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週替わりの工房風景をご覧ください。毎日こんな仕事をしています。

2017年8月30日(水)定番の組み立て型の被せ蓋式保存箱の重量負荷試験の結果は?

保存容器のなかでも最も定番の商品が、蓋と身のパーツが分かれたタイプの「被せ蓋式」といわれるもの。これには完成箱と組み立て型の2つのタイプがあります。完成箱は接着剤を使い、弊社で最終的な箱の形にまで加工して出荷するタイプです。一方の組み立て型は、蓋と身が、平たい板状のパーツとして出荷され、お客様ご自身が組み上げて作るタイプで、組立には接着剤は必要ありません。

 

組み立て型は完成箱に比べて価格も安いのですが、強度的にどの程度のものか気にされる方もいらっしゃいます。例えば中に資料を詰め込んだ時に、その重さのために箱が変形したり潰れたりしないだろうか、というご質問をいただくことがあります。

 

定番であるA3サイズの組み立て型に簡単な重量負荷試験を行いました。目一杯に詰め込んだ資料の総重量を20kg程度と見越して、1個6kgの重石を入れて持ち上げたところ、4個(24kg)入れても問題なく持ち上げることができました。また、蓋の上に重石を10個(60kg)置いても、側板が若干たわむものの、箱がつぶれることはありませんでした。通常の使用においては十分な強度であると考えられます。

 

ある程度以上の大きさや特に重たい資料の時には完成箱が適していますが、文書や小さなモノ資料、書籍などを整理保管するには組み立て型でも安心してご使用いただけます。

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2017年8月17日(水) 厚くて重い大型洋装本にはブックシュー構造のシェル型保存箱をお勧めします。

書籍用保存箱は資料のサイズや用途に合わせて、製作する箱種を選び、お客様にお勧めするが、特に重量のある書籍を縦置きしたいというご要望にピッタリなのが、底上げしたシェル(二枚貝)型の保存箱だ。

 

書籍用の定番商品には、比較的薄い冊子などの資料向けのスリムフォルダーと、物理的な保護強度が求められる貴重書などの通常の書籍にはヒネリ留め具付きのタトウ式保存箱がある。タトウ箱は四方に展開できる構造なので、出し入れの時の資料への負担を大幅に軽減できる。しかしいずれの箱も、厚みがあってサイズも大きな書籍を縦置きしたい場合には、底部分にかかる重量を箱が支えきれず、取り扱い時に底が抜けてしまい、資料が落下する危険性がある。

 

図鑑や辞書、聖書などで特に重量のある大型書籍用にはシェル型の保存箱が強度面でより適している。中身の出し入れの際は書籍を厚手の板紙に載せてスライドさせるので、表紙が箱の内側で擦れる心配がない。洋装本の場合は表紙と本紙の底面の段差だけ底上げした構造(ブックシュー)にすることで、縦置きで保管する時の書籍へのストレスを軽減させている。また蓋をボアテープで固定することで、安全に持ち運びができる。

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2017年8月2日(水) 成城大学民俗学研究所様の所蔵する人形や郷土玩具の虫退治に、無酸素パック「モルデナイベ」が使われています。

成城大学民俗学研究所は、日本民俗学の創始者である柳田國男からの寄贈資料を集めた「柳田文庫・民俗学研究室」を基盤とし、昭和48年に設立されました。現在は、図書や文書資料にとどまらず、関連する様々なモノ資料も所蔵しています。

 

そのひとつが、日本各地から集められた人形や郷土玩具。民衆の生活に身近なワラ、木、土、布、紙などを材料としたものです。しかし、いずれも虫の餌や巣になりやすい素材で、特に木やワラは、収集時にすでに虫が潜んでいることもあるため、収蔵前の駆除は必須ということです。過去には外部に委託して燻蒸処置を行ったこともあったそうですが、民俗資料は数も種類も多く、収蔵時期も不定期のため継続が困難でした。

 

同研究所では以前、木製の人形に虫が出てしまったときには薬品では駆除することができず、弊社の無酸素パック「モルデナイベ」を使って駆除に成功しました。手軽に殺虫処置を行えることから常備品としてくれています。ただこれまでのサイズの「モルデナイベ」では小さくて、処置できない民具もありました。今回、新製品の大型サイズをすぐに導入していただき、大きなワラ馬(信州地方に伝わるワラでできた馬)の殺虫処置を実施していただいております

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2017年6月7日(水) 大判の資料にも対応できる特注クリーニング・ボックス

資料に付着した塵埃やカビ残滓の、屋内での除去作業用にご好評をいただいておりますドライ・クリーニングボックス。お客様のご要望にお応えして、このほど一回り大きなサイズの製品を作りました。従来の定型品では対応が難しい資料サイズのドライ・クリーニング用ボックスを特注品としてお引き受けできます。ご相談ください。

 

従来品(幅580×奥行き450×天地445ミリ)に比べ、今回の製品のサイズは幅750×奥行き500×天地445ミリ。幅と奥行きを広くしたことで、大判の図書や雑誌などを見開いてクリーニングできます。

 

ドライ・クリーニングボックスの機能のポイントは、ボックス内で、奥の空気清浄機(HEPAフィルター装備)に向かって十分な気流が発生し、塵埃などが作業者側に来ないこと。今回の大きなボックスも定型品と同様に、気流が手前から奥へと流れているか、気流検査器で確認済みです。

 

空気清浄機とボックスを1つにまとめた梱包で出荷します。作業時に現場で梱包の箱から出して数分で組み立てて、作業を開始できます。

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2017年5月24日(水)あらゆるサイズのガラス乾板に対応できるように専用フォルダーを品揃えしました。

弊社ではこのほど、ガラス乾板のあらゆるサイズに対応できるように専用フォルダー(中性紙製4フラップ・フォルダー)の品揃えをしました。素材は国際標準化機構(ISO)の定める写真活性度試験(PAT:Photographic activity test)をクリアしており、長期に安心してご使用いただけます。

 

ガラス乾板を保存する上で最も大切なことは、膜面(乳剤面)を外的な劣化要因からまもること。たとえば、包材が膜面に対し不均一に接した状態では、空気(酸素)や湿度の影響の差が劣化の差となって、画像濃度の低下に繋がるため、劣化を抑制する包材や間紙は周辺にできる限り隙間がなく、膜面に均一に密着させることがポイントになります。

 

包材に収納する際の基本的な手順は、ガラス乾板を元の包材から取り出し、埃や汚れを柔らかいブラシで拭き取った後、一枚ずつガラス乾板フォルダーに包んで、損傷の無いものは膜面に圧が掛からないように立てて保存できる専用の箱に収めます。

 

弊社のガラス乾板専用フォルダーは以下のように、一般的な規格サイズとともに変形サイズも品揃えしています。また、サイズ指定の特注品も作成できます。

 

内寸サイズmm 外寸サイズmm 通称
47×62×3 48×63×3.5
84×62×3.5 85×63×4
82×106×3 83×107×3.5
84×109×3 85×110×3.5 手札
84×122×3.5 85×123×4
104×130×3 105×131×3.5 4×5
122×122×4 123×123×4.5
123×123×4 124×124×4.5
130×181×3.5 131×182×4 5×7
162×162×4.5  163×163×5
164×215×3.5  165×216×4
168×216×3.5  169×217×4  6×8
205×256×4  206×257×4.5
255×306×4  256×307×4.5  8×10
310×100×3  311×101×3.5  天文写真乾板用
121×165×3  122×166×3.5  5×7小

 

なお、適正な包材へ収納後のガラス乾板の保管環境は、ISO規格に基づいた日本工業規格(JIS)によるJIS K 7644:2004 写真―現像処理済み写真乾板―保存方法(ISO 18918:2000 Imaging materials−Processed photographic plates−Storage practices )に準拠した環境が推奨されています。許容されるRHレベルは、20%〜50%、好ましくは40%未満。RHは60%を超えてはならず、大きな変動は避ける。推奨温度は15℃〜25℃(20℃以下が好ましい)。過酸化物、硫化水素、オゾンなどの反応性化学物質は保存環境中から除去する—というもの。

 

 

関連情報

ガラス乾板保存箱 縦置き型(組み立て式)、フォルダー

 

ガラス乾板保存箱 平置き型、フォルダー

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2017年4月26日(水) サイズの異なるガラス乾板を一箱にまとめて収納する。

何種類かのガラス乾板を 一箱に収納する場合、箱の中に仕切りを入れ部屋を作り、乾板のサイズに合うように各部屋に上げ底やスペーサーを入れる。乾板はサイズに合ったフォルダーに 1枚ずつ包み、それぞれの部屋に入れる。ガラス乾板は壊れやすいため、ひとつの部屋に違うサイズのものを一緒に入れてしまうと、箱が傾いた時などに力のかかり方が不均一になり、破損の原因となる。また、上げ底やスペーサーがない箱の場合は詰め物を入れるなどして、乾板が箱の中で動かないような工夫をするとより安全に保管できる。

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2017年4月5日(水)大きな額装作品を縦置きで保管する、留め具付きの台差し箱

大型の台差し箱を縦置きで保管するには、蓋を平紐などで縛る必要があるが、資料を出し入れする度に紐を結び直す手間がかかる。留め具にボアテープ(面ファスナー)を使用すると蓋の開閉が簡便になり、身とピッタリ固定ができる。

 

箱の中で資料が動かないよう、内寸をタイトに設計した。そのため箱の中にスペーサーを取り付け、作品を取り出す手掛かりを設けた。箱の壁にはボードが二重になる補強を加えており、高さが低い薄型の箱でもたわまない堅牢な構造になっている。

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2017年3月22日(水) 書架に収納する大型雑誌用ファイルボックスをブリヂストン美術館様に

公益財団法人石橋財団ブリヂストン美術館様が収集している海外の美術雑誌の多くは大判で薄く柔らかいため、書架にそのまま立てて並べると自重で湾曲してしまう。当初利用されていた一般的な事務製品は、大型本を支える強度がなく、また、箱の手前の壁が資料の下半分を隠してしまい、本のタイトルや管理用ラベルが見えづらく、出し入れに手間がかかっていた。そこで強度のあるアーカイバルボードを使い、資料をしっかりと支えられる構造にした。手前の壁がなくなることで資料の背がすべて見え、出し入れも安全に行うことができるようになった。

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2017年3月9日(木)殺虫処理が館内で簡単・安全・確実にできる無酸素パック『Moldenybe®モルデナイベ』の大型サイズをラインアップしました。

「サイズが大きい博物資料、絵画、美術工芸品、テキスタイルなどの殺虫処理や保管にも対応できる大型袋が欲しい」そうしたお客様からのニーズを受けて、これまで特注品(都度対応品)として製造していた『Moldenybe®モルデナイベ』の大型袋3種を定番化します。材質も形も多種多様な文化財の密閉・脱酸素処理に最適なサイズを揃えました。

 

内寸mm 外寸mm セット数 価格
(税抜)
モルデナイベ大型 1,110×1,280 1,140×1,320 5セット

スライド・チャック式ガスバリア袋(マチなし平袋)5枚+エージレスセット25個

¥53,000
モルデナイベ大型 310×1,360 380×1,400 10セット

スライド・チャック式ガスバリア袋(マチなし平袋)10枚+エージレスセット10個

¥65,000
モルデナイベ大型 430×929 440×944 10セット

スライド・チャック式ガスバリア袋(マチなし平袋)10枚+エージレスセット10個

¥42,000

 

無酸素パック『Moldenybe®モルデナイベ』は、酸素を遮断できる高性能な3連スライド・チャック式ガスバリア袋と医薬品や化粧品にも使用されている安全性の高い脱酸素剤を使い、誰でも手軽に無酸素の密閉空間を作ることができる包装資材です。無酸素の環境にすることによって、貴重な資料、染織品、木製品、革製品等に付く害虫やカビを、人体に有害な殺虫剤や防カビ剤などの化学薬品を使うことなく確実に殺虫・防カビ処理できます。また、酸素をゼロにして「酸化」を防ぐ特性を生かし、衣類の酸化による色褪せ、黄ばみ・染みの発生防止や金属材料の腐食防止・保管など様々な用途に活用できます。通気を遮断するので乾燥をある程度防ぎ、臭い移りが起こらないので一時的な隔離袋としても使用できます。

 

ご購入方法

 

本製品のお見積り・ご購入は下記リンク先の販売代理店窓口までお問い合わせ下さい。

メールまたはFaxでお問い合わせの際は件名に「モルデナイベ問合せ」とご明記をお願い致します。
メールは(at)を@に変えて送信して下さい。
なお販売代理店は取りまとめ店のみを記載しております。このほかの営業所は各販売代理店までご連絡下さい。

 

 

販売代理店 お問い合わせ先

 

・日本ファイリング株式会社 特販部
〒101-0062 東京都千代田区神田駿河台3-2 新御茶ノ水アーバンビル
Tel:03-5294-3037 Fax:03-5294-3014  メール t.sudo(at)nipponfiling.co.jp(担当:須藤)

 

・株式会社クマヒラ 企画本部 ミュージアムグループ
〒103-0023 東京都中央区日本橋本町1-10-3
Tel:03-3270-4393 Fax:03-3270-4394  メール info(at)kumahira.co.jp

 

・金剛株式会社 業務本部 企画・調達センター
〒860-8508 熊本市西区上熊本3丁目8-1
Tel:096-355-8889 Fax:096-352-0227  メール contact(at)kongomail.com

 

・中部資材株式会社 燻蒸部
〒490-1447 愛知県海部郡飛島村西浜28番地
Tel:0567-55-1290 Fax:0567-55-1777  メール bunkazai(at)chubushizai.co.jp

 

・トラッドマテリアル
〒589-0007 大阪府大阪狭山市池尻中2-2-26
Tel:072-205-2027 Fax:072-205-2028  メール mail(at)tradmaterials.jp

 

・第一合成株式会社 営業部文化財課
〒192-0051 東京都八王子市元本郷町1-25-5
Tel:042-625-5070 Fax:042-622-1884  メール info(at)daiichigosei.co.jp

 

・沖縄サニタリー株式会社
〒900-0036 沖縄県那覇市西2丁目13-15
Tel:098-868-8458 Fax:098-862-0825  メール sanitary(at)woody.ocn.ne.jp

 

・寺田倉庫株式会社  ドキュメントソリューショングループ
〒140-8615 東京都品川区東品川2-6-10
Tel:03-5439-6100 メール doc.contact(at)terrada.co.jp

 

・株式会社 明治クリックス
〒661-0001 兵庫県尼崎市塚口本町3丁目28番8号
Tel:06-6423-0662 Fax:06-6423-3452 メール world(at)meijiclix.co.jp

 

・タキヤ株式会社 東京営業所
〒107-0062 東京都港区南青山1-4-2八並ビル2F
Tel:03-5410-0992 Fax:03-5410-0998 メール info(at)takiya.com

 

・株式会社パレット
〒259-0113 神奈川県中郡大磯町石神台3-11-3
Tel:0463-70-6444 Fax:0463-72-3157 メール toiawase(at)paret.jp

 

・IPMサポート株式会社
〒299-4502 千葉県いすみ市岬町中原422
Tel:0470-64-6824 Fax:0470-64-6825 メール t.hasegawa(at)ipm-s.co.jp(担当:長谷川)

 

・株式会社紀伊國屋書店 教育支援システム部 デジタルコンテンツ課
〒153-8504 東京都目黒区下目黒3丁目7番10号
Tel:03-6910-0514 Fax:03-5436-6921 メール dc00(at)kinokuniya.co.jp

 

 

関連情報

2016年8月3日(水) 無酸素パック「モルデナイベ」は工房でも加湿や修理用の材料の保管などに活用しています。

 ・2015年03月27日(金) 無酸素パックの大型タイプを開発—-段ボール4箱をそのままパックして安全に殺虫。

 

 

※2019年3月更新

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2017年2月22日(水) ひな人形をGasQ®️で養生し、元の木箱に保管する。

桃の節句も近づき、あちこちでひな人形の展示公開が行われる季節となった。この時期、資料館や個人の方などからひな人形の保管についてお問い合わせをいただくことがある。

 

今回ご紹介するのは一般家庭に伝わるひな人形の保管例。収納用の木箱もなるべく元のまま使い続けたいとの要望から中性紙保存箱への入れ替えはせず、人形の養生に汚染ガス吸着シートGasQ®️を使うことにした。

 

人形を収納する際には、顏や手といった繊細で壊れやすい部分を和紙などの柔らかい紙で養生する。今回は顔と衣装の部分をGasQで、形が複雑な手の部分はきめの細かい不織布で養生するなど、素材を使い分けた。最後に薄葉紙で全体を包み、元の木箱に収めた。年に一度、箱から出した時にGasQを交換すれば継続した効果が得られる。

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2017年2月1日(水) レコード盤保存容器「グラモボックス」の販売を開始しました。

グラモボックス」は、文化財向けの保存箱に使われるアーカイバルボードを材料としたレコード盤保存箱です。ボードの原料は100%純粋なケミカルパルプで、ISO18902:2013(イメージング材料の保存用品に関する国際規格)に定められた品質基準に準拠しています。ボード自体の酸性劣化を防ぐためpHを弱アルカリに調整し作られています。

 

「グラモボックス」はまた、一般的な段ボール箱に比べ2~3倍の強度があり、収納したレコード盤の反りや変形を防ぐ事ができます。フタは前面でロックする構造なので、持ち運びの際も不用意に開かない設計になっています。SPレコードは割れやすく、一度反りが起きると修復する事が困難なため平置きでの保管が望ましいです。LPレコードは箱を棚に立てて保管することもできます。付属の中性ラベルシールにジャケットデザインやレコードタイトルを印刷し箱に貼ると、中身の判別に便利です。

 

古いレコードジャケットには酸性劣化している物が多く、傷みが目立ち側面が裂けている物も見かけます。むき出しで保存している際の大気中の酸性ガスが主な原因ですが、従来の木製のレコードケースも木材から発生する酸性ガスが箱の内部に溜まり、レコードジャケットの劣化を早める危険があります。

 

「グラモボックス」への収容時には、別売りの中性紙スリーブや汚染ガス吸着シート「GasQ」の採用もお勧めします。スリーブに移し替え、オリジナルジャケットはまとめて「グラモボックス」に収納することで、出し入れの際のジャケットへの物理的ダメージを防ぐ事ができます。更にジャケットの間に汚染ガス吸着シート「GasQ」を挟み込むこむことで、ジャケットの酸性劣化や変色を予防できます。

 

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今日の工房』2016年7月13日(水)SPレコードを保存するには

 

 

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2016年11月30日(水)パソコン内蔵のHDD用の保存箱、より長期保存が可能なLTOなどへの移行時に使用。

映像制作会社や放送局では、デジタル制作された作品の動画素材や、関連する文書・画像などの資料がデータファイルで保管されている。現在、それらのデータをパソコン内蔵のHDDなどから、LTO(大容量磁気テープ)に代表される長期データ保存用の記録メディアへ移行する作業が進められている。

 

アニメ制作会社株式会社プロダクション・アイジー様よりご依頼を受け、データ移行までのHDDの保管と、作業のための持ち運びにも安全な専用箱を製作した。

 

パソコン内蔵のHDDは基盤部分がむき出しになっており、ホコリや静電気、落下の衝撃などによるデータ破損のリスクが大きい。そこで、箱の中で各HDDが接触しないよう仕切りを設け、床面は振動を吸収するクッション構造にした。データ移行作業が終わったものは箱の仕切り板を組み替えて、LTOテープの保存箱として利用される。

 

磁気テープやディスクの記録層を湿気や酸性ガスから保護するため、箱は表面をプルーフ加工にし、中に、取替え可能な汚染ガス吸着シート GasQ®︎を組み込んだ。

 

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2016年11月16日(水)紙焼き写真資料の整理と保存のためのアーカイバルバインダーとリフィル

紙焼きの写真資料は環境の影響を受けやすく、取り扱いには細心の注意が必要です。なかでも温湿度や大気中の汚染ガス、光、ほこり等に曝されると退色、変形、剥離などを引き起こします。

 

一般的な写真用のアルバムやバインダーは天地や前小口など露出する面が多いため、光やほこりの影響を受けます。また、写真を収納するリフィルには可塑剤や溶剤を含んでいるものがあり、素材の劣化等により発生した揮発物等で写真に化学的影響を与えます。

 

弊社のアーカイバルバインダーは写真用リフィルとともにISO18916:2007 PAT=写真保存用包材のための写真活性度試験をパスしており写真包材の国際基準に準拠しています。バインダーは蓋を綴じると外気への露出部分がなくなり、光やほこりの影響を防ぎます。オプションで汚染ガス吸着シート「GasQ®」 の組み込みも可能です。

 

リフィルのバリエーションは全部で12種類。L判やキャビネ、六つ切りなどの紙焼き写真用、35㎜、6×6(ブローニーサイズ)、4×5などネガ・ポジフィルム用、スライドマウント用と一般的な写真資料を網羅しております。

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2016年11月2日(水) 茶道具を仕覆(しふく)ごと収納する保存箱。

茶道具の茶碗・茶入・棗などを「仕覆(しふく)」ごと収納する保存箱。仕覆は茶道具全体を覆う布製の保護容器だが、名物裂や古代裂と言われる歴史のある染織布が使われているものも多く、剥き出しだと光や大気中の汚染物質に曝されて傷む。

 

これを「汚染ガス吸着シート GasQ®ガスキュウ」を敷いた中敷ボードに乗せて収納する専用の容器を製作した。染織布に直接触れることなく収納でき、また蓋にはポリエステルフィルム製の窓が付いているので、そのまま棚に飾り蓋を閉じた状態のままでも仕覆を眺めることができる仕様となっている。

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2016年10月26日(水) 洋装本の表紙と背表紙の負担を軽減させるブック・シュー・スタンド(book shoe stand)の導入事例。

洋装本を本棚に縦置きで配架すると、表紙のヒンジ部分(表紙の開閉時の蝶番箇所)に本の本体(text block、本紙のブロック)の自重によるストレスが掛かるため、ヒンジ部に破れや外れなどの損傷が起きやすい。大型の本や、重量のある本、ヒンジ部の構造が脆弱なものは、とくに損傷を受けやすい。

 

対策として、本のチリ(本体と表紙の大きさの差)の厚み分のシュー(shoe、靴)をボードで作成し内蔵させたブック・スタンド(book stand)で本を支える。本の厚みにも合わせたスタンドのため、縦置き時に前小口が広がることもない。

 

このお客様の場合、この閲覧室の書棚は、「見せるための書棚」であるため、背表紙は見えるようにしておきたいが、ヒンジの損傷は防ぎたいので、箱でなくスタンドの導入となった。

 

参照:ブック・シュー内蔵の保存箱についてはこちら

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2016年9月7日(水) 保存容器に貼付する中性ラベル

アーカイバル容器のオプションの1つでもある中性ラベルのご紹介。資料を容器に収納すると、中にどんな資料が収納されているのかが判別できなくなるため、容器作成と併せてラベルの貼付をお勧めしています。ラベルの形式は様々で、お客様のご要望や容器の種類、資料の形態等に合わせてご提案しています。左の2枚の写真は、元箱の識別情報を整理した上でラベルを作成し、保存容器に貼付した例。

 

また、最近ご好評なのは、洋装本を収納した際の「パネル型」のラベルです。洋装本の背のタイトルパネルに倣ってラベルを作成し、保存容器に貼付しています。この形式は立教大学図書館様の洋書貴重書の保存容器にも採用されています。

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2016年9月2日(金) 大容量磁気テープ媒体 LTO用の専用保存容器を開発

テレビ番組などの大容量コンテンツの保管と保存用の最適媒体として急速に普及が進んでいる磁気テープ LTO(Lenear Tape Open)専用の容器を商品化しました。これまで放送局様などからの様々なご要望を受け開発に取り組んできましたが、ようやくご納得いただける製品ができたと自負しております。

 

磁気テープの劣化要因には、落下によるカートリッジの破損、温湿度の急激な変化、埃や粉塵、水(湿気)、 空気中の腐食ガスなどがある。湿気からくるカビの発生はよく知られているが、腐食ガスによる影響も大きい。 高温高湿の環境や腐食ガスは磁気テープの記録層を構成するメタル磁性体を酸化させる。 磁性体は酸化すると抗磁力が落ち、記録された情報の欠損を起こす。 これらの要因への対策は磁気テープの保存にとって重要である。

 

画像はLTO4本収納用と、 10本収納用保存箱。蓋は樹脂製のヒネリ留め具やボアテープで固定ができ、持ち運びの際に不用意に蓋が開かないようになっている。10本用の保存箱には局内での持ち運び用に樹脂製の提げ手を取り付けた。 また、調湿性を付与するため外側を防湿効果のある不活性フィルムでコートし、内側には腐食ガスを吸着する汚染ガス吸着シートGasQ®を組み込んだ仕様になっている。

 

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2016年8月3日(水) 無酸素パック「モルデナイベ」は工房でも加湿や修理用の材料の保管などに活用しています。

薬剤を使わずに防カビ・殺虫ができる無酸素パック「モルデナイベ」。カビや虫が発生した時だけでなく、図書館・アーカイブズ・資料館・美術館・博物館様での書籍や文書、博物資料や美術品などのモノ資料の新規受け入れ時にも活用して頂いております。また処置対象の数量にあわせて、1袋単位での小規模な処置にも、大型袋による大規模な処置にも対応できます

 

画像は弊社の工房での使用例。左から、ホコリやカビが酷い和書を外箱の桐箱ごと無酸素パックして処置したり、超音波加湿器で加湿したガスバリア袋内の中で、劣化して乾燥が進んでいる革装丁本の柔軟性を戻したり、同じく巻きクセのついた資料を入れて、フラットニング(平坦化)するための加湿チャンバーとして使っています。また、修理用の皮革など、環境の変化や虫カビに弱い材料を収納しておくためにも使っています。

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2016年7月13日(水) SPレコードを保存するには

SPレコードはLPレコードに比べて約3倍の重量があるため、縦置きで長期間保管すると熱による反りなどの変形を起こしたり、床に接触している部分が欠ける恐れがある。そのためSPレコードは平置きで保管するのが望ましい。(LP盤は縦置きの保管も可能だが、反りが起こらないように硬めのボードで挟むなどの工夫が必要だ。)

 

写真にある元のレコードスリーブは酸性紙で作られているので、アルカリバッファーの中性紙封筒に入れ替えた。保存箱にはレコードを平置きで10枚収納できる。フタがボアテープで固定されているため、持ち運びの際にレコードの重みで箱の身が不用意に開かないようになっている。

 

オリジナルのレコードジャケットも保存の対象である場合は汚染ガス吸着シート「GasQ ガスキュウ」で包み、中性紙封筒に入れたレコードと同じ保存箱に収納して保管する。

 

 

 

 参考:SPレコードとLPレコード

 

SP(Standard Playing)レコードとは、1897年~1950年代後半に製造されていたレコードで、1948年に長時間の記録が可能なLP(Long Playing)レコードの販売が始まり徐々に移行していった。SP盤とLP盤の違いは以下の通りである。

 

SPレコード
・直径:12インチ(30cm)と10インチ(25cm)
・毎分78回転、記録時間:最大片面5分
・主原料:シェラック(東南アジアに生息するラックカイガラムシが分泌する天然樹脂)
・材質:硬度がある半面、弾力が無くもろい。摩耗しやすく、落とすと瓦の様に割れる
・重量:最大400g程度
・シェラックは粒子が粗いので長時間の記録ができない(細かい溝を掘れない)

 

LPレコード
・直径:12インチ(30cm)と10インチ(25cm)
・毎分33と1/3回転、記録時間:最大片面35分
・主原料:硬質塩化ビニール
・材質:弾性があり割れにくく丈夫
・重量:130g程度(重量盤は180g)
・粒子が細かいので細密な記録が可能になり、SP盤では不可能な長時間記録を実現

 

日本では、明治末期からSPレコードの製造が始まった。戦中戦後の物資が不足した時代には、シェラックの輸入が止まり、代替材料を使用した物や、A面とB面の間にボール紙を挟み込んだ、劣悪な素材のレコードが製造されていた。1951年にLPレコードの輸入が始まり、SPレコードの国内生産は1963年に終了した。SP盤からLP盤への過渡期にはフェノール樹脂や塩化ビニールのSPレコードも製造されていた。

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2016年6月8日(水)スチール製キャビネットの引き出し専用収納箱を東京文化財研究所に

東京文化財研究所 企画情報部様からのご依頼を受け、スチール製キャビネットの引き出し専用の収納箱を作成した。既存のプラスチック製仕切り板は、資料の荷重によって湾曲し、出し入れがしづらい状態だった。そこで、箱の内寸に対し仕切り板の幅を大きくとり、スリットに差し込む時に外れにくく、資料がよりかかってもしっかりと支えられる構造にした。既存の引き出しの奥行きや幅に合わせて設計されているため、スペースを有効に使えるようになり、また検索しやすくなったことで出し入れも安全に行えるようなった。

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