今日の工房 

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2022年2月28日(月)長期保存文書約200箱の殺虫・殺卵とカビの不活性化、クリーニング処置 事例紹介

日常的には使用しないものの残しておく必要がある大量の重要な長期保存文書があり、段ボール箱に入った状態でコンクリート壁・床の倉庫に保管されていました。段ボール箱は文書が重いために変形、破損しているものもあり、中の文書は表紙や小口への塵芥の堆積、虫の死骸や、卵、巣、カビが発生した痕跡が見受けられました。こうした資料は、利用の際に手を介して表面に堆積した汚れを本紙の内側に広げてしまったり、飛散した塵芥やカビによる健康への影響があるだけでなく、資料の移動に伴い付着していた虫やカビなどを別の場所に持ち込んでしまう恐れがあります。これら文書のうち、約200箱の目録化と保存倉庫への移動を行うにあたり、事前にクリーニングと無酸素処置による殺虫・殺卵、カビの不活性化処置を行いました。

 

資料は、飛散を防止するためのドライクリーニング・ボックスやHEPAフィルター付きの掃除機を使い、1点ずつ表紙や小口、段ボール箱を吸引し、資料の素材に応じて消毒用エタノールを噴霧したクリーニングクロスで表面のふき取りを行いました。さらに、本紙の点検を行い、汚れの著しい箇所をクリーニングしました。
今回の事例では、運び出しまで引き続き倉庫に保管されるため、クリーニング後に段ボール箱ごと無酸素パック「モルデナイベ」に収納し、3週間以上無酸素状態にすることで完全な殺虫・殺卵、カビの不活性化処置を行い、搬出までその状態を維持するようにしました。対象の文書には薬剤に敏感な青焼き図面が多数含まれていましたが、無酸素パック「モルデナイベ」による処置は薬剤を用いないため、こうした多様な素材の紙を含む文書類にも区別なく使用することができ、文書1冊、1箱からの処置も可能です。

 

 

【関連情報】
資料に付着した汚れやカビのドライ・クリーニング
東京学芸大学附属図書館様 耐震改修工事に伴う、貴重書のモルデナイベ収納、および資料・書棚のクリーニング

 

『今日の工房』
2019年6月19日(水)共立女子大学図書館様の貴重書1900点のカビ被害のクリーニングから保存容器収納まで。

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