今日の工房 2015年

週替わりの工房風景をご覧ください。毎日こんな仕事をしています。

2015年12月24日(木) 今年の締めくくりの業務に追われています。恒例の手拭いも仕上がりました。

2015年の年の瀬も押し迫り、今年の仕事を締めくくるべく、年内納品の製品や資料が出揃ってきました。あとは、出荷を待つばかり。お客様へ新年のご挨拶でお届けする、恒例の干支の手ぬぐいも刷り上がってきました。弊社は年内12月25日までの営業、年始は1月4日から営業いたします。本年も皆様からのご愛顧を賜りスタッフ一同心から感謝申し上げます。来年もどうぞよろしくお願い致します。

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2015年12月16日(水)韓国での本格的な市場開拓のための視察をしました。当社で研修を受けた李さんの在籍する国立ハングル博物館も見学。

弊社製品の韓国での販売を本格的に開始するにあたり、販売代理店となる株式会社竹尾様、特殊紙の開発と販売を行う株式会社TTトレーディング様、現地取扱店となるDoosung Paper Co., Ltd.様、各社のご担当者とともに、国立ハングル博物館韓国国家記録院(NARA記録館)の他、韓国の文化財保存機関や文化施設の設備・資材供給メーカーを訪ねた。

 

昨年秋に新設された国立ハングル博物館では、5年前に弊社で研修された李珍嬉さん(【寄稿】李珍嬉 「近代資料のコンサベーション技術を学ぶ-資料保存器材での研修報告-」) が勤務されており、すでに弊社製品を導入しご活用していただいていた。

 

過密なスケジュールだったが、各所で汚染ガス吸着シートGasQや防カビ・殺虫の無酸素パックモルデナイベの紹介と実演を交えてのアーカイバル容器の実用性をアピールできた。また、弊社製品を既に導入されている国立機関や取り扱いメーカーの方々から直接弊社製品の評価を聞く、またとない機会になった。

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2015年12月9日(水) 汚染ガス吸着シートGasQ、定型の断裁品も発売

2013年の発売以来ご好評をいただいている汚染ガス吸着シートGasQに、定型の断裁品が登場しました。

 

従来の幅1100mm×50m巻ロール品に加え、1100×800mmの断裁品(100枚入り)が新発売となり、これまで特注品としてのお取り扱いしかなかった断裁品をより安価にお求めいただけるようになりました。カットや加工もしやすく手軽に資料を包むことができるほか、保存容器や棚、展示ケースなどに敷くなど用途もさまざまです。これまでのロール品と併せてご活用ください。

 

なお、枚数がまとまれば、ご希望のサイズの断裁品も提供いたします。ご相談ください。

 

GasQ断裁品(定型サイズ)
1100×800mm 100枚入り 38,000円(税抜き)

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2015年12月2日(水) 修理製本の隠れた部位に使う「白鞣し革」とは?

洋装本の表紙の修理に用いる革は、通常は植物タンニン鞣ししたものが使用される。だが、重い革装本の背ごしらえや、綴じの支持体として白鞣し革(white tawed leather)を使用することがある。この革は、植物タンニンではなく、カリウムミョウバン液に浸して原皮(山羊、羊、豚など)を変性することで、独特の色と風合いとともに、優れた耐久性と耐用性を持つようになる。表紙全体を覆う材料としても中世から18世紀にかけて多用されているが、コンサベーションでは、表紙の開閉時の負荷がかかる背や綴じの隠れた部位に用いることが多い。

 

なお、弊社が修理に用いる革は、製本用皮革の専門業者として200年以上の歴史を持つ英国J. Hewit & Sons 社から入手している。コンサベーション用の皮革素材としても長期的な安定性が確認されている。

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2015年11月25日(水) 簡易ドライクリーニングボックスのお試しレンタルを始めました。

室内で資料のクリーニング作業が手軽に行える簡易ドライクリーニングボックス。作業者の安全を最大限考慮した集塵性能と扱いやすさ、そして導入しやすい価格設定が好評で、増産態勢で製作をさせていただいております。作業後は折りたたんでコンパクトに収納ができるため、置き場所に困りません。また、購入検討に際し「実物で使用感やサイズを確認してみたい」とのご要望を受け、ただいま無料レンタルサービスを実施しております。お申し込みはFAX申込用紙をダウンロードして、もしくはお問い合わせフォームからご連絡下さい。(レンタル期間は2週間で、返却時の送料はお客様負担となります。サービス実施期間は2016年3月31日まで)

 

 

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2015年11月18日(水) クリーニング・ポケット—水で紙資料を安全に洗う。

紙資料は洗浄・脱酸といった保存処置の過程で、一枚ものの資料を水溶液に浸すことがある。汚れや水溶性の酸性物を紙から除去する必須の工程である。そのため、水中では物理的に傷みやすい紙資料を安全に取り扱える方法が必要となる。海外では資料を水溶液に浸す際、どのように取り扱っているのか。詳しく解説されているいくつかの例をあげて、当社の方法と比較してみる。

 

○British Libraryの2013年8月の記事 没食子インクで書かれた紙資料の洗浄

 

○Smithsonian National Postal Museum の紙資料洗浄の動画

 

○インドのコンサバター Namita Jaspalさんによる紙資料洗浄の動画

 

いずれも、水でぬれた資料に破れや歪みが生じる危険を防ぐため、ポリエステルフィルムや不織布、透明アクリル板等でサポートにしている。

 

当社では洗浄の際、独自に開発し特許を取得しているクリーニング・ポケットを使用している 。

 

ポリエステルフィルムと水を通しやすい比較的目の粗い不織布に資料を挟み、四辺を超音波溶着し封印する。水溶液の通り道として四辺を小さくカットする。

 

上記の海外の洗浄方法と同じく、ポリエステルフィルムが全体のサポートになっているため、水中で資料を動かしたり、持ち上げたりしても安全である。また、四辺を溶着することによって水の中で資料が泳いでむき出しになる心配がなく、安心して取り扱うことができる。さらに、資料は不織布で挟まれているので、ポケットに入れたまま乾燥させても、資料が互いに張り付く心配がない。

 

紙が乾いて強度を取り戻すまで、一貫してポケットに入れたまま、安全に取り扱うことができる。

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2015年11月11日(水) 図書館総合展は明日まで開催されます。当社ブースにもお立ち寄りください。

昨日10日から12日までの3日間、パシフィコ横浜で第17回図書館総合展が開催されています。

 

弊社ブースではアーカイバル容器、防カビ・殺虫ができる無酸素パックMoldenybeモルデナイベ簡易ドライクリーニング・ボックス汚染ガス吸着シートGasQガスキュウのほか、紙資料(和装本、原稿、冊子、洋装本など)の処置前後を比較した資料なども展示をしております。

 

また、今回は弊社のアーカイバル容器作製に欠かせないアーカイバルボードを製造・販売している㈱TTトレーディング様とブースが隣り合わせということで、ボードから容器へと一続きで見ていただける展示となっております。

 

ぜひ、弊社ブースへお立ち寄りください。お待ちしております!

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2015年11月5日(木)芝浦工大豊洲図書館様の鉄道切符コレクションを特注保存容器に

芝浦工業大学豊洲図書館様のご依頼で鉄道切符収納用の保存容器を作成した。芝浦工業大学は、併設校である芝浦工業大学中学高等学校が東京鐵道中学をその前身として鉄道との関わりが深く、2013年度から鉄道資料をコレクションとして収集されている。図書館で整備された鉄道資料の一部は、2017年4月、新豊洲に移転・開校する中学高等学校内のギャラリーに展示、収蔵される予定。

容器は当初、バインダータイプを提案していたが、切符の数が多く総数が数万枚以上あるため、収納を優先し切符のサイズに合わせて分類用の仕切りを設けた台差し箱を提案した 。またバラ板紙やボール紙で作られた古い切符の酸性劣化の抑制と外部からのVocの影響を抑えるため、容器内部に汚染ガス吸着シートGasQ®を組みこんだ。

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2015年10月28日(水) 13年前に脱酸性化処置した資料はいま、どうなっているか?

コンサベーション・シミュレーション・サンプル。さまざまな紙媒体資料へのさまざまな修理方法を模擬的に適用したもの。サンプルが経年によりどのように変化するかを定期的に観察し、実際の処置の参考にする。ここでは13年前に、1枚の紙を分割し、それぞれの紙片に対して5種の脱酸性化処置を適用したものの、基材の紙と、インク等のイメージ材料の変化を検証した。

 

4枚目の画像について。オリジナル(未処置)の新聞紙片に対し、pHチェックペンの指示薬が素早く黄色に呈色したことから酸性度が高い事が分かる。対して、洗浄・脱酸性化処置(水酸化カルシウム水溶液による)を適用したものは、紫色のまま保たれている。pH値は13年前の処置時と同等のアルカリ域にあり、脱酸性化処置の効果が持続していることが確認できる。

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2015年10月21日(水)文化財防虫防菌の講習会でドライ・クリーニングの実演講義をしました

10月13日、14日の2日間にわたり公益財団法人文化財虫害菌研究所主催、文化庁後援による「第 35 回文化財防虫防菌処理実務講習会」が国立オリンピック記念青少年総合センターにて開催されました。講習会には文化財虫菌害防除作業主任者および本資格更新者、一般の文化財保存管理者、博物館・美術館・図書館・資料館・文書館等において展示・収蔵品や資料等の保存管理する担当者、文化財に関する生物被害防除業務に携わる方々を中心に89名の参加がありました。

 

弊社は資料に着いた汚れやカビのドライ・クリーニングの実演講義のほか機器展示も併せて行い、アーカイバル容器、「無酸素パックMoldenybeモルデナイベ」、「簡易ドライ・クリーニングボックス」等、文化財保存管理に役立つ器材を展示しました。多数の質問が飛び交う充実した時間となり、大変参考になりました。お立ち寄りくださった皆様方に心より御礼申し上げます。

 

当日の配布資料は以下の通り。

島田要「資料に付着した汚れやカビのドライ・クリーニング」(「文化財の虫菌害」No.69 平成27年6月号に掲載)

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2015年10月14日(水) 今秋の興味深い展示会や見学会に弊社スタッフも伺います。

季節柄、魅力的な展覧会・見学会が目白押しですが、中でも特に興味深いものを4つ。弊社のスタッフも伺います。他分野の職人や技術者の方の知恵を学ぶ良い機会です。

 

早稲田大学総合学術情報センターでの「アルドの遺伝子」11月19日(木)まで。

 

旧平櫛田中邸アトリエでの 芸工展2015「修復のお仕事‘15伝えるもの・思い〜」10月18日(日)まで。

 

無印良品有楽町Open MUJI Tokyoでの「お直し市場」『本の修復工房』ブースは10月18日(日)まで。

 

佐々木活字店での 「10月度 鋳造見学会」10月17日(土)要申込。

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2015年10月07日(水) 企業史料協議会主催の紙資料保存と修理・修復セミナーが弊社の工房で開催されました

去る9月17日、企業史料協議会主催の第6回資料管理研修セミナーが弊社にて開催されました。「紙資料の保存、修理・修復について~アーカイバル容器製造工程、資料修復作業を見学して学習~」というテーマのもと企業アーカイブ担当者など16名の方が参加し、3時間半にわたり工房見学をしました。参加者からは具体的かつ踏み込んだ質問が多く寄せられ、私共にとっても大変有意義なセミナーとなりました。

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2015年09月30日(水) カビや塵埃の処置に、飛散防止用のマスカーテープで作業場を隔離する

カビ被害が甚大な資料や大量の塵埃が発生する資料を取り扱う際は、飛散防止のため作業場を隔離する。空間を隔離するカーテンとして、養生テープとポリシートが一体化したマスカ―テープを使用した。作業場所を囲うように壁や天井に貼り付け、ポリシートを広げる。必要なスペースに合わせて設置することができ、作業後の処分も手間がかからない。

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2015年09月16日(水) 日本刀の容器。複数を任意の位置で収納できるように工夫が。

日本刀の保存容器。刀掛けに飾る時のように、刃を上に向けて保管できる受け台を設けた。受け台は刀を先端と柄の2点で支えるよう、任意の位置で刀の長さや形状に合わせて設置ができる。1箱に複数の刀を納める構造にもできるため、拵えと白鞘をまとめて収納する場合にもお互いに干渉せずに保管できる。

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2015年09月09日(水) 和装本の綴じ直しに使う絹の糸と布。処置前の本の印象を崩さないものを選ぶ

和装本の綴じ直しに使用する絹糸と角裂(かどぎれ)用の絹布。色や太さの異なるものを揃えている。綴じ糸や角裂は、表に出ていた部分が特に、経年劣化により退色しているものが多く、新規の材料で直すと本の印象が変わってしまうことがある。ご依頼主様と打合せの上、元の色や太さと見比べながら、処置前の本の印象を崩さないように材料を選び、綴じ直す。

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2015年09月03日(木) 木箱からの移し替え—屏風を入れるスロット付き差し込み箱

東洋大学井上円了研究センター様所蔵の屏風(長辺1,740×短辺640×厚み110ミリ)の容器として、1箱につき屏風1隻を収納するスロット加工(差し込み箱)を2箱納めた。(以前の同大学様での屏風収納事例はコチラ

 

使用素材の品質が不確かな木箱は、木材や接着剤から発生する酸性ガスにより収納した資料が汚染されることが分かっている。更に、相対湿度の変化によって箱が歪むことで蓋が外せなくなったり、割れが生じることがある。そのため、弊社では木箱からアーカイバル容器への移し替えを推奨している。また、今回は木材が虫の棲み家となり、収蔵庫全体への汚染も懸念されていた。

 

天地のスロット加工により、内側で屏風の描画面が箱に接触することでの擦れが生じず、出し入れが容易である。また、安全かつ容易な移動を可能とするために平紐を付けた。長期保存に適しているだけでなく、その後の展示や貸し出しなどの利用時のリスク低減にも配慮したアーカイバル容器になっている。

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2015年08月26日(水) 壊れやすいスリップケースと本を一緒に収める保存容器

スリップケースの修理と保管方法のご提案。本に付属するスリップケースは利用や経年劣化により、元と同じように本を差し込むかたちでの利用が困難となっている場合がある。だが、貴重な付属資料として本と共に保管したいとのご要望を客様から頂くことが多い。弊社では、スリップケースの形を維持できるよう修補・補強した後はケースとしての利用は控えていただき、本とケースが散逸しないよう一つの保存容器に収めて、保管する方法をご提案している。ケースの中には変形防止のため、本のサイズで作ったスペーサーを入れている。

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2015年08月19日(水) 企業資料協議会主催「第6回資料管理研修セミナー」弊社見学会に向けて

企業資料協議会主催「第6回資料管理研修セミナー」にて、9月17日に弊社の見学会が開催されます。これまでも多くの方が工房見学にいらっしゃいましたが、今回は、資料の保存・修理に関する質問や、現場でお困りなこと、問題点などのアンケートをあらかじめ取り、当日の解説内容に反映させるという、通常の見学とは少し異なる趣向を予定しています。当社ならではの提案力が試されるこの機会、スタッフが総出で準備に取りかかっています。(定員に達したため受付は終了しております。たくさんの方にご応募いただき、誠に有難うございました。)

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2015年08月05日(水) 歴代の校章バッジの保管方法。スライドマウント用透明ファイルとGasQの組み合わせで。

歴代の「校章バッジ」の保管についてご相談を受け方法を考案した。大量にあるバッジの整理・保管にはスライドマウント用のフィルムプリザーバーとアーカイバルバインダーでファイリングした。金属製のバッジは保管雰囲気中の湿気や汚染ガスが影響し表面にくすみや錆びが生じる。その対策としてプリザーバーのポケットにGasQガスキュウ®を差し込んだ。バッジは台紙に留め収納する。特に貴重なバッジについては今後展示される用途があるため、ポリエステルフィルムの窓が付いた箱に収納し、そのまま展示ができるようにした。

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2015年07月30日(木) ソースパン、包帯、編み棒などの「日用品」も修理で活用します。

洋装本の処置作業で「道具」として使用する「日用品」の例。本来の目的ではない用途で、修理工程で使っています。書籍の背のオリジナルの接着剤(膠など)を除去する際、「ミニソースパン」で温めておいた糊を塗布し、接着剤をふやかして取り除く。パンが小さいので温めた糊を作業箇所のすぐ傍に置ける。表装の接着の際、「包帯」で本を包んで乾燥させる。伸縮性のある包帯なので本の形をしっかりと保ち乾燥できる。表紙と本体の接合の際、表紙のミゾ部分に「編み棒」を挟んで乾燥させる。

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