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週替わりの工房風景をご覧ください。毎日こんな仕事をしています。

2017年11月15日(水) 修理工房で使う2種類の加湿器

修理工房内で使用する加湿器は2種類あります。乾燥しやすくなるこれからの季節、紙や革が反ったり丸まったりするのを防ぐため、室内の湿度調整用に気化式の加湿器を導入しています。これとは別に、修理作業に用いるのは超音波加湿器です。超音波振動で発生するミストによって、資料に対してゆっくり穏やかに水分を与えることが可能となります。例えば、トレーシングペーパーの様に水分に敏感な素材のフラットニング処置などで使用されています。

 

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2016年8月3日(水) 無酸素パック「モルデナイベ」は工房でも加湿や修理用の材料の保管などに活用しています。

2013年11月28日(木)修理工房の温度・湿度を管理

2012年06月21日(木)巻き癖の強い図面の水蒸気による加湿フラットニング

2012年02月16日(木)経年劣化により物理的強度が低下したトレーシング・ペーパーの修復

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2017年11月1日(水) 修理に欠かせない手道具の骨ヘラを頂戴しました。

日頃の修理作業において、欠かせない手道具の骨ヘラ。この度、弊社古くから大変お世話になっている方が、大切に持っていらした骨ヘラを私どもにプレゼントしてくださいました。かつてその方がドイツで購入したものとのこと。小ぶりで小回りが利き、手に大変馴染みやすく、大切な道具の一つとなりました。このあとの年末年度末のさらなる繁忙期を乗り越えるにあたり、心強い贈り物でした。

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2017年10月18日(水)接着剤で無線綴じされた図録を折丁仕立てに作り直し、きれいに見開くように再製本する。

無線綴じされた図録。本紙の背を断裁し、それぞれのページを一枚ものにして束ね、背側の端を接着剤で固めて製本されている。経年により接着剤が劣化し、本紙は一枚ずつバラバラの状態に外れている。本紙が厚く柔軟でないため、そのまま糸で平綴じで修理を行うと見開きが悪くなり、紙への負荷もかかる。

 

断裁された本紙の背を短冊状の和紙でつなぎあわせて折丁の背を作り直した後、折丁を組み合わせた括を作り、糸で綴じ合わせてゆく(かがり綴じ)。手間のかかる工程であるが、これにより、のど元まできれいに見開ける仕上がりになる。

 

* かがり綴じ、平綴じ、中綴じ、無線綴じの断面図

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2017年9月20日(水)本紙の破れを修補するときの道具・材料とセッティング

本紙の破れを修補するとき、デンプン糊を和紙に塗布、もしくは本紙に塗布して和紙を当てて補強する。デンプン糊は接着力が非常に強いので、水で薄めて使用するぐらいがちょうど良いが、薄すぎると和紙が剥がれたり輪染みになったり、濃すぎると紙がこわばる原因になる。

 

 糊を塗布する際は筆や刷毛を使用する。修補の範囲によって、細筆、平筆、小刷毛、糊刷毛を使い分ける。このほか、糊が手や道具、作業台など余計なところに付かないよう注意し、もし付いたときにはさっと拭き取れるよう、濡らした布巾を用意しておく。

 

修補に使う和紙は、本紙の厚みや色、補強の程度によって選択する。喰い裂きの和紙は毛羽の影が目立つこともあるので、あえて断ち切りの和紙を使用することもある。冊子や新聞などの紙資料は、最初から最後のページまで同じ箇所が破れていることがよくあるので、このように同じ破損を一度にたくさん修補するときには、断ち切りした短冊状の和紙をあらかじめ用意しておく。

 

最後に、修補した箇所が不均一な乾燥によってシワになったり、つっぱったりしないよう、不織布ろ紙、更に重石をのせてしっかり乾燥させることが、良い仕上がりのためのポイントとなる。

 

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今日の工房 2017年1月18日(水)修理に欠かせな道具・材料ーリーフキャスティング(漉き嵌め)で使用する竹簾

 

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2017年8月23日(水) 修理に使う2種類のポリエステル製不織布。

修理に使う2種類の不織布。不織布とは繊維を織らずに絡み合わせて、熱などでシート状にしたもの。どちらの不織布もポリエステル製で、水を通すが吸水性は低く、薄くて柔軟性がある。

 

2種類のうち一方は目が詰まり表面が平滑で、繊維の毛羽立ちがないタイプの不織布で、作業中のデリケートな資料の表面を保護する目的で使用される。また、ポリエステル製であるため基本的にデンプン糊が効かず、貼り付いたとしても簡単に剥がすことができる。そこで糊を使う処置をした箇所は不織布で挟んでから、ろ紙や重石を置いて乾燥させ、ろ紙や資料同士の貼り付きを防ぐ。

 

もう1種類は比較的目が粗いタイプの不織布。水の通りが良く、資料を洗浄する際の洗浄ポケットや、和紙を染色する際の養生に適している。

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2017年8月9日(水)資料の修理に不可欠な道具のひとつがプレス機です。

弊社では様々な形状、大きさのプレス機を用途に合わせて使い分けています。

 

本の場合は、定位置に本を固定させてスムースに手作業をするために、作業台に載るような小・中型のプレス機を使います。本を挟んだプレスごと、縦に置いたり横にしたりできます。

 

一方、図面やポスタ―などの一枚モノで比較的大きなサイズの資料の場合は、床に据え置きの大型プレス機が不可欠です。波打ちしていたり、全面にわたる破損部を修補した後に、わずかに湿らせ、濾紙を挟み、何度も濾紙を交換しながら、資料が均一にフラットになり落ち着くまで、時間をかけて乾燥させます。

 

さらにより強い圧をかけたい場合はスタンディングプレスを使います。下段右端の画像は、水損した本をまとめてフラットニングと乾燥をしている様子。水分を含んで歪んでしまった本を、数日かけて徐々に圧を加え、歪みを正しながら元の形に直していきます。

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2017年6月28日(水) 明治期の国産リボン工場跡から発見された見本帳への手当て

洋装の浸透とともに、明治中期には一般にも普及したリボン。東京都台東区谷中にあった、日本で最初のリボン工場跡が2013年に解体・整地されました。工場はその屋根がノコギリの刃のような形状のために「鋸屋根工場」として、この地域の住民に親しまれてきました。 その後、リボン工場の建物は印刷工場として使われてきましたが、2013年の解体にあたり、 リボン工場時代のものと思われる洋書を中心とした1900年前後の繊維産業関係の文献資料や研究ノート、国内・国外製の多数のリボンを貼った見本帳などが発見され、これらの遺産の保存と継承を図る「谷中のこ屋根会」様が譲り受け管理してきました。今回の弊社でのリボン見本帳への処置は同会様からの委託です。

 

見本帳は、リボンを貼った二つ折りの台紙30枚を洋装本風のケースに収納したもの。リボンは織りの裏面を見ることができるよう、上辺のみ、あるいは4隅のうち3点のみで糊止めされている。そのため、開閉時にリボンが垂れ下がって折れた状態で挟まれやすく、繊維が脆弱になったリボンが、折れ目で破断しているものも見受けられる。

 

刷毛等で表面の塵、埃をクリーニングした後、接着剤が劣化して台紙から外れたリボンをデンプン糊で貼り戻した。リボンの折れは、わずかに加湿して折れを伸ばし、フラットニングした。リボン端のほつれは、糊差ししてほつれが広がらないよう止めた。処置後、台紙は二つ折りした中性紙のフォルダで挟んだ。フォルダは開閉時のリボンの垂れ下がりやリボン同士の接触を防ぐため、内側にも挟み込んだ。ケースは強度が低下しているため台紙の再収納はせず、革装部分に対して劣化した革表面の粉の剥落を抑えるレッドロット処置を行った。フォルダに挟んだ台紙を重ね、ケースを GasQシートに包み、まとめて保存容器に収納した。

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2017年6月14日(水) 学習院大学図書館様所蔵の華族会館寄贈図書(漢籍・和装本)277点の修理報告書を掲載しました。

弊社では平成26年度から平成28年度までの3年間、学習院大学図書館様が所蔵するコレクション「華族会館寄贈図書」の保存修復処置をお引き受けする機会をいただき、処置を行ってきました。平成26年度は洋装本62点を対象とし、弊社HPにもその報告を掲載しております。今回は平成27年度から平成28年度までの2年間で行った漢籍、和装本277点に対する保存修復処置についての報告『学習院大学図書館様所蔵「華族会館寄贈図書」漢籍・和装本の保存修復処置事例』を掲載しました。

 

なお、このコレクションは同大学のデジタルライブラリーで公開されております。

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2017年5月31日(水) 耐水性を付与できるシクロドデカンを線状に資料に含浸して水性処置をする。

耐水性が無く処置中に滲む恐れがあるインクは、昇華性のシクロドデカンを塗布し、養生してから、洗浄や脱酸性化処置、裏打ちやリーフキャスティング等の水性処置を行う場合がある。

 

シクロドデカンは元々は固体だが、熱を与えると液体になる。この状態でインク等のうえから塗布・含浸し乾かして再び固体にし、部分的に耐水性にした後に洗浄等の水性処置を行う。全ての処置を終えたあとに放置しておくと、固体のシクロドデカンは気化(昇華)して資料から抜ける。

 

これまでは、手作りのホット・ブラシ、電熱線を中に組み込んだプレートなどを使ってきたが、必要以上に線が太くなったり、層の厚みがまだらになり昇華スピードのコントロールが難しいことなどから、つど改良を行っていた。今回、シクロドデカンの塗布によく利用されるKistka(イースターエッグの装飾に使用するワックスペン)と比較してみたところ、これまでより繊細な線が引けるので、必要な箇所にのみ塗布することができた。昇華スピードの調整については今後も引き続き課題ではあるものの、処置の精度が向上する点は期待できそうである。

 

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今日の工房2015年07月30日(木)ソースパン、包帯、編み棒などの「日用品」も修理で活用します。

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2017年4月19日(水) 少量のデンプン糊を電子レンジで作る。

工房では毎日の作業用に、かなりの量のデンプン糊を使うため、鍋で糊を炊くが、防腐剤を含まないデンプン糊の保存期間は冷蔵庫で一週間程度。傷みやすいデンプン糊を必要な分だけごく少量作りたい場合に、電子レンジを使う。深さのある耐熱ガラスの容器にデンプン粉(5 ~10g程度まで)と水を1:5で入れ、ダマが残らないように混ぜる。電子レンジ600wで加熱し、10~20秒ごとに取り出してよく混ぜる。様子を見ながら合計加熱時間5分程を目安に、この工程を繰り返す。水に取って冷やし、漉して完成。用途に応じて濃さを調整して使用する。

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2017年4月12日(水)専図協主催「館内でもできる簡易修理」セミナーの受講者へのアンケート結果を掲載しました。

2017年3月2日に開催された専門図書館協議会主催「平成28年度 資料保存セミナー(関東地区) 館内でもできる簡易修理」に参加された受講者の皆様への、受講後のアンケートの集計結果がまとまりました。このほど専門図書館協議会様から弊社サイトでの紹介をご快諾いただきましたので、以下に掲載いたします。なお、総数51のご意見の中から、4つの質問項目に対して、内容が重複するご意見を除き、取捨選択させていただきました。同セミナーの参加者は25名、アンケートの回答者は23名でした。

 

1.   全体としての感想は

 

大変良い 20

まあまあ良い 2

普通 1

 

2.受講して、あなたが最も興味深く学んだ(印象に残った)ことはなんですか?

 

⚫︎資料の修理自体をメインとするのではなく、資料の今後ことを考えた修理や管理者・利用者の用途を考えた修理をすることが頭になかったので(根本的なことですが抜けておりました…)、改めて資料保存について考える良い機会になりました。講師のお二人の経歴を伺えてよかったです。お二人のお人柄にも癒されました。

⚫︎修理の講座は初めて参加したが、最初から最後までの工程をひととおり実習できたのは、大変勉強になった。講師の説明もわかりやすく、質問にも丁寧に答えていただき、さすがプロだなと感じました。参加してとても良かったです。

⚫︎とても有意義な時間で、あっという間の1日でした。身近なモノを代用して、ドリルの台なども作ることが可能だったり、今までこうしたらいいのか、と思うことがなかった作り方も教えていただけて、とても良かったです。本のしめ機がなくてもホータイで代用できるなど、身近な道具がいろんな道具になることがわかってとても良かったです。

⚫︎(和紙や不織布等を除いて)図書館に普段から備えてあるものを用いて、資料の補修が出来る点が非常に興味深かったです。今までは補正テープを貼る段階までの修理にとどまっていたが、今回教えていただいたことを取り入れていきたいです。

⚫︎ ホチキス針の処理方法。今まで一気に引き抜くものと思っていたが、針を短く切りながら抜く方法はより資料に優しいと思った。

⚫︎ 背の構造を理解できたことで、修理のポイントがつかめた(ボンドをつける場所、つけてはいけない場所がわかりました)。

⚫︎ とても有意義な時間で、あっという間の1日でした。身近なモノを代用して、ドリルの台なども作ることが可能だったり、今までこうしたらいいのか、と思うことがなかった作り方も教えていただけて、とても良かったです。本のしめ機がなくてもホータイで代用できるなど、身近な道具がいろんな道具になることがわかってとても良かったです。

⚫︎ 館内手当て時に綴じ穴をあける際、目打ち(木づち)を使用していたが、紙の劣化が進んだ資料にはドリルの方が損傷が少ないということ。

 

 

3.他にききたかった(不足していた)ことがありましたら、お書きください。

 

⚫︎ 接着剤を使用する時、市販のものを使う時は「弱アルカリに近くなるように調節したほうが良い」と言われたが、具体的にどのようにすれば市販品を使えるようにできるかも教えていただければと思いました。

▶︎ 当方の工房では市販の「ボンド」(ポリビニルアセテート)を使うのは書籍の構造部などの修理で、強い接着力を必要とする場合のみですが、この場合は水酸化カルシウム水溶液(アルカリ性)をつくり、これで酸性の「ボンド」を溶いて中性域にしたものを使っています。ただ、貴重な資料ではなく、一般的な書籍の館内修理には、「ボンド」をそのまま水溶きしたものを使っていただいて結構かと思います。

⚫︎ 糊、ボンドを使用するので、ウエットティッシュの持参をご案内していただけるとよかったです。

⚫︎ 持ち物に、エプロンとマスクがあった方が良いと思いました。

 

 

4.   今後、研修会で取り上げて欲しいテーマ

 

⚫︎ 引き続き、形態の違う図書の修理講習会を開いていただけるとうれしいです。とじ直し作業も興味があります。時間と技術が必要とのことですが。

⚫︎プロの方の修理を見学してみたいです。

▶︎ ご要望があれば適時、弊社の工房見学会を行なっております。 「2016年2月3日(水)アーキビスト養成のための資料保存手当て実習講座と工房見学会を実施しました。」  
⚫︎簡易修理だけでなく、応用的な修理の実習が可能でしたら、是非開催していただきたいです。

⚫︎ 和装本や和紙などの、紙質が特殊なものの扱いを聞いてみたいと思います。虫喰いなどの補修現場をみてみたいとも思います。

⚫︎ 背ラベル(Bコート貼付)のはがし方、再補修の仕方を教えていただけたら実務に有用です。ご検討いただければ幸甚です。

⚫︎ ソフトカバーの資料の簡易処置など。のど見えやページの脱落したものの処置なども集せて処置したい。

⚫︎ カバーが切れてきたときの補修方法。表紙全体でなく、1部だけ破損した場合の補修方法。

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2017年3月15日(水)和装本(四つ目)を仕立て直す。

和装本の修理の行程は、綴じを解体して一丁ずつ本紙を修補することと、修補後の綴じ直しに大別される。綴じ直しは、元穴や元表紙が問題なく再使用できたり、本紙の状態が良好であれば、さほど難しい工程ではない。しかし、損傷状態によっては綴じ穴を新しく設けたり、表紙を新しくする仕立て直しをすることも多い。綴じ穴の位置やちりの具合を調整する仕立て直しの作業は、資料の「顔」を決める重要な工程といえる。
 
まずは本紙を中綴じする。修補後の本紙を折り直し、丁を揃えながら元の順番通りに重ねる。重ね終えたら、目打ちで綴じ穴を開けて、紙縒りで中綴じを行う。周辺に残る補修紙については化粧裁ちを行う(薄手の資料であればカッターなどで、厚いものは断裁機を使用する)。角裂(かどぎれ)は、あらかじめ修補または新しく用意しておき、中綴じと化粧立ちの後に付け直す。
 
次に、表紙の四辺を折り込む「表紙掛け」を行う。中綴じした本紙と、表紙の内側を、軽く糊付けして固定したあと、表紙の背、天地、小口の順に、ヘラで筋を付けながら折り込み、最後に、折った紙が重なる四隅を斜めに切り落とす。本紙をきちんと保護できるよう、表紙が出過ぎたり内に入りすぎたりしていないか、指先で確認しながらちりの具合を調整する。その後、表紙と見返し紙の小口を糊で貼り合わせる。
 
最後に、題箋やラベルを元の位置に貼り戻した後、元糸を参考にして、似た色合いと太さの糸で外綴じを行って完成させる。

 

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2017年3月2日(水)本日の専図協のセミナー「館内でもできる簡易修理」はこんな内容です。

本日(2017年3月2日)開催される専門図書館協議会主催の資料保存セミナー「館内でもできる簡易修理」の講義内容です。

 

図書資料でもよく見かける、金属の綴じ具が錆びた小冊子や、表紙が本体から外れかかっているくるみ製本などへの、簡易修補のデモンストレーションと実習を行います。午前は、小冊子の金属除去・綴じ直し・修補。午後は、くるみ製本の解体・背ごしらえ・本体と表紙の接合、というプログラムです。実習後には質疑応答、意見交換会も予定しております。

 

セミナーの参加者の方々には、日頃、現場で抱えておられる様々な課題に対し、少しでも解決のお手伝いになるような情報をお持ち帰り頂けると思います。

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2017年2月16日(木)修理に使う水を作る逆浸透膜(RO)装置を一新しました。

修理に使う水を作っているRO(逆浸透膜)水装置。専門業者の方に定期的にメンテナンスをしていただきながら使用し、10年以上稼働し続けていました。この度、装置自体を一新。最新の設備に切り替えていただきました。ろ過装置がパワーアップしてタンクも小型になり省スペースに。今日も処置に必要な水を供給してくれています。

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2017年2月1日(水)資料に挟み込まれた押し花も保存する

お預かりした資料の一冊からたくさんの押し花が綺麗な状態で出てきました。本そのものに保存処置を施すにあたり、一旦取り出したものの、押し花が接触していた箇所は紙が焼けてしまっている状態なので、再び挟み込むことは考えられず、汚染ガス吸着シートGasQと間紙を挟み込んだアーカイバル・クリアホルダーに押し花を収納することにしました。ホルダー内で押し花が動かないよう、細い帯状にカットした薄い和紙を、押し花の要所要所に渡し、間紙に帯を糊付けすることで、薄く脆い押し花を傷めずにホルダー内に収めることができました。

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2017年1月18日(水)修理に欠かせない道具・材料—リーフキャスティング(漉き嵌め)で使用する竹簾

竹簾はリーフキャスティング(漉き填め)を行う際、濡れた紙資料を安全に扱うための支持体としてとても重要な道具。頑丈な作りで壊れることはそうそう無く、長年の使用で糸が緩んでも自分たちで締め直しながら大切に使ってきたが、繁忙期のフル稼働に備えて新調することになった。これらは手作りで材料の竹も選りすぐりのものでできている。ほかにも修理に欠かせない道具や材料はたくさんあり、刷毛、和紙、革、プレス機、断裁機など、修理の現場はいろいろな分野の職人さん達の優れた手の技術に支えられている。

 

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2016年12月7日(水) アーカイブ保存修復研修では、金属腐食による小冊子の綴じ直しやハードカバー本の表紙の付け直しを実習していただきました。

国立女性教育会館女性アーカイブセンターが主催する平成28年度アーカイブ保存修復研修。このうち2日間、オプション企画としての弊社の工房見学と、実技コース「紙資料の修復関連実習」を担当いたしました。 実技コースでは、図書資料に多く見られる金属綴じの小冊子とヒンジ部が損傷したくるみ製本への簡易処置の実習を行いました。

 

小冊子には、ステープル等の金属物の腐食や紙力の低下、ステープル等の金属の腐食やそれに伴う落丁などの損傷で閲覧が困難になるものがあります。まず酸化・酸性劣化した本紙に注意して、マイクロニッパーを使い金属を除去。新しく3箇所の綴じ穴を開け、麻糸で綴じ直す。綴じ穴を開ける際に電動ドリルをお勧めする理由や、綴じ直しの際に綴じ糸を縫ってしまうと糸切れや緩みの原因になるため針先をやすりでつぶしておくなど、適切な処置をする上で必要な細かな点も確認していきました。

 

くるみ製本とは本体をハードカバーの表紙でくるむ製本で、負荷がかかるヒンジ部が損傷しやすい。まず表紙をいったん外した後、背ごしらえをし、和紙のハネを貼る。表紙の背は本体の背に直接貼らないホロー・バック構造を作り、ハネを表紙に貼って表紙と本体を再接合するという工程を、接合する箇所や、しっかりと接着するための道具、手順に沿って、くるみ製本の構造を解説しながら作業を進めていきました。

 

簡易修理を館内で日常的に実施することは難しいかもしれませんが、資料の構造や、適切な簡易処置とはどのようなものか知っておくことは、資料の保存を考える上で役に立つことと思います。ご参加いただいた皆さま、まことにありがとうございました。

 

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「利用のための資料保存」という考え方を踏まえた修理マニュアル。セミナーの実技コースの参加者にも好評です。同コースの講師を務める弊社スタッフによる翻訳です。

アルテミス・ボナデア 著 (伊藤美樹 訳)『館内で本を修理する』PDF 全168ページ、3.8MB

 

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2016年8月24日(水) 虫損がひどい資料へのリーフキャスティング(漉き填め)による修理

和紙基材の資料に見られる代表的な損傷に、シバンムシや紙魚(シミ)などによる虫喰い=虫損がある。ひどいものになると文字の判読はもちろん、丁をめくることも難しい。無理に開けば紙片が絡まって破損したり、島抜けになって文字が欠落してしまったり、そもそも、固着した虫糞によってページがくっついて開かない、ということもよくある。これらを、安心して取り扱えるように修理する。

 

まず、本紙を一丁ずつに解体しドライ・クリーニングする。無理に開いたりせず、島抜けしそうな箇所については、あらかじめ和紙で養生補強して、欠落しないように紙片同士をつないでおいた方が、この後の工程を安全に進めることができる。ドライ・クリーニングは、表面のチリやホコリ、泥よごれやカビを払うだけでなく、こびりついた黒い虫糞を除去することがポイントである。黒い虫糞が残ると、文字が読みづらくなるなど仕上がりを左右するため、除去には時間はかかるが丁寧に行う。

 

そして、サクション(吸い込み)型のリーフキャスティングで、紙の繊維分散液を充填していく。溜め漉きに、流し漉きの動作を組み合わせた独自のキャスターにより、和紙の繊維を絡ませながら欠損部にしっかり埋め込む。紙の厚みや虫損の多さなど、その都度本紙の性質を見て液量を決めるため、一見システマチックな工程に見えても、作業者には経験と、的確で素早い判断が求められる。

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2016年7月6日(水) 修理の第一歩はカルテの作成、時間をかけて丁寧に。

修理にとりかかる前に事前調査を行いカルテを作成する。資料の形態(和装本、洋装本、図面、小冊子等)、基材(和紙、パルプ紙、洋紙等)、イメージ材料(墨、顔料、スタンプ、インク等)、資料の劣化状況(破れ、欠損、虫損、カビ、粘着テープ、金属物等)などを観察しカルテに記す。さらに、pHチェックやスポットテストを行うことで、より詳細に資料の性質を把握する。これらの調査結果を受けて、時には想定していた修理方針を修正する場合もあるため、時間はかかるが丁寧に行わねばならない非常に重要な工程である。また、処置に使用した材料(和紙、接着剤、溶剤)や工程、処置後に収納した保存容器の形態、かかった作業時間を記録しておくことで、同じような資料に対して、より適確な処置を施すための判断材料にもなる。さらに処置を行った資料そのものにとっても、将来的にさらに修理や保存対策が必要になった際、重要な情報源となる。

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2016年6月29日(水) 明治期の英訳「舌切り雀」の和装本を修理しました。

日本昔話『雀の物語(舌切り雀)』 を海外向けに英訳し出版(明治22年)された本。英文のため左開きではあるが、本紙は袋綴じで角裂が付いていた跡があり、和装本の形態である。本紙の袋内には間紙が挟まれており、共に基材はパルプ紙である。

 

間紙は枯葉のようにパリパリの酸性紙と化し、紙力は残っておらず折り曲げると切れてしまうような状態に劣化している。本紙と比べても茶褐色化が著しい。

 

本来間紙は、薄い本紙を袋綴じする際に、間に一枚紙を入れて綴じ込むことで、薄い紙への印刷の裏抜けを覆い、読みやすくするために用いられる。今回の資料は、本紙はパルプ紙で厚みがあり、今後も裏抜けの心配はないため、処置するにあたり間紙はすべて除去し、損傷箇所の修補をした後、綴じ直した。

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