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週替わりの工房風景をご覧ください。毎日こんな仕事をしています。

2020年11月27日(金)マイクロ化のための合冊製本された新聞資料の解体

東京大学大学院法学政治学研究科附属近代日本法政史料センター明治新聞雑誌文庫様よりお預かりした明治24年から大正3年の新聞合冊は、新聞のノドに穴をあけて麻紐を通し平綴じされており、ノドの部分に印刷された文字が読めない状況でした。そのため、撮影するにあたり、綴じを外して一枚ずつの状態になるよう解体作業を行いました。
 
取扱いに支障があるような本紙の破損については修補を行い、撮影後は綴じ直しはせず、中性紙のフォルダーで包み保存容器へ収納しました。
 
 

【関連記事】

・『今日の工房』 2020年11月11日(水)愛知県長久手市にあるトヨタ博物館様より書籍修理のご依頼をいただきました。

・『今日の工房』 2020年9月10日(木)明治新聞雑誌文庫様より、一枚物「寺家村逸雅墓銘」の修理をご依頼いただきました。

・『今日の工房』 2016年6月15日(水) 明治新聞雑誌文庫様所蔵の屏風の下張りに使用されていた新聞への保存修復手当て

・『今日の工房』 2016年3月16日(水) 明治新聞雑誌文庫様所蔵の屏風の下張りから新聞を取り出す。

・『今日の工房』 2019年11月1日(金)松竹大谷図書館様が所蔵する映画スクラップ帳のデジタル化に伴う解体・簡易修補を行いました。

・『今日の工房』 2014年09月05日(金)デジタル撮影の事前処理

・『スタッフのチカラ』 2008年10月30日(木) 新聞合冊製本の保存事例  -読売新聞社様の導入事例-

2020年11月11日(水)愛知県長久手市にあるトヨタ博物館様より書籍修理のご依頼をいただきました。

1800年代後半から1900年代前半の大型書籍13点のうち、今回は月刊誌を年単位でまとめた合冊製本への処置についてご紹介します。

 

合冊製本とは新聞や雑誌といった逐次刊行物を半年や1年など一定期間ごとに1冊にまとめる製本法です。書架スペースの圧縮や資料管理の簡便さなどメリットはありますが、書籍の厚みや重さによって、見開きが悪くなったり取り扱いがしづらかったり、資料の利用面で制約が生じることがあります。

 

今回の対象資料は、約A4サイズで厚みが11㎝の書籍で、重さが6㎏(A4コピー用紙500枚の束で約2kg)とかなりの重量があり、両手で抱えて持たないと移動させるのも困難な資料でした。今後の閲覧や利用を考慮し、冊子単位に解体して1冊ごとに綴じ直す処置を行いました。

 

まず、表紙と本体の接合を外し、綴じ糸を外しながら分冊しました。この資料は合冊製本には珍しく、背を断裁せずに製本していたため、元の括構造が残っており、きれいに解体することができました。次に、背の接着剤(膠)を除去し、表紙の色に合わせた和紙で背を被覆し補強しました。最後に元の綴じ穴を利用して麻糸で綴じ直しました。

 

元の括構造が残っていたこともあり見開きが良く、さらに軽量となったことで扱いやすくなり、閲覧も楽にできるようになりました。

 

 

■トヨタ博物館様
https://toyota-automobile-museum.jp/

2020年10月30日(金)🎃ハロウィンをテーマに—資料にみる衝撃的な損傷状況の数々を集めました🎃

いつも当社ブログをご覧いただき誠にありがとうございます。今回はハロウィンにちなんで、私たちが恐れている資料の損傷について画像でご紹介します。この体験を皆さんと共有できたなら幸いです。

 

こうした資料の修理事例はこちらからご覧いただけます。
『スタッフのチカラ』(修理事例、各種報告や研究発表、スタッフが関わった著作物などを紹介しています)

『今日の工房』 (コンサベーションタグ)

 

2020年10月15日(木)公的機関や企業のお客様だけでなく、個人のお客様からのご依頼もお引き受けしております。

弊社では個人のお客様からの資料保存に関するご相談、修理や保存容器のご依頼も承っております。ご自宅にある古い書籍や思い出の写真アルバム、地区やお寺・神社に伝わる文書、大切にしている日記、賞状、手紙等々–過去にご依頼いただいた実績の中から、長年愛用されてきた革装の辞書と、代々伝わる地図の修理事例を紹介いたします。

 

革装の辞書は、表装革のレッドロット化(革が長期間にわたり空気中の汚染物質に曝されることで赤茶けた粉状に劣化する現象)が進行し、触れると革が剥がれる箇所もありました。背表紙は色あせ、表紙周辺にひび割れや欠損、ヒンジ箇所(表紙と本体の結合部)に裂けが見られました。本紙や本体に傷みは無く、もとの雰囲気を保ちつつ本を開くことができるようにという、ご依頼でしたので、処置としては、表装革に生じたレッドロットに対する手当てを行い、背表紙を本体から一旦外し、背をこしらえ、新たに和紙でヒンジを設け、本体と背表紙を再接合しました。表装革の欠損箇所は革の色に合わせて染色した和紙で補填しました。

 

地図資料は、A1サイズ程の薄い和紙に墨で描かれた手書彩色図。数枚の和紙を継ぎ足して一枚に描き、渋引きされた和紙で裏打ちされていました。この地図は頻繁に使われたのか、周辺に破れや摩擦による穴が見られ、また、折り畳んだ状態で保管されていたため折れ皺や折りクセが強く残っていました。お客様のご希望は、地図を電子化し、資料の利用はデジタルデータで、現資料は今以上に傷まないように保管したいということでしたので、処置としては、フラットニングし、破損箇所を和紙とでんぷん糊で修補したのち、デジタル撮影をしました。その後、ロール・エンキャプシュレーションを行い、複数本まとめて保存箱に収納しました。

 

ご相談はお気軽にお寄せください。

 

 

【関連記事】
・スタッフのチカラ『学習院大学図書館様所蔵「華族会館寄贈図書」資料に対する保存修復処置事例』
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・今日の工房 2019年6月12日『ロール・エンキャプシュレーションのサンプルを作る。』
・今日の工房 2012年9月21日『ロール・エンキャプシュレーションによる大判地図の修復手当て』

 

2020年9月29日(火)パーチメント、ヴェラムで装丁された本の劣化を予防する

「革(leather)」とは、動物の原皮を石灰につけて毛や脂肪を除去した後、植物タンニンやクロム等で鞣し、皮のコラーゲン繊維を安定、固定化させたものです。
これに対し、「パーチメント(parchment)」「ヴェラム(vellum)」とは、原皮を石灰につけて毛や脂肪を除去した後、鞣しを行わず木枠に張った状態で乾燥させ、シート状にしたものを言います。表面は密で摩耗に強く、用途にあわせて表面を削って厚みを調整し、中世から書写材料として使用されてきました。

 

16世紀以降には、これらを本の表装材として用いたものがあります。
パーチメント、ヴェラムは吸湿性があり、反りやうねりが発生しやすい素材です。湿気を吸うことでコラーゲン繊維が膨潤し、乾燥する過程で収縮します。表装材として用いられている場合、収縮によりヒンジ部の亀裂やこれらの損傷部分の捲れ、巻き込み部分の剥がれや、表紙そのものの反りを引き起こすことがあります。
ヴェラム装丁本のように形態変化が心配な資料は、適したサイズの保存容器に収納することで、こうした周囲の環境変化による影響を最小限に抑え、損傷の拡大を予防します。

 

▶参考:画像や文化財保存のためのツール開発と教育、実践を行っている米国のImage Permanence Institute(IPI:ロチェスター工科大学画像保存研究所)が、湿度条件の変化によってヴェラム装丁本の表紙に生じる影響の実験映像をYouTubeで公開しています。

 

この実験映像は、相対湿度を55%の平衡状態から25%へ、そして55%に戻し、最後に75%に移行させながら、貴重書の表紙の物理的な変化を撮影したものです。室温で12時間かけて行われています。日常的に起こっている環境湿度の変動に対し、資料がどのように反応するのか、どういった負荷がかかり、時間の経過で劣化へと繋がるかを示唆する非常に興味深い映像です。

 

 

 

 

 

 

 

 

Effect of Humidity Fluctuation on a Rare Book

RIT | Image Permanence Institute

 

 

2020年9月10日(木)明治新聞雑誌文庫様より、一枚物「寺家村逸雅墓銘」の修理をご依頼いただきました。

東京大学大学院法学政治学研究科附属近代日本法政史料センター明治新聞雑誌文庫様は、明治初期から昭和戦前期にかけての新聞や雑誌等の収集・調査・整理を行っており、明治期に日本で刊行された新聞雑誌類では国内最大のコレクションを有しています。現在は耐震改修工事のため休館しており、再開館は2021年の夏に予定されています。

 

ご依頼いただいた資料は、明治新聞雑誌文庫の初代主任である宮武外骨の友人・長尾藻城より寄贈された一枚物の資料です。「改進新聞」社主・寺家村逸雅の墓銘を和紙に印刷したもので、明治新聞雑誌文庫のご担当者様のお話では、そのような資料が寄贈されたことは昭和6年6月発行の「公私月報」に記載されており把握していたが、所蔵資料として整理された記録がなかったため、これまで文庫内にはないと考えられてきたそうです。しかし、今回の耐震改修工事に伴う資料整理と移転作業の際に偶然発見されました。 

 

資料は厚手の台紙に貼られ剥き出しの状態で壁に掛けられていたため、埃が堆積し全面にフォクシングが発生しており、本紙周縁には破れが生じていました。更なる劣化の進行を防ぐことを目的に、本紙を酸性度の高い台紙から剥がして全面的にドライ・クリーニングをおこなった後、着色汚れの軽減、酸化・酸性劣化の抑制処置として洗浄と水性脱酸性化処置を行いました。その後、本紙の紙力回復のため極薄の和紙で裏打ちを行いました。 

 

ご返却後は、明治新聞雑誌文庫様の新たな所蔵資料の一つとして整理される予定です。

 

 

【関連記事】
・『今日の工房』2019年7月18日(木)汚れた紙資料の水性処置では、洗浄の前にまず「濡らす」ことがなぜ重要なのか?

・『今日の工房』2015年03月18日(水)修理の各工程で使う水にはこれだけの質が要求されます 

・『今日の工房』2014年10月23日(木)新聞資料に対する洗浄・脱酸性化処置

・『スタッフのチカラ』2015年12月2日(水)資料に付着した汚れやカビのドライ・クリーニング

 

2020年8月26日(水)お客様の現場に出かけて和装本の綴じ直し作業を行いました。

目白にある徳川林政史研究所様にて、和装本の綴じ直し作業を行いました。

徳川林政史研究所は尾張徳川家第19代当主徳川義親によって設立された公益財団法人徳川黎明会に所属する研究所です。国内で唯一の民間林政史研究機関であり、現在は林政史の分野に留まらず、尾張藩の研究や江戸幕府に関する研究なども行っています。

 

同研究所の所蔵史料のうち、和綴じ、主に四ツ目綴じの糸が切れている史料を綴じ直す作業を2017年度より継続的に行っています。史料の持ち出しが難しいことや、特殊な道具が必要なく、糸、針、はさみがあればできる処置のため、研究所の閲覧室の一角をお借りし、スタッフ2名、約一日かけて70~80冊の綴じ直し作業を行います。

 

歴史ある重厚な建物の内部は、都会の喧騒を感じさせない静謐な空気に包まれています。趣のある閲覧室での作業は、工房とはまた違う雰囲気を味わうことができ、毎年の楽しみとなっています。

 

 

【関連記事】
・『今日の工房』2015年9月9日(水)和装本の綴じ直しに使う絹の糸と布。
・『今日の工房』2017年3月15日(水)和装本(四つ目)を仕立て直す。 

2020年8月6日(木)超音波ミストを作る -修理に用いる手道具

修理に用いる道具や機械は様々ありますが、専門の道具(リーフキャスターや刷毛など)を使用する場合もあれば、ほかの分野の用途、例えばキッチンツールや医療用器具、ホビーグッズなどの中にも応用できる道具があります。私たちが普段使っている手道具もそうした工夫から見つけることが多く、「ポータブル超音波ミストスプレー」もその一つです。装置の中に水を入れてスイッチをつけると、超音波振動により微細なミストが発生する仕組みで、本来、喉や肌が乾燥した際にミストを顔に吹きかけたり口から吸引するための機器です。

 

このスプレーは、狙った範囲に部分的にミストを当てることができるので、書写材料や本の構造に負担をかけずに紙を伸ばしたい時や、破れの修補を行う際、あらかじめシワや折れを伸展しておきたい時などに使用しています。

 

また、超音波振動により発生するミストは、紙に対しゆっくり穏やかに水分を与えることができ、紙資料の修理分野ではトレーシングペーパーなど水分に敏感な素材のフラットニング処置にも用いられています。「少しの水分で十分」という場面ですぐ手に取れる小回りの良さと、瞬時に均一な加湿が行える点で重宝しています。

 

【関連記事】
・2019年5月22日(水)アーカイバル容器の折り筋に骨ヘラでひと手間加えると、仕上がりがいちだんときれいになります。

・2018年8月8日(水)粘着台紙に貼られた写真の剥離は、刃先を温めたペインティグナイフで。

・2017年12月20日(水)小ぶりの真鍮製の重石は、さまざまな作業で使い重宝しています。

・2017年11月15日(水) 修理工房で使う2種類の加湿器

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・2017年5月31日(水) 耐水性を付与できるシクロドデカンを線状に資料に含浸して水性処置をする。

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・2016年2月17日(水) 大判の汚染ガス吸着シートGasQは手作業で一枚ずつカット

・2007年03月05日 いろいろな重さと形の重石

2020年7月1日(水)「新薄葉紙Qlumin™くるみん」を、劣化した洋装本の保護カバーに

劣化が進んだ洋装本の汚損や破損を防ぐ簡易な対応として、ブックカバーのように資料に保護カバーをかける方法があります。
色褪せや傷、擦れなどの損傷が広がらないよう資料を守るとともに、すでに外れてしまった背表紙や表紙を本体と一体化して保管することもできる、手軽で効果の高い予防保存方法です。
レッドロットの粉による扱う手の汚れや、周囲の汚損も防ぎます。

 

「新薄葉紙Qlumin™くるみん」は表面がなめらかで、レッドロットのように擦れに繊細な資料も傷つけません。
腰のあるしなやかな紙質は、洋装本の立体的な形にも柔軟になじみます。
今回は特別な道具を使うことなく、たたんだり、折ったりと折り紙のような感覚で作れる保護カバーを紹介します。

 

▶保護カバーの作り方
「新薄葉紙Qlumin™くるみん」(規格断裁品:800㎜×1,100㎜)の使用が便利です。
目安として、A4サイズ程度の洋装本に対して、これを二つ折りすると適当な大きさとして使用できます。
半分にカットしたり、折らずに2枚重ねにするなどして一般的な規格の洋装本に対応することができます。

 

①薄葉紙を二つ折りする。
②天地を資料サイズにあわせて三つ折りする。中心部の重なり具合で大きさを調整する。
③書籍が中心に来るように置き、折り返しの長さを確認する。
④長い場合は、表紙幅よりやや短い長さで切る。
⑤表紙に合わせて前小口側を折り返す。
⑥表紙が外れている場合、薄葉紙のひもで縛ることで安定します。
小型ロール品「新薄葉紙Qlumin™くるみんのひも」、もしくは薄葉紙を細く裂いてひもを作ります。
結び目は前小口側に来るようにします。

 

【関連商品】

 新薄葉紙Qlumin™くるみん

 

2020年6月10日(水)手繕いによる虫損の修補

虫損のある文書や和装本の修理の際、虫穴の小さいものや、全体のうち数丁・数か所だけに虫損が見られるといった軽度の損傷の場合は、「手繕い」という方法で修補を行います。手繕いとは、本紙の裏側から虫損の穴の周りにデンプン糊を塗り、喰い裂きにした和紙を欠損箇所に貼って一つ一つ埋めていく作業です。

 

手繕いに用いる和紙は生成りのまま使用することもあれば、本紙の色に合わせて染色和紙を使用することもあります。和装本の場合、何丁も続けて同じような箇所の虫穴を埋めるため、部分的に厚くなりすぎないように和紙の厚みを選び、また、丁が重なった際に和紙の色が濃くなりすぎないよう、本紙よりもワントーン落とした色合いのものを選択するなど、仕上がりをイメージしながら調整します。

 

手繕いの際は、和紙を喰い裂きにすることで本紙との馴染みが良くなり、本紙と重なり合う部分の段差も目立ちにくくなります。虫損が大きかったり広範囲に及ぶ場合は、和紙を虫損に被せた状態で虫穴より数ミリ大きく水筆でなぞり、ちぎって喰い裂きにした補修紙を使用します。修補後は不織布を被せてろ紙に挟み、シワや引きつれが起こらないよう重石を置いてしっかりと乾燥させます。実際の修理では、虫損以外に破れや老け(水損やカビが原因による紙の繊維化)といった損傷が一冊の中で複合的に起きていることもあるため、資料の状態を見て、繕い以外の方法も含めた適切な処置を選択します。

 

【関連記事】
『今日の工房』2017年9月20日(水)本紙の破れを修補する時の道具・材料とセッティング 
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