会は2020年、アラブ首長国連邦のアブダビにて開催の予定との事。

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2016年9月14日(水) 映画の復元と保存ワークショップに参加、フィルム保存用のベントボックスなど好評でした。

8月26日から28日まで3日間の日程で 「第11回映画の復元と保存に関するワークショップ」が開催された。初日は各所の施設見学や実作業体験、2.3日目は株式会社IMAGICA東京映像センター第一試写室で講義やトークセッションが行われ、弊社は協賛企業として機器展示とライトニングトークで発表をさせていただいた。

 

施設見学・実作業では、株式会社東京光音主催による「被災した視聴覚資料の応急処置」と株式会社東京現像所主催の「調布の映画関連施設見学」に参加させていただいた。

「被災した視聴覚資料の応急処置」では株式会社吉岡映像、富士フイルム株式会社、コガタ社の各専門家より8mmフィルムやビデオテープ、SPレコードの実物を使い水洗洗浄やカートリッジを分解してのクリーニングなどを実習、実際に東日本震災で水損した映像資料の救済処置の内容をもとにした実践的な内容だった。

「調布の映画関連施設の見学」では映像資料や書籍、文書などを最適な環境で保管する共進倉庫株式会社のフィルム用低温収蔵庫を見学させていただいた。慣らし室にはIPIの基準に基づいて慣らし時間が細かく設定されており、奥の低温収蔵庫は摂氏5度40%Rhの中に約10万本ものフィルムが保管されている。次に映画など劇中に使用する小道具のレンタルを手掛ける高津映画装飾株式会社では鎧専用の倉庫と現代劇と時代劇用の小道具が収められた2つの倉庫と、過去の著名な映画に使用された貴重な小道具が展示された芸能美術文庫PALにも案内していただいた。最後に株式会社角川大映スタジオでは、映画、TV、CMの撮影から映像作品になるまでの各作業所を見学した。

 

機器展示の当社ブースでは汚染ガス吸着シートGasQ®を使った映像フィルム、SPレコード、磁気テープ、CD/DVDやLTOといった新旧の視聴覚メディア用保存箱や、衣装などを安全に保存するための無酸素パックモルデナイベ®を展示した。中でもフィルム用保存箱ベントボックスが好評で、来場者からは従来のフィルム用容器との比較、機能、価格や生産ロットなど具体的な質問を多くいただき、映像フィルムの保存への関心の高さを感じた。ライトニングトークでは、具体的な事例を交えながら視聴覚メディア専用の保存箱を紹介をさせていただいた。来場者の方々からは様々なご意見やご感想を伺うことができた。お立ち寄りいただいた皆様に心より御礼申し上げたい。

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2016年9月7日(水) 保存容器に貼付する中性ラベル

アーカイバル容器のオプションの1つでもある中性ラベルのご紹介。資料を容器に収納すると、中にどんな資料が収納されているのかが判別できなくなるため、容器作成と併せてラベルの貼付をお勧めしています。ラベルの形式は様々で、お客様のご要望や容器の種類、資料の形態等に合わせてご提案しています。左の2枚の写真は、元箱の識別情報を整理した上でラベルを作成し、保存容器に貼付した例。

 

また、最近ご好評なのは、洋装本を収納した際の「パネル型」のラベルです。洋装本の背のタイトルパネルに倣ってラベルを作成し、保存容器に貼付しています。この形式は立教大学図書館様の洋書貴重書の保存容器にも採用されています。

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2016年9月2日(金) 大容量磁気テープ媒体 LTO用の専用保存容器を開発

テレビ番組などの大容量コンテンツの保管と保存用の最適媒体として急速に普及が進んでいる磁気テープ LTO(Lenear Tape Open)専用の容器を商品化しました。これまで放送局様などからの様々なご要望を受け開発に取り組んできましたが、ようやくご納得いただける製品ができたと自負しております。

 

磁気テープの劣化要因には、落下によるカートリッジの破損、温湿度の急激な変化、埃や粉塵、水(湿気)、 空気中の腐食ガスなどがある。湿気からくるカビの発生はよく知られているが、腐食ガスによる影響も大きい。 高温高湿の環境や腐食ガスは磁気テープの記録層を構成するメタル磁性体を酸化させる。 磁性体は酸化すると抗磁力が落ち、記録された情報の欠損を起こす。 これらの要因への対策は磁気テープの保存にとって重要である。

 

画像はLTO4本収納用と、 10本収納用保存箱。蓋は樹脂製のヒネリ留め具やボアテープで固定ができ、持ち運びの際に不用意に蓋が開かないようになっている。10本用の保存箱には局内での持ち運び用に樹脂製の提げ手を取り付けた。 また、調湿性を付与するため外側を防湿効果のある不活性フィルムでコートし、内側には腐食ガスを吸着する汚染ガス吸着シートGasQ®を組み込んだ仕様になっている。

 

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2016年8月24日(水) 虫損がひどい資料へのリーフキャスティング(漉き填め)による修理

和紙基材の資料に見られる代表的な損傷に、シバンムシや紙魚(シミ)などによる虫喰い=虫損がある。ひどいものになると文字の判読はもちろん、丁をめくることも難しい。無理に開けば紙片が絡まって破損したり、島抜けになって文字が欠落してしまったり、そもそも、固着した虫糞によってページがくっついて開かない、ということもよくある。これらを、安心して取り扱えるように修理する。

 

まず、本紙を一丁ずつに解体しドライ・クリーニングする。無理に開いたりせず、島抜けしそうな箇所については、あらかじめ和紙で養生補強して、欠落しないように紙片同士をつないでおいた方が、この後の工程を安全に進めることができる。ドライ・クリーニングは、表面のチリやホコリ、泥よごれやカビを払うだけでなく、こびりついた黒い虫糞を除去することがポイントである。黒い虫糞が残ると、文字が読みづらくなるなど仕上がりを左右するため、除去には時間はかかるが丁寧に行う。

 

そして、サクション(吸い込み)型のリーフキャスティングで、紙の繊維分散液を充填していく。溜め漉きに、流し漉きの動作を組み合わせた独自のキャスターにより、和紙の繊維を絡ませながら欠損部にしっかり埋め込む。紙の厚みや虫損の多さなど、その都度本紙の性質を見て液量を決めるため、一見システマチックな工程に見えても、作業者には経験と、的確で素早い判断が求められる。

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2016年8月17日(水)「映画の復元と保存ワークショップ」で具体的な事例を紹介します。

8月26日から8月28日まで、「第11回映画の復元と保存に関するワークショップ」が開催されます。1日目は各所での施設見学や実作業体験、2・3日目はIMAGICA 東京映像センター第一試写室を会場に、講義やトークセッションが行われます。

 

弊社は協賛企業として機器展示を行います。ブースでは、本イベントのテーマに沿って、映画フィルムや古いビデオ、音声テープ、磁気ディスク、レコード等のアナログ視聴覚資料専用のアーカイバル容器のほか、無酸素パック「モルデナイベ ® 」を利用したフィルムの冷凍保存に特化した収納キット等を展示します。見た目からは分からない様々な機能を備えた実際の製品に触れて頂く事ができますので、是非お立ち寄り下さい。

 

また、イベントの名物ともなっている「ライトニングトーク」では、汚染ガス吸着シート「GasQガスキュウ®」の紹介のほか、視聴覚資料をどのように整理し、保管ではない「保存」に向けてどのようにケアしていくのか、弊社によるお客様での具体的な事例を交えながら紹介します。

 

 

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2016年8月3日(水) 無酸素パック「モルデナイベ」は工房でも加湿や修理用の材料の保管などに活用しています。

薬剤を使わずに防カビ・殺虫ができる無酸素パック「モルデナイベ」。カビや虫が発生した時だけでなく、図書館・アーカイブズ・資料館・美術館・博物館様での書籍や文書、博物資料や美術品などのモノ資料の新規受け入れ時にも活用して頂いております。また処置対象の数量にあわせて、1袋単位での小規模な処置にも、大型袋による大規模な処置にも対応できます

 

画像は弊社の工房での使用例。左から、ホコリやカビが酷い和書を外箱の桐箱ごと無酸素パックして処置したり、超音波加湿器で加湿したガスバリア袋内の中で、劣化して乾燥が進んでいる革装丁本の柔軟性を戻したり、同じく巻きクセのついた資料を入れて、フラットニング(平坦化)するための加湿チャンバーとして使っています。また、修理用の皮革など、環境の変化や虫カビに弱い材料を収納しておくためにも使っています。

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2016年7月27日(水)組み立て式の作業台、ぐらつかないための一工夫。

箱の製作や資料の修理を行う作業台。工房内だけでなく社外に持ち出すことも多いため、折り畳み式のウッドスタンドに板材を乗せる組立式のものを使用している。こうした作業台は固定机に比べると脚が揺らぎやすくなってしまうが、弊社ではウッドスタンドに三角形の補強材を取り付けることによりこれを解消した。作業内容にあわせて自由にレイアウトできる手軽さと安定感とを両立させた作業台は、毎日の仕事をしっかり支えてくれる縁の下の力持ちだ。

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